【妻に内緒】ビオトープを掘ったら「ギンブナ」繁殖!驚くべき稚魚の正体とは?

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ギンブナ
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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。

サラリーマン・アングラーの釣人割烹です。

「マブナ……。」

なんという懐かしい響きでしょうか。

筆者は物心がついたころ、高知県の農家だった母方の実家にお盆で帰省したおり、近くの深田でマブナを釣った記憶があります。生まれて初めての釣りだったと思います。

じいちゃんが山で竹を切り出し、糸と針をつけてくれました。水面から身を躍らせ、水をはじき、陽光を受けてキラキラ輝く魚体が、今もまぶたに焼きついています。

小学生になると自分で竹を切り、シマミミズを掘って、近くの川や沼へ釣りにいくようになりました。なにしろ半世紀近くも前。ゲームのたぐいはなく、山へ虫とりにいくか、川へ釣りにいくしか選択肢がないわけです。

釣りは「フナに始まり、フナに終わる」といいます。終わりはともかく、筆者にとってはじまりは確かにフナでした。
この魚について最近、いろんな気づきがあったのでお話します。

目次

突然「ビオトープ」熱に浮かされた

マブナの話をするにあたり、まずはその前提となる話を。

筆者は、東京近郊の一戸建てに家族4人プラス猫1匹で暮らしています。

何を隠そう、庭には池があるのです。

おいおい、庭に池ってこいつどんな豪邸だよ?

「パンパン」と手を叩いたら、1匹ウン十万円の錦鯉とか集まってくんのか?

おっとっと、それは誤解です(汗)。

池というのは、実は手作りなのでした。

庭に池があったら、魚が飼えてさぞかし楽しいだろうなぁ……と、住みはじめてから思い続けていたのです。

あるとき、世に「ビオトープ」なる趣味があると知りました。池を作って水草やメダカ、タニシなどを入れ、人間の手をあまり加えない小さな自然の循環を再現します。

ちょっと変わった世界。

水辺の植物と生き物が共生する小さな楽園づくりを目指すもので、池だけでなく、水槽や睡蓮鉢、発泡スチロールの箱でも可能。マンションのベランダでやっている人もいるようです。

ネットでググると、池の作り方がたくさん出てきます。それを見ているうちに、やりたくて我慢できなくなったのでした。

庭に穴を掘って、かみさん激怒

6年ほど前のある夏の休日。ついに決行する日が来ました。

かみさんは娘を連れて外出。家にいた当時小学生の息子を誘います。

筆者「おう、庭に池を作ろうぜ」
息子「え?マジで?」

たったこれだけの会話で、狭い庭に植えた芝生をひっぺがし、二人でスコップをふるって地面を掘りはじめたわけです。
ここらへん、親も子も後先考えない性格。

えっちら、おっちら何時間もかけて汗だくで庭に大穴を開けました。

息子と2人で掘った池

そして、ホームセンターで買っておいた工事用ビニルシートを二重にして穴に敷き詰め、今度は掘った土を入れていく。

さらに、池の周囲にレンガや砂利を配し、ビニルシートを隠す。
完成して水道水を入れます。

おおっ。それらしいではないか。

しかし、このときの私は重要な手続きを無視していたのです。

かみさんの許可を取っていなかった。

庭を見るや、かみさんすごい形相です。

「あなたっ!wbなのzgたう!(以下略)」

いやぁ、怒ると思ってたけど、そこまで怒るかなぁ(涙)。

かくして、工事時間4時間、総工費約1万円で池が完成。

家庭用の風呂2杯分ほどの水を入れ、2週間ほど放置したあと緋メダカと水草を入れました。すいすいと泳ぎまわるメダカが涼しげです。

生き物たちが増えていく

知人たちに写真を見せたところ……。

「池だって? 汚い水たまりにしか見えん(笑)」

「ボウフラがわくぞ。近所迷惑だろ(笑)」

モノの価値がわからんやつばかりで、情けない。

この池、作って本当に正解でした。暮らしに大いなる潤いと癒し、気づきと学びを与えてくれます。

夏には水草(主にアナカリス)が増え、メダカも繁殖して増えていきます。娘が夏祭りの夜店ですくった金魚を放すと、これもどんどん成長します。

鉢植えの睡蓮を沈めたら花が咲きました。近くのシダやコケをとってきて植えると、池の回りに定着しました。

池に睡蓮が咲いた

冬に水草は枯れ、やがて池の水は凍ります。

氷の下のメダカは大丈夫かと心配になりますが、春に氷がとけると元気に泳いでいます。自然はよくできているもんですね。

トンボが卵を産み、ヤゴもいる。アメンボもいる。タニシやミズカマキリもいる。基本、ビオトープなのでエサは与えません。水槽のようにブクブクで水に酸素を入れたり循環濾過させたりもしない。

冬には氷が張る

ただし、夏には水が蒸発するため、水道水を入れて補う必要があります。

他に何かのバランスが崩れるとアオコが発生します。これは懸命に手で除去。でっかくなった夜店の金魚がぽっくり死ぬと、亡骸を娘と土の中に埋めます。

近所の公園の池で、網ですくったヤマトヌマエビを入れたり。つい出来心で、釣ってきた大きなテナガエビを入れ、メダカが食われたり(涙)。

カエルも冬眠から目覚めて産卵

3年前の春、南房総の田んぼで捕まえてきたアカガエルを何匹か池に入れました。これがまた大成功でした。

カエルを池に放したら、しっかり居着いた

夏から秋、釣ってさばいた金アジやシロギスを肴に、夜更けに一人で飲んでいると、網戸越しにカエルの鳴き声が聞こえてくる。

まっこと風流。まことに風情たっぷり!

冬になるとカエルの合唱は聞こえなくなりましたが、翌年春にびっくり仰天しました。池の中に、カエルの卵があるではないか!

池に産みつけられたカエルの卵

底を埋め尽くすオタマジャクシ

カエルたちは池の周囲で冬眠し、春に目覚めて産卵していたのです。

寒天のような卵塊のなかで黒い粒がモゾモゾ動き、やがてオタマジャクシとして泳ぎ出す。

しかも、これがものすごい数。

子供は大喜びです。ときどき網ですくい、後ろ足が出て、前足が出て、尾っぽが消えていくプロセスをじっくり一緒に観察しました。

後ろ足と前足が生え、尾は残っている

もしかして庭がカエルだらけになる、と心配していましたが、取り越し苦労でした。鳥や野良猫が餌にしているようです。それでも何匹かは生き残ります。冬眠し、目覚めてまた卵を産む。

もちろんメダカも観察します。雌雄つがいの産卵行動を観察。娘は水草についた卵を探して孵化させ、成長を記録して夏の自由研究にしました。

いや、はや。もう、池はスーパー楽しい。

こんなに素晴らしいとは思いませんでした。

水槽の水換えや掃除が面倒になって……

「フナの話はどうなったんだよ」って?

はい。ここからいよいよ本題です。

今年の初め、この池にマブナ2匹を放しました。

これ、釣ったものではなく、ホームセンターの観賞魚コーナーで3年ほど前に衝動買いしたもの。家のなかでブクブクをつけた水槽に入れて飼ってきました。

最初はタナゴより小さいくらいでしたが、いまでは大人の人差し指を超えるくらいに成長しています。池に入れず、わざわざ水槽に入れたのは観賞するため。眺めていると子供のころのマブナ釣りがよみがえって、懐かしく見飽きることがありません。

でも、水槽の水換えや掃除がメチャクチャおっくうなわけです。池に放せば面倒な作業から解放されるが、緋色のメダカと違って褐色の背中で目立たず、観賞はおろか、どこにいるのか探すのも難しくなる。

う~む……。悩んだ末に今年の春、ついに池に入れました。

案の定、水草の下に隠れて行方知れず(涙)。

娘と池を眺めていて小魚の影を見つけた(写真中央)

ところが8月、またしても驚くことがありました。

娘と一緒に池をのぞくと、見慣れぬ小魚を発見。1匹、2匹、3匹……。

???

手桶ですくってみると……

な、なんと、フナの稚魚ではないか!

生き物大好き、釣り大好きの娘が「かわいい!」とはしゃぎ、筆者も感動を覚えて「フナ2匹はオスとメスのつがいだったんだねぇ」と応じました。

ところがその後、娘への説明が誤りだったことが判明します。

2匹は「つがい」ではなく、両方ともメスだったのです!

「あり得ない。ウソだろ?」と驚く方は、そのまま続きをお読みください。そのカラクリを知っている方は……。できれば続きをお読みください。

日本はギンブナとヘラブナの天下

オスがいないのに繁殖する。

ネット上で研究者の論文などを読み漁るなかで、フナの驚くべき生態を知りました。

日本にいる「フナ」の種類を挙げれば、

  1. ギンブナ
  2. キンブナ
  3. ゲンゴロウブナ
  4. ニゴロブナ
  5. ヘラブナ

これらのフナの仲間のうち、キンブナは関東、東北地方に、ゲンゴロウブナとニゴロブナ(鮒寿司の原料)は琵琶湖に生息する日本の固有種で、三つとも絶滅が危惧される種に指定されています。

一方、ギンブナは日本、台湾、朝鮮半島、中国に広く分布。「ヘラ」ことヘラブナはゲンゴロウブナを品種改良したもので、釣りの対象魚として全国各地に放流され、広く生息しています。

すなわち、日本の内水面でふつうに見かけるフナは「ギンブナ」と「ヘラブナ」であり、ギンブナを「ヘラブナ」と区別して「マブナ」と呼ぶわけです。

ギンブナの恐るべき繁殖戦略

わが家の池を泳ぐ2匹もギンブナです。

この魚、他のフナとは異なり、実は個体の大部分がメスだというのです。裏返せば、オスはほとんどいない、ということ。

ふつう動物種ではオスの精子とメスの卵子が出合って結合(受精)し、細胞分裂が始まって新たな個体が生まれます。中学校の理科でも、しっかりそう習うわけです。

ところが、ギンブナは違います。卵子は受精しないまま、あるきっかけで細胞分裂を開始して、個体が生まれてしまう。

これを「雌性発生」(無性生殖の一種)というそうです(卵子と精子の受精による個体誕生は「両性発生(有性生殖)」という)。

しかも、ギンブナの卵子が細胞分裂を始める「きっかけ」が、また恐ろしい。

ギンブナの卵はある特別なフェロモンを出しており、そばにいる金魚やコイ、ドジョウなどのオスをその気にさせてしまう、というのです。

なにそれ。

種の異なるオスがその気にさせられ、ギンブナの卵に精子を放出する。すると、すかさず精子は卵の中に入り込みますが、細胞分裂のきっかけを与えるだけで、遺伝に何ら関与しません。

こうして生まれた稚魚は母親と同じメスで、しかも遺伝子を完コピした個体、すなわち、

クローンなのです。

分裂で増える単細胞の微生物ならわかりますが、微生物よりはヒトに近い高等な脊椎動物であるギンブナがクローンで増える、というのは驚きですね。

情けないぞ、ギンブナのオス(涙)

ちなみに、わが家の池ではフナと金魚やメダカが混泳しています。金魚のオスが、その気にさせられてしまったのか……。まぁ、金魚も元をたどればフナなんですが。

いずれにせよ、わが家の池で生き物のクローンが誕生していたわけです。

なお、自然界ではギンブナの群れにオスがいれば、その精子が卵と受精して個体が生まれる「両性発生」も起きるそうです。でも、雌雄の比率からして、確率的には極めて低いでしょう。

池で生まれたクローンたち。まだメダカより小さい

筆者はホモ・サピエンスのオスとして、ギンブナのオスにいいたい。

お前たちは何のためにいるのか。

「あんたがいなくても、他の魚のオスをその気にさせればいい。用なしよ」とでもいうかのようなメスの振る舞い。情けなさすぎるだろ。

ある研究者が北海道全域のギンブナを調査したところ、どの地域もクローンが優勢で、ある湖では1種類のクローンが全個体の99.2%を占めており、両性発生の個体は0.8%しかいなかった、ということです。

自然界がギンブナにクローン繁殖を許す意味が、よく分かりません。

両性発生は、遺伝子の何億、何兆通り(!)もある組み合わせにより、いろんな特徴を備えた個体を生み、ときに突然変異(奇形)も生み出します。環境が大きく変化しても、さまざまな特徴を持った個体を抱えている方が、種として存続する可能性が高いわけです。

ときには突然変異の個体のみが環境の激変に適応して生き残り、新たな種として栄えることもあるわけです。

クローン繁殖はその逆です。みな同じ個体なので、ちょっとした環境の変化に適応できなければ一気に全滅してしまうでしょう。

ちなみに、ドジョウも雌性発生で増えることが知られ、サケ、マス、ヒラメなどは雌性発生の仕組みを利用した孵化技術により、クローンのメス(オスより大きく肉厚で商品価値が高い)の稚魚を大量に誕生させ、養殖・放流しているそうです。

魚の世界は奥が深く、本当に知らないことだらけです。

わが池では、きょうも「クローンギンブナ」たちが元気よく泳いでいます。正確な数は分かりませんが10匹ほどいるようです。

あと何年かして大きくなったころ、タナゴ狙いの極小針でアカムシをエサに、子供と一緒に庭でフナ釣りをしたい。そんな妄想を抱きつつ、朝の出勤前に池をのぞいています。

寄稿者

釣人割烹

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