タチウオはひょろひょろ長細いといっても意外と1尾あたりのボリュームがある。
船釣りであれば比較的釣りやすい魚でもあり、いつのまにかクーラーボックスも満タンになったりして料理に困る人もいると聞く。
ということで今回は、引き続き現場からタチウオ料理をお送りする。
クックパッドなどとちがって一切分量は書いていないが、メモの準備はよろしいか?
タチウオの干物をつくる
ここに断言する。
よい干物をつくるためには、よい漬け汁をつくる必要があるのだ。
フライパンに水道水を張り、そこにふつーの海塩を溶かし飽和食塩水を作る。
薄い塩水で長く漬けるのもそれはそれでいい。
そこに、筑後盛を遠慮なくドブドブと入れる。
銘柄はなんでもいい、とにかくドブドブいれられる安酒を選ぼう。
ここで遠慮してはいけない。ドブドブ入れるように。
ドブドブドブドブ。
うわ、入れすぎた。
・・・
そしてみりんを多少いれつつかき混ぜる。
ここに開いたタチウオを投入。
干物にする場合タチウオは背開きがいいと思うが、この時点で内臓をとるために腹を開いていたので強引に作業を継続して腹開きにする。
こちらが、その他の下ごしらえも込めた全体像だ。
釣り人たるもの、アラから内臓までつかってこそ本物だ!
とか、釣り人同士でありがちなマウンティングをするつもりは毛頭ないが、タチウオはほとんど身体全体食べられるので色々と利用するとよいと思う。
尚、漬け汁へつける時間だが、飽和食塩水の場合は20分漬けなくていいと思う。
漬け汁から取り出したタチウオは、水洗いしたあとに水分をぬぐっておきリードクッキングペーパー等でくるんで冷蔵庫で寝かせるか、写真のように干物網でほしてもいい。
秋冬の場合は干しすぎない程度に天日干しするのもい良いだろう。
これが干しあがったタチウオの干物である。みるからに旨そうだ。
ひっくり返すとこんな感じ。ハラス部分は取り除いてもよいが脂が多い部分なのでつけたままでもよいと思う。
これが炙った状態。
スダチを絞ると、シンプルであるが旨みがある。
漬け原材料に塩だけでなく適宜酒とみりんをいれることで、臭みをなくし旨味を増す効果があるのだ。
魚焼きグリルで調理するのが面倒なときは、アルミホイルを敷いたオーブントースターで調理をすると後片付けも便利だ。
タチウオのモツ煮
タチウオの内臓は、多くの場合捨てられているかと思う。
先日の釣行でも、隣りのベテラン釣り師がポイント移動の際にはらわたをすべて出しカモメにやっていた。
それはそれでありだと思う。
他人の釣りは他人の自由だ。
家庭で余計な生ごみを出すくらいであれば、内臓をカモメにくれてやり命を巡らせる。合理である。
が、この内臓もちょいと料理すれば酒の肴としても抜群にうまいので紹介したいと思う。
まず、タチウオの下処理をする際に以下の部位をとりのぞいて流水で洗いつつ、日本酒につけておこう。
- 卵巣
- 精巣(白子)
- 肝臓
- 胃袋
※胃袋はハサミで半分に裂き、中身の胃粘液や消化物などをきれいに洗い流しておく
次に、煮汁。
そこのアナタ、落ち着いてくれ。水はいらない。
煮付けというものは調味料だけで作るのがポイントなのだ。
- 砂糖(きび砂糖を使うとコクが増す)
- 本醸造醤油
- 本みりん(みりん風調味料ではなく)
- 日本酒(料理酒は余計な混ぜ物があるので値段が気になる人は清酒がいいだろう)
- ショウガスライス(皮はむかなくて結構)
- 青唐辛子(乾燥した赤トウガラシでも結構)
これらをよく混ぜ合わせておく。
次に、火を入れるまえにタチウオの内臓をすべて投入し、最初はフタをせず強火で一気に加熱する。
この工程でアルコールとともに内臓の臭みを一気に飛ばすという目的がある。
次に、全体的に火が通った段階でキッチンペーパーを表面にかぶせて鍋蓋をして弱火で数分火を入れる。
その後、火を止め放置。
しばらくしてからさらに盛り付けて食べてみよう。
これがタチウオのもつ煮。七味唐辛子がよく似合う。粉山椒も乙である。
卵はほくほくしてカレイの卵と似ていて、癖はない。
白子や肝臓にはコクがあり、胃袋はこりこりして煮込んだセンマイのようだ。
タチウオ汁
次にアラを使って味噌汁を作ってみよう。
アラを鍋にあけて、熱湯をかける。
この湯を捨てる。
この一連の工程でアラの臭みがとれる。
鍋に再度水を張りみりん・日本酒・昆布を投入し炊く。
今回の野菜は、しめじと玉ねぎと長ネギ。
昆布は沸騰した時点でとっておくき、野菜に火が通ったら火を止めて味噌をとき入れる。
この通り。
こうした魚をつかったアラ汁は本みりんが肝で、少量いれるだけで全体に調和がとれるようになる。
タチウオのタタキ
いわゆる『タタキ』という料理には、アジのタタキのように包丁で薬味とたたいたものと、カツオのタタキのように、刺身に薬味を乗せて柑橘果汁を含んだタレをかけるものの2種類ある。
タチウオも上記の両者どちらにしても旨いのだが、今回は後者のカツオのタタキ風をお送りする。
といっても、三枚におろしたタチウオの皮目をバーナーで炙りつつ、万能ねぎ、大葉、みょうがなどを刻んでのせ、そこにポン酢をかければいいだけだ。
お好みで柑橘類を絞ると風味がさらに引きたつ。
これを見た人は、「以前タチウオ料理大全で紹介した炙りタチウオ丼の具と一緒じゃね?」
というような疑問を持つかもしれないが、その通り。一緒である。どんとこい。
料理というものは、このように工程などはほぼ一緒だが見せ方を変えると1品増えるようなものでもあるのだよ。
ふはははは。
タチウオのフライ
タチウオは何をしても旨いと言われているが、三枚におろした身をフライにするとものすごく旨い。
もう熱烈にうまい。
骨もないもんだから、何の躊躇もなくもぐもぐ食べてしまう恐ろしい一品ができあがる。
フライの工程は、三枚におろしたタチウオに小麦粉をまぶし、溶き卵もしくは卵白につけて・・・
うわ、卵がないぞ。
これが料理によくあるパターンである。いわゆる『卵買うの忘れた現象』である。
こうしたときにあなただったらどうするだろう?
優れた料理人は、材料不足をものともしないといわれている。
ほう、そうか。
ははーん。そういうことか。
わたしは5秒ほど考え、やがて冷蔵庫内で卵が使われた製品を探し、マヨネーズにたどり着いたのだ。
なんという機転。なんというクレバーさ。
このマヨネーズと牛乳をまぜて、さきほどのタチウオをくぐらせ、次にパン粉をまぶして揚げる・・・
みてほしい。
部分的にパン粉のりに課題があるものの、立派なタチウオのフライができあがった。
ということで、「卵がなくてもフライはなんとかなる」
みなさんのメモ帳にぜひ加えておいてほしいと思う。
タチウオカレー
いろいろな料理にできるタチウオであるが、正直余ってしまうということもあると思う。
そんなときは、カレーに入れるとたくさん消費することもできる。
鍋に植物油をいれて、野菜と一緒にフィレにしたタチウオを入れて炒めて、煮込むだけ。
できあがりの頃にはタチウオの身がほろほろとルーに溶け込み、シーフードカレーになる。
タチウオでなくてもよいが、魚ばかりたべていてすこし趣向を変えたいときはカレーにしてもよいかもしれない。