堤防や小磯などの岸から釣りをする際に、ふと足元をみると、ハゼ類にまじってなんだか透明なエビがいるなー。
そうおもったら、大体「イソスジエビ」です。
このエビは、日本全国のタイドプールや護岸に生息していて、海産のエビでは最も身近な種類と言えます。
梅雨前後には産卵で群れが集まる傾向にあり、子供でも簡単にたくさん捕まえられます。
今回は、「イソスジエビ」を獲って料理した話です。
実は、イソスジエビ獲りは梅雨前後がオススメ
イソスジエビは、テナガエビ科に分類されるエビで、日本全国の磯場や岸壁などに生息しています。
産卵期が5月~7月あたりの梅雨前後にあたるのですが、この季節は特に群れになりやすく捕獲するのにオススメなのです。
5月も過ぎると海水も温かくなりはじめ、磯遊びもしやすくなりますね。履物に注意して、干潮時にできるタイドプールにでも出かけてみましょう。
特に子供はビーチサンダルではなく、つま先やかかとを保護できる靴を履かせておくとよいでしょう。ウォーターシューズでもよいですし、履き古したスニーカーならさらに安全です。
子供連れの場合、深みがなければよいですが、小磯の近くから落ち込みがあるときはライフジャケットも必須です。
それと、幼児は水深30cmで溺れます。
こうした磯遊びというものは、意外と親が夢中になりがちなので、意識して目を離さないようにしましょう。
夜になると「イソスジエビ」はさらに密に
イソスジエビもテナガエビ科なわけですが、生態は似たようなものです。
日中は岩や岸壁の割れ目にいることが多いのですが、夜行性で夜になると活発に行動します。これは、魚や鳥から捕食されないようにしているのでしょう。
この日は、相模湾に面した河口の護岸にいってみました。
すると、いるいる。
ヘッドライトをあてると護岸にはりついたイソスジエビの両目が無数に光ります。
夜になって安心して護岸の割れ目から出てきたわけですが、そうは問屋がおろしませんぞ。
ということで、サクッと捕獲。
ひと網で4尾ってところですね。この調子で5回網をいれれば20尾。イージーモードですよ。
それはそれで上々なんですが、もっといるところはないのか。
もっと成果をあげられないか。
これはどんな人間にもわき起こる思考ですね。
・・・
そうこうして観察していると、護岸の中でも特にイソスジエビが集中しているエリアを発見。
密!
しかもフラットなエリアなので網入れしやすい。
ほーん。一か所30尾ぐらいいるな。
・・・
と、網をいれるとこの通り。
もうこれで十分ではあるんですが、アヒージョ用に冷凍するからもうすこしとっておこうかしら。
ばほら。
人間の欲は際限ないものです。
それはなぜか。
かつて、食べ物が豊かでなかった時代の飢餓の記憶がそうさせるのかもしれません。
なんなら冷凍すればいいし。
ばほら。
む。
貴殿でしたか。(アカオビシマハゼ氏)
唐揚げとは思ったんですが、これはジェントルリリース。
また今度ダボハゼ特集のときにでもお目にかかりましょう。さようなら。
こういうテトラに囲まれた狭いエリアは、キングダムでいえば城みたいなもんです。
大型のたも網という攻城兵器は通用しません。
観賞魚ネットが一番有効です。
が、観賞魚ネットは水槽などにつかうアイテムなので、牡蠣殻の壁に阻まれるとズタボロになるんですよね。
いつの世も攻城戦というのは攻め手の兵力は3倍は必要なわけです。
ということで20分ぐらいで100尾以上はとれたので早々に帰還しました。
本気を出せば数千尾は堅いものの、そんなにとってどうするんだい?っていうやつですよ。
持ち帰ったイソスジエビの下処理
こちらが持ち帰ったイソスジエビたち。
とりあえず豚汁などを製造する大鍋に海水ごとあけておき、糞抜きをしようと。
が、エアレーションが見当たらず。
あれどこにいったのか。人間も40路に近づくと記憶もあやふやです。
そうこうしてシャワーを浴びて出てきたら・・・。
わ。酸欠になりかけているんじゃ。
おい、ものの30分ぐらいのできごとだぞ。
責任者をだせ。
はい、わたしです。
ぐぅ。
これが、古今東西エビとりに共通する悩みです。イソスジエビも酸欠や温度変化に滅法弱いんです。
だから余裕をもって海水を多めにして持ち帰っても、気づいたら全滅しているってなこともあったり。
とはいえ、まだ死んでいなかったので、急ぎ氷締めすることに。
ざるで全体をよくあらって、氷水(塩水)で締める。
はい、よく締まりましたね。
ここですぐに料理しない場合、速やかに冷凍か乾燥させましょう。
エビはかなり腐敗しやすいので、油断禁物です。
さらに粗めのザルにデータ移行して、ゴミをとるとる。
このゴミとりを慢心すると、牡蠣殻とか硬めのゴミが混入して銀歯がやられますぞ。
家メシの場合、自分にクレームするしかないですからね。ゴミとりはしっかり。
イソスジエビを「かき揚げ」に仕上げる
半量を冷凍してアヒージョ用に。半分をかき揚げにすることに。
裏山の沢でとった、三つ葉・セリに新タマネギをブレンド。
そこにイソスジエビがジョイン。
って、なんだかベンチャー企業みたいな言葉づかいだな。「参加」って言わないで、すぐ「ジョイン」とかいうよね。これが役員で対外的なリリースなら「参画」とかいったり。
イソスジエビ。2020年5月、真夜の三浦半島の海で当社平田と出会いたも網にすくわれてジョイン。
みたいな。
これが伊勢海老ぐらいになったら「参画」といわれるのか。
・・・
さて、話をすすめましょう。
具材をブレンドしたら天ぷら粉を硬めにといてブレンドしましょう。。
他にはじめにてんぷら粉をふりかけてから作る方法もあります。よしなに。
あとは鍋にサラダ油+かどや銀印ごま油を1:1。中温で揚げます。
え?あー、中温っていうのは適度に油が泡立つ温度、かつ速攻で焦げないぐらいの温度ですよ。
この通り。
硬めに粉を作ったので崩れにくい。
型がないと薄めの粉で厚みを持たせてつくるのは無理なんですよね。
それにしてもこのフライパン直径28cmなんですが、異様なボリューム。
裏側も揚げる。
立ち昇るイソスジエビのエビスメル。
玉ねぎの香ばしさ。
わかってる。
食べる前から旨いのはわかっている。
天ざるにしたかったので、蕎麦を茹で茹で。日清製粉の「信州そば」が実にうまいのでオススメ。
正確には天ぷらをたくさん揚げたので、タイミングがつかめないため、先に茹で上げておきました。
息子の手が・・・
ということで、「イソスジエビのかき揚げ天ざる」のできあがり。
UPで見せたろか?
こちらです。
大きさがよくわからんと思うんですが、下段のかき揚げで「通常の3倍」といったところでしょうか。
して味は?・・・。
図体ばかりデカくて大味なんじゃないの?
・・・
ああ、旨い。
ぎっしりイソスジエビ。
ナッツぎっしりたしかな歯ごたえ系のアレだ。
乾燥させたサクラエビなどのかき揚げもあれはあれで旨いんですが、何を隠そう、こっちは生なんだよ。
イソスジエビの身がぷりぷりしてら。
白エビもうまいけど、あれはいいお値段だしなー。それにひきかえ、イソスジエビと言えば、原価0円なのに、完全に高級かき揚げの味がするぞおい。
むかし、都内のある老舗で2,500円ぐらいする天ざるを食べたことがあるけど、すまん、これは、贔屓目なしにわが軍の勝利だな。それも完全無欠の大勝利ってやつで。
旨いしボリュームがすごい。
かき揚げについてはいささか自信があるわたしでも、上段の半分ぐらいしか食べられませんでした。
そこで残したかき揚げが冷蔵庫行になったわけです。
「イソスジエビのかき揚げ天丼」の突破力とやら
翌日。
あまったイソスジエビのかき揚げを冷蔵庫から取り出し、カット。
雪平鍋に昆布つゆ+水+みりんを沸かし、そこに首尾よく、かき揚げをジョイン。
またジョインっていいやがったな。
いずれにせよ、タレとなじませて、ほかほか白飯の上にマウンティング。
七味と山で獲った三つ葉をのせる。
よしきた!
イソスジエビのかき揚げ天丼一丁!
どんぶりもの全般にいえることだが、メシにむかうときは、一気呵成に空気ごと吸い込むのが流儀。
バホバホ!ガホホ!
ん!なんこれ。
冷蔵庫に1日置いておいた味とは思えない。甘辛タレとかき揚げとの絶妙な融合。本みりんを追加して正解だったな。
たしかに主張するイソスジエビのぷりぷりさ。
結果的に40秒で完食しましたね。
だが、しかし、まだ我が軍の残存かき揚げは、まだまだ豊富なわけです。
魯山人に食べさせたい!「イソスジエビのかき揚げ天茶」という至高!
そうこうして翌日。
人間生きていると腹が減る。
夜中には妙に小腹が減る。
でも、ご安心ください。イソスジエビのかき揚げがあれば、天茶なら5分でできますので。
かき揚げをトースターでカラッと温め、煎茶をいれる。
レンチンしたコメを流水でさっとすすぎ、ぬめりをとり、どんぶりにジョイン。
またジョインっていいやがったな。
まあいいでしょう。
そこに白だしをいれてかき揚げをマウント。煎茶をかける。
イソスジエビのかき揚げ天茶一丁!
味は?
「旨いに決まってんだろ!」
と。
天茶といえば、天ぷら茶漬けの略で、食通・北大路魯山人が好んだことでも有名なのですが、魯山人も甦って食べたいという具合のびっくりの味わい。
しかも、これが芝海老とかの買ってきたやつじゃなくて、その辺の小磯とか岸壁で獲れるっていうんだからね。
世も終わったもんじゃねーよなー。
ぜひ、みんなもやってみてね。
ではでは。
平田 剛士(@tsuyoshi_hirata)