釣りと父の威厳の回復
海で釣れる魚というのはスーパーに並んでいるものも多く、調理して食卓にならべる方も多いだろう。家族持ちの男性であれば、
「どうだ俺が釣ったんだぞ。すごいだろ。えっへん。ママ、ビールちょうだい。ママー?」
と、ただでさえ加齢臭の増加とともに薄れゆく父としての威厳を保つことも多いと思う。
子供ちゃんたちも、スーパーでいつも買ってくる魚を、なんとあのぐーたらなとうちゃんがとってきたとあって、自然と父親へ羨望のまなざしをおくり、
「スッゲー!おいらも釣りいきたい。とうちゃん、つれていっておくれよ。」とかなんとかいって、
かわいい娘がいればここで、合いの手がはいり、
「パパ!あたいも!パパ!あたいもチュリいきたい!」みたいな流れになる。
ここで、父親としてはビジネス感覚を子供ちゃんたちにつけるために、「毎日、ママの言う事をきいたらね」とか、わがまま言わなかったらつれていってあげるとか、特に財政的な負荷なく子供ちゃんの徳育に成功する。
さて、釣ったばかりの魚は、きちんと締めて氷などで鮮度を保てばスーパーの野締めの魚とはまったく次元を隔てた味や食感であり、家族が、満面の笑みでほくほくしながら、
「うんまーい!」
とかなんとかいう姿をみるにつけ、釣り人冥利につき、父親は家長としての自己存在を再認識し、翌営業日からの仕事も頑張れるという。
釣りはレベルの高い趣味?
だいたい、釣りバカ日誌などで、釣り好き=DQN的な扱いが多いが、アレはアレであって、だいたい釣りがうまい人は物事の本質をとらえることが巧みであり、工夫好きでもあって、如何なる仕事もうまくこなす。
ここで代表的な例を3つ挙げる。
①マッキンゼーが世界のトップビジネスマン並びに富豪の趣味を調査した結果、ゴルフに対し、釣りを趣味にしているものがダブルスコアで勝っていたという結果もある。
②あのジョブズも広大なプライベートポンドでブラックバス釣りをしている際に、大好きなソニーのウォークマンでは音楽を全部運べないことに気づきiPodを着想したという。
③また、マイクロソフトのビルゲイツは、引退後のライフワークとして自閉症の子供向けの釣り教室を開講した。釣りが世界を救うという同氏のメッセージは言い得て妙である。
というのはすべてねつ造である。
まあ言いたいことは、つまり釣りは、創造力の源泉であり、家族をつなぐ絆なのであるということだ。
で、ここでもうそろそろ釣り場につくので話を収束させよう。
釣った魚をできるだけ食べきりたい。
これは徳ある釣り師の心が反映された想いかと思う。だが、切り身は食べて、あとは捨てる。これでは、それを見た子供ちゃんたちもそのような杜撰な生き方をしがちである。ラクなところだけやる。こんな生き方をして育つものはどんなに仕事ができても嫌われるわけである。
アラ汁とアラ汁セットについて
危ない、また脱線しかけそうになった。では、料理でのこった頭や内臓や骨等のアラをどうするのか。
正解はあら汁である。そして、あら汁セットである。
作り方は簡単だ。
さばいた魚の頭や骨の血合いをよく流水で取り除き、ジップロックにためていき、冷凍庫に入れておく。それをときがきたら、解凍する。湯にぶっ込んでも良い。
鍋に水をはり、昆布を入れ、煮立つ前にアラ汁セットとスライス生姜を二枚程度いれ、酒とみりんを少々投入。仕上げに火をとめ、味噌を溶かして、きざみネギを投入。ただこれだけ。
主食は飯粒が一等。ただ秋から冬場はそこに加ト吉冷凍うどんを投入したり、味噌に合わせてコチュジャンをあわせる。これが矢鱈にうまい。
そんなこんなで今朝、わたしも冷凍庫に寝かせていたあら汁セットを封印から解放し、鍋に投入した。
昨年冬から蓄積した季節の滋味が昆布の旨み、味噌の総合力と合わさり、台所になんともいえない風味が漂う。
干しカマス、ショウジンガニ、メバル、ギンポ、シロギス、メゴチ、サビハゼ、カワハギなどなど、
鍋から立ち上る湯気に潮の風味がよみがえる!
飲んでみたところ、ウマすぎる!
こんなかんたんに料亭の味を超えてしまうとは。恐るべし。またやらかしてしまった。
釣り人はかんたんに料亭の名誉をけがしてしまうからタチが悪い。
もう、他所では中途半端なあら汁を味わえない。
と、いうことで、みなさんも、魚のアラは捨てずにあら汁セットにして冷凍庫にとっておくとよい。内臓は胃袋や浮き袋は煮付けにするとよい。
ちなみに、妻子がある方は、魚を釣って、すべておくさんに任せると父親の威厳どころか、釣り禁止、家族内村八分という哀しい事態になるかもしれないので、さばくところや後片付けのフォローを忘れずに。
では、目の前に強力なワキガ選手が登場し目がしみるので、これくらいにしておく。
ではでは。