『江戸前』で釣れる魚でも最上級に旨い魚。
それがアナゴですね。
煮ても・焼いても・揚げてもよしという万能さ。刺身も血液に毒がありながらも処理方法によって美味しく食べられるとのことで。
先日釣り上げた60弱のマアナゴ。
天ぷら屋などで出されるアナゴは30㎝強で、そのサイズが歯ざわりなども柔らかく単価もよいらしいのですが、釣りの場合は、このようにデカイアナゴが釣れたりします。
比較すると、やや筋を感じるところもありながらも旨いのですが、今回は煮穴子にしたうえでちらし寿司にしてみることに。
アナゴをさばく
こちらがまな板の上に乗せたアナゴ氏。
50cmを超えてくると家庭用のまな板だとさばきにくくなってきます。
頭部からみるとこのようなご尊顔。
鼻先に一対の出っ張りがあり、顎部分には点々となんらかの感覚器官のような模様(穴が開いています)
釣りでアナゴは光によるとされていながらも、夜行性の魚なので、聴力と嗅覚に重きがおかれているんじゃないかなと個人的にはおもっています。どうなんだろう。
胴。
太く、脂がのってやや金がかった褐色。
背開きに。
アナゴを調理する際ですが、胃腸の内容物がだいたいすさまじく臭いので、これが身につかないように刃を深くいれないようにしたほうがよいです。
背を開いたら、流水でしっかり洗い流して水気をとっておきましょう。
アナゴの胃袋の臭いはほんとくさいんですよ。
死んだ魚や蟹の肉なども貪欲に食べるからでしょうな。
さてお立合い。
こちらにあるのは横浜市はふれーゆ裏で釣り上げたアナゴの胃袋。
はてさて、このアナゴ、どんな餌を食べていたのか、
さあ、あてて見せてくだされい。
さあさあ。
そこの旦那、釣り師とみた!
どうだい、さあさあ
あててごらんなさい。
・・・
・・・
・・・
・・・
出てきたのは2種類の生き物。
上が海老系、下がカタクチイワシです。
カタクチイワシがふれーゆの岸壁際を回遊していたのをみたのですが、おそらく、これらが一定数息絶えて海底に沈むんでしょうね。
アナゴは生きたイワシを食べるというよりも、きっとそれらの死んだイワシを徘徊して食べるんだろうなと。
想像ですがね。
胃液でとけて種類の判断は難しいですが、このエビはテッポウエビの仲間なんでしょうね。
アナゴはエビやカニも食べるわけで、アルゼンチン赤海老あたりをぶつ切りにして餌にしてみるのも面白そうな。
ということでざっくり背開きにしたアナゴがこちら。
目打ちを離してから背びれなどをカットしたのでややいびつですね。
皮目に熱湯をかけると、ぬめりが白濁します。
これをスプーンで削ぎ取る。
バターナイフがつかいやすいです。
あとは料理するだけなんですが、下処理後、水気を抜きながら冷蔵庫で寝かせても料理しても大丈夫です。
やっつけで煮穴子を作る
煮穴子は職人技が光るところでして、素人はてへぺろってな感じで、そのあたりをやっつけでやってしまうわけです。
みりんをいれると身が硬くなり、みりんなしで酒を多めにしたりあとは砂糖の量をどうするか、水あめを使うかあたりが変化のポイントです。
煮穴子も、薄味で箸でさわっただけでとろけるように作るか、多少甘辛くして、しっかりとした身でつくるかでは工程が変わってくるんですよね。
頭部は2つに割って、エラをとり、2cm程度にハサミで切り分けた背骨と熱湯をかけて霜降り作業。
フライパンに煮汁をいれてあとはキッチンペーパーやアルミホイルで落し蓋をしつつ弱火で炊くという単純なつくりかたです。
今回は中骨や頭は焼かないで、霜降り後そのまま煮汁に投下。
<煮汁の材料>
- きび砂糖
- 水あめ(無くても可)
- 東肥赤酒(無くても可)
- 本みりん
- 日本酒
- 醤油
※やわらかく仕上げるためにはみりんをつかわない
素人は、これらを混ぜておくと楽です。分量は、甘じょっぱくなっていればOKということで。
弱火で炊く。
穴子は皮目で身がそりっかえるんですが、最初はお玉などで軽くおさえながら加熱するとよいかなと。
かれこれ30分程度炊きました。
煮汁もほどよく絡んだ煮穴子ができあがってますね。
煮汁が煮詰められたタイプなので、味はウナギのかば焼きに近いかなと。
今回はちらし寿司の具なので、甘辛く仕上げています。
握りや煮穴子のまま食べるのであれば、水分量を増やして、もうすこし薄口でつくったほうがくどくなくてよいですよ。
これをバットにのせて、
背側をバーナーで炙る。
でもって、バーニング完了。
甘辛いアナゴの香りがたまりませんな。
炙り煮穴子ちらし寿司を仕上げる
ということで仕上げです。
炊き立ての米に、すし酢をまぶしておく。
市販のすし酢でよいと思います。
具は、
- みょうが(千切り)
- きぬさや(さっと湯通し)
- 大葉
- かんぴょう甘辛煮(市販)
- しいたけ甘辛煮(市販)
- 金糸玉子(市販)
- くらま山椒(市販)
- 万能ねぎ
- かいわれ大根
- ノリ
という構成。
煮物系は市販品を使うとお手軽です。
このなかだと山椒の佃煮をつかうと味が引き立つので入れるとよいですよ。
アナゴの旨みが引き締まり、飽きがこなくなり、食欲も刺激されてバクバク食べられます。
具材を一通り盛り付けた図。
ここに、アナゴの煮汁をスプーン1杯、2杯程度を回しかけて、全体を切るように混ぜ合わせる・・・
ということで出来上がり。
ちらし寿司には吸い物だろ、というのでつくるのが面倒だと思った人は、もう永谷園のお吸い物1拓です。
これこそ時短グルメ。
あまった貝割れ大根あたりをかざれば、あらおしゃれじゃないですか。
煮穴子をつくるのに20分~40分程度(さばいてあれば)かかりますが、それ以外はメシを炊いて混ぜたり、ティファールで湯をわかしてそそぐだけという。
いろいろ凝るのもよいですが、手抜きを適度にいれると自炊はつかれず続けられますよ。
おまけ:アナゴの骨と頭の佃煮
アナゴやウナギのタレをつくるときに、頭や骨から出汁をとって捨てるんですが、これはこれでうまいんですよね。
骨も長く煮詰めていれば噛んで食べられ、噛むほどに旨みがしみでるというか。
曹操の『鶏肋』のエピソードをしっている人はアレを想像してほしいんですが、まー身はないが捨てるに惜しいのがアナゴの骨と頭の佃煮です。
煮汁ごと冷蔵庫に冷やしておき、翌朝、山椒でもふってみるとこれはこれで1品に。
コラーゲン物質がでているので、煮汁は煮凝り状態になっています。
これをですね、炊き立ての新米に一つまみ乗せると、じゅわり、と溶ける。
そのメシを、鼻息あらく、はほはほいいながら空気と一緒に吸い込む。
ああ、日本人でよかった。
そういった味です。
ではでは。