この記事は約10分で読めます。

釣魚オークションサイト「フィッシュセール(Fish Sale)」ってどうなんですかね

釣れた魚を買い取ってくれるところがあったらいいな。釣り人のなかにもそう思ったことがある人もいるはずです。あ、ネットの「釣り」の話じゃないですよ。リアルな魚釣りの話です。

ご多分に漏れず、わたしもそう考えたことがありました。むかし、実際に魚を買ってくれるという料理屋のSNSアカウントにメッセージしたところあえなく未読スルーされた次第であります。SNSで情報発信するぐらいならちゃんと見てくれと。

釣りをすると、これがまあ道具やら船代やらに異常にお金がかかるんですね。これは釣り人以外の人にはわかりにくい感覚かもしれないのですが、釣りという趣味は底なし沼です。

カメラが好きな人のレンズ沼や家庭崩壊などの話をきいたりするんですが、むしろあらゆる趣味の中でも沼という観点では釣りという趣味がもっともやばいんじゃないかと思っています。

まさに沼オブザ沼。それが釣りです。

どうやばいのか。

釣りは本能を刺激する趣味なんですね。魚の「アタリ」や「引き」を経験した人には名状しがたい欲求が沸き起こります。そうそれが人間の四大欲求の一つ「釣欲」です。

釣り場にいく以前から釣り場のこと、潮の流れ、風のことなどを考えつつ、脳内でシュミレーションする。でもって釣り具屋にいく。するとあら不思議。オモリ一個を買いにいったはずなのに、気づいたら2万円以上する釣り竿と同じく2万以上するリールを買ってよくわからない多幸感に包まれてほくほくしていたり。

で、実際釣りに行って釣れない。すると、さらに釣れるだろう道具を買い込む。その道具の選択肢がカメラ沼などと比較しても圧倒的に多岐にわたるわけです。リアルなモンハンですよ。釣り具のおびただしいアイテム数を知りたい人は釣り具の上州屋の東陽町店でもいってみればわかると思います。きっとこいつら気でも狂ったんじゃねーの、そう思うはず。そんでもって、だいたいの人がてんで実入りも少ないくせに、ものごとを釣りのために装備を最適化していく。それが釣り人です。

釣りはギャンブルによく似ています。獲物を獲るという観点は賭けみたいなものです。麻薬はやったことがないんですが、たぶん麻薬みたいなものなのなんでしょう。

いずれにせよ釣りをはじめて、大人になると、やはりキャッシュはポンポン飛んでいきますし、潤沢な資本を持っていない人は釣りに行く回数も少なくなったりするのかもしれません。

狩猟がプチブームになっていますが、免許が必要ですし、鳥獣をハントできる場所というのは限られています。だから物理的な自省もききやすい。が、釣りは釣り禁止エリアを除けば都市河川でもできますし、東京湾のちょっとアレな湾奥エリアでもいろんな魚が釣れます。なので参入障壁がものすごく低い。

魚を釣って食べる。食べないでリリースをメインに遊ぶゲームフィッシング。釣れないけど釣りにいく。釣りにはいろんな人がいます。釣りバカ日誌の浜ちゃんみたいに底抜けにいいやつもいれば、人間の屑まったなし、いやはやお見事。今年度のクズオブザイヤー受賞おめでとうございます。というような輩もいます。

そういった輩が自分のことばかり考え跋扈し、あらゆるごみを投棄し、数少ない魚を乱獲し、他の釣り人と無駄な諍いを起こし、釣り場環境を崩壊させている現況にサンダガを唱えたいっていうのは置いておきます。

とにかくそんな釣りシーンに彗星のように現れたのが、釣魚のオークションサイト「フィッシュセール(Fish Sale)」というサービスです。

正式には4月1日にサービスリリースのようなのですが、 2019年1月31日 14時0分に@Pressでニュースリリースが放たれてから、一般ネットウォッチャーだけでなく、釣り人界隈でも相当な話題を呼んでいます。

ためしにツイッターで「フィッシュセール」と検索してみましょう。9割9分9厘がネガティブコメントです。ちょっとは喜んでいる釣り人もいるかなと思ったんですが、なんだこれは分が悪すぎるじゃないか。現時点でネットでは四面楚歌状態と言っても過言ではありません。もう楚の歌しか聞こえない。

サービス提供の背景として、個人や集団が大量に釣れた魚を処理しきれずに余らせてしまう事例があります。「Fish Sale」は釣れた魚、余剰な魚を廃棄するのではなく、飲食店や個人に提供したい、というニーズや悩みを解決するオークション形式の売買サービスです。

フィッシュセールが実現したい世界観というのは、わたしも釣り関連に携わっている身分ですし、その他サービス立ち上げを考えているのでわかるつもりでいます。限りある水産資源をもっと有効に活用したいというのはその通りだと思うんです。

が、

がですよ。

そもそも釣りって、日本のなかでは漁業に対して「遊漁」という取り扱いなんですよね。

釣りは遊漁(遊び)として扱われています。遊びというのは非営利であるということで、営利目的の「漁業」とのすみ分けができています。

「遊漁」としての魚釣りを勉強しよう

遊びの「釣り」と営利目的の「漁業」。この関係性ってぜんぜん安泰ではなく、現時点で一触即発状態でもあるわけです。

わかりやすいのが漁港での釣りです。

もともと漁港とよばれる港湾施設は漁業者のために設置されているものであるのですが、そこで一部の知能指数、いや他人を思いやる力が圧倒的に足りないマッドマックス怒りのデスロード系の釣り師が良からぬことをしでかしたりします。

  • 漁船にのって大小便をする
  • 漁船にのって釣りをする
  • 漁船を係留するロープを切断したりいたずらをする
  • 漁業者の指示に対して、逆切れして暴力
  • 漁港を出入りする漁船にオモリ付きの仕掛けやルアーを投擲

これはかなり極端なのですが、実際にはゴミ問題や釣り人と漁業者のトラブルを原因として日本全国の漁港で立ち入り禁止や釣り禁止になる例が頻発しています。

沖縄のおかっぱり釣り禁止情報。沖縄の漁港で釣りするときに注意したい点|sacomさんからの寄稿

2018.08.07

沖縄牧港の遊漁船むるぶしさんの投稿から漁港での釣りを考える

2017.02.22

たとえば海釣りでいえば、もともと釣り人が正々堂々と胸を張って釣りができるのは、釣り専用に定められている釣り公園か、遊漁船やマイボートでやる沖釣りしかないんです。それ以外はスーパーグレーゾーンのなかで、当時者の忖度だったり利害関係において微妙なバランスの上で成り立っている趣味なのです。

そこにきて、遊漁である釣り人が魚を広く販売できるサービスのスタートです。うーむ。これはもう、遊漁と漁業のバランスがくずれることが明白ですね。

淡水魚の売買の例がわかりやすいのですが、人間は基本的に弱い生き物なので、なかにはお金に目がくらむと信じられない行動をとってしまう人も現れがちです。たとえば、小規模河川で禁止されている漁法によって希少な魚を一網打尽にしてネットやリアル店舗で観賞魚として販売したり。

これが釣りの例になるとどうなるかというと、より高額で希少な魚を狙うハンターがあらわれるわけですよ。いつだってこうした人にとって種の保存やら、足るを知るなどということは全く理解の範疇外にあります。こうなってくるとフィッシュセールさんがサービス紹介動画でいっている理想とはかけ離れたものになってしまいます。

だって、釣りを楽しみたい釣り人っていうか、マネーを稼ぎたいという目的のハンターが売れる魚を血眼になって探して釣るわけです。もう根こそぎですよ。そこにきて、こうした人がサービス運営者が定めるルールを守るかというと、まーきっと守らないわけですよ。ウェブサービスで釣り場の釣り人を監視なんてできませんしね。

となると、密漁まったなしです。禁じられた場所でもやるはずですし、もはや釣りではなく漁業者とかわらない漁法で魚介類をとって販売するはずです。

圧倒的なトラブルの温床に対して、サービスの運営上、フィッシュセール運営企業は当時者間のトラブルを販売者と購入者に押し付けざるを得ないはずです。それがウェブサービスというものですんでね。

第9条(当社に対する補償)
ユーザーの行為が原因で生じたクレームなどに関連して当社に費用が発生した場合または当社が賠償金などの支払いを行った場合、当該ユーザーは当社が支払った費用や賠償金など(名目の如何を問わず、相当な弁護士費用を含みます。)を負担しなければなりません。

出典:フィッシュセール

うーん。こりゃユーザーは責任重大ですね。

  • 漁業法違反者の頻発
  • 購入した魚と異なる魚が届く
  • 届いた魚の鮮度が悪く食中毒を起こす
  • 届いた魚が見分けにくい毒魚で購入者が死亡したり後遺症を負う

などなど釣魚などの水産物をめぐっては軽いものから重めのトラブルもだれでも思い浮かぶはずです。

また販売者の釣り人は容易に産地を偽装できるはずです。

高価に売れることから○○産と有名な産地をいって、実は異なる産地の魚を送ったり。写真にエフェクトやフォトショによる加工によって鮮度をよく見せてUPしたり。わたしだって、よくこのサイトORETSURIに料理前の魚の写真をUPするんですが、やっぱりスマフォでも簡単に色つやだったり加工できちゃうんです。

一方、魚屋では天然の一本釣り魚が手に入るとあり、大変重宝されます。また、魚の締め方(活〆、神経締め、血抜きなど)が完璧であるかはプロの目から見れば一目瞭然で、この状態が良ければ高値で売れることもあります。

このあたり、おそらくプロでも写真だけではわからないと思います。前述の通り加工してしまえば、ちょっとぐらいへたった魚であれば目がキラキラ、表皮もつやつやで撮影できますので。

であれば、素人の買い手で、釣りや魚リテラシーがない人なんて諸手をあげて騙されにいくようなもんです。いつ死んだ魚かなんて、素人はわかりませんし。その魚が神経締めで処理されたかなんてまーわからない。

ちょっと邪推してしまいましたが、そういった釣り人に確実に存在する邪悪な人間以外にも、善意の人も容易に間違いをするのが釣りという世界です。

たとえば、魚の締め方は同じ言葉でも人によってことなります。

「野締め」「活締め」「氷締め」「神経締め」などの用語も人単位や地域によって理解が異なります。これは初心者だけの話ではないんです。

「血抜き」といっても、ろくに血抜きができない方法を熱心に行っているベテラン釣り師もいるわけです。いきなり心臓にナイフをぶっさしちゃったり。

こうしたあらゆるトラブルを見越して、それならサービスの機能で優秀な釣り人を評価し★をつけられるようにして、高評価の釣り人が選ばれるようにしようというような発想がでてくるわけですが、まーなんというか、そういったレビューが募る前にトラブルで沈没するのが関の山なのではないかと感じています。

今回、まだフィッシュセールがリリース前なのに下馬評でトラブル待ったなしと扱われてことに対して、フィッシュセール運営者が諸葛亮なみのウルトラCをもっているのかはわからないのですが、やっぱりやってはいけないことってあるんじゃないかなと思ったりするわけです。4月1日にサービスがリリースできるのか。サービスをストップorピボットすべく仕切り直しするのか気になるところです。

今のところは、フィッシュセールによって想像できるものから予想だにしていないトラブルが巻き起こり、釣り人自体がさらに肩身が狭くなりそうな気がしています。もう肩身が狭くなるのはこりごりなんです。

ではでは。

平田(@tsuyoshi_hirata

▼今をさかのぼること2011年にJGFAが本件のようなことを危惧する声明を出していたようです。

例を挙げると、不景気の煽りを受けた一般の人々(釣り人)が、生活費や釣行費用を少しでも賄うために、釣った魚を寿司店やレストランに直接販売したり、また一方の遊漁船事業者は、釣り上げた魚に応じたキャッシュバックやポイント還元をうたい文句に集客し、ポイントと交換で得た魚を市場に水揚げしたり、レストランに販売し利益を得る、というような行為がみられます。さらには、魚の売買を仲介する業者まで現れています。
こうした行為は、国内法に触れるものではありませんが、遊漁で釣られた魚が簡単に換金できることは、いたずらな乱獲を助長し、金銭目的の釣り人の増加、それに伴う釣り環境の悪化、果ては魚類資源の枯渇へと繋がりかねません。釣り人にとっても、また遊漁船を営む事業者にとっても、望むべき方向でないのは明らかです。

出典:JGFA

<追記>

Fish SaleさんのFacebookページにはまだサービスが始まっていないながら釣り人からのレビューが多く書かれています。そういったレビューへの中の人によるコメントをみるといろいろと見えてくることもあるなと感じました。

スポンサーリンク

関連記事

釣魚オークション「フィッシュセール(Fish Sale)」を契機に本質的な課題解決策を考えたほうがよいかもしれません

2019.02.13
<お知らせ>
🎣Amazonの釣り漫画セール「釣りバカたち」シリーズが3円!

この記事を気に入ったら
いいね!

最新情報をお届けします

TwitterでORETSURIをフォローしよう!

ABOUTこの記事をかいた人

平田 剛士

ORETSURI編集長。釣り歴30年ぐらい。いつの間にか釣りメディアをはじめていたもので人生不思議だなーと思っている今日この頃。 口癖は「釣りはいいよねー」