ライギョという魚がいる。
英名ではスネークヘッドといって『蛇の頭』という意味だ。
もともと食用のために持ち込まれたものが国内で広まっているが、繁殖力という点ではブラックバスやブルーギルと異なり爆発的に繁殖するというわけでもなく、各地にいるはいるが最近は少なくなっている気がする。
ライギョという存在を知った記憶
わたしのなかで、はじめてライギョを知った記憶は遠く九州に旅したときからはじまる。
祖父正臣が佐賀のうまれで、神崎市に2度ほどいったことがある。祖父はもともと神代家に生をうけて、平田家に養子にいったらしい。
そんなことで、佐賀の神代家の屋敷に遊びにいったのだ。
生垣に覆われた屋敷。庭にはデカイ錦鯉。庭に高く伸びた樹のてっぺんには何らかの鳥の巣があるという。近くを流れる城原川にはドンコがいたり。シジミをとりにいったり。とてものどかだった。
付近には溜池があって、そこに蓮の花が咲いていた。或る日、なにをおもったのか我が祖父は、服をぬいでその溜池にはいっていき、胸ぐらいまでつかって泳ぎ蓮の花のつぼみをつんできて戻ってきた。その蓮の花を祖母にプレゼントしたのだ。
よくある話で、晩年祖父と祖母はあまり口もきかなくなり、お互いの名前も呼ばなくなり、「おーい」「はーい」といったよくあるやりとりを繰り返していったのだけど、このときに、蓮の花を祖父がおくった姿を思い出すにつけ、微笑ましい。
で、雷魚の話だ。
このとき祖父がこんな話をしていた。
「こういった蓮などがしげった溜池にはライギョがいるんだよ。なんでライギョっていうかというと、雷みたいな模様だからたぶんライギョなんだろうな。カエルとかを食べるんだけど、歯が鋭くて噛まれるとなかなか離さない。ぶつ切りにして味噌汁にするとうまいんだよ。体に顎口虫というのがいてな、生で食べると、皮んところまででてきて動くんだよ」
人間の記憶はあいまいで、小学生になるかならないかのときの会話はいつだってぼんやりとりしている。噛んだら離さないという話については、すっぽんについての話が混じっていたかもしれず、記憶が定かではないが、子供ながらにライギョには寄生虫がいてかつ噛む力が強いということは覚えていた。
戦時中、祖父は南方戦線に従軍していたので、そのなかでライギョを現地調達して食べることもあったのだろう。
・・・
それからしばらくたって。
ライギョをはじめて釣った想い出
TD-S ZERO 懐かしのロッド。或る日釣り場でなくてラーメン屋で折れた。
ライギョをはじめて釣った想い出を思い返してみても、どれがはじめてだったのかというのはあまり思い出せない。
わかるのは、東京の野方から栃木の佐野に引っ越してから、渡良瀬遊水地や渡良瀬川に通ってから釣れはじめたということだ。
渡良瀬川の流入河川の流れ込みで、ラッキークラフトのハンプバックミノー金黒で。
今となっては、佐野のプレミアムアウトレットができたがその裏にある三杉川で。
ゲーリーグラブのノーシンカーやスプリットショットリグで。
バズベイトやスピナーベイトで。
そして、ウェーディングとフロッグゲームではじめて釣ったもの。
何匹釣ったかわからない。
どれもブラックバス釣りメインでつれたのだったが、70㎝ぐらいまでが最高サイズだったと思う。
一番記憶に残っているライギョ
或る沼で葦際をウェーディングして、フロッグをなげていたときのこと。
ふと、脚の際ではなく、立っているところから2メートルくらいのところにある葦のなかにあるポケット(1、2メートルだったと思う)にフロッグをポシャっと投げてみた。
いや投げるというよりも、置くという呼び方が近かったと思う。
釣りでなにかが起きるときは、こういった「何気なく」のときが多い気がする。
今でも思い出す。
ぷかりぷかり、と、のんきに浮いているフロッグ。
フロッグの釣りはゆったりしているからいい。
すると、アクションをするまえに、水面下からぬわりと幅20センチを超えるぐらいの頭をもった長く黒い物体がゆっくり浮いてきて、フロッグを見定めたかとおもうと、丸呑み。
途端、発生する強力な水のよれと水しぶき。
うちわのような尾鰭の圧倒的なキックターン。
そしてロッドに伝わる尋常ではない重さと引き。
!!
これは、メートル級なんじゃないか。
なにが起きたかわからないけども、高校生だったわたしはそう感じた。
瞬間テンションをうしなうロッド。
自分の鼻息と強すぎる鼓動の音しか聞こえない。
しばらく茫然とした。
無謀。
とれるはずがなかったのだろう。
たしかラインは16lbぐらいのナイロンラインだったし、ロッドはダイワのプロキャスターZのミディアムライト。リールは今でも船釣りにつかっているけども、97スコーピオン1500。
ぷっつりと瞬断されていたライン。
フロッグ自体はバーブレスフックだったものの、あのライギョは助からなかったかもしれない。
とれなかった悔しさと、ルアーを飲ませたままだという申し訳なさ。
ただのエゴではあるのだが、このとき以降、タックルバランスなどは配慮するようになった。
ライギョはよくみるとかわいい。
ライギョというと、ブラックバス釣りをする人中心に、忌み嫌っている人もいて、足蹴にしてリリースしているのをみたり、ワームの場合ラインを切っているのを見ることもある。
釣った魚をどう扱うかについては法律があるわけでもないので、管理されていない釣り場の場合、つまるところは釣り人にゆだねられる。よく言うが釣り人の矜持の問題なわけだ。
バス釣りでライギョが釣れ、「ふざけんなよ。きもちわりーなー」といって、ラインを切っている人をみると、わたしは仲良くなれないなと思う。
見た目で魚を判断するまでに、今度ライギョを釣ったらよくよく顔つきをみてほしい。(● ●)といったつぶらな瞳。
口をあけると犬歯があって、びびっちゃうかもしれないが、プライヤーをつかって針を外してあげよう。ライギョがよく釣れる釣り場ではマウスオープナーもっていたほうがよいだろう。ライギョの顎は強靭なので、指であけるのは困難だ。
初夏に水草周りで小さなライギョの幼魚がむれている。
その背後には体表の模様だったり黄色が鮮やかになった親が見守っている。
生みっぱなしでなく、ちゃんと育てるという点ではブラックバスも一緒なので、バスだけでなくライギョも愛してほしい。
とにかく、専門に狙うのであればタックルは強靭なものを。