人間は、常に問いをもっている生き物。
釣り人も一緒です。
今日も世界では多くの問いが生まれ、答えが見つかっています。
そんな中、インターネットでは確かではない答えがいろいろと流布され、それがまことしやかに拡散されたり。そしてその拡散されたネタをもとにシッタカをする人や、言説の棍棒によって人を殴ったりする人がいます。
そんな、ウェブ上に転がっている『釣りのなぜ?どうして?』について、釣りメディアORETSURI編集長の平田が勝手に回答する本シリーズ。
今回の質問
●釣れなくなった魚はどこに行くのでしょうか?
魚によって一年中釣れたり、時期によって釣れたり。
岸からの釣りなら、時期で釣れる釣れないはわかるのですが、船でも時期によって釣れなくなるのはなぜでしょうか?マグロ・カツオみたいな明らかな回遊魚ならわかるのですが、例えばで、相模湾でブリ・ワラサなどが時期によって釣れなくなるのはなぜでしょう?一年中いそうなのに。
・いるけど釣れない。餌を食べない(食べないことはないはず)
・外洋に抜けちゃう(そんなに動く?)
・深海に行く(ブリなのに?)○○大学の人に聞いても、「う~ん、難しい質問ですね」と考えたすえ答えてくれたのは「釣れないくらいの深場にいっちゃんじゃないか」でした。
その時に釣りたい魚があるなら、確率低くても、出船してて釣れる可能性あるなら追いかけるか。
やっぱり、釣れてる情報を追いかけてから釣るのが無難なのでしょうか・・・時間もお金も限られている中での釣りなので、わいてきた疑問でした。
●いるのに釣れないのはなぜ?
これも相模湾ブリ・ワラサなんですが、ここ一ヶ月、小田原市場に水揚げされるブリ・ワラサの漁獲量が記録的な豊漁なのに、釣船で釣れないのはなぜ?
マダイ船やルアー青物船で、爆釣してもよさそうなのに、最近釣ったのをみたのは、平田さんのタイラバでのワラサくらい。
・○○釣り具の店員さんは「ほとんど定置に入っちゃって、釣れる量が残らないんじゃないか。定置にかかるくらいの浅場にいるなら、かえってショアからのほうが釣れちゃうんじゃないか」
・○○丸の船長は「いまの時期、定置にかかってる青物は、夜しか動かない」ってことでした。
潮回りでそうなのだろうか・・・?こんな豊漁なら、釣りでも釣りたいのに、もったいない。という想いから、出てきた質問です。
質問者:ワタコーさん
<平田の回答>
「人も魚もメシを食うために旅をする」
どうも、平田です。
最近はもっぱら引きこもっているんですが、そうなると、やっぱりSNSをみることが多いんですね。
すると、色んな人が色んな人に怒っているなーと感じています。
政策だとか、あったこともない誰誰の発言についてだとか、「自粛をしてないっぽく見える人」についてだったりだとか、いろいろなアングリーがSNSに渦巻いています。
まさに令和アングリー時代。
わたしはといえば、できるだけ平穏に生きていきたいので、こうしたアングリーが目に入ると伝染しちゃうんで、神速でミュートしつつ、行き過ぎたものはせっせと通報しています。世のため人のため、自分のためにね。
さて、今回の質問なのですが、2つあるので1つずつ答えていきます。それぞれ関連しているとはおもうんですがね。
じゃ、一つ目からいきますね。
●釣れなくなった魚はどこに行くのでしょうか?
あー、要は相模湾におけるブリとかワラサが時期によって釣れなくなる話ですね。
これはですね、ここで話していいのかわからないんですが、実はテレポーテーションしているんです。相模湾には「バミューダートライアングル」が存在してるのです。
っていうのはうそです。
そんなに怒らないでください。怒る相手はムーだけにしておいてください。まあ「つり球」というアニメはそういう話なんですがね。
いずれにせよつまらない嘘をついていると友達をなくしますよ。
えーっと、ワタコーさんは、以下のように感じていますね。
マグロ・カツオみたいな明らかな回遊魚ならわかるのですが、例えばで、相模湾でブリ・ワラサなどが時期によって釣れなくなるのはなぜでしょう?一年中いそうなのに。
が、ブリやワラサも明らかな回遊魚なんです。実際。リアルに。
このあたりは、わたしは研究者じゃないんですが、「ブリ 回遊」などとググってみると、いろいろ回遊ルートについての研究結果が出てきます。研究者様様ですね。
ブリの回遊ルートなのですが、大きくわけて日本海側のルートと太平洋側のルートがあります。
ざっくりいうと、日本海であれば対馬暖流、太平洋であれば黒潮にのってブリは日本列島の沿岸を北に南に旅をしています。
出典:福井県水産試験場
これらは日本海におけるブリの回遊についてなんですが、太平洋も一緒です。
太平洋については季節移動についての研究論文がすぐに出てこなかったので、近しい論文を紹介します。
この図は、太平洋においてブリを放流したときに、どれぐらい移動しているかがわかります。出典元の論文をみると、各地域からブリを放流するとかなり移動することがわかります。
ということで、質問の回答としては、相模湾のブリも季節によって大きく移動しているので、釣れないときと釣れるときがあるというわけです。
さて、次に2つ目の質問にいきましょう。
●いるのに釣れないのはなぜ?
これはですね、残念ながら釣りが下手だからです。
というのは冗談です。
データがあるわけでもないので想像なのですが、漁業者が定置網を出せるエリアがちょうどブリやワラサがハマるエリアにある。だったりするのかなって思いました。
釣り船の場合、定置網だったりその他の漁具をつかうエリアに入れない決まりがあるわけで、ちょうどブリやワラサが回遊するエリアに入れなかったりするんじゃないかと。
・○○釣り具の店員さんは「ほとんど定置に入っちゃって、釣れる量が残らないんじゃないか。定置にかかるくらいの浅場にいるなら、かえってショアからのほうが釣れちゃうんじゃないか」
・○○丸の船長は「いまの時期、定置にかかってる青物は、夜しか動かない」ってことでした。
潮回りでそうなのだろうか・・・?
このあたりもそれぞれ、そうなのかもしれません。
定置網がドンピシャでハマっているならば、釣るほど魚が残っていないというのはありそうです。これは日本海のマグロの話ですが、巻き網だと一網打尽だったりするらしいですしね。
また、船長さんの言う通り、夜しか餌をとらないパターンというのもあるかもしれません。夜に動いているイカの群れを追いかけて、きまった時間に食事をしていたり。
ということで、それぞれそうなのかもなーと。
マダイ船やルアー青物船で、爆釣してもよさそうなのに、最近釣ったのをみたのは、平田さんのタイラバでのワラサくらい。
これはですね、やっぱりわたしが超絶釣りが上手いからだ、そうに違いない。ORETSURI万歳!と思っちゃう人も25,000人ぐらいはいるかもしれませんが、所謂まぐれです。
その釣行記をよく読んでもらったらわかるんですが、ボーっとしているときにヒットしてますんでね。
じゃあなんで、あんまりバタバタ釣れないのかというと、以下の論文をよんでみてください。
放流時3歳以上の D4627は,2009年3月17日に鴨川で放流されてから4月上旬頃まで房総半島南端から大島東水道付近に滞留し,4月中旬になってから大島北岸沖を通って網代付近に達し,4月14日に定置網に入網した。放流時0歳の D2886-1と D2890-1は,0歳時の2007年11月に網代で放流されてから再捕されるまで,伊豆半島東岸に滞留していた。放流時2歳の D1848-2は,2009年4月17日に網代で放流されてから相模湾を出ることなく東進し,6日後に対岸の三浦半島西岸に達した。
はい、読んでいるとややこしいですね。古今東西、論文というのはややこしい。
要は、外房放流群と相模湾放流群のブリの例をみると、ブリには海域をまたいで移動する個体と、滞留している個体がいるようです。
これも想像なのですが、南北を移動する個体群より、湾内などで滞留して個体は数が少ないんじゃないでしょうか。
回遊魚は群れで動くもんです。みんなが北へ行けば北へ。南へ行けば南へ行く。右へ向けば右、左へ向けば左。
そういうもんです。
なぜかっていうと、餌になる小魚やイカなどがいる海域や水深が季節によって変わるからです。だから、それを追ってみんなが効率的に動く。餌の群れを襲うときも単体で挑むよりも、集団のほうがいいんです。
人間と一緒ですね。
日本社会では会社員として働いて、給料を稼いで消費していく人が多いわけです。
なぜか?
それが一番効率的だからです。
会社にいけば仕事がありますし、それをしっかりこなせば給料がもらえる。場合によっては、仕事中にORETSURIの過去記事を読み流していても、他にしっかりやっている誰かのおかげで食っていけます。わたしもサラリーマン時代に1日に3時間ぐらいしか仕事をしていなかったんですが、ちゃんと給料をもらえました。有難う。
そうですね、サラリーマンというジョブに所属していながら、やってらんねーよという人に言いたいのは、ちゃんとやれば食えるっていうのは素敵なことだよ!ってことです。目の前に仕事があるって素晴らしいことです。組織でやれば大きな仕事も成し遂げられるしね。
あれ、何をいっているのか。
魚の話に戻りましょうか。
そうそう、湾内に滞留するはぐれ個体もいるという話でした。はぐれブリがね。いるんだ、確かに。
こやつらは、まー大多数がする選択をとらなかったやつなんですよ。
クラスにも一人はいたでしょ。ホームルームで一人だけみんなと違う意見を主張していたやつが。空気読めよと。会社にも一人はいるんだこういうやつが。一匹オオカミ気取ってんじゃねーよこの野郎。みたいな。
南北大移動するブリの個体群をしり目に、「俺は私は湾内で生きる!」「湾内こそが俺の生きざま!」って思っているのかよくわかりませんが、まーこのブリは湾内で生きることにしたわけです。
「湾内ブリ」って呼んでもよいでしょう。彼や彼女は湾内で生きることにしたので。
または、「ちょっと移動メンドクサイんで湾内でいいや。ウーバーイートよろ」みたいな観点なのかもしれません。外出自粛っていうよりも、そもそも移動するのがメンドクサイってやつです。「密」がいやなんです。こういうブリは。たぶん、メイビー、きっと。
たしかに今の時代、部屋にこもっていても、熱々のピザが届きますし、ウーバーイートで頼めば、牛丼つゆだくも届く。それを考えるとブリだって、わざわざ長距離移動しなくてもいいわけです。
湾内にも餌があるし、むしろ、そこで生きたほうがメシウマなんじゃないか。
「湾内はメシウマである」
そう思ったんでしょう。湾内ブリたちは。もうそういうことでいいんじゃないかと。
この話は延々とできちゃうんですが、そろそろ疲れてきたので結論にしておきます。わたしも見かけほど暇ではないんですよ。
湾内の漁業でブリがたくさんとれてるのに釣れないのは、大多数が網でとられてしまうor釣り船が操業できない時間帯に餌をとっているという線はありそうです。あと、ブリが動くラインに定置網がある場合は、「【悲報】そもそも、その海域に釣り船が近づけない件」というのはありそうです。
それと、わたしがあんまり青物が釣れていないなかワラサを釣ったのは、たまたま城ヶ島沖をうろついていた湾内ワラサの目の前にタイラバが落ちたからです。技術とかではなく。
以上、今後ともよろしくお願いいたします。
平田(@tsuyoshi_hirata)
※質問がないとエンドレスでYahoo!知恵袋などの質問を勝手に回答していく仕様です。自粛に勤しんでいる&子育て繫忙期のため、これはという質問のみ回答します。出前はしておりません。