あなたは釣りをしていて自分を釣ったことがあるだろうか。
釣りには危険がつきものだが、その一つとして釣り針の存在がある。
本来魚を釣るために存在する釣り針。
釣り人であれば、釣果をあげるためにできるだけ鋭く。できるだけ丈夫なものを選んでいることだろう。
また、魚がばれないように『カエシ』もあって一旦自分に刺さってしまうとなかなかとれない。
万が一刺さってしまい、なかなかとれない場合は、無理せず病院に行き外してもらうのがベストだが、釣りをしているとどうしても自分で対応しなくてはいけない局面もでてくる。
そんなときに役立つ方法をお伝えする。実際のエピソードからの話なので、これを読んでおけば自分が同じ状況になったときに、慌てず済むかもしれない。
筆者が自分を釣ってしまったときの話
これは過去にご紹介したことがある記事からのエピソード。
夏の福島県檜原湖でのこと。
山上湖ということもあったのと、天候が悪化していて、夏とは思えない肌寒い状況。
バイクをとめて、崖をくだったところにあるだれも釣り人がいない浜を発見した。
しめしめ。
ここならスモールマウスが釣れそうだ。
釣り人は誰しも釣り人がいない穴場に出会うとこのように鼻息を荒くすると思う。
このとき使っていたのは、実家においてあったグラス主体の格安ロッド(兄のもの)。ルアーはメガバスのミノーXウグイカラー。
カーボンロッドと違って安い竿の場合グラス100%であり、竿のしなりやリリースポイントが昨今主役のカーボンロッド異なってくるのだが、そのあたりに慣れないまま、それほど注意を払わずフルキャスト。
なんだか投げずらいなーと思った数投目。
バシン!
瞬間、
なにがどうなったのかわからないが、
ミノーXが腰の脇におろしていた左手にものすごい勢いでぶつかってきて、瞬間的に打撲的な痛みを感じ、わたしは自分を釣ってしまったことに気づいた。
・・・
その時の様子がこちらだ。
正確にいうと、これはリアフックを左中指から外せた状態。
最初の状況としては、まず、フッキングしたのが左手の。針がかった位置はリアフックが中指の第一関節。フロントフックが薬指にカエシ部分までしっかり刺さっていた。
どうしよう。
気持ちは焦る。
まずは深呼吸をして、冷静になってみる。
リアとフロントフックともにかかっていると、外しにくいため、まずはリア側のフッキングが浅いほうから抜くことにした。
リアフックは、幸いなことに中指に貫通していなかったので、右手でダイワのプライヤー(中学生のときから使っていたもの!)をつかい、カエシを意識して一旦奥に押し込みつつ引き抜き、奥に押し込みつつ引き抜き、という動作を何度か繰り返したところ、なんとか外れた。
お次は、フロントフック。
これももともと貫通していなかったものの、リアフックと同様のやり方だと指の肉が固まっているのかとれないという状況。
夏とはいえ、どうやら寒さで肉が固まっているんだな。
これは無理矢理やると傷口が複雑になって治りにくくなってしまうやつなんだろう。
そんなことをおもいながらせっかくなので写真撮影などをして気を紛らわせつつ、3分ほど落ち着いて考えた結果、思い切って一旦貫通させることに。
ドキドキ。
南無。
はうあ。
無事貫通。
痛いは痛いながらも、寒さで手もかじかんでいるので、なにかゴムのようなものに針を刺しているような感覚だったというのが正直な感想。
これはきっと温まって感覚が戻ると鈍痛が走るやつだな。そんなことを他人事のように思っていた。
はじめにカエシをつぶして抜こうとしたものの、このカエシ部分もちょっとでも引っ掛かりがあると、引き締まった肉にひっかかり痛いという状態。
さらに、右手もかじかんてプライヤーをうまくつかえないという状態で、カエシもきっちりつぶせないということもあり、選んだのはフックを切断するという手法。
これはフックをカエシ部分まで貫通させて、貫通させた部分をカットするもの。
が、プライヤーのラインカッター部分が、これまで硬いものを切りすぎてなかなかカットできず。なのでもう一つもっていた同じくダイワのPEラインカッターを取り出しカット。
手がふやけているのは雨の影響。
こうしてミノーXをなんとか外せた。
気分が落ち着いてくると段々痛くなるフッキング部分。それとルアー自体が指にあたって打撲しているところがズキンズキンと痛み始める。
このあと温泉に入ったからかその後の経過もよく、そのまま東北への旅を続けて傷口もすぐに癒えた。
自分を釣ってしまったのは、2014年8月11日。
それから約2週間後には傷もほぼ目立たないぐらいに回復した。
この写真が2014年8月24日。人間ってすごいな。
2018年、4年たって薬指のつけ根の傷はまだうっすらとあるがほとんど目立たない。
自分や他人を釣らないために
まず自分や他人を釣らないために以下のことに注意したい。
- メガネやサングラス等をする(釣りキチ三平の魚紳さんのように哀しいことになる)
- できるだけ肌の露出をすくなくする
- ロッドや仕掛け、ルアーなどは使い慣れたものを使用する
- キャスト時は毎投周りを確認して行う
- キャストをする先に人がいないのを確認する(ラインブレイクによって届いてしまうことがある)
筆者は近眼なので眼鏡を常にしているが、裸眼の人はサングラスなりをつけたほうがいいい。自分は大丈夫でも、ふとした拍子に他の釣り人から被害にあう可能性がまったくないとは言い切れない。
自分や他人を釣ってしまったときの被害を少なくするために
不幸にも自分や他人を釣ってしまったときの被害を少なくするために以下の点に心掛けておきたい
- 条件によってはバーブレスフックを使用する(釣り船や管理釣り場では必須のところも多い)
- セミバーブ(カエシが小さめ)の針を使用する
- カエシをつぶせるプライヤーを持参しておく
- フックをカットできるニッパー、ワイヤーカッターを持参しておく(プライヤーと併用も可能)
- カエシがある場合、無理矢理引っ張ることをしない(傷口が広がり治りにくくなり跡になりやすい)
- 付近に病院がある場合、無理をせず病院にいく
- 患部が痛むようであれば氷で冷やす
- 引き抜いたあとはマキロンなどで殺菌する
- 出血している場合、患部を心臓より高くあげてティッシュで押さえ止血する
万が一のときにフックを自分で外す方法
以下の方法は、すべてカエシがついている場合を想定して説明する。
まず落ち着く
誰しも自分を釣るということは想像していないので、気が動転してしまうこともある。
もし自分をフッキングしてしまったら、一旦落ち着いてお茶でも飲んで深呼吸してから次のステップを考えよう。
救急車を呼べるような通話可能エリアでも、自分の対応や他者の協力により簡単に処置できる場合もある。
もし針が貫通していない場合は一旦貫通させる
釣り針が自分に刺さったとき、貫通していない状態は実は貫通している場合よりたちが悪い。
刺さりがまだ浅い場合は、カエシの形状を意識しながらいったん奥に押し込むようにして引き出すと外れることもある。
このときカエシがセミバーブだと成功しやすいが、いっそのことフックを貫通させてしまったほうが良い場合もある。
ただし、指の腹の中心部に垂直に深く刺さっている場合などは貫通させることによって神経や血管を傷つけることもあるので無理をせず通院しよう。
通院までに車やバイクを運転するなど、ルアーなどが邪魔な場合、フックが刺さっているところの上にある程度スペースをのこしてフックを切断しておくとよい。
傷口のすぐ上でフックをカットしてしまうと、通院後に処置しにくくなる可能性もあるのでペンチ等でつかめる程度のフックは残しておくこと。
貫通後にカエシをつぶして引き抜く
フックを貫通させた後の選択肢として一つあるのが、カエシをプライヤーでつぶしてから引き抜く方法だ。
プライヤーの剛性や腕の自由が聞くようであればこの方法をとってもよいが、カエシを十分につぶせていないと、引き抜く際に肉に引っかかって非常に痛い。
筆者はワームフックで一度やったことがあるが、そのときもっていたプライヤーの剛性が弱くカエシがうまくつぶせないまま引き抜いてとても痛かった覚えがある。ちなみに冬場より夏場のほうが痛みは感じやすい。
この動画では、一旦フックを貫通させてカエシをつぶしてい引き抜いている様子が撮影されている。毎度みていて思うのはこの男性は痛みを感じないのかという話。。。実際は常温でまともな痛覚が機能している人であれば痛いです。
貫通後にフックをカットして引き抜く
フックを貫通させたあとの対応策としてもう一つあるのがフックをカットして引き抜く方法。
これはフックの軸の太さにもよるが、ワイヤーがカットできるレベルのプライヤーやニッパーであれば比較的簡単にカットできる。
プライヤーの場合、本来ラインを切断するためにカッター部分がついているのだが、それでも刃こぼれはするもののだいたいのフックはカットできる。
コツとしては、カッター部分を針の軸に対して垂直にあてて切ること。はじめは固くてカットできずカッター部分が滑って食い込んでしまうが、うまく垂直に力を入れるとカットできる。
ちなみにソルト用の太軸フックなどは剛性が強いプライヤーでない限り、なかなかカットできないのであきらめたほうがよいかもしれない。
この動画ではサメなどを釣るために使われるかなり太軸のサークルフックを貫通させてカットしているが、このクラスのフックの軸は自動車用のワイヤーカッターなど専用ツールでない限り切断できないので注意。
ラインをつかって引き抜く(ストリング・ヤンク・テクニック)
トリプルフックなどが刺さってしまい貫通してない場合、ストリング・ヤンク・テクニックで一瞬で引き抜くことができる。一人では無理なので複数人の釣行をしていて、通院することができない状態のときのために覚えておこう。
子供の歯を抜歯する方法に似ているが、太いラインで躊躇せず一瞬で刺さっているのと反対方向に引き抜けば痛みも最小限に収まるだろう。
一方、カエシがついたまま引き抜いているのは事実なので、皮膚内でダメージは大きい。刺さりどころによっては出血が多くなる恐れもある。実際にやる場合は、あくまでも通院できない場合等の緊急事態に限ると覚えておこう。
針を外した後は消毒を
釣りをしているときに自分を釣ってしまった場合で、針を外したあとにも釣りを続行するケースもあると思う。
この場合は雑菌が入らないように消毒薬をつけて防水性のある絆創膏を貼るなどして遊ぼう。万が一を考えて、これらのグッズをもっておくと安心だ。
傷が深く痛みが強い場合などは、ロキソニンなどの鎮痛薬で押さえることもできるが無理せず通院したほうがいい。