人間は常に問いをもっている生き物。
釣り人も一緒です。
今日も世界では多くの問いが生まれ、答えが見つかっています。
そんな中、インターネットでは確かではない答えがいろいろと流布され、それがまことしやかに拡散されたり。
そんな、ウェブ上に転がっている『釣りのなぜ?どうして?』について、釣りメディアORETSURI編集長の平田が勝手に回答する本シリーズ。
今回の質問
なぜ釣り番組は庶民の手が出ない釣りばっかりやるんですか?
出典:教えて!goo
<平田の回答>
日本が資本主義国家でアレコレしがらみがあるからです。
今回のお悩みは、庶民的な釣り、たとえば海釣りであれば、おかっぱりを中心にちょい投げやウキ釣りなどを楽しんでいる方からなんだと思います。
たしかに、TVで釣り番組やバラエティー番組の釣り特集を見ると、以下の通りですね。
- クロマグロを釣る!!!
- ○○沖の巨大ヒラマサ!
- 南の楽園でGTを釣る!
- 北の大地で幻の○○を釣る
- 秘境で怪魚を釣る
などなど。
なんだよ、ぜんぶ特殊な釣りばかりじゃねーか。そんなん庶民の俺っちには手が届かねーや。ぐすん。
こういった気持ちになることもあると思います。
まず、なぜこうなるかを考えてみると、大きく2つ理由があると思います。
- 日本は資本主義社会であるから
- 日本の釣りにはアレコレしがらみがあるから
これです。
まず、資本主義社会であるから。
これについて先にいっておくと、わたしはマルキストではありませんので、資本主義社会が現状では最善の仕組だと思っています。
日本社会は高度経済成長期以降、総中流をめざして設計されてきたので、富の再分配のあたりが仕組みとしてありますね。
そのため欧米ほどのストイックな資本主義社会ではないんですが、それでも資本家が労働者を雇用して稼働させて、富を集積していく仕組みで社会はなりたっています。
資本主義社会では需要と供給をふまえて、資本が投下されます。
では、需要とはなんなのか。
今回は釣り番組の話でしたね。
この場合、2つの需要があります。
- 番組のスポンサー企業の需要
- 視聴者の需要
です。
小学生でもわかることですが、TV番組は広告からなりたっているため、広告をだしてもらうために、視聴率を上げなくてはいけません。
これですね。
このあたりを考えると、以下のタイトルの釣り番組はなかなかできません。
『初夏のちょい投げで、モンスターベラを狙う!』
『砂地の魔王、巨大エソを狙え!』
『真冬最高の鍋を作る!真夜中の堤防でゴンズイ勝負!』
え?
「逆に見たい?」
ですって、
ちょっと落ちついてみてください。
あなたがみたくても、世の大部分の人は『モンスターベラ』や『巨大エソ』『ゴンズイ鍋』なんかどうでもよいのです。
人間は、自分の求めるものが社会が求めるものと錯覚しがちですが、そんなことは幻想です。
もし、あなたが釣り番組のプロデューサーで、釣り具メーカーなどのスポンサーの希望や視聴率を無視してこのような企画を立ててしまったら、視聴率は速攻で低迷、TV局でも下請けの制作会社のなかでも村八分。窓際&左遷まったなしです。
悲しいかな、悲しいかな、倉科カナ。
いやはや、なんと悲しいことなんでしょう。
だからTV番組には、『モンスターベラ』や『巨大エソ』とか『ネンブツダイ』などの貴殿系フィッシングは登場しないんです。
そういったものがわんさか登場し、わーいわーいと喜んで釣って料理をしてコンテンツにするのは、このORETSURIぐらいなもんなのです。
次に、釣りには、『アレコレしがらみがあるから』という話でしたね。
庶民の手がでる釣りという定義が不明なので、仮に定義しておきます。
庶民が代表的なサラリーマン家庭で、お父さんがお小遣い制だとして、月額3万ぐらいを自分の余暇につかえるとします。
え?
「うちは1万円で頑張ってるんだ!」
ですって?
まずは着席して聞いてください。
月額3万円ぐらいを釣りに投資できるとする。
そうなると、釣り具の購入を考えて、あとは頑張って釣り船・ボート釣りに1,2回乗るぐらいですね。
が、毎週のように釣りに行きたい人は、より低コストのおかっぱりを選択するかと思います。
おかっぱりの釣り。
ここに一つの罠があります。
おかっぱりの釣りでみなさんが慣れ親しんでいる釣り場をロケ地とする場合、ローカルな場所を取り上げるときにはそもそも法的に釣りをしてよいところなんだっけ?暇クレーマーの電話が殺到するかもという点についてエビデンスみたいなものが必要になります。
となると、日本の沿岸で釣りがオフィシャルにできるのは、釣り公園として自治体が整備して民間に管理を委託しているところばかりになるはずです。
が、ご存知だと思いますが、滅茶混んでいる釣り公園では大したものが釣れません。
「サビキでイワシがたくさん釣れました。わーい」みたいな絵は誰も興味がないのではないでしょうか。
TV映えしないってやつですね。
その他の漁港や堤防などは、現状、釣り人が我が物顔で釣りをしているものの、様々な大人の関係者によって釣りが黙認されているだけなので、ロケ地にするのが困難だったりします。
ロケの許可をとるのは国土交通省なのか、はたまた自治体の港湾局なのか、それとも漁港で一番エライ黒光りしているおっさんなのか、堤防の先端を毎日実効支配している最長老なのか、このあたりもややこしくなってきます。
また、ローカルなポイントをロケ地して番組にすることで起きるのは、釣り人の集中です。
わたしは釣り人の9割方は社会的にまともな人だと思っているのですが、残りの1割、いや1割未満のなかには、所謂DQN界隈の方も多く混じっています。そうなると、釣り場にDQNがたくさん集まってしまうというアノ事例が起きます。
たとえば、漁港での堤防釣りだとします。
この場合、なにをどう考えたらそうなるのかわかりませんが、漁船に乗り込んで釣りをしたり、漁港を出入りする漁船を邪魔だといって逆恨みしてオモリ付きの仕掛けを投擲したり、「邪魔だこの野郎!」とマッドマックス怒りのデスロード状態で恫喝するという人が現れたりします。そのほか、駐車場所を巡って漁業者や近隣住民とトラブルに発展、などなど。
すると、原因として、釣り番組がたたかれるわけです。釣り番組がたたかれると、だいたい暇なネット民はスポンサーをたたきはじめます。
こうなるとスポンサーとしては釣り番組から手を引かなくてはいけなくなってしまうわけです。
これは釣りの個人ブログやウェブメディアやYouTubeの動画主の場合でも一緒です。
水が高いところから低いところに流れるほど、至極当然な世の習いであるわけです。
長々とした解説になりましたが、こういった内容を考えると、庶民的なよりお金がかからない釣り場ほど、ロケ地にしづらいということがわかりますね。
ということで、今回、みなさんには、
庶民の釣りはORETSURIで。
という言葉をお送りします。
ではでは。
※質問がないとエンドレスでYahoo!知恵袋の質問を勝手に回答していく仕様です。