アマダイを釣るときにあらわれる外道ならぬ『貴殿たち』の一つにアカボラという魚がいる。
相模湾ではアカボラと呼ばれるが、正式名称はヒメコダイといって、アマダイの生息する水深100m前後の砂泥底で釣れてくる。
サイズが20㎝ぐらいということもあり、食べたことがない人は、あー外道だよーと、海に返すものの水圧の関係上浮いてしまい、結果カモメのエサになっていることが多い。
今回いいサイズのアカボラを2尾釣ったので、ほくほく持って帰ってきた。
アカボラの下処理
アカボラという魚は色鮮やかだ。
同じようにアマダイを釣っていてかかるトラギス類よりは身が厚い。
こちらは、おめめパッチリな個体。かわいい。
こちらはデメタン系のアカボラたん。
水圧の関係で眼玉が膨張するのはわかるが、水深でこのような差がでるのだろうか、はたまた、巻き上げのスピードなのか・・・不明だ。
頭と内臓をおとして鱗をはいでおこう。
アカボラには目立った棘がないので、とてもさばきやすい。
背開きにして、ひっくりかえして中骨をきりとり、松葉おろしにする。
よし、次は天ぷら屋の茶番だ。
アカボラの天ぷらと素揚げをつくる
・・・
ふぉあんふぉあんふぉあん
天婦羅屋の店主「らっしゃい!お客さん、なに揚げましょう?」
客「うーん。そうだねー天ぷらはアマダイ、タチウオ、それと・・・このアカボラってのはなに?」
店主「お客さん、アカボラってのはねー、知る人ぞ知る天ぷらネタなんですよ。たぶん東京でもこのアカボラを仕入れている店はそうだなー3つとないと思いますよ。白身で実に旨い。トラギスとやや似ていますな。クセのない白身でトラギスよりやや身が厚い。あ、トラギスは知ってます?」
客「あー、トラギスね。夏に三浦半島のボート釣りで釣ったけど逃がしたなー。シロギスと比べるとなんだか色鮮やかでね。」
店主「うわー、もったいない。トラギスも天ぷらにすると、さっくりふっくら仕上がって絶品なんですよ」
客「えー、そうだったの。フツーの『貴殿』としてあつかっちゃったよー」
店主「きゃ、『貴殿』って、あなた、ORETSURIをみてるんですか!」
客「はははは。いやー、釣りをやる初心者だったらORETSURIをみたほうがいいって、うちの亡くなった祖父がいってましてね。はははは。」
店主「ふはははは。そいつは話がはえーや。お客さんきょうは俺のおごりだ!ちょっと、おかーさん、酒持ってきてじゃんじゃん!」
ふぉあんふぉあんふぉあん
・・・・
なげーな芝居が。
むしろORETSURIとかしらねーだろw
ということで、今回の天ぷらネタは、アマダイ釣りの貴殿(外道)としてよく釣れてくる、アカボラ・ムシガレイ。それと小型のアマダイ。
そしてタチウオ。
それぞれ、冷蔵庫で熟成させてある。
タチウオはかるく塩をふってあって水分がすこし抜いてある。
いやはや、昨今は天ぷら粉というものが登場して、適当につくってもサクッと揚がるので便利ですな。実に。
アカボラを揚げる!
まず、油が汚れないように、素揚げからいこうか。
ムシガレイと、アカボラの中骨。
最初低温でじーっくり火を通し、一旦外にだして、油を高温にしてからカラっと仕上げよう。
こんな風にカラっとね。
小型のムシガレイもこうしてみるとおつまみとしてじつによさげ。
続いて、タチウオ。
身が薄いので、短時間で火が通る。
天ぷら全般のことだけど、火の通しすぎにならないように、浮き上がったらさっと取り出すぐらいがいいと思う。
美味しんぼで、海原雄山が、「士郎、貴様このなかで優秀だとおもう天ぷら職人を選んでみろ!」というシーンがあるが、天ぷらは嗅覚・聴覚などなどを屈指し、ベストな揚げタイミングを見切るのが重要なようだ。
それと、池波正太郎的にいえば、天ぷらというのは、目の前に出されたものをひたすら素早くたべるというのがうまいらしい。
たしかに梅雨時に天ぷらをつくると、揚げたそばから空気中の湿気を吸い込んで鮮度がさがっていくイメージがある。
が、素人は素人で、それなりに旨いものを作って満足しておけばよいと思う。
アカボラの天ぷらはどれでしょう?
と、いうことでできあがった天ぷら。
天つゆ+大根おろしという取り合わせは、旨いのだが、アカボラをピンクソルト+酢橘で食べてみると・・・
・・・
・・・
ぐはっ。
う、
まいー
絶品である。
まさに文中の茶番天ぷら屋の店主がいっていたようにトラギスの身が厚くなった塩梅だなと。
さっくりふんわりとして、塩が甘みを引き立てつつ、酢橘が適宜油の切れをよくしてくれ、鼻にぬける香りが実にいい。
アカボラことヒメコダイ。
この魚は『#貴殿でしたか』扱いしてはいけない魚なのかもしれない。
ではでは。