青潮から東京湾を考える。その正体は「巨大な池」だった!?

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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。サラリーマン・アングラーの釣人割烹@tsuribitokappouです。

新型コロナウイルスで5月の大型連休はつぶれましたが、欧米のような感染爆発には至っていません。かなり多くの地域で緊急事態宣言が解除され、関東でも釣り船を再開する動きが出ています。しかし、この先本当に感染が収束するのか見通せず、釣りに行くにしても感染防止に細心の注意が必要ですね。

さて今回は、筆者がよく釣りに行く東京湾について、「青潮」という現象からじっくり考えてみたいと思います。

目次

不気味なエメラルドグリーン

東京湾では夏場、ときおり「青潮」が発生します。

「えっ? 赤潮の間違いじゃないの?」

釣りをしない人やビギナーさんなら、そう思うかも知れません。青潮は釣りのベテラン、特に陸っぱりを好む人なら誰でも知っていると思います。東京湾だけでなく大阪湾や三河湾などでも発生し、伊勢湾では「苦潮」と呼ばれているようです。

昨年の夏、筆者が小学生の娘を連れて、いつもの江戸川放水路へハゼ釣りに行った日のこと。

娘が走って岸に先着すると、「見て!」と叫びました。川の水が青緑色に染まっています。遠くから眺めるとエメラルドグリーンに輝き、まるでグアムかサイパンの美しい海の色のようにも思えます。

でも、これは魚にとっては不気味な「死」の色。

青潮でした。あちこちにボラやハゼが何匹も白い腹を見せて浮かんでいます。「うわっち。こりゃだめだ」と戦意喪失。水の色に負けないブルーな気分で、すごすご撤収しました。

赤潮というのはご存じの通り、プランクトンの異常発生で海が赤茶色に変色する現象。

プランクトンは魚のエラに詰まって窒息させ、一帯で魚介類の大量死を招くこともあります。

青潮も同じように魚の大量死を引き起こしますが、赤潮とはまったく別物です。現象は知っていても、その仕組みまで知っている釣り人は多くないでしょう。

筆者には、東京湾を長年調査する研究者の友人がいます(匿名希望なので「A」とする)。最近Aと話す機会があり、青潮の仕組みを教わりました。恥ずかしながら初めて理解した次第。貴重な話なので、みなさんと共有したいと思います。

海底で酸素がゼロになる

Aによると、夏場の東京湾では表層の海水が直射日光で温められる一方、底の方は冷たいままで、対流も起きず、二つの層に分離するとのこと。まあ簡単に言えば、風呂が沸いたと思って飛び込むと底の方は水だった、というアレですな。

この状態のもと、海面近くではプランクトンが増え、ときに赤潮が発生します。富栄養化が著しい東京湾で、夏場の赤潮は珍しくありません。

プランクトンは死ぬと沈み、海の底に死骸がどんどんたまっていきます。これをバクテリアが分解します。大いなる生命循環の一環です。

「ところが、この分解のときに酸素が使われるんだ」とAは言います。

A:分解のプロセスを化学式で表すと……
私:いやいや、化学式いらん! 聞いても分からん。

こうして、死骸がどんどん分解されるにつれ、海の底の水は酸素が次第に少なくなり、ゼロに近づきます(これを正式には「貧酸素水塊」と呼ぶという)。

それだけではありません。有害な物質も作られます。

A:バクテリアの働きで「硫化物イオン」や「硫化水素」が増えていくのだ。
私:よう分からんが、ざっくり言えば毒なのね。
A:そうだ。化学式は……。
私:いらん!

かくして、青潮がいつ起きてもおかしくない状態となります。

陸からの強風が「死の水」を引き寄せる

「発生の条件は整っても、実際の発生にはきっかけがいるんだ」とAは言います。

ある日、陸地から海へ向かって強い風が吹きます。これに押されるように、酸素たっぷりの表層水が岸から離れます。すると、有毒で酸素ほぼゼロの水が、底の方から岸へせり上がってくる。

かくして沿岸部や川の汽水域で大量の魚や貝が死滅します。

今から5年前のこと。

千葉県船橋市などにまたがり潮干狩りで有名な三番瀬で、青潮が約1週間続き、3880トンのアサリが死滅して大騒ぎになりました(千葉日報2014年10月9日)。

東京湾の場合、夏場に吹く強い北東風をきっかけに、千葉県の船橋、市川一帯に青潮被害が出るパターンが多いようです。筆者もこれまで夏場に何度か、江戸川放水路でハゼ釣りやテナガエビ釣りを断念させられました。

私:ちなみに、青潮はなぜあんな色に見えるのだろう?
A:それはだなあ、貧酸素水塊に含まれる硫化物イオンが海面に出ると、空気に触れて化学反応を起こし、硫黄コロイドが……(以下略)
私:なるほどねぇ(あぁ分からん。聞くんじゃなかった)。

ようはマッチに使われる「硫黄」が、水面近くで多量に析出されるというのです。固形の硫黄の粉末は黄色っぽい色ですが、水に溶かすと白濁する(お肌ツルツルになる硫黄泉も同じ)。そこに太陽光が当たると、波長の短い光が散乱して青緑色に見える、というわけです。

専門家曰く、東京湾の内湾は「閉鎖性水域」

さて、なぜ東京湾で青潮が出るのか。友人の話はここから面白くなります。

東京湾は、房総半島先端の洲崎と三浦半島先端の剱崎を結ぶ線から北を指します。そして、富津岬と観音崎を結ぶ線の南北で「内湾」と「外湾」に分けられます。


Aによると、この内湾と外湾、 同じ東京湾なのにまるっきり性格が異なります。

内湾の平均水深は15m、深いところでも40mしかありません。

面積はでかいのに、潮の出入りする部分は富津岬~観音崎のわずか約7kmに絞られている。

海と言えば、海流や潮流で絶えず水が循環している印象があります。ところが、内湾にかんして、Aのような専門家たちは「閉鎖性水域」と見ています。

私:閉鎖性水域って……。
A:要するに、池や沼や湖と同じ。
私:まじか!?

なんと、東京湾内湾は巨大な「池」だというのです。

近年、夏は猛暑続きで海水の2層構造が強まり、台風などで水がかき混ぜられなければ、酸素のない水が「池」の底にたまり続け、青潮の発生条件は整う、とAは解説します。

この内湾に対し、東京湾外湾は太平洋に口を広げ、富津岬~観音崎ラインを越えると急激に深くなります。

水深は平均150mで、最深部は700m以上。幾筋にも谷がえぐれ、米国のグランドキャニオンもタジタジになるという地形。「東京海底谷」と呼ばれ、深海魚の宝庫とされます。

東京湾の内湾を漁師は「川」と言う

東京湾の内湾をめぐるAの説明にうなずきながら、むかし千葉・船橋の漁師から聞いた別の見方を思い出しました。

船橋市漁協の組合長も務めたその漁師によると、東京湾は富津岬~観音崎を河口とするひとつの「川」だというのです。三番瀬などでのアサリ漁の話題でしたが、東京湾の水質の問題に話が発展しました。

江戸川(利根川)や荒川は、治水・利水を理由に護岸やダムなどコンクリートで固められています。「それで上流(河川)の流れが悪くなった。だから下流(内湾)の水が腐るんだよ」と漁師は嘆いていました。

おまけに、臨海部もことごとく埋め立てられてコンクリートで固められ、自然の波打ち際が持つ浄化機能を失っています。

筆者がこの話をすると、Aは言いました。

「川も流れなければ、池と同じだよね」

ちなみに、国土交通省の国土技術政策総合研究所の研究者によると、東京湾には江戸川や荒川、多摩川など大小の河川から毎秒300トンの水が流れ込み、東京湾を出るのに1カ月もかかるそうです(古川恵太氏「東京湾内における水の循環、そのおもしろい特徴」)。

以上、浅くてよどみがちな池なので青潮が起きやすい、という話でした。

東京湾は本当は世界一豊かな海

東京湾は本来、おそるべき豊かな海です。

千葉市に「加曽利(かそり)貝塚」という遺跡があり、千葉の子供たちは必ず一度は見学に訪れます。

「千葉ローカル」と思うなかれ。今から5000年前、縄文時代中期の人たちが貝を採ってカラを捨てた跡なのですが、世界各地で発見された貝塚の中で世界最大級であり、想定される人口密度も世界一です。

さらに、東京湾は江戸時代には「江戸前」と呼ばれ、豊富な魚介類が当時の人びとの胃袋を満たしていました。

当時の江戸の人口は100万人で、やはり世界一の都市でした。

筆者が暮らす船橋の漁場も、江戸時代は「御菜浦」(おさいうら)と呼ばれ、庶民の台所として栄えます。

現在も漁獲量日本一とされるスズキをはじめ、サバ、カレイ、イワシなど豊富な魚種が水揚げされ、味も香りもよい養殖ノリも知られています。

しかし、何と言っても良質の天然アサリが有名です。東京湾のアサリは、湾内の豊富な植物性プランクトンをえさに育ちます。漁師たちは「輸入ものは海水の塩分が濃いためか、身が硬い。河口で海水に淡水が混じる汽水域で取れる船橋産は身が柔らかく、甘みがあり絶品ですよ」と胸を張って言います。

ところが、戦後の高度経済成長で東京湾は汚れ、1970年代には一時「死の海」となりました。

なにしろ、東京湾流域(降った雨が湾に流れ込むエリア)の人口は、東京、千葉、神奈川など1都7県2800万人に上り、その多くが日々生活排水を湾へ流し、これとは別に生産活動に伴う排水も流れ込むわけです。

いまや下水道の普及や工場の排水浄化対策で透明度は確実に上がり、ドブ川だった隅田川をアユが上るまでに復活しました。

それでも、東京湾の内湾は「池」。

油断すると汚れていきます。釣り人としては、無関心ではいられませんね。

釣人割烹@tsuribitokappou

※アイキャッチ画像出典:pakutaso

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