どうも。自称ORETSURI淡水担当・大谷賢史でございます。
渓魚リベンジ!ということで、今回も淡水です。
最近寄稿した渓流釣行の記事は以下の通り。
関東地方にして北海道や北欧の景観が眺められる奥日光・戦場ヶ原を流れます湯川に、北米原産のイワナである「ブルックトラウト」をルアーで狙いにいきました。
結果からいいまして、私には導き出せなかった釣り方を教えてもらい、シーズン最終盤にして、30cmオーバーの尺上ブルックトラウトが3匹も出るという大満足の釣果で締め括ることかできました!
釣友がね。
馴染み深い奥日光に思い出をたどる旅
我々は、東京の端っこ板橋区のまた端っこに生まれ育った生粋の江戸っ子(自称)。
今回同行のE氏とは同郷だが違う小学校の出身。なのだけども、私と同じく修学旅行は奥日光で、今回の湯川が流れる戦場ヶ原を児童だけの班行動で散策したとのことである。
あの頃のワクワク、ハラハラの大冒険を今も追いかける、四十が目前に迫るオッさ…青年二人の幼き日の思ひ出を辿る旅であります。
まあ『永遠の中ニの夏』ブラザーズは毎年そういって思ひ出をたどっているわけではありますが。
嗅覚
奥日光修学旅行は記憶も曖昧になり、いまや、とほいおもひで。
あのとき、時々覗かせる清流に「この川は居るっ!」と睨んだ私の幼くも鋭い嗅覚は正しかった。
30歳を越えたころからあの嗅覚は年々衰えていきますが、情報化社会の恩恵を受けて、他人が研鑽して会得した技術をさも自分が開発したかのように使い漁り、それなりの釣果を得てしまっている関係。
それで卑しくも釣りが上手くなった気分でのぼせ上がっている私ですが、冷静に見ると何の情報もなく、釣り具も移動手段も乏しかったあの頃より確実に「釣力」が落ちていると感じずにはいられません。
そこで釣力アップの為に今回はある装備を着用したら、忘れかけていた釣力がびっくりするくらいみるみる復活しました!なんだこれは。
「あると無いとでは大違いだよ」ORETSURIステッカーとTシャツだよ
手モミモミモミモミモミモミ。
ブルックトラウトとは?
ブルックトラウトとは、国内ではカワマスとも呼ばれています。が、トラウト(マス)ではなく、北米原産のイワナの仲間です。
日光には明治時代に外国人商人で日本の近代化にも寄与し勲二等朝日重光賞を授与されたトーマス・ブレーク・グラバー
氏によって移入されたといわれています。長崎県の観光地であるグラバー邸/グラバー園のあのグラバーさんですね。
マスやイワナの仲間は混雑してしまい生態系を崩す恐れがあるため、現在では移入は厳禁ですが、坂本龍馬さんたちが維新に奔走していた頃の話ですので致し方無いことでしょう。
ただ、湯川はブルックトラウトにも自然にもラッキーな環境。上流は湯滝で遮られ、下流は竜頭ノ滝で遮られ、ブルックトラウトが移動できない閉鎖環境であったのです。
また湯ノ湖は、火山の噴火で出来たカルデラであり、そこから流れ出す湯川も元々魚は住み着いていなかったといわれていて、ブルックトラウトが生態系を脅かすことなく静かに、しかし着実に繁栄していくことができたのです。
今現在は当然ですがブルックトラウトの放流はされておらず、グラバー氏が遠く離れた故郷イングランドの河川を想って放たれたブルックトラウトの子孫たちが、脈々とその血を受け継いで、自然繁殖で生き残っている「奇跡の魚」なのです。
湯ノ湖や湯川での釣りは必ず入渓前に釣魚券の購入が必要であり、完全キャッチ&リリースで調査目的の釣りとして成立しています。必ずルールは守って下さい!
釣魚券は下記で買えます。
- 湯ノ湖釣り事務所 0228-62-2524
- 赤沼茶屋 0288-55-0150
- 湯滝レストハウス 0288-62-8621
赤沼茶屋は朝6時からオープンしますので、朝イチ狙いの釣り人は赤沼茶屋へ。
栃木への釣行は佐野らーめん経由がオススメ
がっつりもやし佐野らーめん出典:どらぷら(https://www.driveplaza.com/sapa/1040/1040056/2/)
余談ですが、毎回東北自動車道を利用する際は、必ず佐野サービスエリアに寄ります。深夜でも美味しいらーめんや定食をやっている食堂が開いているからです。
あれ?ココ、パワハラでボイコットで臨時休業したトコじゃん!と不安を覚えるも、ちゃんとやってました。
ほっ。
まだほの暗い早朝ですが、お客さんもたくさんいて、賑わっていました。
我々利用者にはなんとも有難い存在であり、社員さんたちが一生懸命美味しいご飯を作ってくていることが、なんとも嬉しかったです。これからも使わせて頂きますので是非とも続けて下さい!
ちなみに、らーめんにもやしトッピングしたくて、「がっつりもやし佐野らーめん」を頼んだら麺もたっぷりで、寝起きの胃にカナーリのボディブロウを食らいました。
「赤沼茶屋」のご主人はいい人
いろは坂下のコンビニで食料と飲料を補給。中禅寺湖近辺にもコンビニはあるが、多少回り道をするので、ここで買うのがベター。
ハイカーらしき車が何台かしか走っていないいろは坂を登る。中禅寺湖畔に出たら左折し、二荒山神社、竜頭の滝を介して戦場ヶ原へ。
ここまでほぼ1本道なので迷うことはないでしょう。
そうこうして、開店の6時を少し過ぎたころに赤沼茶屋に到着。
車外に出ると半袖・短パンではだいぶ寒い。が、非常に非常に清々しい空気。
こりゃ、釣れちゃうわ!という気分にさせてくれる。
赤沼茶屋の重たいガラス扉を開けて入店し、ご主人より釣魚券を購入。
温和なご主人に状況を聞くと、シーズン終盤で魚はスレているが、上手な常連さんは「尺上サイズ」を釣りあげているとのこと。ポイントは湯滝下の上流域が良いとのことで、下流は全然話を聞かないとのこと。
ふむふむ。
ご主人「あ、鈴持ってる?」
私「ええ、持ってますよ。赤沼茶屋さんのオリジナルの奴。いつもぶら下げてますよ!」
ご主人「必ず付けてね」
私「ええ、付けます」
ご主人「昨日、中流域で常連さんが子熊見たって言うんだ」
私「ええっ!か、必ず付けます。鳴らしまくります」
ご主人「もうここは熊の生息域の中だからね。そのことをわかった上で沢山釣って楽しんで来てね」
私「はい」
とても温和なご主人が、全てを受け入れた上で語る言葉が胸に染みます。
口数が多い方ではないですし、年一、二くらいしか行かないので、毎回二言、三言話す程度ですが私は何故かこのご主人が好印象で好きです。
車に戻り、熊の目撃情報をE氏に伝えると、予想通りのリアクションで多少狼狽して悪たれをつく様子。これも違った意味で私は好印象で好きです。
いつもは赤沼茶屋から入渓し、湯滝まで遡行し、湯滝レストハウスでからあげ定食を食べて。バスで赤沼茶屋まで戻るプランを取ります。
が、今回は上流域が良いということで、湯滝駐車場まで車で行き、湯滝から赤沼茶屋まで釣り下ることに。
「湯滝」より入渓!
湯滝駐車場に着いて釣りの支度をする。
フライマン2名と、1名が同じく釣り準備をしている。先方さん方は焦って入渓しようとしているが、まあ、大自然を前に焦っても仕方ないよね。楽しくいこーや。と、のんびり準備。
こういうタイプの網はとかく草類にひっかかりますな。
長ズボンを忘れたE氏は文句たらたらいいながらも気合の入渓。
5分くらいかけてひときしり文句を言ったらスタスタと先を行くE氏。釣りバカだねー。
そんなE氏を見たフライマンが、「お互いに釣れるといいね!頑張ろう!」とでもいってくるのかと思いきや、上から目線で皮肉めいたことを吹っかけてくるので、チラっとフライオヤジの目を真っ直ぐ見つめ返し、気を取り直して入渓!!
湯滝マイナスイオンの中にいるのに気持ちがチクチクしたが、マイナスイオンと大自然に抱かれて3分で忘れた。
戦場ヶ原のパワースポット感、パないっす。
第一投!秒速で1,500円稼ぐ男
E氏は得意のスピナーを付けたので、私はめちゃくちゃアピールできそうなミノーを選択。
まあ、渓流で釣れたパーセンテージはスピナー70%、スプーン25%、ミノー5%くらいなもんで、ミノーで釣れたことあまりないんです。だけど、高価なミノー投げてると上手い人ぽいし、ブリブリ泳いでくれて釣っている感あって楽しいので。
パシュ!
まきまきまきまき。
パシュ!
まきまきまきまき。
パシュ!
まきまきまきまき。
パシュ!
まきまきまきまき。
グッ!
ビシっー!
安定の根掛かり。
膝丈位の所に引っかっていたので、川にパシャパシャ入って1,500円のミノーさんを回収。
俺、秒速で1500円稼ぐ男だわ。
さあ、くだんないこと言ってないで移動!移動!
小滝にて。ロケーションがいいからって釣れると思うなよ
川に降りたり、遊歩道に上がったりしつつ、小滝まで釣り下る。安定のノーバイト。
良いときならここまでのポイントが一番アタリが来るのですがねぇ。
小滝の水しぶきか、冷や汗か、額から汗が流れる。
小滝に到着。二股に落ちる7メートル程の滝。
小滝と言うにはもったいないくらいの雄大な滝である。
E氏が左岸側の落ち込み、私が右岸側の落ち込みを攻める。
E氏は数投で転戦したが、私は大物が潜んでいると捉え、15分程粘るがノーバイト。
泉門池で「汚いおっさん」2名は小休止
小滝より少し下り、「小田代橋」を渡ると視界が開けてくる。
その先が「泉門池」である。
泉門池のベンチで小休止。
ちょうど中間地点にあたる位置に泉門池というベンチやテーブルがある休憩スポットがある。
ハイキングの小学生達がおいしそうにお弁当を食べる中、オッさ…青年君子二人はわびしくも美味しいコンビニおにぎりとサンドイッチをパクつく。
安全な行程といえども、捻挫でもしようものならレスキューものです。安全第一で栄養補給しておきます。ボディブロウ(佐野らーめん)が効いている私は、なんとか口に入るチョコレートとレッドブルを胃の腑に落とし込む。
E氏「なー、おーたに、あの小学生らから見たら、俺らって汚いおっさんに見えてんのかなー?」
私「まー、その通りだからな」
E氏「あの女の子達からは、いい大人が朝っぱらから男二人で釣りしてるとか、軽蔑されてんのかなー」
私「まーなー、女の子は男より成長早いからねー。言われてるかもなー」
E氏「なにあの汚いオヤジ達、マジキモっとか・・・」
私「おー、もう考えんな!」
E氏「あの先生、かわいいな」
私「まんまくそおやじじゃねーか!(笑)」
などと、馬鹿しつつ釣り下ります。
え?尺ブルックはどうしたかって?
これからでござるよ。
恐怖!!クーマーの痕跡。そして、あいみょん。
禁猟区の泉門池を少し下り、再度入渓を試みる。この辺りは川と遊歩道が遠く離れ、藪漕ぎが必要となる。
釣果に恵まれない我々は決死の藪漕ぎをする。
獣道伝いにズンズン進んで行くと、大型動物がゴロンゴロンしたような後をみつけるが、これはUFOが作ったミステリーサークルだとの結論に至る。
また、ラグビーボール大の大型動物のフンらしき土くれをみつけるが、これはただの土くれだとの結論に至る。
・・・。
・・・。
・・・。
E氏「おーたに、こえーよ」
私「ばか。俺もこえーよ」
E氏「おまえが食われてる間に俺逃げるから、おまえ食い止めとけよ。二人ヤラれるより、助け呼んできたほうがいいだろ?」
私「絶対一人では死なん。必ず道連れにしてやる」
醜い人間模様ののち、一同ミステリーサークルと土くれであるという結論を思い出し、冷静さを取り戻す。
赤沼茶屋オリジナルcowbellをリンリンリンリン鳴らしまくり、大きな声で、
アルフィ~森の中~♪
坂崎に、出逢った~♪
花咲く森の道~桜井に出逢った~♪
E氏は完無視して、音楽プレーヤーから音楽を流した。
あいみょんだった。
え?
釣りは、って?
ええ、ここまでノーバイトなもので余談しかないのですよ。
申し訳ないっ
初ヒット!!き、貴殿の魚影?
泉門池より少し下流の穏やかな流れを攻める。
ここらは川に降りたら上がれなさそうなので、天然の土手上よりアプローチする。
私はまずはアピールして魚の反応を見たいと考え、スピナーとミノーが合体したド派手な見た目のルアーを選択。
で、安定の無反応。
E氏は相変わらずスピナー。
「アップ(上流)のピン(狙ったポイント)にキャストし、派手にアクションさせてリアクションバイト(反射喰い)させる」という渓流ルアー釣りのセオリーを全く無視。
シーバス釣りなどで使われる「U字メソッド」(アップに投げて、川の流れよりも少し早く巻き、身体の正面に来たら回U字を書いて魚に食わせの間を作る釣り方)でアプローチし、むしろセオリーであるアップの釣りを否定しないまでも、「あれではちょっとねえ」と認めた上で完全否定している。
と、いってるそばから、HIT!
貴殿でしたか。
って、貴殿、誰?
アブラハヤさん?
ブルックトラウト以外は放流してないと聞いていますが?
あとは、湯ノ湖の魚や卵が湯滝から落ちてきて、奇跡的に生き残った奇跡のニジマスさんや奇跡のヒメマスさんはいるかもしれませんが、アブラハヤさんは聞いてないなー。
アブラハヤと思われる10cm位の魚はかなり反応があり、スピナーをめちゃめちゃ追ってきます。ちなみに、E氏はトレブルフックなのに2匹の小さなアブラハヤ(仮)を釣りました。
どうやってフッキングさせてんだ???
私には追ってはくるが、安定のノーバイト。
私が使っている0.4号の細糸だと糸が流れを掴めず、ルアーが沈んでしまい、底に引っかかりそうで、時々竿をしゃくって根掛かりを回避するので、全く魚に相手にされず、またU字も書けない。
一方、E氏は道糸を目測0.8号~1号位の太めの糸を使い、器用に水の流れを掴み、スピナーが流れるタナを一定にして、上手くU字を書いてバイトに持ち込んでいるのです!
えーーー、糸って細ければ細い方がナチュラルに流れるから釣れるんじゃないのーーー!?
と、心の中で悶絶。
また、今回の私は流行のULのカーボントラウトロッドを使っていたが、E氏はオールドのグラス製Lクラスのトラウトロッドを使い、操作性を上げていた。それに太糸・太竿のE氏はルアーを何度も引っ掛けるが100パーセント回収しており、それが自信になって、より大胆にピンを狙えている。
商業釣りプロが語るメソッドなどに踊らされることなく、現場で掴んだ釣れる釣り方を実践し、魚を手にするE氏。
お、恐ろしい子!!!
さらに、これからE氏は、下流域で掟破りの釣り方で尺上ブルックトラウトを、なんと三本上げることとなる・・・
「釣れましたか?」の挨拶のつらさ
通らず(これ以上川を遡行できなくなるポイント)に出くわし、また藪漕ぎをして、遊歩道に戻る。釣れた興奮と更なる大物を求める興奮で、あれほどチビり上がったクマさんのことをすっかり忘れる。
遊歩道を私が先頭で歩いて行く。
小学生ハイカーの列とすれ違うと元気よく「こんにちは!」と挨拶してくれ、とても心地良い。
こちらもにこやかに「こんにちは」と返す。
でも、長い列だと何人にもこんにちはと返さなくてはならず、十数回こんにちはを口にしていると、閉口したくなる。だけど、そこは幼気なピュアハートを慮り、疲れた身体と私だけ釣れていない焦燥感に鞭打ってにこやかに挨拶を返した。
しかし、引率の先生やガイドのご老輩に悪魔の問いかけをされる。
「釣れましたか?」
ぐぅ。期待の眼差しがいくつもこちらに寄せられる。
「ええ、まあ、少しだけ」
と日本的婉曲返答はいくらでもできるが、突っ込んだ質問をされると、さらに嘘を重ねばならず、一瞬躊躇った末、
「ええ、まあ、小さいですが、少しだけ」
「相棒は釣れました!」
「僕は1匹も釣れませんけど」
と、正直に答える。
「頑張って下さい!」
と、優しい言葉がかえって私の胸に突き刺さる。
若人よ、おっさんの生き様を見よ!本当に恥ずかしいこととは、しょーもない嘘を吐いて男を下げることぜよ。
後ろを振り返ると今日一番の満面の笑みを浮かべるE氏がいた。
さらに、E氏は自分が先頭に立つことを頑なに拒み、私に「釣れますか?」と話掛けられるように仕向けた。小5で出会って以来全く変わらないE氏。閉口しつつ、予想した通りの行動を取ってくれるE氏にある種の感激すら覚えた。
若人よ、こういう大人にだけはなるなよ(笑)
藪漕ぎ地獄到来
青木橋より下流に差し掛かると、木々で覆われていた川相は一変し、辺りは明るく開けて、川は流れが緩やかになり、太陽をたくさん浴びた川には水草がびっしりと生い茂る。
川の流心、ストラクチャーの脇、水草と水草の間のチャネルなどにブルックトラウトと見られる魚影を時々発見するも、この辺りはルアーで釣るには厳しい。
どうにも水草に絡んでしまう。フライなら釣れるのかも。
ただ、本命ブルックトラウトの魚影が見えた事でテンションが上がり、人が釣りしてないポイントを目指し、藪漕ぎを開始する。
結果として、良い川相ではあるが釣れなかった。
遊歩道近くは膝丈の草であり、獣道か釣り人が作った道か行路はあるが、川近くになると獣道は頼りないものになり、植物もイバラのようなトゲトゲの細木が幾重にも重なって生い茂り、行くも地獄、帰るも地獄となる。
本当はE氏が動画を撮ってくれていたのですが、あまりにも画が辛いので自主規制しますが、まあ、言わん事ないです。釣れないし、魚影すらないし、行かんこってす。
さあ、いよいよ「ブルックトラウト」連発ですよ!
初ブルックHIT!!
実はブルックトラウト連発は最後の最後に泣きの一回ワンチャン狙いの半荘で、実績も乏しく、赤沼茶屋情報でも釣れないといわれていた、最下流域で釣れたのです!
予定退渓場所である赤沼茶屋に戻るルートに差し掛かるも、小魚二匹の貧果にどうしてもやるせない気持ちであり、お互いに2時間ほどしか寝てなく体力ゲージはレッドゾーン。
そうではあったが、どちらからともなく、退渓ルートに左折することなく川を下っていた。最下流域は、ゴーロ帯とまでは言わないが、岩盤の地形で、川は大石の間を白く泡立てて流れていく。
上流域は、川石を蓄えた渓流。中・下流域は、穏やかなチョークストリーム。最下流域は、岩盤の源流。
と、みるみる顔を替える。
ハイキングをしていても全く飽きないし、色々な釣りをしたいタイプの私にはとても楽しい。
私は相変わらずアップストリームにルアーを取っ替え引っ替え投げまくっている。E氏は、こちらも相変わらずスピナーであるが、セオリーに反し、ダウンの釣りをしている。
「アップは、流す時間短いからなー。ダウンのがいいんだよ」
とのこと。
道糸と川が並行になるようにしてルアーをかなりゆっくりとしたスピードで引っ張り上げていく。
ガックン!
ビシッ!
ほ、本命ブルックトラウト!!
毎年釣りに来ているが、毎回このイワナ族の美しさには目を奪われる。特にブルックトラウトは他では目にすることのない独特の美しさがある。
E氏「おーたに、釣れちゃった。キレーだなあ」
私「おーナイスバッティング(?)!!」
E氏「次は釣れよ。スピナーだよ」
私「おー。ありがとう。わかった!!」
足はもはや棒であったが身体に電流が走り、元気一杯であった。
木漏れ日ポイントと「ほっとけメソッド」???
E氏はそれから更にブルックトラウトを一匹追釣し、私にポイントの選定から流し方まで教えてくれ、なんとか私に一匹釣らせようとしてくれる。
ポイントは、いかにも魚が釣れそうな水深があるポイントや、大石の落ち込みであるのだが、E氏曰く、’喰わせるポイント’は落ち込みの中で「木漏れ日」を受けて、そこだけ明るくなっている場所だと言う。
最初は半信半疑であったが、E氏は実績を挙げているし、よくよく考えてみると、運河や河口でのシーバス釣りの「明暗メソッド」と同じである。
これは渓流釣りで使っているなど、どの釣り雑誌にも載っていない。
載っているのはORETSURIだけ!(手揉みモミモミモミモミモミモミ)
※明暗メソッド・・・橋桁の下の暗部にシーバスは潜んでおり、昼は太陽、夜は街路灯に照らされた明部にはプランクトンが集まりそれを狙った小魚が集まっている。暗部のシーバスは明部の小魚が暗部に流れてくることを待っており、そこで捕食している。その習性を逆手にとって、釣り人は明部にルアーを投げて、潮流や川流に乗せて暗部にルアーを流し込む釣り方を「明暗メソッド」といい、シーバス釣りでは定番かつ手堅い釣り方として有名。
さらにE氏は、2~3メートル程ラインを出すと、巻きも流しもせずに、静かに放っている。
「竿がブルブルしてたらOK」
とのこと。
ブルブルを感じられれば、ルアーがきちんと泳いでいるので釣れるとのこと。
なので竿もULよりもある程度ハリのあるLアクション程度のものが良いとのこと。
こんな釣り方を見たことがない。
が、記憶の片隅に、まだTHE FISHINGが月曜日の22時から放送されていたころ、当時の最先端ミノーであるダイワ・ルイスクリークミノーを下流に投げて、ルアーを本当の魚のように泳がせてヤマメを釣っていた画を思い出した。
25年前の記憶の限りのことなので定かな情報ではないが、ルアー釣りとはこうやるものか、と幼い記憶に刻まれたことだけは確かだ。
そんなことを思い返し自分を肯定し、E氏の言う通り放っておくこと約3分。
ガツン!!!
竿に大きなアタリが来た。
反射的に合わせる!
ピュッ
ルアーが空に弧を描いて飛び掛かって来た。
NO———!!!!
Damn it !!!!
残念ながらフッキングせず。もしかしたらスピナーのブレードにアタックして来たのかもしれない。
E氏「来た?」
私「来た。けど乗らなかった」
E氏「なっ。来るだろ」
E氏「ほら、な」
ビチビチビチ
35cmはあろうかというブルックトラウト。
焦りは焦りを呼び募る。
何とか釣りたい思いと、ベストポジションを譲ってくれ釣り方を全て教えてくれるE氏に応えるためにも何とか釣りたい思いが交差。
もうすでに足は限界を超え、歩くのもヨチヨチ歩きになっているが、自分を鼓舞し、釣り続ける。
E氏「おーたにー、ごめんなー。ニタニタニタニタw」
ブルックトラウトが喰いついたのはまたもやE氏のルアー。
これも30cmを超える立派なブルックトラウト。
もはや、すげー。達人の域。
E氏「またきちゃったよ」
E氏「あ、まただ」
オチでーす。
さらにさらにE氏は泣尺(30cm弱)の若々しいブルックトラウトを追釣。
私の焦りと疲れと眠気はピークだが、次のポイントに移動しようという気持ちだけは強く残っており、岩盤の川を岸に向かって渡河した2歩目に
ボッチャーーン!!
いわゆるピポット(穴)があり、腰丈まで水に浸かり、さらに前にいこうとする力により前のめりに倒れて顔までビッショリ。
脛をぶって短い時間うずくまるも、幸いケガというケガはなかった。
はっ!
ケータイ!!
右ポケットにあるケータイを思い出し、すぐさま取り出す。
カバーを外し、腰にぶら下げたタオルを掴むも当然ビッチョビチョ。
背中に背負ったリュックは防水仕様であるので、中は濡れてなく、予備のタオルを取り出して、濡れたケータイを包む伊達公子。あとは祈るばかり。
岩に腰掛け、バカ長を片足づつ脱ぐ。
私の足はジップロックがごとくつま先から太ももまでしっかりと岩清水で充たされており、ひっくり返すと半日おっさんの蒸れた足にまとわりついた岩清水がジャバーと大量に流れ出た。
もう片足も同じ様に水を掻き出し、濡れた身体を拭こうとE氏にタオルを要求すると、予想通り多少ボヤいた上で貸してくれた。
そしてさらにE氏は一匹追釣した。
達人かよ。
というところで、万策尽き、精魂尽き、納竿とした。
本日の癒しの温泉
温泉大好きE氏。
湯の湖畔には幾つか日帰り温泉があるが、趣向を変えて今回は宇都宮まで下ってみた。
『ただおみ温泉』(宇都宮市)
こじんまりした温泉だが、風呂は綺麗で、ちょうど夕食時だったので地元の人で賑わっていた。
まあ、今年もこんな緩い感じで、貧果な渓流シーズンでしたが、山岳渓流を登る知識も体力もないので、分相応に楽しい一年でした。
オフシーズン渓流を介して、また来年の春に旧友と会うことが楽しみです。
ではまた。
大谷賢史