どうも平田です。
おや、なんだか路線変更したかのようなタイトルですね!
でも、安心してください。
わたしは、「敢えて食べなくて良いものは、無理して食べない派」に所属していましてね。
ちょっくら話をすすめづらいので、のっけからネタバレさせておくと、今回は磯場にいるショウジンガニを獲って食べる話です。
(アイキャッチ画像でもうバレてますが)
ショウジンガニとは。なんで「磯蜘蛛」なん?
最大サイズのショウジンガニ
ご存じない方もいるので、簡単におさらいしておきます。
ショウジンガニは漢字で書くと精進蟹。
「イソガニ」「マガニ」「イソっぴ」などと呼ばれる蟹で、一般にはほとんど流通しません。
外洋に面した小磯・テトラ帯・ゴロタ場など障害物が多いエリアを好む蟹です。
波しぶきがバンバンあたるような潮通しがよいところを好むようで、漁港の船溜まりや港湾内の諸々滞ったところにはあまりいません。
漁港だったら外海側のテトラ帯にいるんですが、だいたいそこは立ち入り禁止だったり。やむなし。
昼間ショウジンガニはこういう外海側の消波ブロックの穴にいるぜ
昼間でもテトラやゴロタの穴にいるものはとれるものの、全体的には夜行性。
夜になると、シャカシャカと、穴の外側に出てきて、岩などについた海藻や小動物などをつまんでいるのをみかけます。
ショウジンガニは動きがめちゃくちゃ速いんですね。
で、障害物を蜘蛛のように移動することから、個人的に「磯蜘蛛(いそぐも)」というよんでいるわけです。
また、甲羅の色が岩場の色に近く、その擬態もニンジャの岩隠れの術(土遁→磯遁か)っぽいんです。
ちなみに磯迷彩カラーの甲羅はイカタコと異なり、固定色。
極端に色合いが異なる場所にいる個体はそこそこ目立ちます。
たとえば、ショウジンガニは赤っぽい個体が多いのですが、目が慣れているひとは、この赤が立体的に浮き上がって見えます。
「蟹眼」ってやつです。
他の蟹と比較すると爪が小さく脚が長い。この脚先がテクニカルな動きを生み出す
見た目もなんとなく両爪が小さく、脚が長いから蜘蛛っぽい。
逃げるショウジンガニ
▼ショウジンガニは味噌汁にするとイセエビ風味
ショウジンガニを手づかみで獲る!
ショウジンガニをつかまえる方法は、たも網を使う他、「ひっこくり」というおもしろ&グレーな漁具があるのですが、今回は手づかみでいきます。
ちなみに「ひっこくりがなぜグレー」かというと、自治体ごとの漁業調整規則につかってよい漁具というのがあるんですね。
で、だいたい担当者さんに問い合わせすると、「使ってよい漁具に入らないものは蟹網などふくめて全部NGなんですよー」というような回答だからです。
まー仕方ない。
蟹網やカニ籠は、確かに職漁とのバッティングもありそう。
棒をつかった「ひっこくり」ぐらいはいいだろうとは個人的に思うもの、正義マンが湧いてきて、匿名で叩いてくるから五月蠅そうだな、という君子危うきに近寄らず的クレバーな配慮です。
ちなみにわたしは己を棚に上げて「ひっこくりをやめよ!」みたいなことは全くおもわないので、やっている方は、よしなに。
ということで、「徒手」こと手づかみでゆきましょうかね。
ちなみに「素手だと岩場などで怪我をするのが必定」これは、初期コーエー三国志の諸葛亮の助言なみに当たります。
ってことで、軍手装備よろし?
・・・
・・・
・・・
夜磯に到着し、ショウジンガニを探していきます。
そこら中にいます。
あ、そこにいる。あそこにも、そこにも、ここにも。にもにも。
で、中小型を捕獲していくんですが、ふとチラ見すると、大型の白っぽい蟹が。
みると、ショウジンガニっぽいんですが、老成したイシガキダイのクチジロみたいな風格を放っている。
三国志好きの人は、黄蓋とか黄忠あたりを想像してみてください。ほわんほわんほわん。
老将ながらも、武力を隠し切れない個体です。
気を抜くとやられる(逃げられる)。
とはいえ、隙間に潜んでいる写真を撮影したろうかしらん、と思ったら、案外この老将が若手と同じくらい感がよい。
で、気取られて、逃げられ・・・。
と、思ったら、スマフォを持ってない方の左手がすさまじい高速で一閃!
敵将 デカ・ショウジンガニ、討ちとったりぃー
き、利き腕でないと油断していた・・・
「天地を食らう」のやりすぎか。
ってことで、こちらが老将先生です。
見事な白髪、じゃなくて腹白ですね。
持ちかえって、人が良く入るところのレギュラーサイズと比較してみました。
デカい!
タランチュラっぽい!
あいかわらずいい腹してますね。
よく見たら、老将だけにオスか。
つぶらな瞳が可愛い
この個体は人生で2番目の大きさです。
赤備えのショウジンガニ
こちらが赤備えが一番大きいやつで城ヶ島で釣ったやつです。
このサイズになると、ちょっと身体が重くなるのか、障害物の側面につくというよりも海底を好む気がします。
岸壁から透き通った海底を眺めていると、赤くてデカめの蟹がいるぞ、ってのはだいたいショウジンガニの大型です。
大きいのは一匹だけで、あとは小型~中型。
とはいえ、汁ものにするのでサイズはあまり重要ではないんですよね。
下処理は尻蓋を剥がして、水洗いし、脚と胴体を3,4分割。
本当は甲羅を剥がしてエラや胃袋を処理したほうが丁寧なんですが、今回はパスで。
まずは日本酒・本みりんと焚く。
室内に、蟹というかイセエビというか、その両方の混然とした食欲を刺激するニオイが充満。
今回は雑炊に仕上げるので、殻が邪魔になるため濾すことに。
お前が蟹汁の深淵をのぞき込むとき、蟹汁もお前をみている。
なにそれ。
で、濾すときに重要なのが、砂噛み対策です。
ショウジンガニは砂地にいるわけでもないのですが、海藻などを食べる際に体内に細かい貝殻やら砂を噛んでいるですね。
あとは自然と殻にフジツボ類などが付着してしまったような奇行種に見えるものもいます。
なので、無配慮で雑炊にすると砂利雑炊になって泣く。
後悔は先に立ちません。
でも安心してください。
濾しとるときに布などをつかえば、この砂利アタックは回避可能。
見えますか砂利や細かい貝殻です。
ええ、砂利です。
ちなみにこの砂利などは比重が重いので、汁の底に沈みます。
なので味噌汁にするときは下にたまった澱を吸わなければOKです。
泰国風雑炊に仕上げる
さて、ショウジンスープができあがったところで仕上げに移りましょう。
今回はタイっぽくしたいと思います。
ハーブは、コブミカンの葉、レモングラス、ガランガーのスライス、つぶしたニンニクです。
生ハーブが最上なんですが、そろえるのがメンドクサイと思う人は、業務スーパーで、カオマンガイペーストを買ってきましょう。
だいたい同じような風味になります。
あと、インドネシアのソトアヤムのペーストでもよいです。
次に冷凍庫にある白飯をレンチンし、水洗いしてザルで水をきっておく。
こうすると、汁の粘度を押さえることができます。
日本米ではなく、ジャスミンライスを使うとさらに美味です。
あとは炊く。
炊く。
炊く。
味付けはナンプラーとウェイパーや創味シャンタンのような動物出汁とハイブリッドにしたほうが美味です。
蟹のうまみはしっかり出ているので、白飯がしっかり汁を吸えばOK。
できました。
蟹味噌っぽい色合いですね。
見栄えを考えて、盛りつけるとこのように。
仕上げにはガーリックオイル少々・コリアンダーパウダー少々。
ライムがなかったので、冷蔵庫に放置していた青柚子を。
実際、ハーブ類は食べないのですが、お店のトムヤムクン同様、飾られているだけでタイっぽさが出ますね。
あとは食べるだけです。
味は・・・。
・・・
湯気と一緒に香る、ショウジンガニ由来の蟹&伊勢海老風味とナンプラー・生ハーブ・ガーリックオイル由来の泰国風味!
そこに、わかりやすい旨味の動物出汁が加勢、海鮮泰国出汁との鶴翼の陣にて一斉攻撃!
さらに、見えないところから策士の「青柚子」が得意の酸味で戦場を引き締めているかのような。
かのような。
どうでしょう。
こういえば、わかりますか。
・・・
え、わからない?
ではでは。