これは子供の頃の話だ。
当時魚大好き小学生だった自分は、川釣りやタモ網で比較的マニアックでかっこいいと思う魚(カマツカ、オヤニラミなど)を採集して飼育することを至上の喜びとしていた。ちなみに大人になった今でもキジハタやカレイなどかっこいいと思う根魚を中心に飼育している)
晩夏のある日、いつも行くとある一級河川の上流にあるポイントで、弟(霊感有)と共に川釣りを始めた。
この日は不気味なほどに何も釣れず、よく見てみれば川のなかに魚影が全くないことに気付いた。
何も居ないことに半ば苛立ちを覚えていた時、すぐ近くにある淀んだ淵のような場所から鯉が跳ねるような音と水の動きがしたのでとりあえず行ってみたところ、鯉が驚いて逃げた時に発生する特有の底泥の濁りが水中に漂っていた。
すると弟が、
「今、川の中に髪の長い女が飛び込んだ」
と言い出ししきりに怖がりだす。
このポイントはあまり人が来ない場所で、その日もポイントに来た時から自分と弟以外この近辺に誰も居ないのは既に確認済みである。
自分は何も見えなかったので不気味だとは思いつつもボウズで帰宅するのも嫌なので、弟を放置して(弟はその後帰った)少し上流に行きタモ網でガサガサをはじめた。
しかし相変わらず小さな雑魚やヌマエビですら網に入らず、目に見える魚影も皆無なので、「こんなに何も居ないのも珍しいな~」と思いつつガサった網の中を確認したところ、小石や小枝に混じって一本の長い髪の毛が入っていた。
何度も言うことだが、この近辺はあまり人が来ない場所で、さらにその日は肌寒い日だったのでかなり上流まで行っても川遊びしている人なんか一人もいなかった。
ましてや例の女の話の直後に、網の中に長い髪の毛が入るという初めての経験がピンポイントで起こった異様さと、いつもと違う不気味なまでの魚影の無さに何かそこしれぬ恐怖を感じたので、いくら鈍感な私でも撤収することに決めたのだ。
その場所で自殺者が出たとか水死体が上がったという話は全く聞かないものの、やはり水場は異世界に通じる何かがあると思う。
今でも釣りをしていて、何かそこしれぬ恐怖を感じることがある。そういう時は自分はすぐ撤収するようにしている。。
※投稿いただいた釣り場の怖い話は編集部で編集して紹介しています。