日本の釣り鈎は、世界に類をみないほど、その種類が多岐にわたっていることが知られています。
このように対象魚や釣り方ごとに釣り針の形状がたくさんあるエサ釣りに対して、海外から入ってきて広まったルアー釣りのフックといえば、それほど多くの選択肢がありません。
今回は、ソルトルアーのフックについて基本的な種類と形状の特徴について解説します。
ブラックバス釣りを経験したあとに海のソルトルアーにチャンジしはじめた方は、だいたいのイメージがついているかと思いますが、エサ釣りメインの方がルアーをはじめる際は、イメージがつかないところも多いのではないでしょうか。
ルアーフックの形状(プラグ)
プラグ類のフックはトレブルフック(トリプルフック)が主流
まず樹脂製のプラグ類(ミノー・シンキングペンシル・バイブレーション等)に装着するフックはトレブルフック(トリプルフック)と呼ばれる3本針が主流です。
魚種によってバイトの仕方の特徴などはありながらも、トレブルフックをつけることが一般的なのがプラグ。
リアクションバイトなどの際に、口の中だけでなく外側も含めて複数個所フッキングするので効率がよいフックとも言えます。
一方、針の数が3本(×2がほとんど)と多いため、口が堅い魚の場合はフッキングパワーが分散され、バーブ(かえし)を貫通するまでにシングルフックより力が必要です。
また刺さった場所によってはフック同士が干渉して、肉切れを誘発してバレやすくなるというリスクもあります。
海藻や根回りを攻めるハードルアーは、シングルフックやダブルフックに変えるのも一つの手
人気のメタルマル。トレブルフック+ダブルフックだが、専用のシングルフックが別売りされている。
海には、波や火山活動によって生じた淡水以上に複雑な岩礁帯があり、波や海流に負けないように力強く成長した海藻類が繁茂してます。
根魚と呼ばれるカサゴ、ムラソイ、ハタ類、アイナメを狙う際はこれらの根回りを積極的に攻める必要があるため、根がかり対策のためにワーム類を使うことが多いと言えます。
一方、こうした根魚ゲームで、リアクションバイト目的など意図的にプラグ類を使う場合もあります。こうした根回りでのプラグの利用では、シングルフックやダブルフックに換装しておくことで根がかりの可能性をさげることができます。
たとえば、シングルフックに変えた場合は、針先が1つになるわけですので、単純に根がかりの可能性が少なくなるのと、仮に海藻類に引っかかった場合も、タックルの強度によっては海藻を切り裂いて回収することが容易になります。
魚種ごとのバイトの特徴や活性によっては、フッキング性能がトレブルフックに劣りますが、しっかりフッキングしたあとはトレブルフックにまさる保持力があるとも言われます。
ルアーフックの形状(ワーム)
次にワームと呼ばれるソフトルアーのフック形状について解説します。
大きく分けてソフトルアーのフックにはストレートフックとオフセットフックがあります。
ジグヘッドとよばれるオモリ付きの針においても同様で、ストレートフックタイプとオフセットフックのタイプが販売されています。
では、この2つのフック形状はどういったときに使い分ければよいのでしょうか。
ストレートフックが得意な釣り・ターゲット
ストレートフックは、針のチモト(アイ)がまっすぐになっているフック全般を指します。(ジグヘッドの場合はオモリ鋳付けのためにアイ部分が垂直に曲げられていることがほとんど)
このフックはワームを装着した際に針先を露出させることを想定した釣り方で利用します。
ストレートフックは、針先が露出していることにより、フッキング性能に優れていますが、根がかりの回避能力は後述のオフセットフックに劣ります。
主にストレートフックは、フッキングさせやすく根がかりしにくいところで利用するものと覚えておきましょう。
たとえば、根が少ないポイントを中心にマゴチやヒラメを狙う場合はフッキング効率からストレートフックが広く用いられます。
特にマゴチや大型のヒラメの場合は、顎が硬い場合も多く、ショートバイト等ではフッキングしにくいところもあるため、シングルフックを用いた確実なフッキングが好まれているわけです。
<シングルフックを利用することが多い釣り>
- ベイエリアのシーバス釣り
- 根が少ないサーフでのマゴチ、ヒラメ釣り
- 根がそれほど荒くないところでの根魚釣り
オフセットフックが得意な釣り
次にオフセットフックです。アイ部分がまっすぐなストレートフックに対して、オフセットフックはアイの手前で線材曲げられています。
バス釣りでよく使われるゲーリーグラブの手製イモリグ。スキッピングでオーバーハングしたところにも流せる
オフセットフックのワーム装着では、この線材の曲がった部分を利用してワームのアイ部分と針先が同じ方向、もしくはやや内側に向くようなセッティングができるため針先が隠れ根がかりの可能性をさげることができます。
バスフィッシングでは、障害物際や水草の中や表面を攻めることが多く、このオフセットフックをつかったリグが好んで利用されます。
同様に、海釣りにおいても、カサゴ、ムラソイ、ハタ類、アイナメなどの根魚を狙う場合や根が荒い場所のヒラメなどを狙う場合はこのオフセットフックをつかったリグ(仕掛け)が好まれます。
一方、針先が露出していないという特徴により針がかりに難があり、ストレートフックよりもフッキングにパワーが必要です。
マゴチなど、あごが硬い魚を狙う場合はこの点をよく理解して釣ることをオススメします。
<オフセットフックを利用することが多い釣り>
- 根が荒めの場所でのサーフでのマゴチ、ヒラメ釣り
- 根が極めて荒いところの根魚釣り
オフセットフックを使用したリグには、ジグヘッドタイプのほかに、以下の方法があります。
直リグ
直リグは、オフセットフックのアイ部分に、スプリットリングもしくは溶接リングにてオモリを接続する仕掛けです。オモリの接続方法によっては、オモリのg数変更がしやすいといえます。
テキサスリグ
テキサスリグはもともとブラックバス釣りのために用いられていた仕掛けで、バレットシンカーと呼ばれる銃弾型のオモリ(素材は、ブラス・鉛・タングステン等)をラインに中通しで装着し、状況によって固定、もしくは固定せず装着(エサ釣りでいう遊動式)するものです。
オモリ部分をフリーにしておくことによってワームの動きをよりナチュラルにすることもできますし、固定して海藻などをすり抜ける回避能力を高めることもできます。
また、ビーズをバレットシンカーとアイの間に挟むんだり、水中で発生する音によってことよって集魚効果を高めることができます。(例:ブラスシンカーとガラスビーズを固定せず装着)
釣り場や魚の状況によって使い分けましょう。
キャロライナリグ
キャロライナリグはテキサスリグにやや似ていますが、フロロカーボンやナイロン等のリーダーを使い、サルカンを通して道糸に結ばれるところが異なります。
道糸+バレットシンカー(ビーズ等)+サルカン+リーダー+フック
という構成で、サルカンの上下で2回、フックで1回結ぶ必要があるため準備に手間がかかるリグですが、オモリの重さを活用しつつ、海底からリーダーの長さ分だけノーシンカー状態でワームをアクションさせることができるところがポイントです。
ソルトゲームの場合は、手間もかかりつつテキサスリグに隠れて出番が少ないことも多いですが、根魚やアジングで愛好家もいるリグです。
アシストフックをつける釣り
シングルフックとオフセットフックについて解説しましたが、釣り物によってはトレブルフックを用いたり、アシストフック(エサ釣りでいう孫針)をつける場合もあります。
主に捕食がうまくない魚に対して、食わせて釣るだけでなく、近くによった魚を引っ掛けにいくような釣りでアシストフックが用いられます。
<アシストフックを利用することがある釣り>
- マゴチ、ヒラメ釣り
- タチウオ釣り(主にワインド釣法)
捕食が下手だったりショートバイトが多い釣り物の場合アシストフックを装着することにより、バイトからヒットまでの確率を上げる釣り方も好まれています。
フックの強度・重さ・ルアーとのバランスについて
シングルフック、トレブルフック、いずれにしても重要なのがフックの強度とバランスです。
大型で引きの強い魚ほど、フックを伸ばされないために線材が太い太軸フックを利用し、小型のターゲットは細軸フックを利用するのが一般的です。
太軸フックをフッキングさせるためにはそれ相応のパワフルなタックルが必要ですし、細軸フックを強いタックルで合わせると、針が伸びやすくもあります。
このように、フックを選ぶ際は、対象魚やそのサイズ、タックルとのバランスを考慮する必要があります。
また、ハードルアーの場合、備え付けのフックから変更することにより、もともとのルアーのバランスが変わることがあり、オリジナルの動きが出にくくなることもあります。
特に、軽いルアーやスローフローティングやサスペンド系ルアーについては、絶妙な浮力やバランス設定がされていることもあります。フックを変更する前後は、その動きの変化に注視しておいたほうがよいでしょう。
最後に
釣り具屋やAmazonをのぞくと、無数に登場するフックの種類。
どの釣りに何が正解かを決めるのは最終的には人それぞれなのかもしれません。
一方、もともと作られた意図やリグ(仕掛け)が生まれた背景を考察してみると見られる世界もあるはずです。
自分が信じられるフック、信じられるリグを早期に発見して、自信をもって釣りをすればきっと釣果も向上するはずです。