日本人にとってなじみ深いウナギ。
多くの人にとって、食味が安定している養殖ウナギのイメージが強いはずです。
今回は、天然ウナギの釣り方や美味しく食べるコツを紹介します。
ウナギの基本情報
生息地:日本全国の河川や湖沼。海と河川を行き来する個体と、内湾で過ごす個体がいる
名前の由来:天然物は胸が黄色であるから「胸黄(むなぎ)」からきているという説がある
食性:ミミズ、ゴカイ類、ボケジャコなどの甲殻類や、稚鮎やハク(ボラの幼魚)
釣り方:餌釣りが一般的(嗅覚で餌をとるのでニオイが強いものがよい)
ウナギ釣りの道具と仕掛け
ウナギ釣りは、餌で狙うぶっこみ釣りが基本です。特別な道具は必要ないのですが、いくつかポイントがあるので押さえておきましょう。
竿
竿は投げ竿や磯竿のほか、ルアーロッドでもOK。特に小規模河川の場合、2m弱のコンパクトロッドが使いやすいと言えます。
流れが速い場所の場合は20号程度までのオモリをつかうので、負荷に耐えられる投げ竿がよいでしょう。
リール
リールはPEライン1号~1.5号が150m巻けるものを用意しましょう。2500~3000番がちょうどよいです。
ライン
ナイロンラインでも問題ないですが、底質がわかりづらくなり、アタリがでるまでのタイムラグがあるため餌を飲まれやすくなります。
できればPEラインの1号を中心に考えていくとよいでしょう。根がかりしやすい場所の場合、ハリを伸ばして回収できるように2号~3号を使用するのも一つ。
サルカンを通じて、ハリスとつなぐ場合はリーダーは不要です。
仕掛け
スパイクおもり・オタフクおもりなど平らなオモリを使うことで、仕掛けが流れてしまうのを防ぐことができます。
ジェット天秤や中通しの丸型オモリでもよいですが、河川の場合、底を素早く転がってしまい、餌のニオイをたどってきたウナギが捕食しにくくなります。
ゆるい流れの場合、あえてオモリを流して広く釣る方法もあります。
道糸側から仕掛けは以下の通り。
- オモリ(スパイク、オタフク。8~20号)
- サルカン
- ハリス(4号~5号。根が荒い場所は8号ぐらいまで使用しPEラインも太くする)
- ウナギ針や丸セイゴ針(大きめの針を使うことで飲まれることを防ぎ、小型が釣れるのも少なくする)
▼オモリの負荷は竿や流れに合わせて使用します。ウナギ針は45㎝のハリス付きのほか、管付き針も便利。
エサ
ミミズやアオイソメは針が隠れる程度に房掛けにする
餌は、ポイントの場所や河川のメインベイトによって異なります。
- 上流から中流:ドバミミズやテナガエビ
- 下流:アオイソメ・稚鮎・ハク(子ボラ)・アケミガイ、ホンビノス、ムール貝(ボイルしていないもの)
このうち、手に入りやすく比較的餌もちがよいのはドバミミズとアオイソメです。
上流でイソメをつかうと弱りやすいですし、河口部でミミズをつかってもすぐに伸びてしまいます。
餌はどれも多めにつけるのがオススメ。
理由は、ぶっこみ釣りは待ちの釣りのため、ウナギがよるまでに小魚やモクズガニ等にえさをすべて食べられないようにという意味合いです。
またテナガエビ釣りをしつつ、釣れたテナガエビを餌にするのも面白い釣り方。汽水域であれば、スズキやクロダイも釣れます。
▼東京大学の研究結果でも、特定地域のウナギの大半がミミズを食べていて、降雨後2日以内に捕食していたという話があります。
利根川の下流域(千葉県など)でウナギを捕獲し、226匹の胃の内容物を確認した。その結果、川岸に植生や土が残る場所でとれたウナギ(全長40センチ以下)は、エサの68~93%がミミズだったことが判明。捕食は降雨後2日以内に集中していた。ミミズは雨の日に這い出る習性があり、雨に流されるなどして川に運ばれたとみられる。
出典:読売新聞
その他の釣り方
ウナギ釣りは竿釣り以外の方法もあります。ここでは2つの釣り方を紹介します。
穴釣り
穴釣りにも、いくつかのパターンがあります。一般的なのは棒をつかったもの。
ウナギがいそうな穴を探し、1m程度の木や竹の棒の先にえさを付けた針をつけて差し込み、ウナギがヒットしたら糸を手繰って釣りあげます。
夜間は穴からウナギが顔を出していることも
ミミズで針を隠した仕掛け。ハリスは切れないように太目。このときは16号
穴の中にミミズを垂らす
ウナギが食いつき暴れるので、引き出す
穴釣りで釣れた大型のウナギ
ペットボトル釣法
竿を使わないシンプルな釣り方
ペットボトル釣法はペットボトルに水を入れて、仕掛けをなげたあとに、ペットボトルに道糸のナイロンラインを巻き付けて待つ釣りです。
ウナギなどがヒットすると、ペットボトルが「バタっ」と倒れるのが面白い釣り。
ウナギの釣り方(ぶっこみ釣り)
釣りのシーズン
6月~7月の梅雨時が釣りやすい
ウナギが釣れる季節は、4月~10月程度まで。都市河川では温排水の影響から厳冬期を含めて周年釣れます。
釣りの盛期は梅雨時と10月ごろ。
梅雨時や秋の長雨シーズンは川が増水しやすく、水が濁り餌も多く流れてくるためウナギの活性があがります。
ウナギが夏が旬とされるのは、食味が良くなくウナギが売れない夏のシーズンに対して、平賀源内が企画したプロモーション(「夏痩せにウナギがいい」)によるという説が知られています。
天然ウナギは夏場は脂があまりなく、食べておいしいのは冬にむけて脂肪を蓄える晩秋から冬なのです。
一方、養殖ウナギは、肥育されるため周年脂がのって旨いのが特徴です。
天候
雨がふった夕まずめには、釣り場にウナギ釣り師が集う
ウナギ釣りでは天候が重要です。
雨後の後に河川に濁りがはいっている状態がベスト。台風などであまりの濁流の場合は釣りづらいですが、前日や夕方に強めの雨が降って、やや河川が濁ったり増水しているときは好機といえます。
釣り場
河川の河口部は小型の方も多く、数は釣りやすい
ウナギは海とつながっている河川や湖沼であれば、ほとんどの場所で生息しています。
堰があるほど、遡上率は下がり、上流にいけばいくほど体力がある大型の個体が増えてきます。
反対に河口域は小型のウナギが多いのも特徴です。
時合(時間・潮)
ウナギ釣りには、明確な時合があります。
日没から1.5時間、2時間程度がベストタイムで、それ以外はいったん釣れなくなってしまいます。真夜中以降、またアタリも出ることもありますが、散発的であることがほとんど。
18時に日没の場合、17時には到着して、仕掛けをすべて投げて、遅くても20時までに撤退するイメージでいると無駄な時間を過ごさないで済みます。
日没してすぐは、河川の浅場を強めのライトで照らして回ると、ウナギを発見できることがあります。
一方、日没後2時間程度を過ぎると、うろついているウナギは目立たなくなり、穴のなかに隠れていることがほとんどです。
ほかに、潮が下げ潮に流れているときにアタリが出やすいのですが、これは上流から餌が流れてきやすいからといえます。
ウナギにも色々いて、夜間も穴の中にいて、目の前を通る稚鮎やハク(ボラの幼魚)などを待ち伏せる個体もいます。このような個体は潮によらず、餌を食べます。
釣り方
河川の場合、浅場にもいますが流心と浅場の駆け上がりに、距離をあけて3本ほどの仕掛けを投入します。アタリが出る場所が「ウナギの通り道」です。ほかの仕掛けを、そのラインにそって投げなおしましょう。
餌を投入して同じ場所に放置すると、モクズガニにかじられたり、アカエイにもっていかれやすくなります。
5分に一回は、1mずつ仕掛けを手前に移動させていくとよいでしょう。
アタリは手で感じるのではなく、鈴や夜光の目印で判断するのが一般的。
特に夜に響く鈴の音は興奮します。
アタリがあった場合、食い込みを判断するために、竿を手に持って竿先を聞き上げていきます。
重みが穂先に乗っている場合は、十分食い込んでいるので、リールを巻きながら合わせて回収しましょう。
小型の場合はよいですが、50㎝を超えてくると、障害物などに巻き付きはなれなくなります。竿先を高く上げて、勢いよく巻き、最後は抜き上げましょう。
たも網を使うと、ぐちゃぐちゃに絡んでしまい、手返しが悪くなりますし、ウナギが自らを締め付けて弱って死にやすくなります。
ウナギは抜き上げて、ハリがついたままハリスをきってクーラーボックスなどの密閉容器に水をいれておくのがベスト。
ウナギ釣りで注意したいルールとマナー
ウナギ釣りは守るべきルール(漁業調整規則)があります。
またウナギ自体は、全国的にみれば決して豊富な資源ではありません。
釣り人の良識と自己規制が資源保護にもつながるということを覚えておきましょう。
入漁料について
河川の上流から中流部については、ウナギを対象として入漁料が設定されていることがあります。
釣りができる時間帯や道具などのルールをふくめて漁協の指示に従い、トラブルがないように釣りをしましょう。
入漁料は、河川の資源保護につながります。
小型はリリース、大きめのハリを使う
都道府県ごとの漁業調整規則で、捕獲できるウナギのサイズが決まっています。
神奈川県の例:全長24センチメートル以下はリリース(大きさによる採捕の制限(規則第26条)
ちなみに40㎝未満の天然ウナギは、身が細いことがほとんど。食べてもおいしくありません。
大きめの針を使い、記念など以外では積極的にリリースするとよいでしょう。
ハリの形状では、ウナギ針より、丸セイゴのほうが飲まれにくくなります。
針を切ってリリースしてもOK
ウナギをリリースする際は、ハリが取れればとってやります。
また、針が飲みこまれている場合も多い釣りです。
針をウナギにのまれた場合は、無理して外さず、ハリスをきってリリースしましょう。ウナギは自分で針を外すことができ、ハリの腐食によって外れる可能性もあります。
食べきれる量を持ち帰る
ウナギを釣る際は食べきれる量を持ち帰りましょう。脂が多いため、大量に持ち帰っても食べきれません。
釣行の際に、規定量をきめて自己規制するのも一つ。
ウナギをおいしく食べるためのコツ
ウナギも釣った場所、食べている餌、シーズンによって食味が大きく変わります。
下処理をしないウナギは生臭く、水域によっては石鹸のようなニオイがして食べられないことも。
せっかく持ち帰って食べるなら、できるだけおいしく食べましょう。
泥抜き・糞抜き
持ち帰ったウナギを密閉容器にいれ、水道水で1週間から2週間活かしておくと、泥抜き・糞抜きができます。
ウナギ店では、流水をかけつづけることにより、ウナギの体内のバクテリアが少なくなり、独特のにおいが減るとされています。
長時間かけてよく炙る
釣った天然ウナギのかば焼きがまずい理由の一つに生焼け状態があります。
焦げないように遠火であぶり、脂をしっかり落とし、ウナギの筋肉の芯まで加熱しましょう。
脂ノリが悪くぱさぱさしている問題
天然ウナギは秋以降脂を蓄えて冬に備えていきます。そのため夏場に釣っても脂ノリが今一つであることもしばしばです。
また40㎝以下の小型はほとんど脂がなく食べてもおいしくありません。
脂ノリが悪い個体は、あえて油をつかって揚たりムニエルにするのも一つです。
化学臭やカビ臭のする天然うなぎについて
都市河川で釣ったウナギの場合によくあるのが、洗濯洗剤や青カビ臭のある個体の存在です。
個体差も大きいのですが、これらの個体は泥抜きの有無によらず、臭みが取れないことがほとんどです。
まとめ
今回は、ウナギの釣り方や道具と仕掛け・美味しく食べるコツについて解説しました。
ウナギは全国的に資源量が減少していますが、身近な都市河川でも生息している身近な存在です。
チェーン店で安く大量に消費される養殖ウナギを食べるのもよいのですが、釣り場に足を運び、自分で1匹を釣って食べてみると、より河川環境や資源保護に目が向くのではないかと思います。