貧果。
それは、釣り人以外には聞きなれぬ用語である。
「貧しい釣果」を略して、貧果。そう呼ぶようになったのかもしれない。
この用語は大した魚が釣れないときに使うものであるが、それの貧果という現実に直面しているものの、汗と涙と勇気を振りしぼって懸命においしい釣魚料理を作ろうとしている男がいた。
その男の名は、俺。またの名を平田剛士という。
今、彼の手元には2匹の魚がいる。
1匹は、手のひらサイズの真鯛。
これは本来リリースサイズだが釣り針が競技キス針だったということもあり2本飲み込んで合掌しつつ持ち帰ったもの。
もう一匹は、スレがかりで釣れてきたメゴチ。
それ以外のトラギスやマハタなどはすべて逃がしてきたものの、なんという貧価だろう。
まさに、堂々たる貧果オブザ貧果である。
釣り人たちよこうして貧果料理が幕を開けたのだ!刮目せよ!
『手の平真鯛』で鯛めしを作る!
ただの真鯛の子供、所謂チャリコというやつを、『手の平真鯛』という呼称でよんでみる。
おお、すると不思議ではないか。
まな板の上にあるのは、ただの手のひらサイズ真鯛なんだけど、『平』という文字が真鯛に価値を付加したようなよう錯覚をおぼえる。
これは高級魚平目が持つ力なのかもしれないが、手の平サイズの真鯛というよりも、『平真鯛』という謎の魚種が現れたかのように思う人もいるはずだ。
で、これが、『手の平真鯛』だ!
見たまえ!ほらね、なんだかすごい高級魚に見えてきたでしょ。
この手の平真鯛だが、このように内臓とエラをぬいたうえで血合いを流水で流しておこう。
手の平真鯛をバーナーで炙る!
その後、バーナーで両面をこんがり炙る。
釣魚料理をつくるうえでバーナーをもっていないということは、或る意味人生の3分の1は損しているといってもいい。
このバーナーは、新富士バーナー パワートーチ RZ-730Sという代物なのだが、馬路で買ったほうがいい。もうあれこれ言い訳をしないで買ったほうがいい。
Amazonだとたった1736円で買えるし、賢くAmazonプライムに入っている人はなんと翌日に到着するのだ。
もう買うしかないだろう。1736円で人生が変わるのならば、変えない手はないと思う。
このバーナーは携帯コンロのガスにとりつけて利用できるのが便利だ。
料理だけでなく、BBQの焚き付けなど活躍すること間違いない。
だまされたとおもって想像してみてほしい。
仮にあなたが会社員だとする。
或るとき会社のBBQに参加したときに、薪が湿気ているのか全く火がつかない。
部内で出世街道をひた走る出木杉君も急なことで対応策が見つからないようだ。
それをみた肉好きな部長加美山雄二の顔をみると、相当なストレスを感じている。
もしあなたがこのバーナーをもっていればそこで何くわない顔で登場し、おもむろにバーナーをシュゴーと稼働させ薪を焚きつける。
すると、あれほどまでにうんともすんともいわなかった薪が盛大に燃え始め、一同はあなたの能力に感嘆する。
そして肉も焼け加美山部長もご機嫌になったのか、「いやーさすが○○君だ。やはり君はやると思っていたんだよね。あのプロジェクトはぜひとも君に任せたいと思っていたんだ!僕はカルビが好きなんだよ」とか言うにいたり、あなたはそれをきっかけに万年平社員から主任、課長、部長、執行役員兼本部長、取締役、次期社長候補とかにとんとん拍子に出世していくわけである。
嗚呼、バラ色の出世人生。
ふりかえれば、なにが成功の要素だったのか。
そう、それはただ一つ、1736円で新富士バーナー パワートーチ RZ-730Sを買ったということだけだなのだ。
ほらね、そろそろほしくなったでしょ。
と、長くなったので次の工程にいく。
こんがり炙った手の平真鯛を炊く
次に、炊飯器に洗った米2合と押し麦1合をいれ、水を入れる(酒とみりんを適量混ぜておこう)。
真昆布をしき手の平真鯛をそっと置く。
この時点であなたは気づく。
「あ、真鯛のサイズが手の平サイズでよかった。炊飯器にちょうどいいじゃん」
そう、そういうことなのだ。
ここで裏技はスダチの皮を入れるという点だ。
スダチの皮が鯛のもつ生臭さを緩和しつつ、炊きあがった飯の奥にそこはかとない香りをつけてくれる。
季節にもよるがスダチの代打としては柚子でもよいだろう。
手の平真鯛飯が炊きあがった
そして、炊飯器をセットしつつ、ふつーに炊くと、まー50分程度でいい香りがしてきて手の平真鯛飯が炊きあがる。
フタをあけたあなたは、おもわず「旨そう」とかなんとかお決まりの文句を放つに違いない。
なぜなら、目の前の手の平真鯛飯が心から旨そうであるからだ。
人は本当に旨そうなものに遭遇した際に、「おいしいそう」とかいう上品な言葉は使わない。
「旨そう」は、脳で考えて発せられるというよりも、あなたの胃袋というか魂の奥底から反射的に発せられるのだ。
異論は認めない。
そして、真鯛の骨やヒレの棘を取り除いてほぐした身を飯の上にのせて、しゃもじで切るようにまぜる。
盛り付ける。ここで御茶碗にもりつけたあとなのだが、スダチの皮を刻んだものを飾りつつ、少量スダチを絞ってやるとさらに都合がいい。
あなたは飯をかみしめる時に気づくだろう。
なぜ、白米でなく麦飯なのか。
そう。この真鯛は、手の平真鯛などといっても養殖ものではなく天然ものなのだ。
野趣あふれる真鯛。その香ばしい風味には白米よりも麦飯のほうがよく似合う。
メゴチ料理は天ぷらのみか?
釣りをしていると、必ずスレがかりということが起きる。
タチウオのジギングなどスレがかり祭りみたいなものだ。
スレがかりで魚を釣るとなんだか申し訳ない気がするのはわたしだけであろうか。
だが申しわけないと思うのも人間のエゴでもあるのだな、と、他人事のように扱いつつ、心を鬼にしてメゴチを持ち帰ってきた。
まな板の上のメゴチ。ミスターカモフラージュフィッシュである。
このように顔をズームすると、模様が複雑できれいである。
が、このメゴチは見た目やヌルヌルするという点と、エラぶたに棘があるという点で忌み嫌われている。
一見すると料理がしづらいということもあるのかもしれない。
が、メゴチは、適切に調理すればこのようにスルンと皮がむけてかんたんに調理できる。
これをどう料理するか。
天ぷらか、煮つけか。
すこし迷ったものの、刺身にしてみることにした。
三枚におろして、半身ずつをさらに盛り付け、スダチを絞って塩で食べる趣向。
うむ。新鮮だからかもしれないがクセがなくて、アリだ。
が、白身という点も考えると、下処理してサクにしてから寝かせたほうがよいかもしれない。
まとめ
貧果。
それは、釣り人以外には聞きなれぬ用語である。
「貧しい釣果」を略して、貧果。そう呼ぶようになったのかもしれない。
が、どのような貧果でも、それなりの料理を作れるということが今回の記事でわかったことだろう。
ということで、貧果を恐れない人生を送りたい。
わたしからは以上だ。
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