台風のせいで砂が舞い上がって海底がまったく見えないで候
今回は真夜中にたも網をつかって「タイワンガザミ」と「ノコギリガザミ」捕りにいった話。
ガザミ類などの蟹がよくとれる季節になると、夜間の干潮時間を気にしはじめます。
カニ網のような道具で捕獲するときは、ある程度水深があっても対応できるんですが、たも網やトング・素手で蟹をみながら捕獲する際は、干潮かつ波がたっていないほうがよいんです。
この日は台風明けで、SNSをみるかぎりは意外と凪っていたということもあり夜のド干潮時間をねらって出かけてみました。
が、現地に到着してみると波けっこうあるよねー。
海中が砂濁りでいくらタイワンガザミが派手だからといって、見えるわけないよねーという状況。
かろうじて発見できる生物は波間で不規則に移動するトウゴロウイワシのみ。
これは移動だなーとおもって河口にいってみたのです。
河口ならば、波の影響も少ないだろうなと。
それと、前年の秋にノコギリガザミを発見した場所があったので、その場所のチェックをしようかなと。
河口(汽水域)の浅場には蟹だけでなくマゴチ類も
ということで河口。
干潮ということもあり、岸際は浅く膝下ぐらいの水深。川はおもわぬエグレがあって無理をして流心にすすんでいくと、死んでしまうので注意です。
特にウェーダーをはいてフル装備になってシーバスを狙ったりしていると、強気になってしまいグングン前進してしまうんですよね。そうなると、知らず知らずのうちに足元のブレイクを踏み外して、転倒。ウェーダーに水が入ってしまい身動きが取れなくなり、流され、沖へ。そして、ライフジャケットの有無にかかわらず死亡ということになってしまいます。怖い。
バイクもそうなのですが、峠で膝をするような全身フル装備をすると、意外といけちゃう気がして気が緩みがちです。いずれにしても夜は危険度があがるので、気をつけたいところ。
あと、気をつけるといえばこやつですよ。
闇に浮かぶ15キロぐらいのアカエイ。群れで移動していた。まだまだ大きいのも
お分かりになるだろうか。
ジオンの戦術兵器「アカエイ」である。
このときのアカエイは5,6体の10キロ強サイズが、膝下水深あたりまで巡回警備をしていて、びっくり。
きづいたら足元にアカエイの群れが通り過ぎる戦慄の状況。
とはいえ、アカエイも人間が好きとか恐れないとかではなく、人間がこわいんです。なので、バシャバシャすり足で歩いていれば、むこうから避けてくれます。
クマと一緒ですね。
危ないのは、こういった巡回中の個体ではなくて、砂に埋没している伏兵。
「伏兵」ということばがこれほどまでに合うシチュエーションもないだろうなという状態なんですが、砂からアカエイが頭部の一部分だけだしているようなときがあるんです。
こうした個体は、食餌をしているとかではなく、ただただじっと休んでいるんですよ。
なので近づいてもそのままだったりする。
こういった状態に気がつかず進軍すると、「ドラゴンテール」の一撃を食らって鈍痛。119番まったなしということになってしまいます。
サーフや河口でウェーディングしていてアカエイにやられるのはたぶんこの伏兵個体なんだと思います。
シーバスのボイルを狙ったりして、興奮して進むと、足元の確認がどうしてもおろそかになってしまいますね。
ここからは、この日であった生き物の紹介をしていきます。
まず、子ボラ。
「ハク」とか「イナッコ」とよばれたりしますが、河口にかなり生息しています。汽水域のウナギはこの子ボラをかなり食べている模様。
これも子ボラをつかまえたいというよりも、もしかして、違う魚かも。もしくは、子ボラのなかに違うさかなが混じっているかもみたいな期待をこめてのたも網の一閃なわけです。
一閃。
大漁。
えーっと、種類は・・・
あ、全部ボラっすね。
一応もうちょっとチェックしてみましょう。
・・・
あ、全部ボラっすね。
このボラが泳がせ釣りでヒラメとかマゴチ狙いにもしつかえるのであればこの上ない餌なんですが、どうなんでしょうね。今度手漕ぎボートの釣りでボラっ子を泳がせてみようかな。
次にであったのは、モクズガニ。
河口にながれこむ水路は淡水なわけですが、こういった水路をつうじてモクズガニは海と山を行き来してるんですよ。なんらかの生活排水なども流れ込んだりしているんだと思うんですが、幾代も繰り返されてきた営みなんでしょう。
モクズガニも休んでいる個体は意外と簡単につかまえられるので、上から押さえるようにしてつかめばOKです。大型のオスに挟まれると泣くので注意。
メスのモクズガニ。晩秋から初冬あたりに河口に産卵にきたものは、そのまま死んでしまうかとおもったらまた山にもどるような個体もいるのかもしれませんね。年中河口に居ついている個体もいるのかも。
モクズガニはカニ類のなかでもかなり機動力が高いんですが、このように河口の岸壁(垂直)にはりついて移動していたり。脚の先が細かく護岸に食い込む仕様なんでしょう。
次に、ヨウジウオ。
「ヨウジウオ」はタツノオトシゴが細長くなったような風貌
トゲウオ科の魚なんですが、通常はアマモ場にいる模様。
このあたりにアマモ場があるのかよくわからんのですが、遊泳力が低そうなので、台風の波風でながされて河口に打ち寄せられてきたんだろうなー。乙。
細長い。体表が硬い棘状
顔つきは、きょとんとしていて、そーキュート。
次は、ガザミ類の幼体?と思われる個体。
砂地をはっていますね。
さくっと手づかみ。
種類はわからんのですが、イシガニっぽい色合いではありますね。一番後ろ脚がオール状。
つづいて、芝エビっぽい個体。
わかるだろうか。
わかんねーだろうなー。
こちら網ですくって手にのせて写真をとろうとしたら、速攻でぴょんと逃げてさようならでした。出会いがあれば別れがある。そういったことを素直に受け入れられるようになったら人間は大人になるのかもしれません。
この芝エビっぽい個体は砂地にいて、複数個体いたものの、ほかのエビ類とはちがってそれほど数は多くない模様。単体で天ぷら等にするにはしのびないサイズながらも、かき揚げにはよいかも。
つづいて、各種コチ。
各種っていってもそんなに種類がいないので、マゴチとイネゴチです。
まずマゴチから。といっても幼魚です。
30cmないような個体。
よくマゴチ釣りをしていると、幼魚が見当たらないということに気づくんですが、あれってこういう河口とか湾内のごく浅場にいるのかもしれないですね。
では、一応すくってみましょう。
この通り。
海底に生息している魚って、マゴチも舌平目もそうですが、意外と近くによっても微動だにしないんです。
あんまり目がよくないというのもありそうながらも、自分としては完全に隠れているつもりなんでしょうね。だから網が鼻先にきても動かないという。で、ゆっくり砂ごとすくいあげると簡単につかまえられます。
今回は小さいのでリリース。
次にイネゴチ。
海底をみていると、周囲からはっきりうきがある魚体が見えます。
・・・
こちらもゆっくりたも網を近づけて砂ごとすくう。
この時点ではノーマルマゴチの幼魚だろうなーとおもっていたら・・・
この通り、マゴチではない風貌。
ワニゴチかな?
とおもったら、点々があるのでイネゴチなんでしょうね。
こちらもリリース。
イネゴチとかワニゴチはマゴチより劣ったものとして取り扱われがちなんですが、風貌が尖っていて個人的には好きな魚です。
釣りだと、泳がせ釣りやルアーで釣れるけどもマゴチのほうが個体数が多いような気がします。
次にイシガニ。
こちらは、正常位で交尾中の様子だったので、静観するにとどめておきました。そんなに大きくない個体でも交尾はするんだなーという印象。人間でいえば高校生ぐらいなんじゃないでしょうか。よう知らんけど。
続いて、ウロハゼ。
ウロハゼも夜間は住処である岩場や岸壁の割れ目を抜け出て餌をもとめて徘徊してます。といっても、底でじっとして餌が通りかかるのを待っているようなんですけどね。
これがマハゼとちがって、夏場でもかなりでかいサイズがいるのでテンションがあがる魚でもあります。
25cmぐらいまで成長するようで。
お分かりになるだろうか。
岸壁の端によりそうようにして小型のマゴチみたいな棍棒状の魚がいるわけです。このウロハゼを網でとるときは、周囲に「ウロ」とよばれる洞穴状の地形がないかの確認が必要です。
ウロハゼ自体はボーっとしているものの、なんらかのショックでこちらに気づくと、その「ウロ」にすぐもぐってしまって出てこないのです。岩だったらどければよいんですが、岸壁の下に広がるエグレなどは入られたら終わり。
なので網でそういった「ウロ」への退避ルートを遮断しつつ追い詰めるという作戦展開が必要なのです。たも網も奥深いなー。
とはいえ、ある程度のたも網力があればこの通り。
ナイスサイズ。
22cmぐらいのウロハゼでした。こちらは活かしたまま持って帰って食べることに。
ノコギリガザミが北上してきている件につきまして
つづいて、障害物エリアに移って、ノコギリガザミを探すことに。もともと南のマングローブ林などに生息しているノコギリガザミ類も幼生が海流にながされて生息域が北に広がっているようなんですね。
もともと駿河湾・浜名湖あたりまではまとまってとれるようで。
これが相模湾の小田原以東や、東京湾だとだんだんと少なくなり、だんだんとレアキャラになってくるという。ねらってとるなら東京からだと伊豆半島あたりが固いのかもしれません。海流的にいって内房の館山あたりにもいそうな
このノコギリガザミは、完全な海にいるというよりも汽水域にいる種類。なので、河川の河口域を夜探っていればあなたもいつか出会うかもしれません。そんな暇があればなんですけどね。
ノコギリガザミ氏の印象として、かなり警戒心が強く、ライトで照らして次の瞬間には沖に逃げたり砂泥に埋伏するなど油断がならない生き物です。
この日歩いていたら・・・
ジオング?
けっこう立派なサイズの右爪が。
どういう理由でもげたのかは不明なんですが、まーこれがあればいるんです。
実際このポイントの河口ではハンドバッグぐらいのサイズのノコギリガザミをみたことがあって、手づかみをしようとしたら次の瞬間逃げられたという経験をしてましてね。あれは悔しかったなー。
この日もこぶし大のノコギリガザミが数体いたんですが、岸壁のエグレを砦にしていて近づいた瞬間、籠城策に入ったりして埒が明かなかったり。
そうこうして、もう帰ろうかなー、ヘッドライトの電力も落ちてきたので、おうちに帰ってカルピスソーダが飲みたいなーとおもっていたら、本流のブレイク付近に蟹影を確認。
イシガニ?
・・・
ちがうぞ、あの緑がかった甲羅に、イシガニよりさらに堅そうな装甲。
貴公、ノコギリガザミとお見受けした!
いざ御手合せ願いたし。
これでライトを照らしながら勝負すると逃げられるので、一旦ライトを消灯。
あとは、心眼をつかって先ほどノコギリガザミがいたあたりをたも網で切りつける!
これこそ、
無明剣(網)!
説明しよう。ロマサガ2、いや、熟練のたも網師のなかでも、とくにすぐれた素養があるものしか使えない超必殺技である。
・・・
・・・
き、きまったか?
お、おおお。
そんなに大きくないが確かにノコギリガザミだ
我が軍の勝利です。
いいねー、このカラフルさと堅牢さ。
イシガニを超える攻撃力を想起させる面構え。
ノコギリガザミとしては、小型なんですが、食べたことがないので今回は持ち帰ることに。
ノコギリガザミは淡水(水道水)でも生きている
ということで、帰宅。
真夏の夜にたも網をふるったあとのカルピスソーダ―のうまさといったらないね。ほんと。
ウロハゼは「洗い」にする予定で、仮で料理するまで水道水につけておくことに。
意外に2時間ぐらいは大丈夫だったような。
こちら蟹軍の面々。
モクズガニは両方メスだったんですが、片方両爪がない個体。
鷺やカワウとでも戦ったんでしょうかね。
こちらノコギリガザミ氏の様子。
▼イシガニやタイワンガザミやモクズガニと比較しても圧倒的な素早さと攻撃力を感じさせる動き。
かなり素早い動きで背後をとられないようにポジショニングしてきます。
こころなしか腕の可動域が他の蟹より広いようにみえて、甲羅をおさえようとしても対空防衛力も高く危うく挟まれそうになりましたよ。トングがあると便利。
このあと、水道水でモクズガニとノコギリガザミを泥抜きしてみたんですが、ノコギリガザミも問題なく水道水で泥抜きできるということがわかりました。
汽水域に生息していたり、マングローブ帯の陸地も移動したりすることから丈夫にできているのでしょう。
料理はまたほかの話で。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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