「その辺で釣ったテナガエビは臭いから食べない」という話を聞くことが何度かあります。
え?あんなに美味しいのに!と思う人も多いかもしれません。
もちろん、単純に「その辺でとれたものを口にしたくない」という都市生活者的な心情もあったりしますが、確かに臭みがあるのは否めません。
テナガエビは、身近な都市河川から清流まで生息しているわけですが、どれも下処理をしないと臭みがあります。
都市河川産の場合は特にニオイや雑味が顕著で、揚げても残ります。
そのため、適切な持ち帰り方法や下処理が必要なのです。
今回は、テナガエビ釣りを楽しむなら覚えていただきたい、もっと美味しく食べるためのノウハウを解説します。
スレ針を使い、ピンセットでハリを丁寧にとる
テナガエビを釣る際に市販の釣り針を使うと思いますが、このカエシをプライヤーでつぶします。
カエシが残っていると、ハリを外すときにテナガエビに与えるダメージが大きくなり、泥抜き前に死んでしまう個体がでてきます。
稚鮎用の市販仕掛けはカエシのないスレ針。テナガエビ釣りにも流用できます。
▼オーナーの「OH 金新鮎エサ」。カエシがない
ちなみに、カエシを取って釣ることで、テナガエビがバレやすくなるのは事実です。つねに糸のテンションを保ったまま釣るようにしましょう。
また、釣りあげたテナガエビからハリを外す際は、ピンセットや小型のプライヤーなどを使用します。
指で外すより、ハリ外しがスムーズ。テナガエビが活きがよいまま泥抜きできます。
▼小型のプライヤーはハリ外しだけでなくカエシもつぶせて便利
テナガエビは釣りながら「泥抜き」する
テナガエビの下処理として泥抜きが知られていますね。
まず釣りをする際に、クーラーボックスや水汲みバケツに、水道水かミネラルウォーター用意しておきます。
テナガエビが釣れるごとに、丁寧にハリを外し、きれいな水にいれていきましょう。
釣行時間と、帰り道の時間も泥抜きをすることができます。
テナガエビは高温と酸欠に弱いので、保冷剤等で水温を適宜下げ、エアーポンプで酸素をおくりつづけましょう。温度と酸素管理を怠った場合、特に晴れた日はあっという間に全滅してしまいます。
帰宅後も「泥抜き」し続ける
続いて帰宅後の工程です。
丁寧にハリを外し、きちんと温度と酸素管理をした場合、おそらくすべてのテナガエビが生きているはず。
バケツやプラ容器などに水道水をためて泥抜きします。狭いスペースほど、テナガエビのストレスがたまり共喰いにもつながるのでできるだけ広いスペースで行うとよいでしょう。
引き続き温度と酸素管理は必須です。
よく泥抜きと言いますが、実際は「糞抜き」と呼んだほうがよいかもしれません。
この泥抜き工程では、テナガエビが食べた未消化の餌を胃から出し、背ワタと呼ばれる腸管内から排出するのが目的です。
また、水道水を使うことで、テナガエビの体表や体内のバクテリアも軽減されるため臭みが少なくなります。
水が汚れたら交換
テナガエビの場合、消化が速いので、1~2日程度で糞が抜け、泥抜きが完了します。
一方、宿便などもあるのか、3日以上やってもそれなりに、線状の糞は排出されます。
あまり長くやると身が痩せ、共喰いもしやすくなったり、喧嘩によって腕が取れてしまうので、2日以内がよいでしょう。
釣ったあとにすぐ食べたい場合は、前述の釣ったそばから泥抜きをし、持ち帰ったあとに後述の下処理(胃袋・背ワタ除去等)を行えば臭みも気にならなくなります。
「泥抜き」だけでなく食べる前にしっかりした処理する
下処理が完了したテナガエビ
テナガエビは泥抜きをすれば美味しく食べられるイメージがありますが、都市河川で釣れたものや大きな個体はまだ臭みがあります。
続いて、泥抜き以後の下処理を解説します。
「氷水」で締める
まず、生きたままのテナガエビを処理すると暴れて腕がもげてしまうので、氷水で締めましょう。
焼酎などアルコール度数が高いものにつけて、締める方法もありますが、氷水が一番簡単です。
締める際は、テナガエビが跳ねないように蓋をする
塩で体表(殻)を洗う
締めたあとのテナガエビの体表を塩で洗いましょう。
テナガエビをよくみると、個体差もありますが、苔や水垢がついているものもいます。
特に大型や脱皮後に時間がたっている個体ほど、体表の汚れが目立ちます。
この汚れは雑味につながるので、洗い流しておきましょう。
ボールなどにいれ、全体に塩をまぶし、やさしくもむようにします。手指が弱い人は、角部分が刺さるので、ざるなどに入れてふりながら洗うとよいでしょう。
その後、流水で洗い流しましょう。やや汚れた水を確認できるはずです。
※特に大型の個体で苔の付着が酷い場合は、歯ブラシなどで洗うのも一つです。
胃袋を爪楊枝で抜き取る
次にテナガエビの胃袋を爪楊枝で抜き取ります。
泥抜き工程を行えば、臭みは軽減しますが、胃の内容物がまだ残っていることもしばしばです。
ZOOM!
こちらがテナガエビの口。
爪楊枝の先を軽く差し込み、中をえぐるようにしてゆっくりひっぱる。
食道から胃袋周りが一気に引き抜けます。
かなりの量ですね。。。
こちらがテナガエビから引き抜いた胃袋。
つぶしてみるとジャリジャリ感がありますね。
興味があれば、ニオイを嗅いでみましょう。
ヘドロ臭さ+青臭さ(藻類系のニオイ)+生臭の塊です。
テナガエビを下処理なく唐揚げにするということはこの部分を食べることになるというわけです。
一般に魚介類は油で揚げると素材の臭みは抜けたり感じにくくなりますが、この胃袋部分のニオイは多少変化しながらも、残ります。
背ワタをぬく
次に爪楊枝で背ワタ(腸管)を抜きましょう。
この部位も、泥抜き(糞抜き)ができていればそのままでもよいのですが、やはり残存したカスがあるのでニオイや雑味の原因になります。
背ワタは、尾の中心線にそってまっすぐ尾羽側に続きます。
抜き方は、殻の継ぎ目から爪楊枝の先を背ワタ(黒く見える)の下に差し込みゆっくり持ち上げます。鮮度がよければ背ワタも切れず、きれいに抜けてくるはずです。
水洗い
水で洗うと胃袋と背ワタ由来の汚れがにじむ
胃袋と背ワタを抜いた後は、全体を軽く水洗いしましょう。
水洗い工程をなぜ再度入れるのか。
それは、胃袋と背ワタは完全に原型をとどめたまま取り除くことが難しく、その残骸や汁が身につくからです。
この汚れをためた水でふるい洗いしておきましょう。
酒に漬け込む
最後は、酒類につけこみます。
魚介類の臭みは「トリメチルアミン」というアルカリ性の成分です。これが揮発して嗅覚が生臭いと認識します。
鮮度がよければ目立ってこのニオイはしないのですが、念のため酸性である酒類につけこむことで、中和されて、雑味や臭みが減ります。
料理によって酒類をつかいわけるとよいでしょう。
- 日本酒:唐揚げなど
- 白ワイン:パスタやアヒージョ
- 紹興酒:中華風から揚げ、炒め物など
レモン汁や酢をつかうと酸が強いので酒類以上に効果があります。
紹興酒に漬け込んだもの。五香粉と漬け込むのもいい
以上で、テナガエビの臭みと雑味を軽減する下処理方法の説明は終了です。
揚げ物にする場合は、酒などに水分をしっかりぬぐってから、打ち粉(片栗粉)をふってから行うと油跳ねも少なくできます。
美味しい「テナガエビのから揚げ」の作り方
テナガエビを美味しく食べる方法は、から揚げ(素揚げ)が一番シンプルです。
美味しく作るポイントは以下の通り。
- 油は多めで中温
- ゴマ油を全体の3分の一加える(好みで。より香ばしくなります)
- テナガエビは一尾ずつ水気をぬぐってから、片栗粉をまぶす(油が跳ねなくなります)
鬼殻焼き同様串を打つと丸まらない
ちなみエビ全般がそうですが、そのまま油で揚げると、尾部分が丸まります。
尾をまっすぐにしてあげたい場合は、串(爪楊枝)を指したり、尾の節部分に軽く包丁を数回いれ筋肉を切断しておきましょう。
大型のテナガエビほど臭みが残りやすい
全体的に黒ずんでいる個体ほど雑味が多い
テナガエビは、大きくなるほど殻が厚くなり食感が悪くなります。
また、汚れがたまりやすく、下処理をしても雑味がでてくることもしばしば。
背(殻)などの水垢は落ちるが腹肢あたりの汚れは落ちにくい
死んだテナガエビは食べられるのか?
釣り方や保管方法の点であまり配慮しないと、テナガエビはすぐに死んでしまいます。
死んだテナガエビは食べられるのでしょうか?
答えは、食べられるが、時間がたつほど臭みが増える。鮮度悪化が酷いものは食中毒の原因にもなる。
です。
- 保冷がしっかりしている場合:釣った翌日までには食べる
- 保冷が今一つの場合:廃棄する。冷凍して釣り餌にする
というような選択をするとよいでしょう。
死んだテナガエビの場合は、当然泥抜きができないので、速やかにジップロックなどにいれてしっかり保冷し、持ち帰り次第下処理をして調理してしまいましょう。
明らかに腐敗臭がでているものは食べてはいけません。
関連アイテム
▼揚げ物はなれないうちは、温度計がついたものを使うのも一つ。
関連記事
▼オススメのテナガエビレシピについてはこちら!
▼テナガエビの釣り方