あなたはご存知だろうか。
この国では、毎年秋になるとネット上でにわかにピェンロー鍋合戦が繰り広げられる。
Googleトレンドをみても、鍋料理である扁炉(ピェンロー)のアクセスは秋冬になると上昇し、やがて春がくるにつれて忘れられていく。
ピェンロー鍋合戦、料理は愛。
日本人はこの惑星においても、己より他や公を意識して行動する傾向があり、国際的には極めて温厚な性格として知られている。
が、反面、食については時に過激派である。
これは『美味しんぼ』という登場人物のほぼ全員がDQN人材である作品が長く好まれていることからもわかるだろう。
山岡士郎と海原雄山というツートップが常に料理技術や知識を武器に相手をマウンティングしようと極論を振りかざし、ときに小西ひろゆき議員が憲法クイズに勝利したときのように悦にひたる。
この作品をみるとき、あなたはどちらかの極論に加勢し相手方の料理を否定していないだろうか。
「そもそもカレーとはなんだ?」
「ふはははは。貴様に味がわかるはずがない!」
という類の発言。
わたしは今ここで世界に問いたい。
「そもそも料理とは相手を排斥する武器ではない。相手の不幸を呪うためのものでもない。料理は魂を救済する愛である。自分や誰かのことを想うためのものではないか。料理にピースを。平和は料理からはじまる!」と。
そう、
『愛は食卓にある』我らがキューピー先生もおっしゃっている。
・・・
今、2分ほど時間をとってウェブ界隈を『ピェンロー』『ピェンロー鍋』『ピェンロー鍋 作り方』というキーワードで見回してみてほしい。
すると、たかが鍋物であるピェンロー一つとっても、その作り方をめぐり口汚く罵るピェンロー原理主義者、匿名安全地帯から吠える根暗人材、ネット盆暗ならびに遊冶郎、引きこもり穀潰しのプロが梅雨時の蚤や壁蝨のように跋扈していて、彼らのクソコメ・クソリプを見るにつけ、同じ日本人としてさみしくなってくる。
このサイトは釣りとアウトドアと料理に関してを日々テーマにしているのが、この退廃していく日本のピェンロー文化、他者を排斥する言論空間に一石を投じるために、俺のピェンローを投げ込みたい。
そして、唱えたい。
和を以て貴しとなせ!
謙虚になれよ!
ピェンローってなに?
ここまでよくわからない熱量につられて頑張って読んできていただいたものの、シッタカスキルにより乗り越えようとしているあなたのために解説しておくと、ピェンローは妹尾河童さんが著作で紹介した中国発祥といわれる鍋料理だ。
ざっくり説明すると、干し椎茸を戻した出し汁に少量の塩を加えつつ白菜の芯(白いところ)をざく切りにし、くたくたになった状態で、ごま油を数度かましつつ豚バラと白菜の葉部分を大量にぶち込んでさらにくたくたにして、仕上げにごま油をたらし、塩と一味唐辛子で食べるというシンプルな鍋料理だ。
ノーマルピェンローは、ちゃんと作ればシンプルで味わい深い。
シンプルでうまい料理をカスタマイズすると、先ほどのネット蠅の連中がけなし始める。
あなたも心当たりはないだろうか。
たとえば、ピェンローであれば、
「昆布をつかうのは邪道!」
「味の素をつかうのは邪道!」
「七味唐辛子は邪道!」
「柚子胡椒とか、豆板醤とか、ラー油とかいれるのは邪道!! 」
「白菜以外の野菜を入れるなんて邪道!!!」
などなど。
ほうほう。ここで、あえて言いたい。
黙れこの野郎!貴様らは勝手に料理の正道をとりきめてまるで御釈迦様気取りかよこの野郎!
料理にも基本というものがありながらも自分が好きなように作ればいいし、世界人口が76億人いれば、76億通りの好みがあるのだよ。てめーの好みを人に押し付けるんじゃねー。思いあがるなこの増上慢め!
しまったちょっとわたし自身も熱くなってしまったが、言いたいことは、いろんなピェンローがあってもいいんじゃないかということである。
ということで、ここで簡単にできるピェンロー2.0として、アサリピェンローを紹介したいと思う。
ピェンロー原理主義者よ!目覚めよ!
ネットという暗い霧のなかでお互いに罵りあい殴り合うのはやめるんだ。
アサリピェンローの作り方
ピェンローって豚肉とか鶏肉じゃなくちゃいけなかったんだっけと思っていたあなた。
いいんだよ。ダシの効力がでる具材であればなんだっていい。
<材料>
- にんにく数個
- 生姜スライス数切れ
- あさり(海水程度のぬるい塩水で1時間程度つけて砂抜きをしよう。静かな場所で蓋をして暗くしておくとよい)
- 白菜(ハーフで2人前。ぺろりといけるので、一株あってもいいだろう)
- 昆布
- 日本酒、みりん
シンプルな具材。
ほかに、椎茸スープをとってもうまいし、緑豆春雨があればスープを吸い込んでうまい。
自由自在に自分のピェンローをカスタマイズしていこう。それがピェンロー2.0だ。
昆布は、水と日本酒&みりんを混ぜたものにつけてしばらくおいてから火にかけてもいいし、時短したい人は自ら炊いてもいい。
ただし、沸騰するタイミングで昆布は取り出した方がクセがでない。
コクを重視したい人は、動物性のスープをかましたほうが厚みが出るのだが、これは後述のハイブリットピェンローでお伝えする。
ニンニクと生姜は、ざっくりスライスにしておこう。
白菜はノーマルピェンロー同様、茎部分をざく切りにしておく。
土鍋に、これらの食材をいれてごま油を流し入れる。
ごま油には焙煎してあるものとそうでないものがあり、香りがでるように焙煎したものを選ぼう。
我が家は、かどやの純正ごま油を利用している。
あとは中火で炊く。
白菜の茎に火がとおったら、中央に水洗いしておいた砂抜きあさりをたっぷり投入しよう。
白菜の葉部分をざく切りにしてたっぷり用意しておく。
白菜で蓋をして、さらに胡椒を少々+ごま油をまわしかけておく。
蓋をして弱火で炊こう。
豚しゃぶを作っておく
ここでいったんピェンローから離れる。だまってついてきてほしい。
まず鍋に水の代わりに安酒をどぶどぶ投入しよう。
俺たちの筑後盛。
こちらは、だいたい1升で600円~700円ぐらいだったような気がする。安酒はどぶどぶ使えるから正義だと思う。
どぶどぶ。
日本酒を煮たてる。
豚バラ肉を用意する。今回はカナダ産だ。国産信仰クソ喰らえである。
このバラ肉を日本酒でしゃぶしゃぶし、冷水で締めてよく水をきっておこう。
これが豚バラの日本酒しゃぶしゃぶだ。豚臭さが軽減されているぞ。
次に、パクチーを大量に刻む。
そんでもって、皿に盛り盛りにしておく。自炊様様である。
パクチーの根をたたいておこう。
しっかり根がある場合は、根を包丁の背なかで叩いてから切ると風味が出やすい。
このパクチーの根と生姜スライスを先ほどの日本酒しゃぶしゃぶの茹で汁にいれて煮だす。
「この工程をやってから豚バラをしゃぶしゃぶしてもよかったのではないか。」
正解である。その通りだと思う。
料理というのはあとから気づくことも多いものだ。
ここであなたは少しお腹がへっているだろうから、日本酒しゃぶしゃぶをゴマダレあたりで食べてみよう。
うへへ。
旨すぎする。。。
そうこうしているうちにアサリピェンローの鍋がいい塩梅になっているので、蓋をあけてみよう。
うむ、うまそうやんけ。
ここで水分が減っていると思うので、ティファールあたりで沸かした湯か築後盛先輩を継ぎ足しておこう。
そんでもって、馬鹿の一つ覚えのように、またごま油である。
ひと回し入れよう。
ここで白濁したスープを味見してみる。
アサリが含んでいた海水の塩分からだろうか。
朝霧のように白濁した旨味の奥地からほんのり海の気配が感じられ唾液が自然とにじみでつつ、スープがすんなり胃袋にしみていく・・・
みたまえ。アサリと白菜のこの融合を。
盛り付けて、少量のヒマラヤピンクソルトで味付けつつ食べる。
ああ、うまいよ。おっかさん。
「母なる海で潮にもまれて育ったアサリと昆布が、畑でのんびり育った白菜と出会った」
そんな味である。
きっとこのあたりであなたは、アサリピェンローもいいよねと、バクバクを食べてあっという間に鍋の容量が50%ぐらい空くはずだ。
ここでだ!ここで或る技を披露する。
ターンエンド、ここでハイブリッドピェンローを召喚!
いでよ!ハイブリットピェンロー
諸君は忘れていないだろう。
なぜか日本酒豚しゃぶの汁にパクチーの根などをいれて炊いていたのを。
今すぐ、アレを入れるんだ!
豚しゃぶ汁投入である。どばどばどばー。
そして、氷水でいったん冷やし、臭みを軽減した豚バラ。
ついでにこれもぶち込もう!
ふはははは。
これがハイブリットピェンローである!
邪道といわれてもいい。時代は21世紀AIの時代である。
なにが邪道か正道かそんなものは自分できめて歩んでいきたい。
わたしは、ピェンローの可能性を引きこもりのように閉じ込めず、世界にさらに発信したい。
「ピェンローに自由を!」
き、きこえるぞ群衆の声を!
こ、これは。う、うまいぞ。
先ほどのアサリ×白菜×昆布にくわえて肉の旨みであるイノシン酸が、見事に昆布の旨みであるグルタミン酸に融合して相乗効果を発揮している。
が、驚くのはまだ早い!
ここで取り出すのは、中華が誇るローカンマの辣油(ユ―ラージャン)である。
今回は、中華納豆×豚肉辣油をチョイスしたが、このローカンマ婆シリーズには鶏肉辣油などいろいろな種類がある。
東京であれば、上野や大久保界隈のアジア食料品店で簡単に手に入る。
中には瓶のなかみがにじみ出てべとべとさんになっている商品もあるが、恐れずに手に取ってほしい。
餃子の漬けダレや、ご飯や麺類の味変化に驚異的な実力をもっている調味料だ。
辣油。
具がいっぱい。
今回は中華納豆(トウチ)をつかったものでややくせがある。
ハイブリットピェンローに、このローカンマ特製辣油をかけつつパクチーを好きなだけ盛ろう!
旨杉晋作!
このコク!ピリ辛さ!パクチーの香りの鮮烈さ!
まだだ、まだ終わらんよ。
別どんぶりにご飯をすこし盛る。
現在我が家は麦飯生活だが、白米でも構わない。
先ほどの通り辣油をかまして、パクチーを激盛る。
インスタ映えまったなし。という具合である。
ハイブリットピェンロー雑炊を食べる。
もぐもぐ。ふはー旨すぎる。旨すぎるぞ!
まさにハイブリット。ピェンロー2.0の幕開けにふさわしい一品である。
おまけだが、豚バラ肉だけをゴマシャブダレ×五香粉につけてたべても絶品である。
まとめ
ノーマルピェンローは旨い。それはそれでいいと思う。
が、今回の料理を通して考えてみると、明らかに一回の食事での満足度はピェンロー以上だと思う。
さらにピェンローの締め方に言及する。
一般的にピェンローの締めは、鍋に白飯をいれて雑炊にしたりラーメンにすることが一般的だが、別皿に米や冷凍うどんやラーメンをいれて、ピェンロー汁を流し込みさらに味付けをしていく手法をおススメしたい。
別皿締め術であれば、なんとスープを残しつつ翌日もピェンローから展開される料理を楽しめる。
朝ごはんの、ピェンロー粥。あれも実に旨い。
ということで、次はあなたがピェンロー2.0を語る番だ。
だれかに自分が心から旨いと想うものを食べさせてあげるといい。
料理にピースを。平和は料理からはじまる!