釣れた魚を締める方法はいくつかありますが、アジなど比較的小型の魚をまとめて締める方法として一般的なのが「氷締」です。今回は氷締めの具体的な方法と注意点について解説します。
釣魚の氷締めについて
どんな魚も釣り上げるとやがて死にますが、死んだ魚はその時点から腐っていきます。
魚ごとの自己分解スピードは、水分や血液量、雑菌、気温、酸素等さまざまな要素によって変わりますが、誰しも鮮度が悪い魚は食べたくないですね。
そのために、魚にはいくつかの締め方があるわけですが、氷締めは沖釣りや堤防などでの小物釣りでもっともポピュラーな方法です。
氷締めに適した魚やシーン
氷締めには、血液量が少ない魚や小魚が適しています。
小物釣りでまとまって魚が釣れる際は、1尾ごとに丁寧に血抜きや神経締めをするのが難しいはずです。また、魚の食いが立っている所謂「時合」などをさけて、まとめて締めることができるのが氷締めです。
氷締めの方法と注意点
ここからは、氷締めの方法と注意点を解説します。
こちらは、マアジ。
アジも血抜きをしたほうが雑味がなく保存性が高まりますが、時合が短い場合などは、できるだけ魚の処理に時間をかけたくないところ。
どの魚を釣る場合でも、仕掛けを水中にいれておかないとチャンスは訪れません。
そんなときは、一旦アジを活かしバケツにいれておきます。
その後、食いがひと段落したときやポイント移動時に氷締めします。
釣り船の場合、サメがよるなどの理由でアジの血抜きなどが禁止されることもありますが、移動中であれば問題ないことがほとんどです。
潮氷でしっかり氷締めをする
<氷締めに必要なもの>
- クーラーボックス(夏場なども氷がすぐにとけない状況をつくる)
- 十分な氷
- 海水(できるだけ汚れがすくないもの)
※塩があると、真水の氷がとけたあともクーラーボックス内の海水の塩分濃度を保つことができます。魚の表面の色つやを気にする人は塩をいれることで魚の体表が白くなることを防げます。
海水に氷をまぜたものを「潮氷」と呼びます。
氷締めに不可欠な氷ですが、以下の三種類があります。
- ブロックアイス(板氷)
- クラッシュアイス
- ペットボトル氷
ブロックアイスは、板氷とも呼ばれますが、大きな塊の氷で溶けにくいという特徴があります。
潮氷を作る場合は海水を一気に冷やす必要があるため、どちかかといえばクラッシュアイスが向いています。一旦海水が冷えたあとは長時間氷が残るという点でブロックアイスもあるとさらによいでしょう。
ペットボトル氷は家庭でも簡単に作れるため、氷が別料金の船宿やおかっぱり釣行ではより安価な手段です。一方、板氷同様溶けにくいという特性があるので、海水温を一気に下げるという用途には向いていません。
もし潮氷を作る際にブロックアイスやペットボトル氷を使う場合は、できるだけ早めにクーラーボックスに海水をいれて冷やしておく必要があります。
クーラーボックスに氷を十分にいれて、魚の全身がつかる程度の海水をいれれば潮氷ができあがります。
釣れた魚をこの潮氷にいれると、やがて死に、締める工程は完了します。締めた後もしばらく潮氷につけこんでおくことにより、魚の芯まで温度が下がり保存性が高まります。
潮氷をつくらず氷の上に魚を並べている釣り人がいますが、魚と氷の接地面のみしか冷えず、片側が冷えない状態が続いてしまうため、保存性という点では正しい方法ではありません。
また、接地面だけかなり冷えてしまうという点で食味も良くないものになってしまいます。
<港近くの海水は避けたい>
釣り船の場合、出航地で水を汲んでいる釣り人もいますが、桟橋付近の海水はよく見ると油膜がはっていることもあります。できるかぎり沖にいってから水はくみ上げるとよいでしょう。
おかっぱりの場合も港湾施設付近は、場所によってかなり汚れている場合があります。このような汚れた海水で潮氷をつくっても油臭い仕上がりになってしまうので注意です。
魚が締まり、芯まで温度がさがったら海水は抜いても大丈夫
潮氷に釣れた魚を漬けたあとに、魚がしっかり締まり筋肉分の芯まで温度が下がった場合は、海水はぬいてしまっても大丈夫です。
釣り用のクーラーボックスであれば、このような水抜き栓がついているので、そこから海水を抜いてしまうと簡単に持ち運べます。
水は全部ぬいてしまっても大丈夫ですが、氷がとけて塩分濃度が下がるため魚の色艶は白っぽくなることもあるので、気になる場合は少し海水を残しつつ、塩をまぜておくとよいでしょう。
こちらが氷締めをしたアジ。
バケツのなかで酸欠やショックで死んだアジは口を開いていて、身が固く硬直していますが、氷締めしたアジは身が柔らかく色艶がよいと言えます。
硬直して死んだ個体は「上がった」「上がってしまった」と表現されますが、鮮度や保存期間は氷締めした個体に劣るということを覚えておきましょう。
釣った魚の鮮度を保ちながら持ち帰る方法
氷締めした個体は十分魚体が冷えているわけですが、真夏などはすぐに温まってしまいます。
できるかぎりクーラーボックスにいれてしっかり保冷しながら持ち帰りましょう。
クーラーバッグなどを使う場合は、ジップロックにいれた魚の周りを、同じくジップロックにいれたクラッシュアイスで包むようにするのがオススメです。
さらに味わいや保存性を求める場合
大量に釣れる魚を一斉に処理する場合は、氷締めが適しているという話をしました。
さらに深い味わいや、保存性を求める場合は血抜きや神経締めにチャレンジしてみるのも一つです。
たとえばアジであれば、小あじや中アジまでは氷締めで、30cm以上の大アジがつれたら血抜きして熟成させて食べるなどとあらかじめルールを定めておくと、釣ってからの処理もスムーズです。
関連アイテム
▼クーラーボックスは、日帰りで氷が十分確保できれば安価な発泡スチロールタイプの断熱材で十分。下処理を翌日する場合は、持ち帰ってからペットボトル氷などを足せば問題なく保冷し続けられます。
▼おかっぱりの釣りの場合、水汲みバケツが必須。波止の海水を利用する際は油膜などがないところからすくいましょう。
▼ナイフがあれば延髄やエラの付け根の血管などもしっかり切断できますが沖釣りでは揺れによってキケンでもあります。その場合はよく切れる調理バサミなどを持参するとよいでしょう。
▼ハサミは延髄も切断できる堅牢なものがおすすめ
▼神経締め用ワイヤーは丸めて携帯できるものが便利