東京湾独特の釣りの一つ、テンヤで狙う「スミイカ」。
シャコ餌をテンヤにつけて狙う「テンヤスミイカ」はマーケットがとても小さいため、各メーカーもあまり力を入れていない印象です。
一方釣趣は他にないものがあり、一度衝撃の当たりを体験すると病みつきになってしまいます。今回はそんなテンヤスミイカの釣り具「テンヤ」について考察します。
スミイカテンヤの構造と役割
スミイカテンヤはシャコ餌に最適化されたテンヤ
まずテンヤとは、オモリに1本または2本のハリが固定された釣り具のことを指します。
スミイカテンヤの場合、どんぶりをひっくり返したような鉛オモリに竹の土台が針金で接続されて、オモリとは逆側の末端に一対の掛け針が組み合わされています。
スミイカテンヤの基本形状は完成されていて、わずかな差はありますが、どれも以下の5つの役割をもっています。
- シャコ餌をしっかり固定する(竹串、土台幅、ゴム止め)
- 適度に潮流の抵抗を受けスローフォールさせる(オモリと竹串の表面積)
- シャコの注目を集める(ヘッドや土台の色合い)
- 着底時にシャコを安定させる(オモリ形状と土台の角度)
- シャコ餌に抱き着いたスミイカをしっかりかける(最適な針のサイズ・細さ・幅)
市販品の数は少なく、釣具店の売り場でも1、2種類の販売であるのがほとんどです。オモリや掛け針や竹の土台を購入して自作して微調整する玄人もしばしば見かけます。
色はパールホワイト・夜光グリーン&ピンクが主要
市販のスミイカテンヤの色はスッテやエギのように何種類もあるわけでなく、以下の通り決まっています。
- パールホワイト(夜光なし)
- 夜光グリーン(白ベースor緑ベース)
- 夜光ピンク
- 夜光オレンジ
その他、カスタマイズによってラメを混ぜるなどの要素があります。
浅場、深場問わず夜光グリーンの使用率が高め。迷った場合は夜光グリーンのテンヤをもっておけばOK。
ピンクやオレンジ系は濁りが強めの東京湾では万能と言われています。
スミイカテンヤについての豆知識
20号と25号のつかいわけ
市販品ではオモリの号数が20号・25号でわけられて販売されていることがほとんどです。
中ノ瀬付近や千葉竹岡沖などの浅場で潮流があまり激しくないときは15号・20号の方が沈下速度は下げられます。またシャクリの負荷も軽減できるというメリットもあります。
デメリットはキャスト飛距離が25号に劣るという点。
なれないうちや、スッテを着けた釣りの場合、着底が取りづらくなるというのもあります。こうした場合は無理せず25号を利用したほうがよいでしょう。
天候悪化時や釣況によって年内でも浦賀航路などの深場狙いが行われますが、この際は25号を使うのが一般的です。早潮時など、ナス型オモリで重さを増すのも一つです。
ベテランのなかには23号というように刻んだ号数を使っている人もいます。
夜光カラーもそれぞれ光量が異なる
カスタマイズをすると愛着がわくスミイカテンヤ。ロスト時には胸が痛む
こちらは複数種類のスミイカテンヤで全部夜光タイプ。両端の2つだけ夜光塗料を追加で塗っています。一定時間蓄光してみると・・・。
この通り、光量の差があります。目視すると、櫻井釣漁具のテンヤ(右から2番目、3番目)ではピンクの方が光量は弱いという印象です。左端と左2番目を比べてみても、左端のようが明るい気もします。
単純により光るからといってスミイカの抱きが増えるとは限らないのですが、深場や濁りの強い日、曇天・雨天については、夜光タイプをつかってより光らせ、まず視認させるというのも一つ。
より大型になって生き残っているスミイカほど、警戒心が高くなっていることが想定されるわけですが、過度な光が-要因になるようなこともあるのかもしれません。
深場でテンヤを投入したままにすると、やがて光が弱くなってしまいます。
ベテランの釣り人ははじめに複数個のテンヤにシャコを縛ってしまい、これらをローテーションしてつかっているのですが、これはシャコの崩れ云々以外に蓄光したものを一定間隔で使うという要素もありそうです。
頻繁に釣っている人ほど釣りづけるという理由も、一旦テンヤを回収することによってテンヤが蓄光して再度海底で光りやすいという要素もあるのかもしれません。
オモリと板の表面積、スッテの有無によって沈下速度が変わる??
手前から「海の駅のテンヤ」「櫻井釣漁具のテンヤ」「FUJIWARA スミイカ職人」
潮流の速度や向き、2枚潮の有無などによってもことなりますが、まったく潮がない状態で考えると、同じ号数であれあ、オモリがより平らで丈の土台自体も幅があったほうが潮受けし沈下速度が遅くなるはずです。また、底上での安定感もよくなると思われます。
スミイカテンヤの釣りでは、「スミイカにテンヤをよく見せる」ということがコツとされますが、竿でテンヤを追従するような動き以外に、そもそものヘッド形状や土台幅の差も関わっていきそうです。
あまり表面積を大きくすることで潮受けしやすくなり、浮き上がりやすくなったり、そもそもの沈下で流されやすくなりオマツリの原因になるということもあると思われるので、一定の考慮は必要かと思います。
またスミイカテンヤではスッテをつける釣りも人気です。スッテ自体は錘がなく水中で浮くものです。そのため、テンヤ上にスッテをつけることによって、一定の浮力と潮受けによって、テンヤ自体もよりゆっくり沈下することが想像されます。
よく販売されている市販品では、FUJIWARAと櫻釣漁具のスミイカテンヤがありますが、後者の方がより錘が平らで丈の幅が広く沈下速度を下げるノウハウが埋め込まれている印象です。
釣具店、船宿によっては独自のスミイカテンヤを販売していますが、オモリ部分がさらに平らで底部の表面積を増やし、沈下速度を下げ、またカーブフォール時にスライドしやすくしています。
スミイカテンヤのカスタマイズ法
ここからは主に市販のスミイカテンヤのカスタマイズ法を紹介していきます。実際にやると釣れるとは限らないわけですが、一つ一つの要素を考えながら自分の力を加えていくと、いざ釣れないときにも、「テンヤのせい」にせず安定してしゃくり続けることができるのでオススメです。
テンヤの板(竹の土台)部分の角度を調整する
まずはテンヤの板部分に注目してみましょう。海底に着底したテンヤはオモリの底とフックの付け根にあたる土台末端の2点で底で安定するわけですが、よくみるとこの土台末端部分が接地しないものもよくあります。
こちらのスミイカテンヤをみてもらうと、右側のテンヤは机の上に2点で接地して安定していますが、左側はオモリだけで固定されています。両者を比較すると、左のものは底上で安定しづらいのかもしれません。
このカスタマイズは簡単です。
テンヤのオモリと土台をつなぐ針金部分を手で曲げればよいのです。劣化しているものでないかぎり、それほど難しくありません。
手前が土台部分を接地させるようにカスタマイズしたものです。
全体を塗装しているものは、オモリと土台の塗装間に割れが生じてしまいます。この場合、コーティング剤や接着剤で割れ目を埋めておいたほうがよういでしょう。
針の角度と幅を調整する
次も盲点なのですが、針の角度と幅の調整です。
まずはこの写真をご覧ください。
こちらは新品未使用のスミイカテンヤなのですが、かけ針の左右の開き方や角度が異なっています。スミイカテンヤは一つずつ人間が組み合わせてつくっているものなので、どれもハリの角度に差があるわけです。
実際の使用前にハリの開きぐらいを指でまげて調整しましょう。
これが調整したあとのかけ針です。
左右がだいたい同じような開きになっているかと思います。実釣時も大型のスミイカをかけたり、チップと呼ばれるカスリをしたあとはかけ針が開いてしまっていることがあります。いざというときのヒットを逃さないように、回収したテンヤのフックの角度はしっかりチェックしたほうがよいでしょう。
次にかけ針同士の幅についてです。
このようにある程度開いているものがあれば・・・。
人差し指の厚み程度の場合もあります。
フックが開いているほど、ヒット率は下がるので、この間は人差し指程度の太さに調整しましょう。これも手で曲げられます。
針先を研いで黒く塗る
スミイカテンヤは新品でも針先が甘いことがほとんどです。針先が欠けている場合、つぶれている場合、丸くなっている場合などは釣果に顕著にかかわります。使用前に金属やすりで必ず研いでおきましょう。
かけ針は新品でも針先があまりものがほとんど。シャープナーが必須
針先がそれほどひどくない杯は針先側から軸側にむけて3,4回研げば十分です(針の上下左右を研ぐ)。針先が折れている場合はさらに念入りに研ぎましょう。
テンヤもメーカーによっては黒メッキ塗装をしている場合があります。
一度やすりで研磨すると一気にさびやすくなるため、メンテナンスに気をつけましょう。
色を塗る(夜光・ラメ)
テンヤは色付きで売られているほか、裸の鉛色のまま販売されています。求める色がない場合、自分でカラーリングするのも一つです。夜光塗料やマニキュアで塗った後に、コーティングをするのがオススメです。
眼玉を貼る
スミイカはシャコの目玉の光をみて飛びつくとも言われています。
活性が高いときは頭がなくても、身が崩れていても抱き着くわけですが、渋いときは藁をもすがる思いなはずです。釣行前に、ルアーメイキング用の3Dアイチューンをテンヤのヘッド部分に行うのも一つです。
はがれやすいので、仕上がり時に白化しにくい接着剤を塗ってから固定するとよいでしょう。
アイの角度を変える
テンヤのアイは通常水平にでているのですが、これをすこしかち上げるのも一つです。
丈夫なラジオペンチなどを用意して、ゆっくり折り曲げます。
手前が折り曲げたものです。
どれだけ効果があるかは不明ですが、シャクる際の角度とフッキングの力がより伝わればよいかと思っています。また、オモリ付近に他人のPEラインが流れてきた場合も、アイに角度がついていることによってするりとぬけるような気もします。
自転車の荷台を中学生が折り曲げるチューニングがありますが、ああいった中二病的な、「ちょっとかっこいいかも¥という心理要素もあったり。
市販テンヤの特徴と紹介
Amazonで購入できるスミイカテンヤは現状、FUJIWARAの「スミイカ職人20号・25号」のみ。ベーシックなテンヤで土台が塗装されていないため板角度なども調整しやすいアイテム。市販品ではもっとも安価です。
初挑戦の場合はスミイカ職人の25号の夜光グリーン・パールホワイトヘッド・オレンジ発光の3つを用意しておけばよいと思います。高切れもある釣りなので、テンヤは余裕をもっておくと精神的にも安定した釣りができます。
スミイカテンヤに限っては、どちらかというと楽天のほうが通販で買える種類が多いです。
ショップ店長によるモデルやスミイカ船の船長プロデュースの低重心・底部表面積大き目タイプ(見た目からして釣れそうな)などがあります。パーツで購入して組み上げる手間や楽しみもありますが、実績のあるモデルを購入して研究してみるのも一つですね。
まとめ
大型のスミイカをテンヤにかけたとき、硬い専用竿に響く衝撃は脳まで到達する!
スミイカのノウハウといえば、餌のつけ方・キャストの有無・シャクリ方が中心ですが、今回はテンヤにフォーカスしました。
他にも実釣でわかったことがあれば追加していきます。
個人的には今後スミイカテンヤの自作やオモリのカスタマイズ(より偏平にし水切りをよくする)などに挑戦していきたいと思います。
ご意見やみなさんのノウハウなど、ぜひお気軽にSNSなどでお知らせください!
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