実際、住宅街でウナギは釣れるの?

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ウナギ、それは近くて遠い存在

ウナギ。

今やメディアやマスコミで盛んに絶滅危惧種と煽られつつも、土用の丑の日には大手スーパーを通じて大量に販売消費される不思議な魚。

街を歩いていると、ウナギ屋から漂ってくる香ばしい匂いはわたしたちの胃袋を刺激してやまない。

淡水で釣りをしない人、水辺と縁がすくない生活をしている人はウナギが特別な生き物だと思っていると思うが、彼らは意外にも身近な都市河川でも生息している。

目次

ウナギ釣りで体験できること

ORETSURIでは貧果ながら幾度かウナギ釣りの記事を紹介してきたが、SNSの時代「ウナギをとるな!○△×!」と過激な意見が登場することもある。

わたしがウナギを釣りの記事で読者に伝えたいのは3つある。

  • ウナギはわたしたちのすぐ身近にいる魚である
  • 自分でとって食べることは楽しい
  • もっと身近な自然環境の向上に注目しよう

自然環境を親しむ趣味は色々あるが、自然に分け入りあれこれ頭をひねりつつ工夫をして獲物として動物をとり、味覚でも自然を知ることができる趣味は、猟と釣りぐらいだろう。

猟は免許や狩りができる場所まで行く必要があるが、釣りの場合は免許は必要ないし獲物によっては身近な場所でチャレンジできる。

あなたの街にも、ウナギがいる、かも

あなたの住んでいる街、なじみ深い町に流れる川にも、ウナギが住んでいるかもしれない。

  • そこはヘドロが沈殿してメタンガスの泡がはじける幅数メートルのドブ川かもしれない
  • そこは水質が改善されつつある大都市河川かもしれない

こうした身近な場所で釣りを続けていると、必然的に環境に興味をもつようになると思う。

  • この用水路からの流れ込みはなぜ温かくて臭いのだろうか
  • この流入河川はほとんど水量がないな
  • この川は護岸ばかりで魚が住めなそうだな
  • やけに鯉と錦鯉が目立つな

やがてあなたは地方自治体の税金や公共事業の使途やなどにも興味をもつようになるかもしれない。

何事も貴重貴重だと遠ざけないで、近くに歩み寄ってみる。

そして地球上のあらゆる資源が有限であることをしっかり意識したうえで、自然のおすそ分けとして、食べられる程度の魚を釣って食べてみる。

もしかして、案外簡単に釣れてしまったウナギは河川そのものの臭いがしてまずいかもしれない。

  • それは水質が悪いからなのだろうか
  • もしくは調理方法が悪いのだろうか
  • 水質が問題なのであればどうしたら改善に関与できるのか

釣れたウナギは脂のノリが悪いかもしれない。

  • 餌の問題か
  • 季節の問題か
  • 養殖と天然ウナギの差なのか

そういった思考を持てるだけでも、ウナギ釣りをする価値はあるとわたしは思う。

大量の情報に流されるだけでなく、自分で体験してみる。

体験からはじまる思考は奥深い。

ちょっと固くなってしまったが、今夜も住宅街でウナギ釣り、はじめるよ!

▶ウナギ実釣編へGO!

神奈川県某所の住宅街へ

ウナギは東京を流れる河川でも、ドブ川と称されている川でも生息している。

今回は比較的排水の流れ込みが少ない神奈川某所の住宅街でウナギ釣りをしてみる。

読者がもしウナギ釣りをする際は以下の条件にあてはまるところで試してみるとよい。

  • 海と繋がっていて堰堤が少ない河川
  • 直線的ではなく、地図をみたときに複数のカーブを持っている河川
  • 障害物がある河川(葦原・テトラ・岩・これらの融合地帯)
  • 夕方過ぎに通り過ぎると鈴をつけた中高年釣り師がいる場所

今回のポイントは、住宅街を流れる河川。水深1メートル弱程度だ。

この河川の河口域ではウナギを釣ったことがあるが、中流域ではまだ釣ったことがないので実験的な釣行だ。

全面コンクリート護岸ながら、このポイントは障害物が豊富だ。

上流に段差があり小規模な瀬と淵が融合。橋に流れ着いた障害物があることが想定され流速を押さえるための沈み石が複数沈下していて小規模ながら芦原が絡んでいる。

また、おそらく護岸際は数十センチ程度穴があいていて、増水時に魚が逃げる場所として設置されていることが予想される。

なんの変哲もない都市河川でも、ポイントの変化をみて釣りをすることが大切だ。

時刻は夕方19時。

昼過ぎ都内で行われた打ち合わせが長引いたため、すこしウナギの時合には遅れてしまった。

ご存知だろうか。ウナギ釣りにも時合があって、アタリは日没から1時間30分程度に集中するのだ。

この時合を逃すと、ウナギのアタリは散発的になったりすっかり音沙汰がなくなってしまう。

ウナギ釣りは粘る釣りではなく、雨後の濁りがはいった後に夕まずめから2時間程度やって、だめならさっと納竿にしたほうがいい釣りだ。

以前、荒川の中流域で午前0時付近にアタリが連発したこともあるが、基本的に日没から少しやって終了と覚えておいたほうがいい。ウナギ釣りの現場でみかける猛者は大体そのようにしている。

このような住宅街。

仕掛けを準備していると、近隣にお住まいなのだろう、一人の老婆が通りかかり会話になった。

老婆「こんばんは」

わたし「こんばんは」

老婆「どうです?釣れますか?暗くなっているのに見えるの?」

わたし「まだこれからなのですが、竿の先に鈴をつけるのでウナギのアタリがあるとわかるんですよ。」

老婆「そうなのね。うちの旦那さんもここじゃないんだけど釣りをやるんだけどね、わたしはちょっと女だからね。ね?ウナギはねー、ここはどうだろうかねー。堰堤ができているところはあがってこないからねー。○○川ってあるでしょ。あそこもコンクリートのアレができてからウナギがとれなくなってしまったようなのよね。じゃあ、がんばってね。」

このように、地元の方とは挨拶をして積極的にコミュニケーションをとることで、いろいろと見えてくることがある。

さっそく、一本にアタリが。

チリ、チリン♪

小型の魚が餌をすこしずつちぎっている様子。

チチブかな。

放置していると、

チリ、チリン♪チリ、チリン♪

む。

巻いてみると、ミディアムヘビーの竿にかすかな引き。

マハゼでした。

ここはハゼもいるんだなー。

チリ、チリン♪チリ、チリン♪

チリ、チリン♪チリ、チリン♪

またしてもマハゼ。夜も積極的に餌をとるのだな。

岸近の浅場より、流心のエグレたところからの駆け上がりエリアにハゼが多数ついている模様。

▶まだウナギ釣りは続く

場所移動。老ウナギ釣り師と話し込む

どうやら、仕掛けの投入ポイントを幾パターンか動かしてもハゼしか釣れず場所を移動することに。

このポイントは葦が絡んでいる。

こうした芦原の根部分はえぐれていて、ウナギが好む棲み家になっていることが多い。

餌のアオイソメ(淡水なので本当はドバミミズがよい)を投入準備をしていると、小粋にハットをかぶったホビット系の老人が近づいてきた。

ホビット系の老人「おう、釣れたかい?」

わたし「この向こう側でハゼが2匹釣れたんですが、ウナギはまだなんですよね」

ホビット系の老人「おう。あれだよ、この街灯から・・(老人が歩いて移動している間)・・この街灯までのさ、護岸はえぐれてるのね。ここでやるとウナギが釣れるよ」

わたし「ふぇー、ありがとうございます。がんばります。」

ホビット系の老人「あれなんだよな、このねミゾに、こーんなでっかいモクズガニがいるんだけど、それを釣ってどかしてさ、その奥にウナギがいるんだよ。ま、もうすこしで時合も終わるんでがんばって」

わたし「おーす。ありがとうございます。がんばります。」

老人の話はきくもの。これは祖父に育てられたわたしの行動セオリーでもあるので、指定された範囲で竿を出していると、しばらくして・・・

・・・

・・・

リリリリン♪リリン♪リリリリン♪

うお。これはキタかも。

わたし「おじさん、キタかもです!

ホビット系の老人「お、お、お?キタ?」

にょろーん。

住宅街でウナギゲット。あとで計測したら54センチ。

ホビット系の老人「おーやったやった!ちょうどいいサイズだよ。ここのウナギは泥臭くないんだから

わたし「いやー、なかなかのサイズですね。いますねー

このあとの老人のお話を要約すると以下の通りだ。

  • お偉いさんがウナギが絶滅するとかいってるのは嘘だからさ
  • フィリピンとかでウナギが産卵してるっていうけども、こんなとこまではこれねーよ
  • 子供の時からウナギはいつも釣れてるし、今も毎回釣れてるからぜんぜん問題ない

ここで、いちいち「おじさん、それは違いますよ」などインテリぶるというのはナンセンス。

うむうむとお話しながら、いろいろとお話をお聞きして取り入れるべきところのみキャッチアップしたい。

ホビット系の老人「21時ぐらいまでは釣れるから、やってみればいいよ

わたし「あー、アオイソメがもうないんですよね。

ホビット系の老人「おう、俺のボラやるよ

わたし「え、ボラですか?

ホビット系の老人「おう、ボラっ子。ボラを半分に切ってつけると、鯉とか余計なのが釣れないからいいんだよ。まー、モクズガニは釣れてくるけどね

ということで、老人にもらったボラっ子。

どうやら、老人のウナギ釣りは昼過ぎにポイントに到着してボラっ子をひっかけ釣りで捕獲するところから始まるらしい。エサいらず。まさに釣り猛者である。

このボラっ子、昆布の臭いのようにめちゃくちゃ生臭くぬめぬめしているのだが、それもすべて集魚力が高いと思い込んでおこう。

これをハサミでぶつ切りにしてっとウナギ針につけてって。

うえー。内臓からヘドロみたいなのがでてきたぞ。。。。

手が滅茶苦茶クセ―。

ここで、老人はボラをわたしに託して帰ってしまったので、一人ボラ餌をブッコミ頑張ることに。

こんな臭い思いをしてしまったからには釣らねばならない。

しばらくして・・・

・・・

・・・

リリリリン♪

ん。

ここでアタリがとまったので、竿先で聞いてみると・・・

リリン♪リリリリン♪

うお、来たなこれ。

が、巻きはじめると、ウナギの引きではなさそう。

重い。

見えてきた魚影は・・・

あ、クロダイ。

それもかなりでかい。45センチぐらいはありそうだな。

さすが雑食性の高いクロダイ。

ボラも食べるんだなー。

時間をかけて浅場にもっていき引き揚げたクロダイ。デカい。

むー。46センチ強といったところ。

今回は、ウナギをキープするので、クロダイはリリース。

▶まだ続く

住宅街でのウナギ釣りまとめ

住宅街には、ウナギは確かにいたし、マハゼや黒鯛も釣れた。

しかも、常連の老人によるとウナギは毎回釣れて食べても旨いという。

通勤等でこの住宅街を行き来している人や、近隣に住んでいる人の多くは思ってもみないことだろう。

みなさんも、身近な川でウナギを釣ってみてはどうだろうか。

きっと、いつもより川が身近になって愛おしくなるだろう。

※料理記事はこちら。

<補足情報>

ニホンウナギは2014年6月にIUCN(国際自然保護連合)に絶滅危惧種(EN)として指定を受けた。

一方、昨今は大手スーパーが土用の丑の日に関連して養殖鰻の販売を強力に推進しているということもあって養殖鰻の蒲焼が大量に販売される現状がある。

鰻の生産量は養殖・天然ともに減少傾向にあるが、これは以下の原因があるといわれている。

  • 河川のダム建設によるウナギが遡上できなくなった
  • コンクリート護岸や曲がりを直線化するなどでウナギの生息環境が変化した
  • 潮流の変化により産卵場と推定されているマリアナ海嶺から生息地にたどり着けない
  • 上記にくわえて、シラスウナギ採捕から養殖大量消費

※どれが正確な原因かはわからない。複合しているのかもしれない

いろいろな原因があってウナギが減っているということはあるのだと思うが、水質がそれほどよくない身近な河川や湖沼にもウナギは生息している。

ウナギを釣る場合は、河川によっては漁業権があり、釣り券を購入する必要がある。

また都道府県ごとに採捕できるウナギのサイズには制限があるので事前に確認しておくとよい。

神奈川県の場合は、全長24㎝以下のウナギは採捕してはいけないというルールがある。が、そのぐらいのサイズは蒲焼としても食べられず脂乗りもよくないので積極的にとるまでもないと思う。

どんな釣りでもそうだが、食べきれないほど釣って持ち帰っても誰も得をしないので、資源については配慮しながらウナギ釣りは楽しみたい。

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