前回の記事でサクにして2日間冷蔵庫で寝かしたコショウダイを早速料理してみることにします。
コショウダイの刺身
どれどれ、塩と日本酒をぬって寝かせたことによって少し水分もでてしっかり身がしていますね。ちょっとまわりがギザギザになっているのですが、これはコショウダイのヒレの部分の骨格が固めだったからですからね(`・ω・´)
このサクをフィレナイフできりわけていきます。
コリっとした食感で、旨味は十分にあるけれどもイシダイほどではないという印象です。季節や熟成時間のせいもあるのかなと。とはいえ実に上品な白身です。カルパッチョにしてもよくあうと思いますよ。
コショウダイの潮汁
魚のアラをつかって汁物をつくるときには、
①味噌をといてアラ汁
②塩で味をととのえて潮汁
③パクチーの根と煮込み、ナンプラーとレモン汁を入れてタイ風のスープ
④いろんな魚介をいれてブイヤベース
というような選択肢がある気がしますが、今回はシンプルに塩味で潮汁にしてみます。
まず、耐熱ガラスボールにコショウダイのアラをいれ、熱湯をかけます。ここで残った血合いと体表のヌルを取り除きます。
水から真昆布を入れ、沸騰するタイミングで取り出します。以前紹介したことがありますが、北大路魯山人の文章をとりまとめた『料理王国』のなかで以下のように語っています。
昆布のだしを取るには、まず昆布を水でぬらしただけで一、二分ほど間をおき、表面がほとびた感じが出た時、水道の水でジャーッとやらずに、トロトロと出るくらいに昆布に受けながら、指先で器用にいたわって、だましだまし表面の砂やゴミを落とし、その昆布を熱湯の中へサッと通す。それでいいのだ。これではだしが出たかどうか、心配なさるかも知れない。出たか出ないかはちょっと汁を吸ってみれば、無色透明でも、うま味が出ているのがわかる。量はどのくらい入れるかは実習すれば、すぐにわかる。このだしはたいのうしおなどの時はぜひなくてはならない。
出典:青空文庫
今回は水から煮だしたものの、時間がある方は水に昆布を30分ほどつけてふやけたものを火にかけて沸騰手前で取り出す手法も一般的です。魯山人の言及している昆布だしの取り方で今度は、潮汁をつくってみようかなと。
長ネギの青い部分とショウガと日本酒・みりん・塩少々をいれて火をかけます。長ネギやショウガは風味が汁にでるので、あまりその風味を好まない場合、魚の鮮度が高かったり、くさみが弱い魚の場合は、なくてもよいかと。コショウダイの場合、これが釣りものでもないという点もあるかもしれませんが、やや全体ににおいがありますので、このような処置をしています。まー自分の好みで料理するのがよいでしょう。
強火にすると濁りがでるので弱火でじっくり炊いて、塩で味の濃さを調整し、スープとアラを盛り付け、千切り生姜と小ねぎを盛り付けます。千切り生姜とネギはもう少し細かく切ったほうが見た目がいいですね。
味は、しっかりとした旨味が汁に溶けだしている上品な味です。真鯛の潮汁よりは旨味が劣る気がしないでもないですが、コショウダイもかなり旨いものです。
そういえば、真鯛等の潮汁にごま油をたらして、レモンをしぼるとさっぱりして風味がかわってうまいですよ。ぜひ、こんどやってみてください。
皮の酢味噌和え
刺身にする際にひいた皮がしっかりしていて、コラーゲン感があったためこれを湯引きしてみます。
湯引いたあとに、1cm間隔で切り分け、
先につくっておいた酢味噌を合わせ、ゆずの皮と小葱をちらして出来上がり。(やはりネギは細かくカットしたほうが上品です。芽ネギなどぴったりでしょうね)
酢味噌=砂糖+みりん+味噌+酢
真鯛の皮の酢味噌和えに似てますね。実に乙な味です。これも以前書いたかもしれませんが、織田作之助の『夫婦善哉』に、勝手知った通だけが知るうまいもんとして、鯛の皮の酢味噌和えがでてきます。
柳吉はうまい物に掛けると眼がなくて、「うまいもん屋」へしばしば蝶子を連れて行った。彼にいわせると、北にはうまいもんを食わせる店がなく、うまいもんは何といっても南に限るそうで、それも一流の店は駄目や、汚いことを言うようだが銭を捨てるだけの話、本真にうまいもん食いたかったら、「一ぺん俺の後へ随いて……」行くと、無論一流の店へははいらず、よくて高津の湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼、粕饅頭から、戎橋筋そごう横「しる市」のどじょう汁と皮鯨汁、道頓堀相合橋東詰「出雲屋」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭」の関東煮、千日前常盤座横「寿司捨」の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌、その向い「だるまや」のかやく飯と粕じるなどで、いずれも銭のかからぬいわば下手もの料理ばかりであった。芸者を連れて行くべき店の構えでもなかったから、はじめは蝶子も択りによってこんな所へと思ったが、「ど、ど、ど、どや、うまいやろが、こ、こ、こ、こんなうまいもんどこイ行ったかて食べられへんぜ」という講釈を聞きながら食うと、なるほどうまかった。
コショウダイのポワレ
フランス料理では、魚のフィレに下味と小麦粉をまぶして両面をこんがり焼いてレモン汁をかけたものをムニエル。おなじくフィレに小麦粉をまぶさず両面を焼く技法をポワレといいます(もともとポワレは肉料理だった模様)
ということでまずは、フィレの両面に白コショウ+マジックソルトで下味をつけておきます。
フライパンにオリーブオイルを敷き、スライスしたにんにくを炒めて、コショウダイのフィレを皮目からしっかり焼きます。
焦げ目がしっかりついた頃合いを見計らって、裏返し。皮が熱で縮むので、隠し包丁をいれておいてもよいかもしれませんね。
仕上げに安白ワインを入れつつ、蒸し焼きに。
その後、ソースにバターを溶かしいれ、
レモンがなかったので、ポッカレモンで味を調え
お皿にもったコショウダイにソースをかけます。
できあがり。パセリとガーリックをそえます。
身は、スズキ、タラ、マトウダイと同等の触感と旨味。皮が実に旨く、くさみはまったく感じられず、上品なコクがあります。今回、コショウダイを料理したなかでは一番相性がよかったのはポワレかなと。
まとめ
『鯛』として売られていたコショウダイ。スーパーでならんでいるのを見たことがある方のほうがすくないと思いますが、釣りものとしては、真鯛や五目釣りでは比較的よく釣られている魚のようです。
場所によっては、堤防釣りでも釣れている模様で、東京、神奈川界隈では、川崎の東扇島西公園でしばしば釣られているようですよ。食べてとてもおいしい魚なのでぜひみなさんも試してみてください。
ではでは。