釣った魚を隅々まで食べたい。
そう思う釣り師もいると思う。
そんなときにアラ汁はうってつけなものの、料理全体が魚づくしになると、魚以外の『外し』や『間』が欲しくなるときもある。
『間』があることによって、魚の味が引き立つし、魚の見えなかったよさに気づくこともある。
たとえばそれは『漬物』だったり。
味噌汁もすこしこだわって『赤ダシ』をつくってみると、食事全体の満足度もあがる。
赤だしとは
赤だしは料理屋などで出てくるイメージが強いと思う。
カテゴリとしては豆味噌を主体とした出汁を配合した調合味噌で、見た目が濃い赤銅色のようなものをいう。東海地方が主な産地のようで、市販の味噌のなかでは単価がやや高い。
量も500g、600gのような大容量ではなく300g前後で売られていることが多い気がする。
具はなめこだったり、しじみだったり。
ほかの地域はしらないが、東京でとんかつ屋にいくと、しじみ汁なことも多い気がする。
脂っこいとんかつを口にしたあとに、やや酸味の強い赤だしをすすると、口のなかがすっきりする。そしてまたとんかつに挑んでいく。
よく考えられたもんだ。
なめこの赤だしをつくってみた
はじめにいっておくと近頃は市販のダシが優秀なので、それをつかえば十分うまい。今回は自分でダシをとってみたが、好きなようにやればいいと思う。
細かくない鰹節だと格好がつくものの
鍋に水をいれて、昆布をいれて中火で沸騰させる。
魯山人の『引き出し昆布の技法』でいうならば、昆布はさっと出したほうがクセがでないのかもしれない。
沸騰する前のタイミングで鰹節をいれる。
でもって、ザルもしくは『こし布』もしくはその両方で濾す。
めんどくさいので、やや、かつお節が汁に舞い込んでもよいようであればザルで濾してしまえばよいと思う。
ここで想い出したが、わたしの小さい頃、たしかばあさんがつくっていた味噌汁がある。
煮干しと鰹節と昆布がはいっていて、ときおり、全部ダシがらがはいったままの味噌汁がでてきて、『カルシュウム云々』といわれて飲んでいた。
子がしっかり育つようにあえてダシがらを残していたのかもしれない。昔の人はカルシウムといわずカルシュームといったり、いろいろなつかしい。
味噌をいれてから何度も沸騰させるとダシのアクというかえぐみがでてくるのであまりおすすめしないけども、ダシがらとして捨てるのがもったいないという場合は、昆布は細く切ってポン酢で食べたり、鰹節は醤油とネギであえて食べるとそれはそれでいいおかずになる。
今回の具材は、なめこ。
このなめこは一般的な食材でどこのスーパーにも売られているけれど、もし、大ぶりなかさが開いた『完熟なめこ』などと呼ばれているものがある場合、それをつかうとさらに味わい深い。
どん。
このなめこを見よ!
実に『なめこ力』が高そうだ。
そういえば、なめこもしいたけ同様自宅で栽培できるキットがあるので、興味があればつくってみても面白いかもしれない。
かさの開いた完熟なめこをいれてすこし火を通す。
再沸騰するぐらいかるく火を通せていればいいと思う。
ちなみに、味噌汁に少量本みりんをいれると深みが増すのでオススメしたい。これは本当におすすめだ。だまされたと思ってやってほしい。入れすぎると甘みが強くなるので注意しよう。
赤だしの味噌は豆味噌で溶けにくいので、別の椀にダシをいれて溶かしておくと困らない。
ざっくり匙で味噌をとって溶かす。
このように濃い赤だし液をつくっておく。
火が通ったなめことダシは沸騰前に火を止めておく。
そこにさきほどの濃い赤だしをいれる。
こうすると味が均一になるからいい。
カウンターのある天ぷら屋で、板さんがお玉に小型の泡立てをつかって味噌をとかしていた姿をみたことがあるが、たぶん、別椀で作ったほうが溶け方はいいと思う。あれは格好がつかないからああしているのかもしれない。
椀にうつして、三つ葉を飾る。
豆味噌の、しょうゆにもよく似たすっきりとした香り。
やや酸味のあるその味わいに、余韻のある旨みが広がる。
三つ葉の香気。
撮影用に見栄をはって三つ葉を1枚だけ飾ったが、わたしは三つ葉が好きで、なめこ汁に三つ葉をどっさり入れる。
しゃっきりとした茎が、汁の熱気に押されてややしんなりになったところを食べる。
即席お浸しといったところだろう。
ちなみに、赤だしに限らずなめこ汁は、秋や冬は柚子の皮をすりおろしたものを入れると旨い。
なめこおろしで一息つく
完熟なめこは全部味噌汁にいれないで、別にとっておいて1品つくることもできる。
レンジでチンをし、大根おろしとポン酢をたっぷりかける。
冷やしてから食べるとさらにうまいが、
あたたかいままでも、実にうまい。
ポン酢の代わりに麺つゆをかけると、なめこ蕎麦のつけ汁にもなる。
あれは肉厚のなめこが冷たい蕎麦に絡んで主張してきてまたいい。