ORETSURIをご覧のみなさんはじめまして。週末に船で東京湾や外房へ出るサラリーマン・アングラー「釣人割烹」です。
釣りは一種の「薬物中毒」ではないかと思います。釣っている最中は興奮でアドレナリン(脳内覚醒剤)が出まくる。釣行からしばらくは余韻が続くものの、次の釣行予定が立たないと禁断症状が現れます。頭の中を魚が勝手に泳ぎだし、仕事が手につかない。まことにやっかいです。
ペンネームは釣果や釣魚料理をSNSにUPするうちにまわりからつけられたあだ名で、気に入って自称しています。ORETSURI(俺釣)で同病の方々を知り、自分も釣りや魚の話を寄稿できたら、と。よろしくお願いします。
ビラメの沖釣りの魅力
旬の寒ビラメが食べたくて、2月下旬に鹿島灘へ釣行しました。ヒラメ釣りでは一般的ですが、生きたイワシをエサとする「泳がせ釣り」です。
この釣りは毎冬3~4回は釣行し、今シーズンは3回目。もっぱら千葉の外房で狙いますが、釣友に「銚子より北へ行くと魚がでかい」と聞き、初のアウェー戦に挑みました。
ヒラメ釣りの魅力は二つ。
第一に冬はまことにおいしい。
「タイやヒラメの舞い踊り」と古来より言われますが、マダイより断然うまい。刺身で寒ビラメをしのぐ魚はそうはありません。
第二に、魚との駆け引きが面白い。
今回はヒラメの泳がせ釣り未経験の方にその駆け引きの面白さを伝えたいものです。
ヒラメの泳がせ釣りのやりかた
ヒラメはフィッシュイーターで、魚を丸のみにします。イワシに親針と孫針(3本針やシングルフック)を仕込み、底近くを泳がせます。
道糸にショックリーダーを1mほどつけて親子サルカン結び、捨て糸50cmでオモリ(ノーマルタックルなら80号)をぶら下げる胴突き仕掛けを使います。エサはイワシですが、サルカンから横に延ばした70cm前後のハリスにイワシをつけます。仕掛けの捨て糸(オモリが根がかった場合オモリだけ切れる)とハリスの長さなどはポイントや釣り方によって変更していきます。
この釣りはカワハギのような難しい釣りではありませんが、イワシが元気に泳いでいるかどうかが釣果を分けます。
ネット上にUPされているヒラメ捕食動画を見ると、いざヒラメが仕掛けに近づいてきても、肝心のイワシが半死半生、ヨレヨレの状態だと食わずに離れていきます。なんらか違和感を感じて見切っているんでしょうね。
針の仕込み方はいろいろで、親針を上あごから鼻へ上向きに刺し貫くのが普通ですが、これは弱りやすい。
筆者の場合、鼻の硬い部分に横から浅く引っかけるように刺し通します。孫針は背か腹に仕込みます。背は外れにくく根掛かりもしにくいというメリットがあるようですが、ヒラメは底から跳躍して腹に食いつくことがほとんどのため、筆者は腹の尻びれ周辺に刺します。
イワシを握るときには手袋をし、できれば水の中で針を仕込むのがベストです。少し弱ったかな、と思えば迷わず取り替えてください。
応対が丁寧だった鹿島港「清栄丸」さんから出船
出典:鹿島港清栄丸
さて、鹿島灘ですが、なにしろアウェーで船宿が分かりません。
三つ、四つ電話をかけて、応対の丁寧さで選んだのが鹿島港「清栄丸」さん。これが正解でした。
前日は低気圧通過で船が出なかったせいか、大きくきれいな船に20人ほどが座り、満員電車なみの混み具合。でも若い船長さんと中乗りさんがてきぱきと動き、気分よく釣りができそうです。
午前5時過ぎに出船です。
釣り座は左舷トモから3人目。大釣りの妄想が膨らむ……
誰しもそうかもしれないのですが、沖へ向かうこのときが釣行でいちばん楽しいかもしれませんね。
序盤、ヒラメのあたりが出ず・・・
だんだんと東の空が明るくなるころ、鹿島沖水深30mのポイントに到着しました。
イワシに素早く針を仕込み、オモリとともにゆっくり海底へ送り込みます。中潮で満潮の7時まではまだ時間があるが、オモリはまっすぐに落ちていくようです。潮があまり流れていないのか?やや苦戦の予感がします。
ここ数年、寒ビラメは外房や茨城沖で好調です。
原発事故後、福島沖で漁をしていないことが影響しているのかも知れません。とはいえヒラメはボウズ覚悟の釣りです。これまでも苦戦や手痛い敗北を何度となく強いられてきました。
オモリが着底したら50cmほど浮かせ気味にし、ときどき底を取り直しつつ、アタリを待ちます。
と、開始早々に中乗りさんが左舷トモへ飛んできて、網を構えました。陣取る中高年氏の竿が大きく曲がっています。
どうやら2キロのヒラメが上がったようです。「よしっ!」こちらも気合いが入るというもの。
すると右隣の初老氏の竿も曲がりました。で、でかいぞ。3kg近くありそうだ。これが鹿島灘なのか。
が、わが竿にはなぜか反応がない。「おーい。ヒラメよ、どーした?」と声に出したくなる。気合いの炎が不完全燃焼で黒い煙を出し、やがて釣り人の誰もが感じる『あの焦り』に変わってきます。
ううむ。。。
さらにあちこちで竿が曲がり、すっかり疑心暗鬼に取りつかれた開始30分すぎのこと。
プルプルプル……。
穂先が震えます。
おおお、
ついに待望の前アタリだろうか。
・・・
ガツッ、ガツッ
竿先が海面に乱暴に引き込まれ・・・
前アタリはイワシがヒラメに捕捉され追われて暴れるときにでて、強いアタリはヒラメがイワシをくわえ込んだときに出ます。
でも、すぐに合わせてはいけません。
ここは我慢との戦いです。むしろ竿先をゆっくり下げて道糸のテンションをすこし緩めましょう。
捕食動画での様子を見るとヒラメは不器用です。魚を一気にのみ込むのではなく、くわえたあと体を激しくくねらせながら何度か噛み直し、魚が弱るのを待つ傾向にあります。
この状態でアワセを入れると、イワシが口からすっぽ抜けてしまいます。
俗に『ヒラメ40』(40秒待ってアワセを入れる)ともいいます。これは大げさですが、最初のガツッ、ガツッをやり過ごすと竿が一段と強く引き込まれる。この時に初めてアワセを入れます。
今か、今か、とタイミングを図るこちらは興奮の極。
竿全体がグーっと重たくのされる。今だ、乗れよ!
ゆっくりと、力いっぱい竿をあおり合わせると釣り竿が弓なりに絞られ、穂先が海に突き刺さる。
よっしゃ!
重みに耐えリールをゆっくり巻いていくと、胸に安堵感が広がっていきます。よかった。ボウズでなくてよかった。
上がってきたヒラメは50cm弱で1kgちょうど。大物ではないが「ヒラメ」と呼べるサイズです(ヒラメ釣りでは小物を「ソゲ」という習慣があります)。
ようやく、ボウズを脱してリラックスし、さらに同型を1枚、小ぶりを1枚追加。1時間ほどで3枚は「ロケットスタート」だ、どこまで枚数が伸びるのか……釣り人の妄想が加速します。
が、釣りはそんなに甘くないわけです。満潮でアタリが止まり、下げ潮になっても戻ってきません。
昼近くに1度、ガクガクッときたものの、ふっと手応えが消えてしまいました。上げてみると、イワシの身に、縦にナイフで傷つけたような噛みあとが……。
これは悔しい。
ヒラメに入れ食いなし。1度の釣行でアタリの数はおのずと限られ、一つひとつを確実に仕留めなければなりません。何打数何安打という感覚です。
移動して沖合の漁礁ポイントでクロソイ祭り
沈黙の時間が続いて、「少し走りますよ〜」と船長。
沖合40mのポイントへ。
「漁礁があるので根掛かりに注意してくださいね〜」
ここで根掛かりが怖くて釣りができるか、と、攻めの姿勢で仕掛けを二つロスト。。。
三つめの仕掛けを落とすと、グーッと竿が引き込まれる。
・・・
あれ。本命ではありません。
浮かんできたのはブリブリ太ったクロソイ。いいですねえ。
続いて弱いアタリ。小ぶりのカサゴです。ますますいいねえ。
このあとは釣り物を変えたかのようにクロソイ祭り。
悔しいことに、ミヨシ(船首側)の方でがんがん大物が上がっていきます。
左隣に陣取る釣友は、でかいホウボウをゲット。
他にハタ、マトウダイもでていましたが、ヒラメは出ず。
・・・
正午前に船長の「それじゃあ上がりますね〜」で終了。
振り返れば、釣りはじめのわずかな時間が勝負どころでした。
食い渋る中で4打数3安打はよしと思い、他にもっと釣った人もいるだろうと思ったら、ヒラメは3枚を釣った3人が竿頭でした。
最大は3kg。2kg台も3枚上がる中で大物に恵まれず、うれしさは半分。小ぶりのヒラメを釣友のホウボウと交換し、家族の胃袋は幸福に満たされました。
鹿島灘のヒラメ釣り、次回に期待が膨らみます。
それではまた。
釣り人
釣人割烹
お世話になった船宿
当日のタックル
釣り竿:和竿(2本継ぎ)2.2m
リール:ダイワ・プリード150SH-DH
ライン:PE2号
仕掛け:自作(親針丸せいご17号、孫針トリプル6号、
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