よく、釣り場で「(リールの)ドラグを締めているのに滑ってしまうんだよねー」みたいな話を聞きます。
そうなると、やはり人は「リール性能のせい」にしてしまいがち。
でも、本当にドラグが滑ってしまうのはリールのせいなんでしょうか?
今回は「リールのドラグが滑って効かない!」トラブルの原因と対策を解説します。
リールのドラグとは?
ドラグチェックを正確にやるためには竿先までラインを通して、ファイトする角度に竿を曲げ行う
リールに備わっているドラグ機構はドラッグともいうのですが、英語「drag」=牽引・引っ張るというような意味があります。
多くのリールに標準装備されている機構で、魚がヒットしたときに、ラインにかかるテンションを軽減するようにスプールの回転を調整する役目があります。
両軸リールではスタードラグ、スピニングリールではスプール上部のドラグノブを回転させることによりドラグ力を調整します。
ドラグは細糸でより大型の魚を釣り上げるためにはかなり重要な仕組みです。
ハイエンドのリールほどスムーズなドラグを装備しています。
リールの「ドラグが滑る」という現象について
「ドラグが滑る」=それほど負荷がかかってないのにドラグが滑って出てしまう状態
リールのドラグを「しっかりしめている」のに、大きな魚やタコなどがヒットしたときにラインが出てしまうことがあります。
これを「ドラグが滑る」と表現します。
釣り人としては「ドラグを締めている」という自覚があるのに、なぜかドラグが滑って糸がどんどん出てしまうわけです。
ドラグ滑りが起きていると、リール本来の性能を発揮できず、魚をばらしてしまったり、ファイトに長時間かかってしまうというストレスが生じます。
ドラグが滑る理由①「ドラグワッシャー」に水やオイルが侵入
塩噛みのある両軸リール
リールのギア部には知らないうちに水が浸入するものです。
通常、スタードラグ部分やメカニカルブレーキの隙間にはグリスがあり浸水を防止しています。
継続使用やメンテナンス不良により、グリスがとれると、ギアボックス部分に浸水します。
水が浸入することによりドラグが正常に動かないことがあります。
また、オイルがドラグワッシャー部分に入り、純正のドラググリスが流れてしまい、滑ってしまうということもあります。
<対策>
- 船釣りで海水をかぶるようなときに、スタードラグ類を締めてから竿を船べりに立てかける
- スタードラグ部(軸)、メカニカルブレーキ部のグリス切れに気を付けて日々メンテナンスする
- 流水やドブ漬け洗浄後はリールを完全に乾燥させる(陰干しの自然乾燥)
- メインギア部分にCRC556等の潤滑油を吹かない
- リール下部の水抜き穴からオイル類を注油しない
- ドラグワッシャーには各社指定のグリスを適量塗る(塗りすぎない)
リール内部はたくさんの細かい部品で構成されています。
整備に慣れていなかったり、細かい作業が苦手な場合、ギアボックスを一度あけるともとに戻せないということもあります。
筆者は主にシマノのリールをつかうのですが、特にドラグ音・スタードラグ調整音をつかさどっているピン部品はゴマ粒ほどのサイズです。
このゴマ粒ほどの部品が、各部品を外そうとした途端、バネと一緒に飛散して焦ることもあります。
また、適したオイル・グリスを適した場所に適量塗るというスキルも意外と高難易度です。
苦手な場合は、速やかにオーバーホール等のメンテナンスをメーカーに依頼するのもよいでしょう。
<参考URL>
ドラグが滑る理由②PEラインがスプール上で滑っている
道糸をPEラインにする場合、ドラグ云々ではなく、魚の引きに対してライン全体がスプール上で回転してしまうことがあります。
この現象を「ラインスリップ=糸滑り」と言います。
糸滑りがおきているリールの場合、ドラグの締めあげに関わらずハンドルが巻き取れず、道糸がえんえんと出てしまいます。
このため釣り人は、ドラグのせいにしてしまいがちです。
主に新品のPEライン(特に8本編以上)を巻きたてのリールで起こりがちのトラブルです。
<対策>
- PEラインを巻くときはテープ等でしっかりスプールに固定する(※)
- PEラインを数回スプールに巻いてから固定する
- スプールに固定溝がある場合はそこに結んで固定する
- ナイロンラインの下巻を行ってからPEラインを巻く
※ハイエンド両軸リールに搭載された超薄型の軽量スプールはテープで固定することにより、バランスが崩れキャスト時に異音(ブイーンというような)がすることがあります。その場合は複数回ラインをスプールに巻いてから結ぶ方法か、下巻を行ってからPEラインを巻きましょう。
ドラグが滑る理由③「ドラグ力を超えた引きや重さ」である
ドラグ力によっては、フルドラグ状態にしてもラインが滑ってずるずる出てしまうことがあります。
ドラグ力が低いリールで、青物・タコなどを釣ると起きがちです。
これは多くの場合、性能の問題なので、リールの不具合ではありません。
<対策>
- 対象魚に適したドラグ力をもったリールを使う
ドラグが滑る理由④スタードラグ部分の固着によりドラグが締められていない
かなり初歩的なところなのですが、ドラグをそもそも締められていないので、ドラグが滑ってしまうということもあります。
なぜ締められていないのか。
これは、ドラグノブを回してドラグをしっかり締めたつもりでも、ドラグノブが固着していて思ったように締められていないということがあります。
主にノブ部分への塩噛みが原因で船釣りの貸竿や長期間メンテナンスしていないリールで起きがちです。
<対策>
- メンテナンスをしっかりする
- 釣り船の貸竿は使うまえにしっかりチェック。必要によって交換依頼
「ドラグワッシャー」が潰れてしまっている
その他ドラグに関するトラブルで起きがちなのが、ドラグワッシャーの潰れです。
メインギアに付随するドラグワッシャーはフルドラグにしたままに保管しておくと、潰れてしまい本来の性能を果たせなくなります。
この場合、ドラグが滑るというよりも、ドラグがスムーズに動かなくなりがちです。
<対策>
- フルドラグの釣りをしたあとは必ずドラグをゆるめておく
- 流水やドブ漬け洗浄後はドラグをゆるめておく
初期不良の可能性
購入したばかりのリールで実釣にもつかっていない、かつ、注油もしていないという場合でも、ドラグが効かない場合があります。
リールを購入するときは、すぐに実釣で使用する前に、ラインを巻いてドラグがきちんと動作するか確認することをおすすめします。
実釣で使用したり、内部をあけて注油すると、使用者の責とされてしまう可能性があります。
まとめ
今回は「リールのドラグが滑って効かない!」トラブルの原因と対策を解説しました。
内部メンテナンスをしたことがない人はどうしても「リール性能のせい」にしてしまいがちです。
大物や逃したくないターゲットがヒットしたのに、ドラグが滑ってばらしてしまうのはとてもつらいですよね。
ぜひ釣行前に普段つかっているリールをチェックしてみましょう。
関連アイテム
▼通常メンテナンスはスプレー式のオイルやグリスで十分ですが、ドラグ部分には各社指定のグリスを使用します