魚釣りをしていると、やみくもに持ち帰るのではなくときには自分のなかで条件を決めてリリースするようにしている釣り人もいるはずです。
一方、一定の水深から魚を釣り上げると、水圧の差で浮袋が膨らんでしまったり、口から胃袋が出てしまうことがあります。
こうした個体は蘇生しないため持ち帰るしかないと思われがちです。
小さな個体や抱卵個体など、自分のなかで持ち帰らないと決めている魚のダメージを最小限にし活かしてリリースする方法はあるのでしょうか?
山口県のキジハタ保護に関しての事例を紹介
山口県では平成25年10月から全長30㎝未満のキジハタの採捕を禁止しています。
これは該当エリアの漁業調整委員会による取り決めによる指示ですが、釣りでは専門的に狙わないまでも30cm未満のキジハタが釣れてしまうこともあることでしょう。
メバルやカサゴなどの釣りでは、ボトム付近を狙うこともしばしばで、中にはキジハタが混じることもあります。
釣り上げたキジハタの中には、リリースしようにも傷があったり浮袋が膨れてしまっている個体もでてくるはずです。
このときリリースすると、キジハタは死んでしまうのか?
この話題について山口県の水産研究センターが調査をしたデータが公開されています。
そこで水産研究センターでは建網と釣りで漁獲された小型
魚を用いて再放流効果の検証を行いました。
建網で漁獲され傷ついた小型魚を1ヶ月間飼育して治癒度
と生残率を調査しました。その結果、漁獲時の傷は治癒し、
約99%の個体がその後も生残することがわかりました
出典:山口県
まず、写真にあるのは釣りではなく網による漁獲などのものと思われますが、身体に傷をおったキジハタが1か月で治癒する様子が公開されています。
皮膚がかなりざっくり切れているような状態でも再生するんですね。
また、99%の個体が生存するということです。適切な処置をすれば生かしてリリースすることも可能というわけですね。
浮袋が膨らんで胃袋が口から出ている根魚等を再放流する場合
釣った魚をどうするか最終的に判断するのは釣り人にまかされているとは思いますが、小型の個体など、これはリリースしてあげたいなと思う釣り人もいるはずです。
でも、胃袋が口からでている。
もしくは、
浮袋が膨らんで、バケツの中で逆さになってしまっている。
こういった事例も船釣りではよくある話ですね。
これについても同県の水産研究センターの資料に対処方法があります。
また、釣りで漁獲され胃袋の飛び出た小型魚も、簡易な器具で浮き袋のエア抜きをおこなえば、ほぼ100%の個体が生残することがわかりました(方法をトピックスで紹介)。今回の試験を通じてキジハタはとても生命力の強い魚であることがわかりました。
出典:山口県
内容をまとめると以下の通り。
- 胃袋が圧迫されている個体は胃袋ではなく、直接浮袋から空気をぬくことによってダメージを最小限にして、魚が泳げる状態にできる
- 肛門等ではなく、胸鰭のやや後ろをエア抜きツールで刺す(詳細の位置は上図参照)
- 空気がぬけたあとにできた傷は筋肉が押し戻してすぐにふさがる
- エア抜きツールはボール用の空気入れの金具を加工しゴムチューブをつけるだけ
資料内にはハタ類やタイ類とありますが、カサゴなどについてもほとんど体のつくりが変わらないため対応可能かと思われます。
海の釣りでも条件によって「リリースして生かす」選択肢も
ORETSURI読者がボート釣りで釣ったオニカサゴ
エア抜きについては、たとえばリリース主体のブラックバス釣りのトーナメントではデッドフィッシュによる減点があるため、深場の釣りの場合、エア抜きが一般的です。
一方、海の釣りの場合、食べる前提で釣るわけなので、生かしてリリースするという観点が薄いというのはありますね。
死んだり弱ったら持ちかえるというのは一つの選択肢ですが、今回紹介した浮袋や胃袋の飛び出しについては、適切に対応することで、リリースすることも可能だということは、どの釣り人も知っておく必要がありそうです。
ぜひみなさんのまわりの釣り人に知らせてあげてください。
- 小型の個体
- 抱卵個体
などなどをリリースしていくことにより、成長が遅い根魚においても、持続可能な釣りを楽しむことができるはずです。
参考情報:山口県、刺網で漁獲されたキジハタの再放流効果の検証
関連アイテム
エア抜きアイテムは自分で作成することも可能ですが、携帯可能なものが釣り具メーカーで販売されています。チェックしてみましょう。