釣り人に「マルタ」との愛称で呼ばれるマルタウグイは、コイ目コイ科ウグイ亜科に分類されている魚でウグイの一種です。
ウグイの仲間では特に大型に育ち、最大で50cm級2kg程度に成長し、引き味も抜群のため釣りのターゲットとしても人気がでてきています。
今回はマルタウグイの生態と都市河川での釣り方を詳しく解説します。
マルタウグイの生態
マルタウグイのライズ@多摩川
内湾で甲殻類・ゴカイ類・その他の動物性のエサを食べて成魚になったマルタウグイは、3月~4月にかけて河川を遡上し、中流域の瀬で産卵をします。
河川によっては自然環境のほかに漁協職員等が産卵床を整備していることもあり、毎年決まったエリアで産卵行動が見られます。
3月中旬から4月上旬が遡上のピークで、降雨による河川の増水によって堰などを上っていきます。
群れの入り具合によっては流域がマルタウグイだらけになり、そこら中で魚影やライズが確認できます。
産卵直前のマルタウグイは、瀬(川が浅くなっている場所)の下流にあるトロ場(やや深く流れがゆるやか)に定位し、産卵に備えています。
河川の中流域でマルタウグイを釣る場合は、瀬で産卵行動に移っている個体群もしくは、トロ場に定位している個体を狙って釣るのが一般的です。
シーズン初期は下流で釣れやすくなります。
汽水域等でバチ抜け(ゴカイ類の産卵行動)パターンにあるシーバスをシンキングペンシル等で狙っているとマルタウグイがかかることもしばしば。
マルタウグイとウグイの見分け方
マルタウグイの遡上と同時期にウグイも産卵のために遡上します。
釣りをしていると、判別がつきにくいので見分け方を覚えておきしょう。
マルタウグイ
こちらはマルタウグイのオス。
婚姻色のオレンジ色の上側(背側)は黒い帯状の色合いです。
オスは体が細長く、肛門部分から白い精液を出すので判別できます。
マルタウグイのメスの個体は腹部に卵をもっているため、腹部分がはっているのが特徴です。
ウグイ
こちらはウグイのメス。
マルタウグイと比較すると、全体的にサイズが小型(30cm前後が多い)で黒い帯状の模様を挟むようにオレンジ色の帯があります。
河川によっては漁業権がウグイのみであることも。
一方、マルタウグイとウグイの釣りわけは不可能なので、遊漁権を購入して釣りを楽しむようにするとよいでしょう。
マルタウグイが釣りやすいタイミングは3月から4月
多摩川中流域の桜。マルタウグイは3月中旬から4月初旬がもっとも好機。
マルタウグイを狙って釣るために適したシーズンは3月~4月中です。
東北地方など、やや気温・水温が低いエリアは、やや後ろ倒しの傾向にあります。
3月に入り、雨がつづき川が増水するわけですが、桜が咲くシーズンに河川の中流域にいけば出会える確率があがります。
マルタウグイを釣るためのタックル(ルアー釣り)
テレスコピックタイプ等のバス釣りのパックロッドは移動に便利!
マルタウグイを河川本流で釣る場合、流れの強さも加わりかなりの引き味です。
ロッド
マルタウグイ釣りでトラブルなく対応するにはミディアムライトクラスのシーバスロッドが最適です。
釣りなれている場合や引き味をより楽しみたい場合はライトクラスのバスロッドなどをチョイスするとよいでしょう。
ウルトラライトクラスでも対応できますが、ファイト時間がかなり長引くデメリットもあり、魚への負担も大きくなります。
また、魚をコントロールできず、他の釣り客とオマツリしやすいので人が少ないときに限ります。
▼ライトからミディアムライトクラスのバスロッドが最適
リール
スピニングリールがよく使われています。
高価なものは不要です。
最低限逆転ストッパー機能があり、ドラグがきちんと作動するダイワ・シマノ・アブ等のの5,000円前後以上のものを利用するとよいでしょう。
▼3000番台のスピニングリールが最適
ライン
ラインはナイロン2号(8lb.クラス)あると底石にすれたり、不意のナマズや鯉のバイトもなんとか釣り上げることができるはずです。
マルタウグイだけなら1.5号(6lb.クラス)でドラグ無しで十分釣れ、5gのスプーンの遠投が可能です。
マルタウグイだけなら1号(4lb.クラス)以下は、ドラグを使用しないと高切れするリスクがあります。
▼ナイロン6~8lb.が最適。6ポンドの場合、本流に入られての引きや鯉やナマズがヒットするとラインブレイクの可能性も。
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ルアー
オレンジ・アカキン系のルアーがよく釣れる。ほかに白系もよい。
河川中央まで飛距離を伸ばし、流れに負けず底上を引ける重量として5g程度の赤金・オレンジ系のスプーンが最適です。
リリース主体の釣りのためルアーのフックはバーブレス推奨。
オーナーのエリアモンスターなど、トラウト管理釣り場用の大型狙いのフックが最適です。
▼①沈む②赤・橙・金などの派手なカラー③マルタウグイの口に入りやすい3~5cm程度のものを選ぶとよい。スミスのピュアやフォレストのミュー、それぞれの5gがおすすめ。濁りが強い河川では、ラパラのカウントダウンのレッドヘッドが効果的。シングルフックチューンにして使いましょう。
マルタウグイの釣りで配慮したいこと
都市河川で狙う場合、マルタウグイは食味は決してよいものではありません。
そのためほとんどの人がリリース主体で釣っています。
魚も産卵のために遡上するため、リリースしたあとに産卵行動を全うできるように取り扱うことにも配慮したいものです。
強度の高いバーブレスフック、リリーサー、ラバーネット、メジャー等を用意しておきましょう。
ナイロン網のネットは魚体を著しく痛めます。
また、写真撮影をする際もアスファルト直置きなどは魚体が傷みやすいので注意が必要です。
釣り場でもじたばたしているよりはスマートでかっこよく見えますよ。
▼フックはエリアモンスターが断然おすすめ。ニーブーツをはくことで狙えるポイントが増える
マルタウグイの釣り方
マルタウグイを効率的に釣る方法を紹介します。
マルタウグイが釣れるポイントを探す
基本的にその河川で釣れる場所は毎年決まっています。
台風や河川工事で地形は変わるのですが、毎年マルタウグイが釣れているポイントはほぼ変わりません。
そのため、「多摩川 マルタ」・「多摩川 マルタウグイ」というようにネットで検索すると、主要なマルタポイントを把握できます。
またシーズン中は遡上により群れが移動するため、釣り場であった釣り人とのコミュニケーションを密にするとボウズも少なくなるはずです。
たとえば、マルタウグイが大量に遡上する多摩川では、シーズン初期の2月~3月上旬は汽水域。
3月中旬から4月中が中流域でよく釣れます。
どの魚でもそうですが、魚がいない場所に延々キャストしても釣れません。
実績ポイントでマルタウグイを狙う場合も、水面に反応があるか、瀬で産卵行動をとっているかなどをチェックしてから釣りをしましょう。
マルタウグイの釣り方
トロ場には産卵前のマルタウグイが定位している。エリアによってはナマズもよく釣れるポイント
まず不用意に川岸に近づいたり、立ちこまないようにしましょう。
特に産卵床である瀬に入ろうとするマルタウグイが散る原因になります(散ってもしばらくすると元に戻る)。
他の釣り人がいる場合、できれば挨拶をし、狙っているポイントとの距離に配慮して立ち位置を決めます。
ルアー釣りでもエサ釣りでもフライでも上流側にキャストします。
川底の上をルアーや餌ができるかぎりゆっくり下流側に転がりながら泳いでいくように移動する状況を演出しましょう。
下流にキャストしても釣れますが、口周りでなく、胴体などのスレがかかりが多くなるのでオススメできません。
水深があるポイントでは、底層を離れるとアタリが出づらくなります。
瀬に入ってからのマルタウグイは餌を捕食するというよりも、目の前にある邪魔なルアーを追い払うために口をつかう印象です。
魚にとってより目立つルアーを選びましょう。
ルアーが下流側に斜めに流れながら、上流側に鼻先をむけているマルタウグイの前に到達するとアタリが出ます。
口で咥えたときのアタリは「モソ」「フッ」「コツン」「ツン」っというもの。
「モソ」というようなわずかなアタリでもラインを即合わせするのが釣果を上げるコツです。
というのも、マルタウグイはルアーを咥えたままではなく、すぐに吐き出すからです。
ルアーやフライなどの種類によって、ややたるませながらドリフトさせている場合は、余分なラインを巻き取りながら合わせましょう。
スレがかりはいきなり重くなります。
ヒット後は、本流の場合かなり引きますので、無駄に走らせないようにドラグをあまりつかわず寄せてきましょう。
この時にタックルのセッティングが弱いと、下流に走られて下手の釣り人の道糸と絡んでしまい悲惨なことになるので注意です。
手前まで寄せたら、ラバーネットで取り込み、基本的に陸にあげないでリリースします。
リリーサーがあり、写真撮影などしない場合は、ネットは不要です。
<マルタウグイ釣りの鉄則>
- 不用意に音をたてて岸際に近づいたり、立ちこまない
- 上流へキャストしてルアーが動く程度にスローリトリーブ(底上をトレースできて、きちんと動くルアーが必要)
- 赤・金・白・ピンクなど刺激的で目立つルアーが効果的
- 誘って食わすというよりも、しっかりマルタウグイの前を通して払いのけさせるイメージ
<マルタウグイ釣りに適したルアー(特に瀬狙い)>
- ルアー:フローティングミノーよりはシンキングミノーや浮き上がりにくいスプーンが効果的。大きくても5㎝程度が口にフッキングしやすい
- エサ釣り:餌がしっかり沈む程度の錘をつけた動物性のエサ(鮭やマグロの切り身などオレンジ色・赤色の食品に反応がいい)
- フライ:赤・オレンジ系のエッグ系フライであれば入れ食い
マルタウグイ釣りで釣れるゲスト
マルタウグイが産卵するシーズンは河川の水もすこしぬるみ、その他の淡水魚も積極的に活動します。
また、マルタウグイやウグイが産卵した卵をもとめて寄ってくる魚もよく釣れます。
鯉は本流でヒットすると苦戦しがちなターゲット
鯉は雑食で、マルタウグイの卵も食べます。
主に瀬より下流のトロ場でルアーをゆっくり引いていると釣れやすい魚です。
コイが多い場所では、しっかりしたタックルで釣りをしましょう。
ニゴイはマルタウグイとほぼ同等の引き
ニゴイもコイ同様、マルタウグイの卵を狙っています。
流線形で流れに強く、瀬の中にも紛れています。
瀬に入り込んだマルタウグイにむけてキャストしたルアーにもかなりの勢いで飛びついてきます。
フローティングミノーやトップウォータプラグにバイトしてくることもしばしば。
サイズも50cmを超える個体も多く、マルタ同様楽しめるでしょう。
都市河川のナマズは瀬でも釣れる
夜行性の魚であるナマズですが、曇りの日や河川に濁りがある日は昼間でもルアーに飛びついてきます。
もともと遊泳力は高くないためトロ場で釣りやすい魚なのですが、ニゴイ同様、流されにくい魚体をしているためか意外に瀬にもついています。
アゴが極めて堅いため、カエシがついているトリプルフックだとリリースまでに時間がかかるため注意しましょう。
バーブレスの場合もプライヤーがあると安全にリリースできます。
都市河川のマルタウグイは独特の臭みがあり食用に適さない
ウグイ(左列上から2番目)やマルタウグイも小型のうちは揚げるなどして問題なく食べられるが・・・
もともとマルタウグイはウグイ同様食用にされていたものですが、都市河川で釣れる個体は独特のニオイをもっているため食用には適しません。
そのニオイは青かび臭・泥臭・洗剤臭ともいわれます。
成魚になるまでに湾内のヘドロ地帯や工場温排水の流れ込みなどに好んで群れているため、身肉に臭気が染みついています。
牛乳でニオイを覆ったり、揚げたり、すりつぶして加工するなどの料理法が知られていますが、どれも十分にニオイをとりきれません。
また手間も多いため、キャッチ&リリース主体の釣り人がほとんどです。
食性は動物性の雑食のため、寄生虫などの存在も想定されるため、面白半分での生食は控えましょう。
まとめ
マルタウグイ釣りでわかりやすいのは瀬の釣り
今回はマルタウグイの生態と都市河川での釣り方を詳しく解説しました。
基本的に産卵にからむ個体をリリース主体で狙う釣りです。
特に瀬の釣りはかなり釣れます。
魚体を必要以上に傷めつけない配慮はルールではなく最終的に釣り人の自由なのですが、マナーとして理解しておきましょう。
また、よく釣れるポイントは決まっていますので、挨拶や声掛けをしつつ、釣り座を譲りあうなどの精神も大切です。
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