真夜中にタイワンガザミのメス(外子持ち)をとって、醤油漬けにして食べてみました。ワタリガニって、店頭にならんでいるときも、自分の手で獲るときも外子持ちはリリースしてみるのですが、今回は外子を食べてみようとおもって持ち帰ってみました。さて、どんな味なんでしょうかね。
水温上昇のせいなの?関東ではタイワンガザミが隆盛
一般的にワタリガニと呼ばれる蟹には、「ガザミ(通称ノーマルガザミ)」「タイワンガザミ」などがいます。一番うしろの足が平らなオール状になっているという点ではイシガニも含むのかもしれません。
これらの蟹は、海底や岸壁にはりついているものの、状況によっては海をパタパタと泳いでいたりします。かわいい。
そんなワタリガニのなかでも食用として流通しているのが「ガザミ」と「タイワンガザミ」です。後者はタイワンってつくけど、在来種です。
このですね、ガザミとタイワンガザミの勢力差がさいきん顕著らしいんですよ。関東じゃ、どこにいってもタイワンガザミが隆盛とのことなんです。
ガザミがとれないわけじゃないんだけど、主要ワタリガニポイントで釣りをすると、9割方タイワンガザミであると。
いやね、タイワンガザミも抜群にうまいですし、それはそれでいいんです。でも気になりますよね。なぜなんだろう。
こんなニュースがありました。
要約すると、宮城県のワタリガニ漁獲量(ガザミ。タイワンガザミと合算かは不明)が、東日本大震災前の200倍になっているんだそうで。
これ、知ってましたか?わたしは知りませんでした。てっきり全国的に減っているのかと。
それにしても、200倍って凄すぎ。
FNNのサイトの図表がわかりやすいのでみてみましょう。
なんかもう2014年ぐらいから異常な伸びですね。
出典:FNN
出典:FNN
もともと主要産地だった九州・有明沿岸のガザミが激減するなかで、宮城が急に伸びてきてますね。
はたして、津波の影響なのか、海水温の影響なのか。
さまざまな要因で餌が増えなどして繁殖力が増しているのか、産卵からの孵化率・成長率が増しているのか。
謎です。
出典:気象庁
こちらは、日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率(℃/100年)とのこと。
日本近海の海面水温の十年規模変動の特徴
(中略)
この日本近海の海面水温の十年規模変動で最も卓越する変動は、東シナ海北部、黄海、日本海南西部、日本海中部を中心に広い海域における冬季の海面水温に認められるもので、冬季の季節風の強さが深く関係していると考えられます。これ以外にも、北海道周辺海域を中心に2000年ごろから夏季の海面水温の上昇が認められます。さらに、関東沖の海域や三陸沖のように、黒潮等の海流の変化や北太平洋に見られる主要な変動である太平洋十年規模振動(PDO)に関連する海洋内部の水温変動が影響していると考えられる海域もあります。
出典:気象庁
出典:気象庁
ガザミがよくとれていた東シナ海北部(九州・有明沿岸)は冬季の季節風によって10年単位でも、冬季の海面水温がとくにあがっているとのこと。
素人目で考えるに、この海水温上昇に対してタイワンガザミが生息範囲を伸ばし、ガザミが宮城(海流によって幼生がたまる?)にとどまっているというような推理もできます。
そのうちに、学者が研究結果を発表するのでしょう。
いずれにせワタリガニ本家のガザミは宮城以外ではとれなくなり、タイワンガザミが多く目立つようになりました。
真夜中にタイワンガザミを獲りにいってきた
イメージ画像です。
ということで、或る夜にタイワンガザミを獲りにでかけました。
装備は、たも網、トング、手袋という3段構え。
たも網で、ジオングよろしくロングレンジ攻撃。
トングでミドルレンジ攻撃。
ダイソー手袋をはめた素手で短距離の確実な攻撃です。
ふはははは。ガルマ、もはや死角はありえんぞ。
と、おもったらですね、そもそも潮位が高く、潮も干潮から動き海中が見えない件について、という体たらくです。
ワタリガニ獲りの場合、カニ網以外は、見て捕獲するしかないので、潮位が高かったり、潮が速くて海面がゆれるとなかなかつらいんです。しかも、砂がまきあげられてサンドストーム状態。
なかなか岩場にガザミ類を発見できずにいたところ、波間をただよう鮮やかな宇宙船みたいな物体が。
こちらはアオリイカの子供ですね。
成長すると、翌年春には数キロになるアオリイカもこんなにちっちゃい。とはいっても、春に孵化して1か月ぐらいの個体はホタルイカみたいなサイズ。それからすると、イイダコサイズぐらいに成長しています。うまそうやな。これじゃシーバスあたりに遭遇したら一飲み。
そんじゃーね。
と、
だんだん目が闇になれてきたのか、カニを発見できるようになってきたのです。ものごとなれですな。
タイワンガザミメス(抱卵)
タイワンガザミメス(抱卵)
タイワンガザミメス(抱卵)
ぐー。
全部抱卵個体。
ほかにも6体ほどタイワンガザミを発見したものの、1体をのこして、みんなメスという。たも網がこわれていて、枠がうごいてしまうので、尽く逃げられました。打率が低い。道具は大事だよ。
いつもは、外子をかかえている蟹は買わないですし、蟹場でも逃がすようにしてるんですが、ためしに外子ごと食べてみようと
タイワンガザミの外子を醤油漬けで食べてみる
こちら持ち帰ったタイワンガザミメス。
ひっくりかえすとこの通り。
金串を口からさしこむと、抵抗がないところがみつかります。
そこから、スッと垂直に甲羅側に差し込み左右にうごかすと活き締めが完了。
外子がついた尻蓋を外しましょう。
こちらは子がだんだんと育っている状態なのかも。
タイワンガザミ本体自体は冷凍しておく
片手に持ったら自然とこのような構えに。阿吽。運慶。
この外子の目立つごみを取り除く。
その後、塩をふってもむ。
水につけると汚れが浮くのでさらに取り除く。
なんというかスポンジみたいな感触だなあ。
醤油とみりん1対1+生姜スライス少々につけこむ。
成長した黒っぽい外子もつけこむ。
どちらがより、おいしんだろうね。
つけこむときは、全体をなじませて。
なじませて。
・・・
・・・
・・・
コケコッコー。えー、冷蔵庫で一晩漬けこみました。
この色合い。雰囲気でてるねー。いいよいいよー。
箸でつかむとこの通り。
モズクが突然変異でスポンジ繊維になったような感触。
ごはんにのせて食べてみる…
シャリシャリ。
こ、これは。
蟹卵の濃い味はありつつも食感が、繊維っぽいっす。例えるならハスイモみたいな。
シャリシャリ。ちょっとこれは味は旨いんだけど食感がどうもなー。
内子のほうがねっとりしていていいんじゃないの。旨みも内子に劣りますね。
韓国のりに包んで食べてみる。
お。
これは、ノリのパリパリによって、外子のシャリシャリというような繊維っぽさがカモフラージュされ、濃厚で旨い。
では、成長過程の黒い外子はどうかな。
モズクポン酢みたいやね。
キャビアっぽいなー。
味は・・・
ん。オレンジ色のまだ発展途上の外子とほぼ変わらんな。ややクセは強くなっているような気もするけども。さほど変わらない。
ガザミの外子は食感が特殊。醤油漬けは内子のほうが旨い
ということでタイワンガザミの外子ですが、食感が特殊でした。
ほんと、ハスイモ感。
蟹の卵独特の海の味に磯風味というのは内子にも近いのですが、比べると、内子が勝利ということなんでしょう。
店頭で外子がついたメスが売られていることもあるんですが、身の栄養もとられているでしょうし、磯遊びなどであえて外子がある個体をとって食べるというのもあんまり利がないなと思った次第です。
ということで、これからは外子持ちのガザミはだいたいリリースする方針に決めました。とはいえ梅雨時に砂地や岸壁あたりの浅場に接岸するのメスはことごく内子もちで資源という点では外子持ちも変わりません。
要は、足るを知るということなんでしょう。適度にとって適度に食べて、飽きたらとらない。という方針でいきたいと思います。
産めよ増やせよ。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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去年堤防で20キロ以上はありそうなアカエイを釣ったんですが、その時のランディングでタモ枠がひしゃげたんですね。そのまま蟹取りに使っていたんですが、まー網がずれるから逃げられるんです。折り畳み式はとくに寿命が短いので大事な獲物を逃す前に買い換えておきましょう。