「サメを釣ったら食べるか?」
そう問われると、だいたい10人中10人ぐらいはリリースするんじゃないかな。
じゃあ100人ぐらい釣り人が集まると、どうだろう。
うーんと、一人ぐらいは持ち帰る方がいそうですね。今回、その一人になって、LTアジで同行者が釣ったホシザメを持ち帰ってみました。
ネットでは旨いという説なんですが、やっぱり体験してみないことにはね。
サメは何故リリースされるか
冒頭の通り、サメってやつは釣ってもリリースされがちです。
まーサメ本人にとっては、そのほうが有難いとは思うんですがね。俺を持ち帰ってくれるな。リリースしくよろ!ってね
なんで釣り人がサメを持ち帰らないのかというと、理由は以下の3通りかなと。
- なんとなく異質なフォルム(サメ肌・牙)
- 基本的にデカいんで食べるのに大変そう
- アンモニア由来の臭みが気になる(食べたことがない人がほとんどながらも知識として知っている)
これって、エイもだいたい一緒ですね。
まー食料不足の時代でもないんで、あえて釣って食べるまでもないかなーということで、リリースされる率がほぼ100%なわけです。
飽食の時代。
そう思います。
「それじゃあ、僕、メシが食えないっすよ」というような表現があるんですが、そういうのは安土桃山時代の商人「大袈裟四郎次郎」みたいなもんで、今の日本で本当に飢餓に陥る人なんてほぼいません。
ちょっと話題はとんじゃったんですが、敢えてサメとエイを食べなくてもいいだろう。今のところはそんな人がほとんどなんじゃないかなと。
もちろん地域差もあると思います。
ウツボもそうですが、食文化としてサメを食べる習慣があるかどうか。小さいときからサメを食べていたか。
ひるがえって、自分の場合はどうか。
1回だけムニエルにしたものを食べさせてもらったような気もするんだけど、定かじゃないという記憶です。あれはカジキだったような気もするし。でも、母和子が「これはサメだよ」といっていたような気も。モウカザメだったような気配も。
他に、漁業という観点でいえば、あえてサメ専門で漁はしてないけど混獲しちゃうから、とったものを練り物にしたり、軟骨や肝臓を健康食品に加工したり、皮を工芸品にしたりというのは一定数あると思います。
以上、前置きが長くなりましたが、今回は、LTアジのゲストで釣れていたホシザメ(星鮫)を食べてみた話です。
ホシザメがカタクチイワシの下にいた
この日はLTアジ釣りだったわけですが、根岸沖あたりでカタクチイワシの群れがあって、着底する前にヒットしちゃう状況でした。
ご存じの方もいると思うですが、ライトタックルでもビシが40号ぐらいだとカタクチイワシのあたりってほぼ出ないんですね。だからはじめて釣りをすると、イワシが針先についたまま放置しちゃうことになります。
そうなるとアジは釣れないんですが、イワシを食べるうれしいゲストが釣れちゃったりします。
ヒラメやマゴチだったり。
この日は、じゃなあ何が釣れたかというと・・・。
はい、ホシザメです。
1mぐらいはあったのでしょうか。背中に白い斑点が広がって、これが星にみえるからホシザメといいます。
湾内で釣れるサメといえば、ドチザメがいますが、ホシザメもドチザメ科です。
この日、釣りをしていたナイスシニアのおとうさんが、「なんだおっきいぞ。これは!」みたいに巻いてきたら、現れたんですね。
すると、みんな「あーサメかー」みたいなリアクションをとるわけです。
まー仕方ない。
そこで、嬉々として、持ち帰ってきました。
ホシザメの下処理
こちら持ち帰ってきたホシザメ。
釣りあげてすぐにエラを切って血抜きをし、その後、はらわたと血合いを抜いてしっかり保冷。
だからあまりニオイはしません。クンクン嗅ぐと、うっすらアンモニアの気配はあるんですが、それはサメだからしようがない。
ギロリアン。
デローン。
こちらが口。細軸のムツ針がいいところにフッキングしてますね。
クーラーボックスで折り曲げるように持ち帰ってきたので、軽く伸ばしてやると、ギシギシと軟骨がきしむような音がして、まっすぐになりました。このあたりサメもエイも一緒ですね。
下処理といっても、フツーの魚(硬骨魚)と一緒で、頭部を落として、エラ周りを処理して、胴とわけるだけです。
ヒレは調理する予定なので、よけておく。
胴部分は長いので、肛門手前と尾側でわけておきます。
断面はこの通り。良質な白身ですね
胴を唐揚げに、尾は背ごしにして、湯びいて、酢味噌で食べようかなと。
こちら歯。
ホシザメの歯はドチザメと異なり、餌の殻を割ったりすりつぶすような臼歯状です。いや洗濯板みたいな。
ただし、口の奥まで歯があるかというとそうでもないので、だいたいある程度噛んで丸のみなんでしょう。
食性として、魚を食べているというよりも、普段は貝や甲殻類をメインに捕食しているんじゃないかなと。アサリ、ホンビノス・ウチムラサキ、小型のカニ類などなど。
こちらはドチザメの歯。
明らかに鋭く、多くの人がイメージするサメ本来の歯に近いです。
ドチザメは、魚やタコあたりをメインに捕食しているんじゃないかなと。
つづいて、サメを料理する際に重要なのが「鮫肌」と呼ばれるザラザラ部位をどうするかです。
この皮目を包丁でひいちゃってもよいんですが、そうするとコラーゲンを多く含む部位が食べられません。それは、もったいないおばけ。
ネットをみたら、さっと湯引くといいぜってなことで熱湯に20秒ほどくぐらせてみました。
するとどうだ。
指でこするだけで鮫肌がとれていくじゃないか。
サメ肌は、かるく湯がくとあっさり剥がれることを知る。 pic.twitter.com/swOHjm9Yp4
— 平田 剛士|ORETSURI(俺釣) (@tsuyoshi_hirata) July 14, 2020
粉みたいなのがどんどんとれてすべすべのお肌が見えてきます。
ホシザメの湯引き酢橘味噌
ここからは実際にホシザメを調理していきます。まずは、湯引いて酢味噌で食べることに。
これは、FacebookページにORETSURI読者の方からコメントで教えていただきました。
なんでも博多あたりのスーパーじゃ、ホシザメの湯引きが酢味噌付きで売られているんだそうで。しらなんだ。
ほかにも瀬戸内の方が、芸予諸島あたりでも湯引きで食べるとのこと。ほーん。
部位としては、尾側を使います。
背ごしにしたときに軟骨が細いからよいかなと。
この通り、ある程度の太さがありますが、背ごしに。
これを米酢をいれた熱湯でさっと湯がく。
すかさず、氷水で締める。
身が爆ぜてますね。
これは皮目が縮むからなんだと思います。
酢味噌はやや工夫をして、以下の通り。
- マルコメ麹美人(これの味噌汁がうまい)
- 米酢
- 砂糖
- 酢橘(汁と皮を刻んだもの)
分量は、甘酸っぱくなっていればよいんだと思います。あんまり酢を入れすぎるよりはややドロリとしていたほうがつけダレとしてはいいかなと。
盛り付け。
何も知らないで出されると、何の魚のどの部位だかわかりませんね。
妻が「なんだか蛇みたい」といってました。
それもそうだな。
みるからにぷりぷりしてますね。
味は・・・。
頬張ると、酢橘の香りがさわやかに広がる酢味噌。
噛むと、コラーゲンたっぷりの皮目の奥にぷりっとした身。そして軟骨。
軟骨はやや硬めなので、そのまま出しました。
これ、本場だとどうなんでしょう。もっと薄くカットして軟骨ごとバリバリいくんでしょうかね。
ホシザメの台湾風から揚げ
つづいて、サメとエイ料理でいえば、定番のから揚げです。
個人的に台湾風から揚げというのをよくやります。このホシザメ自体は臭みはないんですが、ややニオイが強い魚でもこの調理法によって美味しく食べられるのでぜひチャレンジしてみてください。
素材はホシザメの胴身。
肛門手前あたりから頭の後ろあたりまで。サメの場合腹骨がないので、調理はお手軽です。
身が白い。ウツボっぽい身だな
まず三枚におろす。
その後、このぐらいにカットする。
一口サイズでもよいと思うんですが、今回は二口サイズぐらいなんだと思います。唐揚げはある程度大きめにするとジューシーに仕上がり、細切りや一粒サイズにカットするとクリスピー感を楽しめたり。
ウツボあたりは細切りで揚げるのもうまいです。かなり歯ごたえがあるんでね。
こちらが断面。
皮目が縮まることによって、身が湾曲してますね。血合いも小さく、美しい白身。
この身を特殊なつけダレに漬け込みます。
こちら。
中身は以下の通り。
- ショウガすりおろし
- にんにくすりおろし
- 白コショウ
- 醤油(入れすぎると塩辛くなるので、水で割るのもよし)
- 紹興酒
- 砂糖少々
- 五香粉
これがORETSURI奥義台湾風から揚げの素です。
ナマズやブラックバスなどの淡水魚にもよいと思います。
この通り、全体を漬け込む。
より少量で漬け込むのであれば、ジップロックにいれて冷蔵で1時間ぐらいつけるとよいでしょう。実際は30分ぐらい漬け込めばよいと思います。一晩など漬け込まなくてもだいじょうぶ。
次に、量産型片栗粉(馬鈴薯でんぷん)をしっかりまぶす。
まぶすまえにキッチンペーパーで水分をぬぐってからやるとべちゃべちゃになりません。
あとは、サラダ油+ゴマ油少々で揚げる。
中温ぐらいでやりましょう。高温だとすぐに黒焦げになります。これほんと。
すくない油でもOKです。
その場合、一気に揚げる数を少なくして、このように鍋を傾けて調理しましょう。
盛り付け。
手前にある粉は、五香粉(ウーシャンフェン)です。レモンがなかったのでライムをチョイス。実際ライムのほうが香りがあって合います。
こちら寄った写真。
みるからにうまそう。
旨いものは見た目も旨い。
これは令和の時代に生きたわたしがよく言う格言なんですが、実際そうなんです。
料理には正しいステップがあって、そこに愛があれば、それが見た目にも表れるのです。
料理は見た目が9割。
とかいう書籍を将来出したい。
人は目で見て、味を想像して、食べて答え合わせをする。
うまそうな料理を見ると、唾液がよく分泌され、消化もよくなりという理屈。
まー実際はわからんのですが、おいしそうな料理なのに、実際はまずかったみたいなことはそうそうありません。
何を言いたいか。
釣りあげたホシザメをみると、人はあんまり食指が動かんのですよ。
それを丁寧に下処理して、このように「お客様、こちら当店名物、ホシザメの台湾風から揚げでございます」ってな具合に出せば、みんなパクパクするわけです。
最初はおっかなびっくりでもね。
じゃあ、味はどうか。
・・・
・・・
・・・
旨杉晋作。
もう、この4文字です。
皿から漂う、五香粉の香り。
ああ、これは台北の龍山寺の裏手のさ、台湾食堂から流れてくる香りだよね。
そんでもって頬張ったらどうか。
カリッとしてるよね。
その衣を歯でかみしめると、圧倒的なコラーゲンの皮目。
次にプリっとした身。
美味。
医食同源といいますが、体によい味です。実家の母和子と先日電話で話したら「股関節が痛くて、」みたいなことをいってたんですが、グルコサミンとかじゃなくて、こういうちゃんとした手料理を食べさせてあげたい。
もうそれだけです。
まとめ
ホシザメは比較的秋冬に釣れやすい
今回は、釣りあげたホシザメを料理してきたわけですが、もう旨いんです。
湾内ではドチザメより個体数が少ないんですが、釣れたら持ち帰るのもありだなと。
サイズ的にもドチザメよりホシザメのほうがコンパクトです。1mちょっとであれば細身だし、家庭で料理しても手に余るものでもないですし。
食について興味がある人は、一度持ち帰って食べてみるのもよいでしょう。