二刀流マゴチ釣行・始末記@東京湾・金沢八景沖

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マゴチ
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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。

サラリーマン・アングラーの釣人割烹です。

6月29日、「リストランテORETSURI」にはじめて参加しました。

船のマゴチ釣りはおそらく人生4度目。最後にやったのは3年ほど前で、ずいぶん遠ざかっていたもんです。マゴチといえば「照りゴチ」こと真夏の釣り物ですが、夏は東京湾の金アジ狙いで横須賀・走水に通うようになって、足が遠のいていたのです。

ちなみに、マゴチは三浦半島の金田湾などで手漕ぎボートで狙ったこともありますが、1匹も釣っていません。

久しぶりの実釣で「こんなにオモシロ難しい釣りだったのか!」とマゴチの魅力を再認識しました。その機会を与えてくれたORETSURIに感謝です。

今回も、いくつか気づきがありました。

目次

ノーマル・タックルと手ばね竿で

マゴチは、筆者の実力ではふつうの一日船(早朝~午後2時ごろ)で粘って3匹か4匹がせいぜいでしょう。

ところが、今回の釣りは午前7時出港、11時過ぎに沖上がりで実質4時間ほどの「時短決戦」。乗る前の目標は1匹。ボウズも覚悟していました。

今回は「二刀流」で臨もうと竿を2本用意。

手ばね竿

愛用の「手ばね竿」。むかしのマゴチ釣りは手ばねが標準装備だった

一本は和竿2.2mに両軸リールのノーマルタックルです。

道糸はPE2号で先糸フロロカーボン5号をつけ、中オモリ15号(自作)をはさみ、ハリスはフロロ5号1.5m。スズキ針17号。標準的な仕掛けですね。

これをロッドキーパーで固定し、置き竿とします。

もう一本は手ばね竿です。

内房のマダイ伝統釣法に使うもので、リールはついていません。

アタリで合わせて針がかりさせたあとは、ひたすら「エッチラ、オッチラ」手で道糸をたぐるというアナログな釣り。

道糸はナイロンラージ7号。中オモリは道糸の水の抵抗を考えて、オマツリを避けるためにやや重めの20号にします。

フックを埋め込んだ自作の中オモリ。上が20号、下が15号

リールがそれほど普及していなかったその昔は、東京湾のマゴチ釣りでも手ばね竿が標準だったようです。

今でも使う人はごく少数いるみたいですね。

長さ1mほどの手ばね竿をノーマルタックルと組み合わせるメリットを、事前に頭の中で想定していました。

  1. 2mの置き竿と探る場所がかぶらず、オマツリしない。
  2. 軽くて持ち続けても疲れない。
  3. 手ばねのアタリは直接分かるので穂先を見る必要はなく(手感度)、視線を置き竿の穂先に集中できる(目感度)
  4. 手ばねで海底の変化がすぐに分かり、深さが変われば直ちに置き竿に反映できる。

さて。想定の通りうまくいくのか実釣です。

オッサン、ちょっと場違い感に気後れするも・・・出航!

当日は土曜日。前日まで仕事が忙しく、仕掛けを作るヒマはありませんでした。

金曜日の深夜に帰宅したあと、竿とクーラー、雨合羽を車に積んで、まず向かったのは24時間営業の上州屋東陽町店。

針とフロロ5号、針に巻く糸オモリを買い、いざ金沢八景へ。仕掛けは船の上で作るしかありません。睡眠時間ゼロで脳内覚醒剤だのみです。

釣り宿の一之瀬丸さんの近くに駐車して仮眠をとり、集合時刻の15分前に宿へ入りました。

ちょっと、若い人たちばかりじゃないか!(涙)。

白髪混じりで頭のてっぺんが薄くなった中年太りのオッサンは、筆者だけじゃないか!(涙)

場違い感に軽いめまいを覚えていると、平田さんの登場です。

実際に見るのは初めて。シュッとしてカッコいいじゃないか!(笑)。自前のメディアで繰り広げるホンネトークから親分肌かと想像していましたが、そんな感じは少しもない。静かな語り口で、初対面の相手でもフワッと包みこむ。「なるほど、人物だなぁ」と魅せられた次第です。

船の釣り座は、左舷ミヨシをいただきました。2本竿なので四隅はありがたい。左隣に座った平田さんに言われました。「目標は6匹です。よろしくお願いしますね!(笑)」。そりゃ無理です(笑)。

定刻の午前7時に出港。

まずは港のそば、八景島シーパラダイスの沖側数百メートル付近で仕掛けを下ろします。同じ金沢八景の相川ボート(手漕ぎ)でも狙えそうなポイント。

マゴチの釣り方について、エサのサイマキ(クルマエビの子供)や小魚(ハゼやメゴチなど)を海底から20cm以内の高さで漂うようにせよ、と船長はいいます。マゴチは海の底を這う魚で、それ以上高いところにあるエサはなかなか食わないとのこと。一方、底にベタッとはりついたエサもアピールしません。

マゴチ釣りのタナは海底に「三角定規」を置いてイメージ

ひと口に、エサをマゴチの目と鼻の先でフワフワと漂わせる――とかんたんにいいますが、実はこれが難しいのです。

どう難しいのか。

東京湾では中オモリ15号(または鋳込み天秤15号)、ハリス1.5mの仕掛けが標準とされ、着底したあと中オモリを底から1m上げるのが基本です。また、潮の流れが速ければ中オモリを0.8mくらいに下げて、逆に潮の流れがゆるければ1.2mくらいに上げたり、ハリスを詰めたり糸オモリを外して、などといわれます。

ここらへん、初心者にはわかりにくいかも知れません。

そもそもハリスの長さが1.5mなのに中オモリが底上1mで、なぜエサが漂うのか。

確かに、プールのように水の動きがゼロの場合には、中オモリを底からハリスの長さ(1.5m)以上に持ち上げないとエサが浮き上がりません。

しかし、海の中では常に潮が流れています。

潮の流れが標準のとき

潮の流れが速いとき

潮の流れがゆるいとき

海底に三角定規を立ててイメージしてみましょう。直角三角形の底辺は潮の流れ、高さ(垂直の辺)はオモリの底からの距離、斜辺がハリスの長さです。

斜辺は常に1.5mで一定ですが、オモリの高さは潮の速い遅いによって変化します。これを模式図にしてみました。マゴチに限らず、いろんな釣りで参考になるはずです。

ところが、海はそう単純なものではなく、しばしば意地悪なのです。

決して図式通りにはいきません。

潮の流れは複雑で、海面近くの潮流=上潮(うわしお)と、海底近くの潮流=底潮(そこしお)で流れの向きや速さが異なることがままあります。これを「二枚潮」などと言います。

この日、6月29日の東京湾・八景沖はクセ者の二枚潮だと筆者には感じられました。

上潮はとても速く、オモリを落としていくと道糸が斜めに激しく倒れます。しかし、底潮はあまり動いていないようです。
なぜ二枚潮と言えるのか。経験に基づく感覚的なもので言葉にしにくいのですが、潮が一定の向きに流れていると道糸は斜めでも一直線で、オモリが「コツン」と底を打つ感触がしっかり伝わってきます。

でも、この日は着底の手応えが微弱だったのです。

オモリが底に着いたかどうかわからず、途中まで巻き上げ、落とし直すことも。おそらく、二枚潮で道糸が大きくふけ、着底の感触が糸ふけに吸収されてしまうためでしょう。

また、ポイント付近を流していく船の動きと上潮が同調すると、道糸はまっすぐに降りていきます。このときに着底して糸を張ると比較的まっすぐに立ちました。二枚潮で底潮が速ければ道糸や仕掛けは途中であらぬ方向へ流れ、オモリ着底後に道糸を張るともっと傾くはず……。

そんなこんなで、二枚潮で上潮が強く、底潮はゆるいと判断しました。

こんなときどうやってタナを取るか。これは難題です。

着底後、単純に1mぶん道糸を巻いたり竿先を持ち上げたりしても、糸フケに吸収されエサが思ったより浮かび上がらないかもしれません。ここは頻繁に底を取り直しますことにします。

着底したあと道糸を1m巻いてしばらく様子を見て、さらに1m巻いて様子を見て、みたび1m巻いて……と段階的にタナを探っていく。そんな釣り方でアタリを出していこうと考えました。もちろん、それが正解かは分かりません。

前半をボウズで折り返して……

スタートからまもなく、左舷トモの方で歓声が上がりました。どうやら本命マゴチの船中第1号が釣れたようです。

「よし!」と気合いが入ります。しかし、待てどもわが竿に異状なし。大きな移動や流し変えを繰り返しますが、船内でポツリ、忘れたころにまたポツリ、という具合で食いは活発ではないようです。

中潮の初日で干潮は8時半ごろ。

上げ潮に変わって期待が膨らみます。右手で手ばねをあやつって底を取り、深さが変わると置き竿の底を取り直します。目は置き竿の穂先に集中します。

しかし、アタリは出ない。

お~~い、マゴチ~~。ちょっとはやる気、見せてもええん、ちゃうかぁ~~!

と叫びたくなるところ(「せやろがいおじさん」風)。

2時間が経過し、前半をゼロで折り返しました。厳しい釣りになってきました。

間の悪いことに、移動のさいにたぐり上げていた手ばねの道糸がクチャクチャに手前マツリしてしまいました。本来は足もとの大きな桶に入れておくべきですが、桶がなく、床につくねっぱなしにしていました。基本動作を怠ると、このざまです。

やむなし。手ばねをいったんあきらめ、ノーマルタックルでまず1匹取るしかない。刻一刻と時間が過ぎていくなか、弱ったエビを新しいものに取り替え、沈めると……。

ググッ…

穂先がわずかにもたれる。

来た、来た。やっと来ました。オモリ着底とほぼ同時です。

おそらく、オモリに続いてエビがふわりと底に着いた瞬間、近くにいた魚が飛びついたのでしょう。

「ほら、しっかり食えよ!」と竿先をゆっくり聞き下げます。そこでリールを巻き、糸を張る。

グンッ!

グンッ!

より強いアタリが出ます。そんなに長くは待たないぞ。次で勝負のカウンターを決めてやるからな、と、しっかり身構えます。

グーッ!

力を込めて竿をあおると、本命の重みが胴にズシリと乗り、竿が気持ちよくしなります。マゴチの合わせは、かかるか、バレるか、スリル満点。

船長のタモに入ったのは50cmに少し足りないサイズでした。

手前マツリをほどき、手ばね竿でマゴチと勝負

釣り人にとって「0」と「1」の差は圧倒的です。

釣り人であればだれもが知るあの「ボウズの重圧」から解放されて余裕ができ、時間をかけて手前マツリした手ばね竿の道糸をほどきました。2本竿に戻ります。

この手ばね竿、3000円で買った中古品ですが、しっかりとした作りで、和竿師も出来の良さに太鼓判を押してくれています。

筆者による初の実釣で大きなマダイとアオリイカを上げ、「引き」(勝負運)も強い。この勢いにあやかって2匹目のマゴチを何とかこの竿で仕留めたいものです。

なにしろ軽い。右手に握って半身を船外に乗り出し、5〜10秒おきにこまめに底を取り直します。

沖上がりまで残すところ30分くらいのタイミングで、手ばねの方に「ググッ」と反応が。

おお、やはりこの竿、期待を裏切らない!

1匹目とは異なる強いアタリが体にじかに伝わります。

竿が右腕と一体化し、脇の下から先が1本のロッドとなる。それが手ばね竿の魅力です。

続くやり取りはちょっと予想外でした。最初のアタリでスイッと竿を聞き下げましたが、次のアタリが来ない。

今度はゆっくり聞き上げます。微妙な手応えはありますが、しっかり重みが乗ってきません。魚が浮いているような感触。強い合わせを入れておらず、あわてて道糸を数手たぐります。

「珍しい。手ばねですね。ちょっと貸して」。横にやってきた船長に道糸を渡すと、上下させて「魚ついてますね」。道糸を返され、改めて筆者が本格的にたぐると、今度こそ強烈な引き込みがありました。

ナイロン糸がギューンと伸び、指に心地よく食い込みます。

船長のタモに入った本命は50cmオーバー。

これはうれしい。愛用の手ばね竿に新たな経験値が刻まれました。

それにしても今回、釣りの基本の「キ」である「タナを保つ」ことの難しさを痛感しました。潮のせいもありますが、残念ながら、正しいタナに仕掛けをピタリと決め、アタリを出した感じが最後まで持てずじまいでした。

おそらく、

  1. たまたまエサのサイマキが底近くを漂ったとき
  2. たまたまそばに本命のマゴチがいて
  3. たまたまサイマキに気づいて食った

という三つの偶然が重なったのが、4時間で2回だったということなのでしょう。

腕を磨いてこの偶然をもっと増やし、「必然」のレベルに高めたい……。しかし、悲しいかな、釣行がたまの週末というサラリーマン・アングラーに、そうそう上達は望めません。

かくして毎回、技術や感覚の初期化におびえながら船に乗るわけです。

それでは、また!

寄稿者

釣人割烹

お世話になった船宿

金沢八景「一之瀬丸」

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