どうも平田です。
ビワマスを知る人はあまり多くないと思うんですが、食べたことがある人はもっと少ないはず。
琵琶湖固有種で漁獲量もそれほど多くないので、滋賀周辺にはほとんど流通してないんですよね。
出典:滋賀県
琵琶湖のビワマスは年間30トン前後が漁獲されている様子で、極端に数が激減しているようではない様子。
人工ふ化や漁獲制限による賜物なのでしょう。
これまで図鑑でビワマスってのがいるんだなーと認識していたんですが、食べたことはなかったんです。
そんなビワマスを漫画家の佐藤秀峰さんが2度届けてくれたんですね。ありがてぇ。
ここからは2回分のビワマス料理から抜粋したものを紹介します。
こちらがビワマスです。
下処理したものをいただいたというのもあるんですが、さわやかな香り以外の生臭みはほぼありません。
マスはニジマスしかりヌメリがつよく、そこにニオイが多いので、処理すると、かなり軽減します。
そこから、冷蔵庫でやや寝かしておいたものを調理していきます。
ビワマスは夏場に脂が一番乗り、10月・11月が禁漁期とのこと。
刺し網とトロリーングによる漁法があるようで、夏場は低水温の層を泳ぐのでタナをしぼりやすい様子。
冬場になると水温が底も上も一定になり、ポイントが絞りづらくなるみたいですね。
まずは塩焼きにしてみたいと思います。
ちょっと長いので半分にカット。
スパン。
マスって骨がやわかいんですよね。
え、この断面ですよ。
美しいオレンジ色。
これは鮭と同じでアスタキサンチンの色合いです。
ビワマスの主食は「小鮎」(琵琶湖では大きくならない。エサ不足とされる)なんですが、もう一つの主食が底付近に生息する「アナンデールヨコエビ」とのこと。
なんなんそのアナンデールヨコエビってのは?ってことなんですが、これも琵琶湖固有のヨコエビなんだそうで。
ビワマスはこのヨコエビ(実際にはほかの甲殻類もたべるとは思います)をよく食べている年は色揚げが良くなる様子。
そうですかそうですか。どんどん食べてください食べてください。いや、遠慮せずに、どうぞどうぞ。
続いて、ヒマラヤピンクソルトを多めにまぶしてやや脱水。
これは臭みを抜くための工程というよりも、旨味を増幅させたいという意図です。
さて、魚の塩焼きをつくるときなんですが、腹部に指で強めに塩を塗ってから焼くとさらに美味です。
どうしても腹部は塩味が染みづらいですからね。
では焼きます。
焼いていると気づくのが脂の強さ。
夏のピークの時期には及ばないんだとは思うんですが、それでも脂がにじみ出て、ジューパチパチと皮目がはぜます。
トロサバを塩焼きにするときのアレです。
皮目を焦がしすぎないように調整して、できあがり。
・・・
味は、鮭ですね。
鮭の身がなめらかになったような。
脂がジューシーでクセがなく、食後のいやなもたれ感がありません。
溶けだした脂で揚げるようになった頭部や皮目が実にうまく、噛みついてハモハモしてエキスを吸ってしまったぐらいです。
こちらは前にいただいたときのビワマス塩焼き。
すきとったハラスと一緒に焼いてみました。
スダチをたらして、このハラスを食べると最高です!
さて、次は刺身に。
鮭は海に下り、その食性からアニサキス保有率が高いんですよね。
ビワマスについては、メインの食事がアナンデールヨコエビと小鮎ということで寄生虫リスクは高くないようです。
実際には生き物なのでなんらかいるんだと思うんですが、気になるものではありません。
現地でも刺身でよく食べられている様子。
ってことで、三枚におろす。
いやはやオレンジグミみたいな身質ですね。
寝かしたことにより、水分が抜けているのでしょう。いいぞいいぞ。
皮目をすきました。
ほかに、刺身を切り取る際に皮をすきつつ、身を切り出す技法があるようです。
カワハギの薄皮をさけるときのアレです。
これ刺身包丁でやったんですが、オピネルのフィレナイフのように、さらに薄いブレードでやったほうが歩留まりがよくなるはずです。
ま、皮も食べるからよいんですけどね。
はい刺身です。
ビワマスの刺身はジューシーかつまろやか。身質は、とことんこまやか。
回転寿司のとろサーモンから餌由来の臭みを軽減し、脂のくどさをすこしさげたような味わい。
いやはや実に美味。
どんぶりにしてもうまいようですよ。そりゃそうでしょう、そうでしょう。
次、ここでオリジナルレシピ「ビワマスタルタル」です。
前回のビワマスでつくったもの。
- クリームチーズ
- ディル
- 胡椒(白・黒)
- マヨネーズ’(ほどほど)
- レモン汁少々
- ニンニクすりおろし少々
調味料をねるねるねるね。
ビワマスの切り身を入れる。
身をつぶさないように和える。
それから冷蔵庫で冷やす。
そして、盛り付ける。
魔の味わいです。
北欧っぽい味わい。
なぜ北欧かというと、フィンランドのヘルシンキでこういう料理を食べたような気がするんですね。
むこうはサーモン料理がしばしばあるんです。市場でもよく売ってます。サーモンが。
ビワマスは脂ノリがよいわけですが、クリームチーズ・レモン・マヨネーズ(酢)の酸味が脂をおさえつつ、ディルとガーリックの香りが食欲を増進し・・・。
白ワインとかシャンパンによくあう味です。あんまり酒は飲まないんですが、なにが合うかぐらいはわかります。
トーストしたバケットなどに載せて食べても、実に北欧感。
つづいて、ムニエル。こちらも前回のビワマスでつくったもの。
全体にクレイジーソルトをふりかけしばらくおく。
その後、小麦粉をまぶす。
オリーブオイルで皮目をこんがり焼く。
ひっくり返すして、火が通ったらさらにとりわける。
残ったオイルに、バター・白ワイン・レモン汁を追加し、アルコールを飛ばす。
ムニエルにかける。
安定の美味です。
肉厚の個体だったので、半身でもボリューミー。
ビワマスは皮とその下の脂肪も鮭同様かなり旨いので、香ばしく皮目を調理するというのは重要なポイントなのでしょう。
そういえば、皮といえば刺身をひくときにあまるわけです。
これね。
決して捨ててはいけません。
そこにサクをとるときにトリミングした部分を足す。
味噌汁の具材にします。
この通り。
皮目からでた脂が味噌汁の旨味を奥深いもののにしてくれますよ。
出汁をアラでとるのもよいそうです。
最後に、焼きほぐしたビワマスから骨を抜いておにぎりに。
ボールに以下の材料をいれ、白飯と混ぜあわせてから型でぬきます。
- ビワマスほぐし身(やや塩味)
- 乾燥アミ
- おたふくの天かす 天華
- 青のり
- 塩昆布
ここに麺つゆをいれるとうまいわけなんですが、今回は塩昆布と、ほぐし身の塩味のシンプルなものに。
(ほぐし身を黄アジに変え、上記+麺つゆ+梅干しで味付けすると美味です)
三角形のおにぎりをつくれる型枠をつかいました。
この日は、息子とふたりで近所トレッキングに行く予定だったんですが、型枠をつかうと時短でよいですね。
息子もいつの間にか3歳。少年の面持ち。
がぶり。
瞬く間にもぐもぐ完食していました。
自分がつくったものを美味しく食べてもらうというのは何より幸せなことです。
ということで、ビワマスを料理して食べた話でした。
ビワマスはクセがなく、万人受けする味わいです。脂も多いんですが、食後感が軽めなのです。さらっとしていて、いやな脂じゃない。
ビワマスは一生を通して琵琶湖と流入河川を行き来するだけで、海にいくわけでもありません。
だけど海に出る鮭のような旨味と脂があるんですよね。
アナンデールヨコエビと小鮎が作り出した味わいなんでしょう。
みなさんも機会があればぜひ食べてみてください。
そこらへんに売っているものではないので、琵琶湖周辺にいったときにでも・・・。
近年はビワマスの全雌三倍体「びわサーモン」が流通しはじめているようで、全シーズンで脂ノリがよいようです。
天然ビワマスとは餌が違うので、脂は強いものの風味はまた変わるのだと思うのですが、それはそれで食べてみたいところ。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)