春から夏にかけて水温が上がりはじめると急に多くなるクラゲ。特に「アカクラゲ」は釣り場に大量発生しやすい種類。
潮目に大量に浮かんでいたり、潮にのって道糸に集団でぶつかってきたりと、釣り人にとってはとても厄介な存在。
アカクラゲの触手には毒があり、適切な処理をしないと刺されて痛い目にあったり、肝心の魚が釣れなくなってしまいます。
本記事では、釣り場におけるアカクラゲの生態と対策について紹介します。
アカクラゲとは
色と形状
落下傘のように波間を漂うアカクラゲ。特に船釣りで厄介
アカクラゲは、北海道以南のほぼ日本全国に分布しています。
名前の由来はその色合い。
傘部分に赤褐色のラインが16本あり、乳白色の「ミズクラゲ」と判別がつきます。
比較的触手が長く、モズクのようにみえる触手が最長2m以上にも伸びています。
こちらはミズクラゲ。こちらも大量繁殖する。アカクラゲより目立つのは遅め@金沢漁港
刺胞毒の存在
アカクラゲの触手には肉眼では見えない毒針があります。
これが皮膚や粘膜につくと刺し、チクチクやピリピリとした痛みが出ます。
特に腕や股の内側や顔・首など「皮膚が薄い」ところに付着すると激しく痛むので注意が必要です。
知らず知らず手指についていて、顔・眼・股間(小用)を触って激痛が走り、釣りにならないかもしれません。
別名ハクションクラゲ
また、刺胞毒は乾燥しても残ります。
アカクラゲの触手が乾燥すると粉状になるのですが、これが空中に舞い、吸い込むとクシャミがとまらなくなることも。
このことから、アカクラゲは別名「ハクションクラゲ」と呼ばれることも。
アカクラゲの発生時期は4月~5月
水中でのアカクラゲの様子。毒のある触手がひたすら長い
東京湾では、4月~5月にアカクラゲの大量繁殖が見られます。
水温の関係から北にいくほど、この発生時期は後ろ倒しになります。
年によって差はありますが、ひどいときは釣り場に到着した後、終始海面がアカクラゲで多いつくされるということも。
▼アカクラゲは水族館では人気。
釣りをしているときの注意
メバル釣りの針についたアカクラゲの触手。モズクのようにみえる。
子供と女性は特に注意
前述の通り、アカクラゲの触手には毒があり、皮膚にまとわりついただけで刺されチクチクと痛みます。
特にアカクラゲの大量発生時期はゴールデンウィークシーズンと重なります。
この頃は、子供や女性の釣り人、釣り慣れていない釣り人も増える時期。
大人の男性と比べ、子供や女性の皮膚は薄く、触手が付着するとかなり腫れることもあります。
できるかぎり素手で触れないように注意しましょう。
仕掛けにアカクラゲの触手がつくと魚が食わなくなる
LTアジの付けエサにアカクラゲの触手がつくとアタリが遠のく
4月から5月の東京湾の釣り物といえば、アジ・メバル・マゴチ・シロギス・イシモチなどがいます。
これらの魚はアカクラゲの触手が仕掛けについてしまうと極端に食いが落ちます。
魚も視覚などで、クラゲを避けていることが想像されます。
アカクラゲの大量繁殖のピーク時には、1投ごとにこのアカクラゲの触手がついてくるので、都度取り除きましょう。
そのため、面倒ではありますが、触手がついたままの仕掛けを放置するということは少なくなります。
一方、4月~5月のアカクラゲの大量繁殖ピーク前後においてもアカクラゲは海中にいるため、たまに仕掛けに触手が絡むということもあるわけです。
こういった場合も、仕掛けを一定間隔で確認しないと、知らず知らずのうちにアカクラゲの触手が絡み、魚から敬遠されていたということになりかねません。
長時間の待ちが必要な釣り物以外は、5分に1回アタリがなくても仕掛けを確認するなどすると、機会損失をさけることができます。
アカクラゲの触手対策
タオル
アカクラゲの触手が仕掛けについた場合、濡れタオルや雑巾をつかってとってやると皮膚につくことが少なくなり、刺される危険性も少なくなります。
ただしクラゲが布の繊維にこびりつき取りにくいため、使い捨てにするか、釣行後にゴム手袋をつかって触手を取り除いてから洗濯する必要があります。
ほかの衣類などと一緒に洗うことは控えましょう。
ほかに針回りのクラゲを落としているときに繊維が針にかかってしまい手返しが悪くなることもしばしばです。
オススメとしては吸水性の高い「セームタオル」があります。。
なめらかな素材のためクラゲの触手が絡みづらいですし、手指や釣り座の水分も一緒に吸い取ることができるのでとても便利です。
大きなセームタオルをハンカチ状にハサミでカットして使うと経済的です。
スポンジ
食器洗い用のスポンジや、激落ちくんなどのメラミンスポンジ等を3cm四方程度のキューブ状にして持ち込むのも便利です。
スポンジがアカクラゲの触手に絡みつき、素手より安全に取り去ることができます。
また使い捨てにもしやすいためオススメの方法です。
船上では風に飛ばされやすいため、水を含ませて船べりにおいておくとよいでしょう。
取り除いたアカクラゲは海水で流す
仕掛け等に絡んだアカクラゲの触手は、足元の水汲みバケツなどで洗ってながしておきましょう。
船べり等になでつけておくと、知らない間に皮膚についてしまう可能性があります。
また乾燥した触手にも毒があり、空気を舞うとクシャミの原因にもなります。
できるだけ浅場の釣りをする
アカクラゲは水面だけでなく水中にも漂っています。
そのため水深が深くなると仕掛けの出し入れで遭遇するクラゲの触手の数が増えてしまうのです。
マゴチ、シロギス、アジなどは比較的浅場でも釣れる魚ですので、アカクラゲが異常繁殖しているシーズンは、できるかぎり浅場を狙って釣るとよいでしょう。
遊漁船では船長の判断でアカクラゲが多く漂っている海域を避けてくれるはずです。
それでもかかってくるのがアカクラゲ。被害をゼロにすることはできません。
マゴチ釣りの餌「サイマキ」に複雑に絡んだらあきらめたほうがよいかも
4月~6月はマゴチもよく釣れるシーズンです。
この時期のマゴチは、餌としてサイマキ(クルマエビの幼体)を使います。
このサイマキ餌にもアカクラゲの触手がよく絡むのですが、エビは角をはじめ形状が複雑なため、触手を全部取り除くのにかなりの時間が必要です。
サイマキの形状は尖った部分が多いためアカクラゲの触手が複雑に絡みやすい
その間にサイマキは抵抗して弱りますし、なにより釣りをする時間も減ってしまうので、あまりにひどい場合は餌を新しいものにつけなおしたほうがよいでしょう。
特にアタリが頻発しているポイントではお金を惜しむよりは、チャンスを惜しんだほうがよさそうです。
アカクラゲの触手をとるときにやってはいけないこと
これは風が強いときの船釣りでの話なのですが、自分より風下に人がいるときには注意が必要です。
船べりで仕掛けについたアカクラゲをつまんで放ると、風にあおられ風下の釣り人に付着することがあります。
このとき顔などにつくとトラブルになるので注意が必要です。
風が強いときなどは足元のバケツの水をつかってアカクラゲを落とすなどの工夫をするとよいでしょう。
雨の日にアカクラゲを触った後は要注意
特に6月7月あたりに釣行する際の注意点です。
雨の日に釣行することも多いと思うのですが、アカクラゲを仕掛けから外したときに手指に触手が付着したままになっていることがあります。
そんなときに、雨で顔が濡れてかゆくなったりして、それを何の気なしに掻いてしまうと、大変なことになります。
筆者は雨の日に鼻の下が痒くなって指で掻いたことがあります。
そのときにアカクラゲの触手がついていたようで、チクチクピリピリしはじめ、やがてクシャミと鼻水が止まらなくなりました。
1、2時間たつとよくなったのですが、油断は禁物です。
アカクラゲがいるときは顔は触らない。これが正解です。
触手も洗い流したつもりが、わずかな切れ端が残っていたりします。
刺されたあとに腫れがひどい場合
子供が刺された場合や、日焼け等で荒れている肌などは触手による炎症がひどくなりがちです。
また目などに触手が入った場合なども激痛が走るようになります。
こうした場合は、躊躇せず最寄りの皮膚科や眼科に通院しましょう。
釣行後のタックルはきれいに洗浄しよう
「アカクラゲがたくさんいたなー」という日の釣行後は、釣り具のメンテナンスをいつも以上に行いましょう。
- ガイド
- 道糸
- ビシや天秤
- ルアー
これらの釣り具類には特にアカクラゲが絡みやすいと言えます。
道糸については、使用した分を取り出し清掃することをオススメします。
▼ラインの清掃は第一精工の高速リサイクラーを使い、道糸をリールから引き出しながら、濡れ布巾などで行うと便利です。