今回は冬場の東京湾のスミイカ釣りで、「スミイカかと思ったらタコだったよ」と釣り人を落胆させるあの謎のタコについての話です。あれは何蛸なんでしょうね。
水深80mぐらいでスミイカのゲストで釣れる「謎の深海蛸」について
東京湾のスミイカ釣りは、秋口からはじまって12月ぐらいから深場のポイントが増えはじめ、年があけると浦賀水道航路から湾口にかけての水深60~90mあたりが主戦場になります。
水深90mを深場と呼んでしまうと、熱狂的な電動兵および深海戦士各位からひんしゅくを買ってしまいそうなんですが、スミイカ釣りはライトな手巻きリールで攻めることを考えると十分深場だと思っています。
そんな東京湾の深場のスミイカ釣りでも、いろんなゲストが釣れるわけです。
- シロサバフグ(無毒だが、今後水温が上がるとドクサバフグが北上し…)
- トラフグ(数キロサイズが釣れたらフグ料理屋に駆け込みたい)
- ツバクロエイ(ヒットするとマジつらい)
- オニヤドカリ(標準和名不明。殻が重いので良型スミイカと錯覚して落胆必至)
- 謎蛸(標準和名不明。今回のテーマ)
このかわいいスミイカちゃんが本命ながら・・・。
オニヤドカリの殻は重くて、釣り人は期待をもってしまう悲しい性。
硬い殻によってテンヤの鈎を一発で無力化するポケモンがいたり。
で、本題の謎蛸。
こちら。
こんな感じでテンヤやスッテに抱き着いてきます。
色身は他のタコ同様変化するわけですが、海面からあげてすぐは飴色っぽいなと。それとやや脚(腕?)が長めで、サイズはだいたい小型です。イイダコの大型ぐらいのサイズ。6月ぐらいによく釣れるマダコの子供ぐらいのサイズといえばわかるでしょうか。80g~200g程度が多い気がします。
スミイカを釣る人からすると、この謎蛸はスミイカとおもって深場から巻いてきたら、小さなタコだったとあって、大体がっかりされてリリースされているように思えます。タコに種類が多くいると認識されていないので、マダコを中心に考える人も多いので、これはリリースサイズだなという心遣いで逃がすひともいたり。それはそれでジェントル。
他に釣りあげてしばらくしてからの体表の質感が、すこし粒々だったりするので、それがいやで逃がすひともいるようです。隣の釣り人が「うわ、なにこのタコ気持ち悪」っていってました。
人は未知を恐れるもんなので、それはそれで正常な反応だとは思います。
が、なんどか持ち帰ってあれこれ料理に投入して食べている立場からすると、うまいのでどんどん食べればいいんじゃないかなと感じるわけです。
ということで、今回のこの謎蛸の料理して食べてみた様子をお送りします。
種類は「テナガダコ」「チヒロダコ」あたりかなと思っているんですが、魚とちがって、タコとか貝は種類の差異がわかりづらいんですよね。もし、詳しい方がいたらSNSのコメントなどで教えてください。
「謎の深海蛸」の下処理
では、まず下処理から。
こちらが全体像。
吸盤に墨が残ってますが、これはスミイカ由来の汚れです。こうしてみると脚が長いからテナガダコなのかも。
頭部+胴。
イイダコの特徴である輪の模様はないですね。脚のバランスからみてもイイダコではないとは思います。
頭部の裏はこの通り。
写真でみると白一色に見えますが、実際はオパールのように艶めかしく輝いてます。このあたりコウイカ類に近しい発光というか。
脚は細くて長い。
ギロリ。
体表がぶつぶつしているのがわかりますね。
下処理なんですが、塩でもみましょう。このあたりはマダコと変わりません。が、マダコより粘液の濃さが薄く、2、3回塩でもんで洗い流すだけでぬめりはとれます。
あとは胴をひっくり返して内臓をぬいて、目をくりぬいてスタンバイOK。
「謎の深海蛸」を茹でて刺身にしよう
まずは刺身用にレア目な茹でタコにすることに。
鍋に食塩水を沸かして、15~20秒ぐらい茹でました。褐色に濁っているのは、紅茶(セイロンブレンド)の茶葉をいれてあるからです。色出しと臭み抜きが目的です。
茹で汁の塩分はある程度濃いとタコの旨みが抜けないといわれていますが、所説あるのでお好みで。塩もみ時間はマダコと異なり短いので塩辛い味にはならないと思うんですが、あんまり茹で汁が濃くてもなーとは思います。
脚がゆだったら、くるりんぱ。
こちらが茹で上がり。ゆでると体表のぶつぶつ感がはっきりわかりますね。
マダコとは質感が違うなーと
そんじゃ、刺身で食べてみましょう。
「食べてみましょう」とかいって、食べるのはわたしなんですけどね。
脚はあえてこまかくせず、切り分け、
なにもつけないで食べる味は・・・。
やわらかい。マダコより、旨みは少ないかもしれないけど、味気ないということはなく味わいはある。タコ独特のクセは沿岸部で釣るマダコと異なりほぼなく、さわやかな味わい。
レモン醤油で食べたらさっぱりしてよかったなと。
「謎の深海蛸」をアヒージョにしてみる
こちら下処理済みの謎蛸。
アヒージョだったら、四の五の言わずブツ切りにしておけばいいんですよ。偉い人にはそれがわからんのです。
小型フライパンにオリーブオイルをドバドバいれて、白ワイン、がなかったので、安日本酒をドバドバ。あとは野菜類にクレイジーソルト+ナンプラー&ハーブ類(ディル+タイム)。これでOK。ホールの唐辛子はいれたほうがいいと思うんですが、ちょうどなかったので見送りました。彼は必要なときにいないものの代表選手だと思います。
それと茸。
マッシュルームを入れたかったものの、スーパーでけっこう高いんで、一瞬躊躇したら、隣にいたエリンギが「そのポジション俺でもいけます!」と98円とかの値札でPRしてきたので代替することに。誰かにチャンスをあたえることで世界は明るくなっていくもんです。エリンギよりマッシュルームの方がえらいなんて誰が明言できますか?
謎蛸なんですが、内臓もいれて加熱します。
15分から20分ぐらい加熱していたような気もするんですが、よくわかりません。アヒージョなんてそんなもんですよ。スペイン料理屋とかの洋メシ屋で、いいお値段なのに大した具材が入ってないこじんまりしたアヒージョがあったりするんですが、もうアヒージョなんか、ざっくりいこうぜって思います。
全部入れて弱火で加熱すればなんとかなるもんです。旨味がたりなかったら迷わずナンプラー。
するとこうなる。
蛸は仕上げにいれたほうが柔らかくなっていいかなと思いました。
が、20分ぐらい加熱したにしてはこのタコが柔らかい。やはりマダコとは異なる良さがあるわけです。旨味では負けるかもしれないが、柔らかく食べやすいという良さ。総入れ歯のおじいちゃんおばあちゃんでもなんとかなると思います。
息子には食べさせてないんですが、アレルギーがなければぜんぜんいけるやわらかさ。柔蛸。
こちらは、スーパーで半額で売られていたガーリックトーストを冷凍しておいたものを30秒ほどレンチンしたあとに、トーストしたもの。
それに謎蛸アヒージョをのせる。
頬張る。
ああうまい。
深海ダコは干物もいいぞ
謎蛸は小型なので、マダコとちがって干物にしても食べきりやすくてオススメです。
こちらは海水程度の塩水+日本酒に30分程度つけこみ1.5日干しあげたもの。
炙るとこの通り。
みるからにうまそう。
食べるときはまるかじりしてもいいんですが、調理バサミで一口サイズにして、七味マヨネーズをつけながら食べるのも乙です。熱燗によく合う。
噛むほどに滋味が染み出る旨さかな。
という句が出てきたんですが、そのまんまの感想です。
まとめ
さて、この記事で筆者は何が言いたいか。
こういった問いが現代文の試験であったりするんですが、みなさんにこんなことを伝えたいと思いました。
東京湾で深場のスミイカを狙っている諸氏に伝えたいのは謎蛸は十分旨いよ。柔らかくて食べやすいよ。
ってことです。みんなスミイカ一本槍で、0杯か一杯かのシビアな状況だったりすると、この謎蛸と本命のアタリを間違えちゃったりするんですね。で、水深80mから手巻きで頑張って巻き上げたら、謎蛸。
そこはかとなく、お隣さんからイラっとしている雰囲気を感じたりするんです。
が、俺はいいたい。それ旨いよっていいたい。
むしろリリースするんなら、俺にくれと。
ほくほくもらうぜ。
そういうことです。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)