3月末に釣られた産卵がらみの「クロダイ」の味はうまいのか?

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クロダイ
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※本文にチヌことクロダイを締めるシーンが登場します。血や内臓も出るので苦手な方は読むのをオススメしません。ご留意ください。

漫画家さとう輝さんと釣行し、快適な昼寝と終わった長井の筏。持ち帰ったのはカサゴと他の釣り客の残したクロダイだったのです。

クロダイは血抜きと速殺をするという流れではなく、なりゆきで若女将が生きたまま持たせてくれたんですね。それを海水をはってないクーラーボックスにいれてだいたい50分後に帰宅。

頭のなかでは血抜きと締めができてないので、どうかなーという懸念も少しありました。

目次

黒鯛の生命力。持ち帰ったクロダイが生きていたぞ

こちらが持ち帰った時点のクロダイ。この腹部をみるに抱卵したメスかなと。

このクロダイなんですが、実はこの時点で生きていたのです。エラと口をパクパクさせていました。クロダイは強い魚なんですね。カサゴ・メバル・ムラソイあたりの根魚も冬場であれば1時間以上は水がなくても生きていたりしますが、なんとも生命力を感じます。

これが潮氷で完全に冷やしていたら心臓麻痺で死んでいたのでしょう。結果オーライですが、ペットボトル氷で海水をいれていなくてよかったなと。

ご覧の通り生きています。

ここから簡易的にですが、以下の処理をします。

  • 延髄を切る
  • 片エラの付け根を薄く切る
  • 脳部分にエラの付け根から太目の鉄串を差し込む
  • 血抜きする

エラの付け根を薄くカットして、血を出す。

クーラーボックスに水をためて血を抜く。

まだ心臓が動いているので、血が抜けます。

その後鱗をとる。

背側と腹部の際は特に鱗が残りやすいので念入りにやっておくとよいと思います。鱗が残っていると三枚におろす際に、包丁が入りにくいですし、身に鱗がついて衛生的にもよくありません。

今回処理を風呂場でやっていますが、血や鱗を考えると、ある程度大きな魚は床をきれいにした風呂場で処理するのも一つかなと思います。

こちらが内臓類。

左下の黄緑・黄色の胆嚢がらみの器官(?)と腸はどの魚でも慎重に取り除く

エラ+胃袋・腸・卵巣・内臓脂肪。

胃袋にはクロダイを釣り上げた釣り人がつかっていたと思われるマルキューの「くわせオキアミ食い込みイエロー
」と押麦をふくめたコマセ類が入っていました。

かかり釣りや海上釣堀ではこの黄色く着色したオキアミが効果的だと言われています。海上釣堀だと黄色くした鶏ささみなどもぶつ切りで使われてますね。

黒鯛の焼霜づくり

下処理をしたクロダイは冷蔵庫のチルドルームで2日ほど寝かしておきました。特段塩はふってないんですが、リードのクッキングペーパーがかなりの水分を吸い込んでいました。

釣った翌々日の夜の調理です。

頭と胸鰭まわりのカマ部分を斜に落とす。

身は落ち着いている感じがありつつも、まだ水分が多い気もします。

ハラス部分は後述の清湯用に使うことに。

こちらがサク。

片側のサクは別日に塩焼きにしました。

背側は太目に、腹側は薄めの刺身に。

炙る。皿の上にバットをのせて炙ると安全ですし、皿も熱くなりません。

この通り、香ばしく炙ることができました。

このあと、氷水につけて熱の伝導をさけるのが定番なのですが、身の水分がこれ以上多くなることを避けるために、このまま冷凍庫にいれてしまいます。

3分ほどいれておくとひんやりして準備万端整いました。

盛り付ける。

手前右手のスペースが余ったので、先日三浦半島西岸でとった明日葉の新芽を添えることに。これはあとでさっとしゃぶしゃぶしてポン酢で食べたんですが、何事も新芽はクセが強くなくていいですね。

社会人も新卒のときはフレッシュなわけですが、だんたんとスレてクセが強くなったり。人間も明日葉も同じわけですよ。

アップにするとこの通り。

クロダイは産卵後は味が一気に落ちるともいいますが、産卵前は脂もしっかりのっています。

最初の味付けは、ヒマラヤピンクソルト+レモン。

さて。

・・・

・・・

・・・

ふむふむ。甘さと皮目の下の旨みがある。

切り身を厚くしたっていうのはもちろんなんですが、身が厚いのは鯛類の良さですね。

寝かしたことによって水分量もだいぶ減ったかなとおもったものの、身の柔らかさはまだ感じたなと。

カルパッチョでもよくやりますが、刺身にするときは、塩を振って30分ぐらい冷蔵庫においてさらに水気を抜くというのは一つかもしれません。ほかに昆布締めにしたものを炙るというのも一つかなと。

クロダイ清湯とクロダイクッパ

続いて、クロダイ清湯(ちんたん)をつくることに。

骨がしっかりした魚はみなそうなのですが、クロダイもアラから良質のダシが出ます。川崎の某所には、チヌ出汁のラーメンがあったような。

清湯は中華料理における白湯の対義語で、要は澄んでいるスープです。沸騰させず濁りをさけて出すスープ。しなそば系のダシはだいたい清湯です。

鍋にクロダイのアラをいれる。

熱湯を注ぎ全体に行きわたらせた後に、湯を捨てて流水でアラを丁寧に処理します。

血合いと鱗の残りがとれたら準備完了。

特に、クロダイの頬あたりの鱗は湯をかけて落とすと簡単に取り除くことができます。鱗をちゃんと落としておかないと汁の中に鱗がたくさん混入し口あたりが悪くなるのです。

あとは、

  • 長ネギ
  • しょうが
  • 日本酒、みりん

あたりを入れて沸騰させないようにして炊けばOK。

・・・

・・・

・・・

はい。沸騰させました。

まー、完全な白湯状態ではないので、半清湯みたいなところでしょうか。

さらに、ウェイパー等の中華だしを薄めにイン。

残りは塩と白胡椒で味を整えます。ナンプラーをいれてもよいです。

あんまりしっかり味をつけるよりは、やんわりつけておいて、あとで椀などで調整したほうがよいかなと。好みですが。

ここに龍口春雨をひと玉投入。

春雨などは油断していれまくると、かさがすんごい増すので注意です。

この春雨がスープをしっかり吸い込んでくれるわけですよ。

あとは丼に盛り付けて、塩気を調整してフィニッシュ。

レモンを絞るのもオススメです。

滋味あふれるとはこのことでしょうね。

残ったクロダイ清湯に、レンチンゴハンを投入すれば、締めの一品にぴったりです。

翌朝は、オイスターソースと白飯をインすると中華がゆになります。大和芋を輪切りにしてシンプルな具材にすると派手さがないが体にしみいる味わい。

中華がゆに、台湾製のXO醤や大豆原料の五香粉風味のジャーキーを刻んで入れると台湾の朝っぽくなります。肉のデンブも実にうまい。

クロダイの台湾風中身煮(内臓煮付け)

台湾でクロダイを食べるのかは知りませんが、まーあれです。もう、八角のかおる五香粉(ウーシャンフェン)をかませば、その時点で台湾風です。

こちらは水洗いをして血管を取り除いた、クロダイの卵と肝臓と胃袋。胃袋は切りひらいてきれいに洗浄してあります。

わが国での中毒原因種はタウエガジ科のナガズカ。チョウザメ類、カワカマス、コイ類、ナマズ類、メダカ類、クロダイ、カジカ類など50種近くの魚の卵巣も中毒を起こすと疑われている。

ソース:厚生労働省

※クロダイの卵は微毒があるという疑いもあるので、食べる量や体が弱い人は控えたほうがよいです。また、内臓類は新鮮でないと食あたりにもつながりやすいので、当然自己責任でどうぞ。

調味料は、

  • 生姜すらいす
  • 味醂&日本酒
  • 砂糖
  • しょうゆ
  • 五香粉

▼五香粉は中華圏で肉や魚の香りづけによく使われる調味料。八角の香りが好きであれば、少量つかうと料理の幅が広がります。

あとは中火で炊く。

できあがり。

好みですが、追い五香粉&唐辛子をかけおきましょう。和風に仕上げる場合は、五香粉のかわりに山椒粉がオススメです。

こちらがクロダイの肝臓。体の大きさの割にはかなりの大きさ。

肝臓は毒を分解する器官なので、あんまり汚いところだと毒素が蓄積するはずなので、控えたほうがよいでしょう。

クロダイの卵の味は・・・

カレイによく似ているなと。煮つけ方にもよりますが、ほっくらというよりも、ねっとりした旨みのある仕上がりです。

でもってクロダイの肝臓は・・・

あー、これは鶏レバーによく似てますね。旨みとコク。脂が舌に残ります。

柔らかいのでレバーペーストにしてもよいかもですね。

3月末にとれたクロダイは旨い

どんな魚も個体差はあるのですが、今回のクロダイも旨かったなと。

クロダイってよくまずいと言われるんですが、大体以下の理由に集約されるかなと。

  • おそらく大部分の釣り人が食べたことがない
  • ケミカルな汚濁が進んだエリアの個体はなにをやっても臭い
  • 下処理や調理法が不十分なまま食べている
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クロダイは産卵を終えると身がぶよぶよになり、一気に食味が落ちるとされるのですが、秋以降越冬個体もふくめて脂も乗っていますし、毛嫌いしないで一度は食べてみるのもよいでしょう。

いただきものであったので、その場で血抜きなどできないで心配だったのですが、おいしく食べる場合は血抜き&速殺は必須かなと思います。

いかだ釣りの場合、おそらく釣って筏の上で絞めて血を流すと、魚が警戒するというのがありそうで、みんなスカリにいれて岸まで帰り、そのまま計量して持ち帰るという流れのようなのですが、筏の上で血抜きはしないまでも、岸壁でやるのはありかなーと思います。

ではでは。

平田(@tsuyoshi_hirata

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