わたしのつけ麺は野方大勝軒
たまに猛烈に食べたくなるものとして、つけ麺がある。
甘じょっぱい醤油ベースのつけ汁がいい。麺はもっちりとしてつややかな太目が実にいい。
なぜ甘じょっぱい味が好きかというと、今はなき野方大勝軒(丸長のれん会グループ)の影響である。
もともと、東京の中野区野方に住んでいたのだが、西武新宿線野方駅の裏手に野方大勝軒があった。
カウンター数席だけの店だったように記憶している。店主の細めのじいさんと奥さんが切り盛りしていたのだが、この店には、もりそばとよばれるメニューがあった。
当時大学生だったわたしは、バイト前にこの大勝軒で大盛を頼んだ。たしか、大盛の上に特盛というものがあって、信じられないぐらいの麺量で超満腹のまま出勤していたこともあった。
このもりそばの味、やや醤油の香りが強いチャーシュー(おそらく肩ロース)などは今も忘れられない。
大勝軒といえばいろいろな系列があるも、もりそば(つけめん)を出すような店はだいたいスープが甘じょっぱい。
おそらく、通常の中華スープをつくる手法に、さば節などで和の風味を加えつつ、そこに砂糖・みりん・酢(米酢?)あたりをブレンドして仕上げるのだと思う。
野方大勝軒は2005年5月をもって閉店してしまった。
それからラーメンやつけめんも様々なものを食べた。
が、あの味わい。あのボリュームは今でもわたしの記憶にのこっていて、つけめんというとあの味が想い出される。
ちなみに、中野大勝軒はつけそば発祥の地としてまだ営業しているので近隣の人はぜひ訪れてほしい。
ということで、今回は甘じょっぱいつけめんが食べたくなったのと、冷蔵庫で熟成させていた金アジをどうしようかなと思ったので、”アジつけ麺”をつくった。
熟成させた金アジの下処理
なぜつけ麺で金アジがでてくるのか。
ひゅうがくんのごういんなドリブル!
ってやつか。
よく考えてみると、春になってちょっと温かくなって、桜も咲いたし、なんとなくつけ麺が食べたいなーという気持ちがあって、そこに冷蔵庫に金アジを寝かせたやつもあったよなー。という在庫事情が加わっただけだ。
まー釣りメディアだし、一応魚をいれないとね、というあたりでしょう。
見よこの張りを!
こちらは本牧沖で釣ってすぐに血抜き処理後5日冷蔵庫のチルドルームで寝かせた金アジ。
要はマアジの居着き個体だ。
この皮の張りをみればだいたいうまいやつだとわかるだろう。
刃先をいれるとこの通り。
いい魚は包丁をいれてもよくわかる、と、料理人は言うけど、最近わたしもそのあたりがわかってきた。
脂肪が十分にいきわたったもっちりとした身。
熟成の間に水分がやや抜け、実によい状態になっている。
腹骨をすいて、血合い骨を骨抜きプライヤーメリーで抜く。
常温でも皮下あたりの脂肪がじんわりとけていく。
奥側のサクは皮を引くのを失敗したもの
もうこれは刺身でいいんじゃないか……
アジのアラで割りスープを炊く
鍋に水+日本酒+みりんをいれて、アジのアラ(霜降り処理をしたもの)をいれて強火で炊く。
皮、腹骨、中骨を1匹分だけ使う。
炊く。
炊いたあとに、日清つけ麺の達人のスープ割り用ダシをいれて終了。
この割り出汁は柚子パウダーがはいっていて香りもいい。
日清の「つけ麺の達人伝承甘旨醤油」の完成度が高過ぎる
3%引きのシールは証拠隠滅したかったが・・・
今回のつけ麺はこちら。
日清のつけ麺職人の伝承甘旨醤油。先に行っておくがこれがかなり旨い。
東池袋大勝軒監修で、甘辛さがじつにいい。完成度がかなり高い。
そのへんのラーメン屋が出すダメつけ麺の25,000倍ぐらい旨い。だけど、これはスーパーで200円台だったという。しかも3%。日清は、いろいろな即席めんメーカーのなかでも一番企画力・技術力が高く、カップラーメンなどでもそのあたりは歴然としている。
こちらが中味。
こういうチルド系のスープで、脂が固まったまましぼってしまうのは素人だ。
液体スープについては、どの即席ラーメンでもそうだが、固まっている油脂部分をしっかりどんぶりに入れるのが重要なのだ。
あぶらは旨み。あぶらはコク。あぶらこそが人生、ではないけれども、あらかじめ湯煎などして、脂をしっかりとかして全量使いたい。
麺を茹でる湯は他者への思いやり同様けちってはいけない。
湯は沸騰させ続けることで麺が躍る。これはラーメン屋でアルバイトをしていたわたしがいうのだから間違いない。
即席めんといっても、茹で方はとても重要。
つけ麺界隈の場合、流水で締めるので、やや柔らかめにゆでるとふつーのかたさにはなるが、素人はゆで時間をきっかりタイマーではかってつくるとよい。
みてほしい。
この麺の艶。
ためしにつまんでみると、みごとにもっちりして旨い。
味気ないので、ここに具材をトッピングしてみる。
まずは金アジのしゃぶしゃぶを。
これは表面だけ、スープ割り用のナベでしゃぶしゃぶして氷水で冷やしたもの。つまり中味はレア。
これで二玉だが、士気によって2.5玉から4玉あるとよいと思う
麺の上に、ゆでもやし、かいわれ、ねぎ、金アジをしゃぶしゃぶしたもの。金アジの刺身。
つけ汁には、ばらの海苔とさらし玉ねぎをいれた。
準備ができたら、いただきます。と、手を合わよう。
あとは、
麺を箸でつかんで、つけ汁をたっぷりつけて一気にすする。
・・・
ぐぅ、なんてうまいんだ。
甘さ。
旨さ。
酸っぱさ。
もっちりとした麺を咀嚼すると、涙がにじむ。
さらば青春。
金アジがどうのこうのと強引なドリブルで巻きこんじゃったけども、このつけ麺は具なしで十分うまい。
さて、そろそろ金アジの食レポにうつらないと、どうしようもない。
上等な金アジの刺身なんだから、醤油で食べればよかろうにと自分でも思いながらも、つけ汁につけて具材として食べてみる。
あ、これはこれでおいし。
次に、金アジをしゃぶしゃぶしたものを食べる。
・・・
む。
これはなんの違和感もなく、おいしい。
中味がレアなのがいいね。
刺身よりこちらのほうが似合う気がする。
ラーメンというと、豚のチャーシューが一般的ながら、軽く湯引いた刺身なんか盛り付けてあげたらよいのかも。この発想は意外とありなんじゃないかな。時代はヘルシー志向だし。1杯1,500円ぐらいになってしまうけど。
その後、醤油で刺身を食べる。
ああ、これよなこれ。
醤油の偉大さ。
偉大なる醤油様。
醤油マンセー。
やっぱり醤油は落ち着くよね。
締めのスープ割りは金アジ出汁。
200mlぐらいしか水はつかっていないので、中アジ1尾でアラは十分。
それにしても、なまめかしい白濁スープだこと。
スープ割りをした碗に白飯をいれて、金アジしゃぶしゃぶを飾る。
深呼吸をして、いっきにかきこむ。
…ああ、味わい深い。
思った通りの味だ。
具がなくても圧倒的な完成度のつけ麺ながら、こうして、いろんな具材をもりつけると贅沢だなと。
自炊は外食より安上がりになるというはもちろんあるが、自分の好きなようにアレンジできるのが最大の魅力なのだろうな。
ゆでもやしを爆盛にする。
さらし玉ねぎを具材のようにマシマシする。
ばら海苔をこれでもかとつけ汁にかます。
かどやのラー油をつけ汁にかます。
・・・
つけ麺をたのんで、アジの刺身やしゃぶしゃぶが盛り付けられてくるラーメン屋など地球上にはないはずなんだけども、思い立ったら自由に自分の発想が楽しめる。
さて、野方大勝軒の話はどこにいったのか。みなまでいうな。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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▼野方大勝軒は知る人ぞ知る見せながらも東池袋大勝軒はだれもがしっている店。客に愛されているのは野方も池袋も中野も一緒ですね。
▼メリーの骨抜きプライヤーは神商品。