「ソウシハギの誤販売騒動」から学ぶ魚介類の毒と目利き力について

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ソウシハギ
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ソウシハギを提供した三重県のスーパーマーケットが話題になっていますね。

購入をした方は無事だったようでなによりです。

アニサキスの問題もそうですが、こうした騒動がある度に魚介類全般が『怖い』というイメージがついてしまい、消費減の原因になってしまわないか心配です。

物事を過度に恐れないためには、風評に流されず、物事の因果関係をよく知る必要があるのではないでしょうか。

今回はソウシハギ騒動についての話題と、魚屋では魚種の偽装が行われたり意図せず誤称され販売されている点について解説します。

また、消費者としてより安全に魚を食べるためにどうしたらよいかについてもご紹介します。

ソウシハギの騒動については、『さかなクン』がFacebookページでわかりやすく解説をしているので紹介します。

目次

『さかなクン』によるソウシハギについての解説要約

さかなクンが登校していた内容を要約をすると、以下の通り。

  • ソウシハギはイワスナギンチャクを食べることによってパリトキシンを体内(内臓)に蓄積している

販売されたソウシハギを肝臓も一緒に料理して食べた人が無事だった理由は、

  • ソウシハギが温暖化にともない生息範囲を広げるなかで無毒のエサを食べていたからではないか

とのことです。

最近ではなにかと地球温暖化といわれていますね。

平均的な海水温もあがってきたり、海流の影響により、南洋を生息域としている魚介類が流れ藻にまじりながら北上し、湾内に定着化していく事例が増えています。

アミメノコギリガザミと思われる個体。同ポイントで数杯を確認@神奈川県

筆者も相模湾・三浦半島でノコギリガザミ類の成体が頻繁に発見できる場所をしっていますが、これらも南洋の汽水域などに生息しているものが幼生のまま漂着しているのでしょう。

ノコギリガザミ類については多摩川河口など東京湾沿岸でも成体が発見されているため、数は多くないものの、それぞれ現地で繁殖をしているのかもしれません。

フグをはじめ魚介類の毒には個体差がある

もともと、フグやソウシハギには毒(テトロドトキシンやパリトキシン)を生産する能力がないといわれています。

こうした性質を利用して、陸上で養殖されている無毒のトラフグ(参考リンク)というものもあります。

ではなぜフグやソウシハギが毒をもっていたり、その毒量の差があるのかというと、さかなクンの解説にもありましたが補足すると以下の通りです。

  • フグやソウシハギの餌である貝、ヒトデ、イソギンチャク類には毒があるものがある
  • プランクトンが持つ毒が貝類に蓄積されていく
  • フグやソウシハギなど各個体が保有している毒の程度は季節や海域、主に捕食しているエサによって異なる

「○○フグなら大丈夫」などの判断は通用しないかも

トラギスの泳がせ釣りで釣れたシロサバフグ(と思われる個体)

最近ではフグに別種類のフグとのハイブリッド個体(交雑フグ)がいるという話題もあります。

トラフグなど、毒の部位が明確にわかっているものでも、産卵時に交雑したものは毒の部位が不明確になるわけです。

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毒がないとされるシロサバフグは身欠き状態で流通されていて、無毒で唐揚げにすると旨いのですが、近年ではドクサバフグとの交雑個体の存在も叫ばれています。

フグ類も素人判断で調理するのは危険です。

特に釣り人のなかには釣ったフグを自分で調理して食べている人もいますが、素人が数少ない経験から、フグ類の調理と食に手を出すのはやめておいたほうがよいでしょう。

その魚の本当の名前は何?魚はできるだけ丸のまま買うと安心

魚屋に売られていためばるという名のクロソイ

神奈川の魚屋でメバルとして販売されていたソイ類(おそらくクロソイ)

「ソウシハギの誤販売騒動」で批判されたのは販売したスーパーマーケットや仕入れ業者です。

消費者はあくまでも被害者で攻められるいわれはありません。

一方、我が身として考えたときに、誰しもなにもしらないで被害にあってしまうことは避けたいですね。

「カワハギが肝付きで売られている。安いから買おう」

と、レジにもっていくまえに、

「この魚は何だろうか?カワハギにしては細長いな。ちょっとおかしいなウマヅラハギかな・・・」

というような確認が入れば、購入を踏みとどまるかもしれません。

より安全に魚介類を食べるためには、国民も自分が買う商品の目利きをしっかりすればよいと思います。

消費者の意識が高まれば販売者の気も引き締まり、意図的・意図せずにかかわらず間違った名称で商品を販売することも少なくなるはずです。

魚の場合はスーパーや魚屋で販売されている魚について知識を持つことはもちろんなのですが、特に切り身よりは丸のまま購入するようにすることをオススメします。

神奈川のスーパーでカサゴとして販売されていたアカブチムラソイ(ムラソイ)

別の日は同じものがソイとして販売されていた。このように魚は肉より種類があいまいにされ販売される

「鯛は鯛だがコショウダイ」

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筆者の推測ですが、専門業者であれば明確に判断がつく魚種を『メバル』や『カサゴ』『鯛』と名付けて販売するのは、消費者にとってより知られた名前のほうが購入されやすいという意図のほかに単に担当者が種類の判別ができていないという理由がありそうな気がします。

近年、家庭で魚を丸のまま調理することは少なくなってきているとされています。

出典:水産庁

家庭環境や労働環境から手間のかかる魚の調理では、切り身が隆盛です。

一方、切り身や下処理済みの魚は外見で鮮度や種類を判断しにくいこともしばしばです。

鮮度については鮮度状態を安定させる添加物が付加されている場合もあります。

自分が買ったものが、どの魚でどの程度の鮮度なのかをしっかり捉える必要があるのかもしれません。

また、自分での目利き以外にも、購入しようとする魚についてしっかりとしたアドバイスをもらえる信頼できる店を選ぶのも一つですね。

毒魚も「触らぬ神に祟りなし」?

アニサキスや魚介類の毒の話がニュースになるにあたっていつも思うのは、「触らぬ神に祟りなし」とか「君子危うきに近寄らず」でなくても被害にあう可能性があるということです。

今回のソウシハギの事件も、消費者としてはただカワハギや肝を食べたかっただけなのでしょう。

一方、実際のパリトキシンの被害事例などをみると、「神に触りにいったケース」「危うきに近寄ってみた」ケースがほとんどなのではないかと思います。

パリトキシンによる中毒事例ではソウシハギが原因になった例はまだ報告されてません。厚生労働省が公表しているパリトキシン様毒中毒事例では、ほとんどの原因魚種が「アオブダイ」とされています。

他には、さかなクンが頭にかぶっている帽子のデザインもとになった「ハコフグ」の存在も目立ちます。

出典:厚生労働省

消費者も一過性ではなく魚に興味をもってきちんと選べばよい

魚介類の寄生虫や毒の話題が出ると、一気にニュースに取り上げられて、そのたびに、毒の名前や魚の名前だけがクローズアップされますが、話題の熱がさめるとみんな興味を失ってしまいます。

また、アニサキスなどは魚の生食=アニサキス=危険といようなイメージもつきやすいのではないでしょうか。

消費者としても、人任せにせず魚介類のうち毒があるとされる生き物について知識をもっておくことも必要ではないでしょうか。

居酒屋で刺身の●点盛を頼むとします。

「おまたせしました!刺盛です」

と、料理が提供されますね。

このとき、あなたは自分が食べている魚が何の魚であるかわかって食べていますか?

これはオススメなのですが、魚の種類はしっかり確認しておいたほうが、よりおいしくいただけますよ。

「すみません、どの刺身がどの魚か説明してもらえますでしょうか?」

この一言が大事です。

多くの飲食店では、運ぶ人も魚の種類をしらないために、

「すみません、ちょっと確認してきますんで!」

という流れになるかと思いますが、この確認する、されるという関係性はとても重要に感じます。

なかには、刺身盛にそれぞれの魚の名称を添えてくれる店もありますが、まだまだ少ないでしょう。

食用になる魚は肉より数が多いものの、まだまだグレーゾーンが多いと言えます。

より賢い消費者になれば、よりおいしく魚が食べられるはずです。

ではでは。

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