ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。サラリーマン・アングラーの釣人割烹です。
12月中旬の週末、シロギスを狙って乗合船で東京湾へ出ます。
冬に深場へ落ちていく、いわゆる「落ちギス」釣り。たかがシロギスと侮るなかれ。冬場は脂がのって旨いうえに、釣るのはけっこう難しい。筆者にとって、年間の釣りの中で楽しみにしているターゲットの一つです。
落ちギス釣りについては釣行後にリポートするとして、今回は攻略に向けて「天秤」を自作した、というお話です。
一挙公開!シロギス天秤の作り方
シロギス用の天秤、実はこれまで数え切れないほど作ってきました。
実戦に投じ、ああでもない、こうでもないとステンレスの太さなどを変え、腕の長さや角度などいろいろ試し、釣果を伸ばしてきたものです。
今回、その作り方をすべて公開します。用意するものは以下の通り。
・イシナダ釣工業「超硬ステンレス」
長さは50cm。太さ(直径)のサイズはいろいろあるが「0.8mm」を選ぶ。10本入り370円。上州屋で売っている。
・タコ糸(水糸)
太さ1mm前後のものが使いやすい。
・エポキシ系接着剤
A剤とB剤を混ぜ合わせて塗る。百円ショップでも手に入る。
・ラジオペンチ
鋼線を切る刃のついたものが必要。
以前、タチウオや深場のアジを狙う天秤の作り方を紹介しました。そのときに使ったステンレス線は同じイシナダ工業製ですが太さは1.6mmで、成形に骨が折れます。シロギスで使うのは半分の太さで、加工は楽ちんです。
まずは1本取り出して、真ん中で切断しましょう。この25cmのステンレス線が基本で、これを成形し天秤に仕立てていきます。つまり1本(50cm)から2個の天秤が作れるわけです。
作り方の流れは写真でどうぞ。
① 25cmステンレス線の上記の部分を、ラジオペンチでしっかりはさむ。短い方が道糸につながる天秤の軸、長い方が天秤の腕となる。
② 腕となる長い方のペンチに近い部分を指で押し、折り曲げていく。
③ そのままどんどん曲げていこう!
④ 腕と軸の交差角が120度前後になるまで曲げていく。
⑤ 次に、道糸をつなぐ軸の先端に輪っかを作る。
⑥ 先端をペンチでひねる。
⑦ オモリをつけるスナップを入れ、腕の先も輪っかにしよう。
⑧ スナップが抜け落ちないように、輪っかにした部分をタコ糸で固める。シロギス天秤は小さいので単純な止め結びでオッケー。不安なら二重、三重に巻いてもいい。
⑨ 両端もタコ糸で止める。止め結びでよい。
⑩ タコ糸にエポキシ系接着剤をたっぷり塗る。ただし、スナップ部分にエポキシがつくと固まって動かなくなってしまうので注意が必要。
⑪ 両端も固めてしまおう。
⑫ エポキシを塗ったあと乾かそう。半日もすれば完成!
自作シロギス天秤づくりで編み出した黄金比
この自作天秤、長い試行錯誤を経てわかった黄金比があります。
- 全長25cm弱(腕20cm弱)
- 太さ0.8mm
- 軸と腕の角度120度
この太さであれば、線材が固すぎないので魚を弾きません。かつ柔らかすぎないので、アタリをしっかり増幅し、竿先や手もとに伝えます。天秤の腕は斜め下へストレートに伸び、絡みもほとんどありません。まさに、絶妙なバランス。
そして、製作費は1個30円ほど(笑)。
釣具メーカーの既製品と比べて遜色ないどころか、上回っているのではないかとすら思っています。
実際、これを使って乗合船や手漕ぎボートで竿頭になったし、進呈した釣り仲間からも★★★★★(←カスタマーレビュー)をいただいています。前回リポートした落ちハゼでも使い、威力を発揮しました。
シロギスにアピール!水中で天秤の腕を立たせる改造とは?
今回、この自作天秤(標準型)を大胆に改造してみました。
シロギスは捕食するとき底にベタッと張りつかず、10cmほど上を泳ぎ、エサが底からわずかに浮いているとよく食う、とされています。
筆者の経験上も、天秤の着底後、やや遅れてエサがフワッと底に降りるかどうかというタイミングで食うケースが多い。
エサがベタ底だとメゴチや「かみつき」(イトヒキハゼ)のアタックが増えます。このため、夏などシロギスの活性が高いときはスピードを上げてサビく(仕掛けを引きずる)べし、とも。しかし、活性が低く、居食いするような状態で速くサビけば、魚はホームを通過する回送列車を見送るようなもので、とてもじゃないが仕掛けに乗ってくれません。
このため、低活性の落ちギス狙いで筆者はこれまで、エサを動かしやすい胴突き1本針の仕掛けで勝負してきました。ただ、胴突き仕掛けは船下で効果がある半面、天秤のように船から投げて広く探るのには向きません。
どうしたものかなぁ、と長い間悩んできました。
ゆっくりズル引いても、エサが浮き気味になるような天秤ができないか。浮き気味にするには、天秤の腕が水中でスックと立ち上がるような……。
あっ。
家の近くの上州屋東船橋店で手持ちぶさたに道具を眺めていたときに、アイデアがひらめきました。目の前にあったのは、これ。
ささめ針「夜光フロート玉グリーン6号」。これを天秤の腕につけたら、水中でしっかり立ちそうだ。
かくして新しく作ったのがこれ。
腕の先に夜光玉2個をタコ糸で固定した(写っているオモリはナス型6号)
念のため、風呂場で実験しました。フロート玉の数を1~4個で比べます。1個では浮力不足、3個以上だと風や潮の抵抗も懸念され、2個が最適と判断しました。
風呂場での実験結果
サビいても、腕はしっかり直立します。おおっ、いいじゃないか。笑
名付けて「シロギス必殺フロートアーム天秤1号」。これで、落ちギスに圧勝するぞ!
衝撃!すでに商品化されていた(笑)
しかし、ふっと我に返り、同じような発想の商品があるかどうか釣具メーカーの動向をネット上でググると……。
ガーン!!! なんと、あったわ。
これは、ささめ針「ビンビンフロート天秤」
筆者も購入したフロート玉を売り出しているだけあって、ささめ針さんの技術開発部門のひと、筆者とまるっきり同じこと考えたんだなぁ。
次に、これ。
フジワラ「スタンド天秤」。こりゃ筆者の自作品と酷似しているぞ!( ←あ、逆ですね。筆者の方がそちらに酷似していたんですね。ハハハ)
少し発想が違うのが、こちら。
ハヤブサ「立つ天秤スマッシュ」。これはオモリに天秤の腕を固定し、オモリ自体の形状から立たせるアイデア。なるほどなぁ。
そうなると、アマゾンのカスタマーレビューが気になります。
調べてみると、最初の二つ、ささめ針さんとフジワラさんのフロート玉で腕を立たせる方式は、ともにレビューがゼロでした。う~む。世の中にビンビンとアピールできているのかどうか。
一方、オモリに工夫をこらしたハヤブサさんの方には好評価が寄せられています。ただし、レビューの数がそもそも少ない。
大遠投で使うような設計ではありません。
大遠投ならジェット天秤を使うべきです。中遠投~チョイ投げ、あるいは船でのキス釣りにはかなりの威力を発揮します。
道具は使い方次第。
出典:Amazon
どうやら、エサを底から微妙に浮かせてシロギスを誘おう、という問題意識を持っているのは筆者だけではなかったようです。しかしながら、これがキス攻略の定番となるほどの絶対的な効果はないのか。う~む。
いやぁ、ググっといてよかった。マジで恥をかくところだった!(汗)
ということで、筆者は問題作「シロギス必殺フロートアーム天秤1号」を近く実戦投入します。オモリが着底し、仕掛けがなじんだあと、潮が流れていれば、うまい具合にエサが底スレスレをたなびきそうです。少しサビけばフワッと浮きそうだし。
その一方で、発光玉2つの影響はどうか。シロギスにしっかりアピールするのか。それとも「貴殿」ばかりを寄せ集めてしまうのか。仕掛けを投入するときの絡みはどうか。風や潮の影響はどうなのか。
吉と出るか。凶と出るか。
ま、どちらに転んでもでも面白いじゃないですか。ORETSURI編集長も言うように、「人間は常に問いをもっている生き物」です。結果は次の落ちギス攻略の報告で!
寄稿者
釣人割烹