都市河川産「モクズガニ」のニオイは落ちるのか?約2週間の「泥抜き」体験を紹介!

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モクズガニ
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モクズガニといえば、よく食べて臭いという話もよく聞く。

今回は都市河川で獲れたモクズガニの泥抜きを2週間やってみた実験を紹介したい。

おそらくモクズガニの泥抜きについてはもっとも詳しいはず。

目次

都市河川のモクズガニの臭い問題

何を隠そうわたしは「モクズガニ」を捕るのが好きだ。

食べるのも好きだけども、獲るほうが好きである。獲るスキルは、素手、網ともにそこそこ熟練の域に達していると思っている。モクズガニマスターと呼ばれるのは気恥ずかしいが、内心そのぐらいの能力をもっていると自負している。

目をとじれば、自然と四季折々におけるモクズガニの行動パターンがありありとわかるし、狙ったときに狙ったところにいればだいたい獲る。なにも漁業者とバッティングする蟹籠をつかわなくても問題なく、獲る。

そう、わたしはモクズガニには自信があるのだ。

「モクズガニ」は全国的に淡水の重要漁獲対象だ。縄文時代の遺跡からもモクズガニの食べかすが発見されたこともあり、古来から食用の蟹として受け継がれてきたのだろう。

とはいえ、魚骨は全部で数十点。遺物全体から見ればわずかなものである。それに比べて圧倒的多数を占めるのが、モクズガニとカワニナの殻だ。いずれも一部が焼け焦げており、食糧であったことは疑いがない。サキタリ洞の西側に流れる雄樋川で、捕えられたものだろう。夜行性のモクズガニを捕えるには、漁獲は夜間に行わねばなるまい。たくさん獲れたモクズガニを手に、夜道を遠くまで歩いて帰るのは、いささか面倒である。川沿いに大きな洞窟があれば、休みたくなるのが人情というものだ。かくして旧石器人は、サキタリ洞に休み、モクズガニに舌鼓をうったのであろう。

出典:https://www.spf.org/opri/newsletter/400_3.html

モクズガニは食味がよいということも食べ続けられてきた要因だろう。

この蟹はデトリタスを主体に食べ、ときにカワニナなどの巻貝を食べることもあり、結果的に肺吸虫を宿している。つまり、生食をすると人体に肺吸虫が寄生することになる。

縄文のむかし。

晩秋、すこし生き急ぎめの青年がいた。彼は腹がへったのだろう。モクズガニを獲りにいった帰り路、火をおこすよりは、まず腹の虫を収めようと焦ってモクズガニを生食。結句、いつしか神経系がやられて発狂、麻痺、などにいたって、「ちょっと生食はよくないよねー」という教訓が部族内でシェアされ、それ以来生食はご法度として、焼いたり茹でたりして食べてこられたのだろう。

このように、我々が平和につつがなく暮らせるのは、Googleで検索したら正しい結果が返ってくるからではない。

また、SNSやヤフー知恵袋で質問をしたら正しい答えを教えてくれる人がいるからでもない。なにより、その昔、生き急いで死んでいった人間がいたからなのだ。

茸でも野草でも毒魚でもみんなそうだ。誰かの犠牲があって、我々の今があるのだ。

さて、このモクズガニ。とれた地域によっても異なるが、独特の臭いがある。清らかな河川でとったものは、蟹のやや青っぽい澄んだニオイがする。

が、都市河川に由来する個体は、言葉を選ばなければ「ドブ臭」をはらんでいるものもいる。おい、彼らが悪いのではないぞ。むしろ我々人間が悪い。

お台場をオリンピック会場にしようなんて、狂っているんじゃないだろうか。近隣でもふさわしいビーチはたくさんあるのに、なにもヘドロが堆積している海域、大雨で下水が直接流れ込むところでやらんでもいいだろうよ。

そう思う。

でも、そのお台場や周辺にもモクズガニがいる。9月後半から年明けぐらいまでは確かにいる。

彼らのニオイはなかばヘドロにまじって生活しているのと、状況によってはボラの腐肉などを食べるという餌の種類や、体毛があたりの汚れを巻き込みやすいというところに起因していると思われる。

臭い個体は、つかまえた瞬間から臭い。

そのため、食用にされず、リリースされたりする。

とった人間からも「くっせー」などと罵られてリリースされる。ある意味それは彼らにとって命を救われることなので、ハッピーなことなのかもしれないが、そのニオイは人間のせいだということは改めてつたえたい。

モクズガニが臭いのは俺たちが臭いものを出しているからなのだ。どんな人間だって等しくクソ袋だ。アイドルだって、俺だって。あなただって、お前だって。

今回はそんなモクズガニの気になるニオイが「泥抜き」により落ちるものかを検証してみた。

モクズガニのニオイは落ちるのか?

今回実験につかうモクズガニは2体。どららも都市河川の河口でとったものだ。

素手で調達。メス。

捕獲したときに流下してきた魚の肉片のようなものをかじっていたが容赦なく捕獲。許せよ。

こちらは干潮時に岩の上で泡を吹いていた個体。

一説によると猿蟹合戦の蟹はモクズガニであったともいわれる。さもありなん。猿蟹合戦の蟹は、非道なクソ猿に青柿を投げつけられて泡を吹いて死んでしまう。が、あの泡は、カニが地上にいるときに呼吸をする結果うまれるブクブクなのだ。

森や山地に穴をほって住むアカテガニなどは、水がなくてもいきていけるが、あれは自分のだした泡で体を潤しているらしい。You、すごいね。

ここからは捕獲したモクズガニの泥抜きを日数の経過とともにみていこう。

注目したいのは、ニオイ。そして、水の色、糞の有無、泥などの有無だ。

9月29日深夜。獲りたてのモクズガニはそれほど臭ってない

モクズガニは脱走の名人なので、泥抜きの際は蓋ができる衣装ケースや、高さのあるバケツが望ましい。

数が少ない場合は、清潔なペンキ用のバケツやごみ用のポリバケツがあるとよい。捕獲したモクズガニが数体いる場合は、いつのまにか組体操というか土台になった個体の上をこえて脱走する個体がでてくる。

かなしいかな、かなしいかな。

人間同様、蟹の世界でも土台としてつかわれるような存在がいるのだ。

自分としては組織のなかですぐれているとおもっていても、それはただの経営者がつくりだした夢の土台だったり。そこに自分をアジャストできないと・・・

そうそう、容器にいれる水は、ノーマル水道水で問題ない。これは海でとった個体でも汽水域でとったものでも変わらない。モクズガニは環境への対応が強く、生命力もきわめて強靭なのだ。

ただし、水をいれすぎと死に腐る傾向にあるので、甲羅が部分的に乾くぐらいがちょうどいい。中途半端にエアーポンプなどをかますと、そのチューブを足場にして脱走、翌朝玄関の隅っこのあたりの綿埃にまみれて発見される。靴の中に逃げられた日に足を突っ込んだらたまったもんじゃない。

9月30日昼。糞と砂泥とニオイと。

翌朝、と見せかけて、翌昼。

前日、寝る前にラーメンを食べたせいか、寝起きが悪く、昼前になってしまった。さて、モクズガニはどうかな。と、バケツをのぞきこむと、ご覧のとおり、水は糞に砂泥のカスがまじり、水もやや褐色になっている。

なにより臭い。

死んだウナギの胃腸を裂いたときのあのニオイ。糞便に由来するニオイなんだろう。

モクズガニやウナギ、すっぽんなどは「泥抜き」と呼ばれる工程をへて食材になるが、実際のところ、泥をぬいているというよりも、胃腸内の糞や未消化の餌のカスなどを抜いている要素が強い。これらが臭い。

モクズガニの場合、これに加えて、両爪のボンボンやエラがはらんでいるゴミなどが出る。

どんどん出せよ。遠慮すんなよ。水替えをして、激励しておく。

水替えは気づいたら行うとよいと思う。最低朝晩2回やるといい。モクズガニの体内から排出されるアンモニアが濃くなるのはあまりよくないことで、死にやすくなる。また室温が高過ぎる場合も死にやすい。夏場の室内は危険と覚えておこう。大体死に腐る。

ウナギのように流水をかけ続ける必要はないが、水質と水温だけには注意したい。

9月30日夕。引きつづき、糞・砂泥・ニオイ

子供を保育園に迎えにいって、バケツをみたら、昼間と同等に濁りと糞と砂のカスがある。

一部、線状の虫のようなものがいるが、ガルマ、自然とはそういうものなのだよ。ふはははは。

10月1日。大型のモクズガニが死去

翌朝。

大き目の個体のほうが死んでいた。意外である。

片方の爪に欠損がある個体が意外にも生き延びている。喧嘩をしたのか。いや、喧嘩をしたらしたで大型で両爪をもっているほうが勝つはず。謎。名探偵コナンにこの密室トリックをといてほしい。合掌。

モクズガニをはじめ、死んだ個体は、死んですぐであれば食べるようにしている。

10月1日、午前2時、踏切に望遠鏡を担いでった

1日ごとに報告するのがめんどくさくなってきた。

人間まじめな人とそうじゃない人がいるが、わたしは後者だ。これからはよしなに観察していくことにしよう。

糞便に由来するニオイはだいぶ少なくなってきた。糞と砂のカスのようなものはちらほらみられる。

10月2日朝。

一晩あけても、水の濁りがすくなくなり、糞などもすくなくなってきている。

ニオイはほぼしない。

全く関係ないが、玄関をあけたらタマムシの羽が落ちていた。なにかいいことがあるかも。

10月2日深夜。宿便っぽいのが出始める

モクズガニの泥抜きをしはじめてから3日目。

人間でいえば宿便なのか、細長い糞がではじめる。むかしまわりでファスティングをしていた人がいたが、宿便がでるらしい。

モクズガニの場合、こういう糞がでたら、彼らが再度たべて無限機関にならないように早急に除去したい。ニオイはほぼしない。

10月3日昼過ぎ。再度宿便

ちらほら宿便がみられる。すっかりモクズガニもファスティングが板についたのかもしれない。

夕方、保育園に息子を迎えにいき、そのままスーパーで鍋野菜を調達する。もう鍋の季節なのだ。

店頭で栗カボチャをみかけて、モクズガニにあげようかしら、畜養に切り替えようかしらとおもうけれども、そこは泥抜きを貫徹すべしと意志決定。

10月3日深夜。宿便

秋になると、読書の秋というかネットの秋というか、寝る時間が遅くなる。

きづいたら夜も更けて、モクズガニを観察。宿便。

もうこのあたりから糞はでているがニオイはしない。

10月4日朝。水がきれい。ニオイもナッシング

気になるニオイはない。都市河川由来のモクズガニとは思えない。つまり、都市河川でとったモクズガニでも4日間泥抜きをすれば問題ないのだろう。しらんけど。

10月4日真夜中。変化なし。水はきれいでニオイもなし

このころからモクズガニが悟りというか解脱というか、まーそういう諦観みたいなものを持ち合わせた感がでてきて、風呂場でカサコソ動くこともなくなる。

が、手に取ると、元気ではある。触った後には手をよく洗おう。

10月5日昼過ぎ。飲めるぐらいきれいにみえる水

もう水がきれいすぎて飲めるぐらいにみえる。が、飲んでいはいけない。

目に見える世界だけを信じてはいけない。

子育てをしていると、食事の世話などでかなりの時間ができ、ながら動画でAmazonプライムの「スーパーナチュラル」を見始める。

吹き替えじゃないと、ながらで見れないため、吹き替えなのだが、兄ディーンの声が明らかにあっていない。最初のころは大袈裟だな、やけにドライに死がながれるよねとおもっていたが、慣れてくるとおもしろい。

シリーズものは、きっとある一定タイミングまでみると継続してみるというデータがあるんだろう。単純接触効果ってやつだな。それにしてもAmazonプライムから「メンタリスト」がなくなってしまってかなしい。

10月6日早朝。

もうなにもでないのか。水が澄んでいる。

風呂場を掃除するために、玄関にバケツを移動しておいたところ、息子が玄関で何事か歓声を発している。あわてて、玄関にむかうと、息子がバケツに手をつっこみモクズガニをつかんでいる。なんたることか。危険すぎる。保護者を呼べ。はい、俺です。

が、もはやモクズガニ氏も、つかまれたときにガチンコで戦う体力はないのかもしれない。息子の手をよく洗って、モクズガニの危険性について説く。そんなことを言われても1歳児は理解しないし、そもそも手の届くところにおいておくお前が悪い。あいや、すみません。

10月12日夜。台風19号襲来

東海~関東を巨大な台風19号が通過。

一つ屋根の下、モクズガニと玄関から舞い込んだ蛾と過ごす。実をいうと、しばらく前から思い入れがはじまって、この蟹は食べないで逃がしてやろうという勝手な思いが起こる。

これが人間のエゴである。

10月13日夜。全員無事。

近くに海と山に川があるのだけれども、無事。停電も断水もせず。我が家には大量に買い込んだ物資と、ため込んだ水が残った。こういった生活がおこなえるのも、しらないところで働いている人がいるおかげであるからだよなーとしみじみかみしめる。

台風を一緒にすごしたはずの蛾は窓をあけたときにどこかにいってしまったんだろう。

いつのまにかいなくなっていた。

モクズガニは元気だ。

繰り返すが、元気だ。

ニオイもしない。

実に2週間ぐらい一つ屋根の下に暮らしていると、あいつは元気かな、水換えようかななどとペット感がでてくる。エサはあげないものの、野菜屑あたりはあげたくなってきた。

ここまできて食べるのも、なんともなーという理由で、とってきた場所にかえしてやることにする。

台風により変わった地形。

このモクズガニが生き残れるのかは、誰もしらない。

まとめ

モクズガニの泥抜きでニオイがぬけるはじめるのは、3日目ぐらいから。

やがて宿便のような長い糞がでて、水が濁らなくなってからはイシガニやワタリガニに似ている、すこし青い蟹独特の香りに変化する。

蟹は長く泥抜きをすることで、殻の外からは見えない身や内臓をエネルギー源とするフェーズに入るので、ほどほどにしておいたほうがよいかもしれない。

それに、長く泥抜きをしていると、だいたい情が湧く。人間だもの。

ケミカルな汚濁が激しい都市河川で取れるモクズガニを食べるのはどうかとも思いながらも、再生水が多い水域などは、まーたまに食べるぐらいならよいんだろうなと。

臭くて食べられないと思った人も、気になったら試してほしい。

ではでは。

平田(@tsuyoshi_hirata

新潟 清流【荒川】モクズガニ・川ガニ オスメス混合 1㎏から5㎏ (1㎏)
フレッシュ はなだてや AZ

追記

その後、多くの個体でモクズガニの泥抜きを経験するなかでの実感は以下の通り。

  • モクズガニはシーズン初期9月下旬から10月下旬までに取れたものは、泥抜きでの生存率が高い
  • 晩秋以降、河口部にいきついて放卵した個体は短期間で死にやすい
  • 泥抜きの水を身体の半分以下にすることで生存率が伸びる
  • 泥抜きの水は水道水と塩水で生存期間はほとんど変わらない
  • 多くの個体を密集して入れることで生存率が下がる。お互いの脚や爪が干渉するとじっとしていることができないので常に動くことになるため
  • シーズン初期のメスは内子があるが、1週間以上泥抜きをすると、内子を吸収しはじめるのかオレンジ色の便が出始める(長期間の泥抜きは禁物)

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