彗星のようにあらわれて、地上に着弾した途端にメラメラと炎上しはじめてしまった釣魚オークション「フィッシュセール(Fish Sale」。
SNS上でのコメントを見る限りは、引き続きかなり厳しめのコメントが投げかけられている状態です。
Facebookページにも釣り人、水産関係者、飲食事業者と全方位から厳しいレビューが相次いでしまい、レビューのスコアも5段階で1.2という状況で、見ているこちらの胃が痛くなってくる次第です。
■釣魚のフードロスを解決
■全国約一千万人弱の釣り人に朗報
■買い手にも嬉しい、全国の新鮮な魚
■サービス利用者のメリット
運営者の発信したリリースからは、上記のようなメリットへの訴求が望まれるということでした。本件について、以下の通り釣りという業界にいる立場として、ひとりの釣り人として前回の記事を書きました。
この記事へのSNSでのコメントをみると、そうだそうだ、いかんぞいかんぞ、と、おおむねは共感をいただいたのではないかと思っております。
フィッシュセール(Fish Sale)については、その他にも疑問をもった幾人かの方が運営者に問い合わせをした様子があこれTwitterでタイムラインにながれてきていますが、同内容について運営者からの回答がFacebookページに掲載されていたのでこれについて考えてみたいと思います。
全体的に感じるのは、間接的にでも食、それも日本人にとって最もセンシティブな魚の流通に携わる立場としての責任があまり感じられないんじゃないかという点です。
いやー、ちょっとそれはないんじゃないのー?ってやつです。Facebookページ上に掲載されている遊漁船上の写真もいつのものかはわかりませんが、ライフジャケットを明らかに装着していない若い男性の写真などがあって、いろいろと考えさせられる次第です。
フィッシュセール(Fish Sale)運営者からの回答をいくつか抜粋します。
Q:クール便でないとだめか?
A:季節や地域によってはクールである必要がないかもしれませんし、業者様のご意見では発泡スチロールに魚に対して多めの氷袋を入れてガムテープなどで密封すれば大丈夫と伺っていますが、クレームの原因になるかもしれませんので、お客様の判断にお任せします。
弊社としてはクール便を推奨しておりますが、配送方法は出品者の責任で判断して頂くこととなり、落札に際しては配送方法も確認の上、落札頂きたいと考えております。
→やっぱり鮮度保持って魚介類にとっても最重要なことなわけです。締め方や保冷・物流など一定のルールを運営者が設けないといけないと思うんです。それをクレームの原因になるかもしれないので、お客様の判断にお任せしますっていうのは、ちょっと無責任ですよね。締め方やら、冷やし方や保冷だったり、釣り人によって異なるわけですし、品質が全く担保されません。買い手はどうなるのか。売り手をみすみす犯罪者にするつもりなのでしょうか。
Q:素人が出品して売れるのでしょうか?
A:正直わかりません。写真が鮮明で、適切な下処理をしていると記載がされていて、長さや重量、どこの海域でどの遊漁船に乗って、どの様に保存して持ち帰ったかの記載があり、できればそれぞれの状態での写真が複数あれば、そうでないものよりは魅力的に感じると思います。もちろんプロの方の出品も可能なので、プロの方の出品が多ければ、正直難しいかもしれません。
→「プロの方」という言葉が使われていますね。これは漁師や釣りのプロやセミプロ(副業)が専門的に釣った仕入れを期待しているのかもしれませんね。「正直難しいかもしれません」という言葉から察する限りは、どうやら素人の出品より、専門的に狙って釣魚を出品する人をターゲットにしていることが想像されます。セミプロのなかには会社員+副業で釣り関連のテスターなどをやっている方々もいます。その副業の一つということなのかもしれません。
Q:毒のある魚(故意過失含む)を出品し、被害者が出たら誰の責任?
A:省庁に確認をとっております。正確な回答を得られましたら、プレスリリース、SNS上で発信いたします。
なお、弊社としましては、問題があると判断された出品者は登録抹消するなど対応を行います。Q:食の安全を担保するのは運営会社の責任では?
A:省庁に確認をとっております。正確な回答を得られましたら、プレスリリース、SNS上で発信いたします。Q:保存方法の問題で食中毒になった場合は誰の責任?
A:省庁に確認をとっております。正確な回答を得られましたら、プレスリリース、SNS上で発信いたします。
→。。。このサービスで想定されることの一つが悪意のない状態での毒魚の流通や食の安全の問題です。そのあたりについて確認なしにすすめていたところがここでわかりますね。今回は、リリース後に批判の矢面にさらされたわけですが、そうならなかったらどのようにすすめるつもりだったのかは気になります。
その他の同様のご質問については、4月1日のオープンまでお控えいただけますようお願いいたします。
本番環境をご覧いただければ多くのことがわかることかと思いますので、何卒よろしくお願い致します。お客様の貴重なご意見によって、より充実したサービスを提供できるように致します。
これから何卒よろしくお願いいたします。
→ほんとうにやるんだなと。そうかやるんだなと。
事業って、
- マーケットの課題、ニーズ
- 利益や継続性の有無
- 立ち上げる人の熱量
あたりはもちろんだとは思うのですが
- そのサービスが世の中に支持されるものなのか
これがとっても重要だと思います。
これがないと、どうしてもうまくいかないとは思うんです。
よしきた!「フィッシュセール(Fish Sale)」みたいに感じているひとってどれぐらいいるんでしょうかね。
今、この国においては深刻な漁獲量の減少問題をはじめとして、アニサキスや毒魚など繰り返しメディアで煽られる魚食への不安というのがあります。
漁業と遊漁の課題に対して強い信念を持ったうえで、プロトタイプとして「フィッシュセール(Fish Sale)」というサービスを出さなくてはいけないというのであれば、やっぱり自然とその熱量が伝わってくるとは思います。
が、どうも、このサービスは運営者の思い付きと利益面・手離れ良好感のみが優先して走ってしまっているように感じます。人間も動物です。そういったなんというか、厭なニオイって、やっぱり敏感なわけです。とくに釣り人諸氏ってそのあたり敏感なんだとは思います。
どんなに大義名分の旗が掲げられていても、その旗を持った人や集団のエナジーといいますか、まーそういったものって、様々なところで伝わってくると思うんです。
前回の記事にくわえて繰り返しますが、日本の漁業権と遊漁の仕組みは微妙なラインでひかれたままです。岸釣りでも沖釣りでも一触即発な部分というのがあります。
これは「漁業権を守ろう」というような単純なことではないと思います。漁業権云々ではなくて、日本の水産資源をどうするかという問題に、我々日本人は立ち向かっていかないといけないわけです。
遊漁だけきりとってみると、食べきれなくなるまで釣られてしまう魚の存在課題はたしかにあります。「フィッシュセール(Fish Sale)」さんがおそらくメインターゲットにしている遊漁船をつかった釣りの仕組みもそうです。
船宿のマーケティングが毎日の「釣果」の発信に依存しているという構造上、どうしても魚を多く釣り過ぎてしまいます。タチウオひとり100本とか一体どうするのか。ヒラメやキンメダイやアカムツなど、希少種はエリアによっては自主規制のリミットがあったりしますが。
こんなカオスな状態で日本の釣り場や海はどうなるのか。そこにきて、オークションときた。責任はとりませんときたら、釣り人の立場は今後どうなるのか。それが気がかりでなりません。
本質的な課題解決はなんなのか。
一つ思うのは、
様々な日本のカオスな水産の現状に対して、今回の「フィッシュセール(Fish Sale)」さんの存在が、日本の漁業や遊漁について改めて考える機会になったかもしれないということです。特に釣り人にとって。
わたしも他人事でなく考えたいと思います。