釣りをはじめてしばらくすると、ライン素材をどう選ぶかという疑問がわいてきますね。
ナイロン、フロロカーボン、PE、その他。
釣りのジャンルやシチュエーションごとに、適したラインがありますが、大枠は周りに合わせるのが最適解です。
とはいえ、なんとなくラインを選ぶのと、素材ごとの特徴を理解してから扱うのでは大違いです。
一度は学んでおきたいラインの種類ごとのメリット・デメリット。
今回はナイロン、フロロカーボン、PEの3つのラインに絞って解説します。
ラインの号数とlb表記、直線強力・結節強力について
ラインの種類について説明する前にラインの号数とlb(ポンド)表記について説明します。
基本的に餌釣りは「号数」、ルアー釣りはlb(ポンド)表記される世界です。
ナイロンラインとフロロカーボンラインの場合、1号は約4lbです。
1lbは約450gのため、1号は約1.8kgの負荷をかけたときにラインが切れることを指します。
これを直線強力・引っ張り強度と表現します。
実際にはラインをサルカンやルアーのアイ・スナップにつける段階で、直線強力は落ちてしまいます。
結んだときに変動するラインの強度を「結節強力・結節力」というように表現します。
PEラインの号数とlb表記について
PEラインはナイロン・フロロと太さの標準規格が異なる
デニールとは、繊維及び紡績糸の太さの単位のことです。
1デニール=9,000mの糸の長さの重さをグラムで表記したものです。例:シーガー規格
1号の場合 200デニール(9,000mの糸の長さで重さが200g)
1.5号の場合 300デニール(9,000mの糸の長さで重さが300g)このように、数字の単位が大きいものほど太い糸ということになります。
デニールの単位によって、その糸全体の平均的な糸径の値がわかります。
出典:クレハ合繊
ナイロンとフロロカーボンと違い、PEラインは号数の基準が異なります。
PEラインは撚糸で太さが変動しやすく計測しにくいため、「デニール」という単位によって号数が決まっています。
一口にPEラインといっても、原糸の種類や編み方等によって強度が変わってきます。
またコーティングの種類によって耐摩耗性も変わるのです。
また、メーカーによって平均強度と最大強度表記が混在している点にも注意しましょう。
- 平均強度(力):規定条件下で複数回強度実験をしてその平均値を表記している
- 最大強度(力):規定条件下で複数回強度実験をして一番強い値を表記している
実釣でラインを使用する際はさらに変動要素が加わる
1号(ナイロン・フロロカーボン)なら約4lbでは約1.8kgの魚がつり上げられるというわけではない
さきほど、1号(ナイロン・フロロカーボン)は約4lbでは約1.8kgの引っ張り強度を持つとしましたが、さらに結節強力は考慮する必要があるという話をしました。
実際は、釣りで使用する場合はさらに多くの変動要素が加わります。
- 結び目をしめるときの摩擦熱
- 適切な結びができているかどうか(同じ結び方でも強度は変ります)
- ラインへの傷やヨレの有無
- 魚の鋭い歯や鰭
- 魚の強い引き
簡単にあげるだけでこれだけの要素がラインの強度に関わってきます。
釣りをするときは、様々な要素を考えて適切な強度の号数(lb)を選ばないといけないというわけですね。
ラインの特徴(ナイロン・フロロカーボン・PE)
さて、いよいよラインの素材ごとの特徴を解説します。
わかりやすいように表にしておきました。
一度目を通してみてください。
<ラインの特徴一覧表(ナイロン・フロロカーボン・PE)※>
素材特性を理解してラインを選ぼう!
ラインの伸びと感度について
ナイロンラインは伸びる。メリットもあるしデメリットもある
ラインの伸びが少ないほど、振動がつたわりやすく、道糸の動き・竿先・手感度の情報を得やすいと言えます。
PEラインは伸びがほとんどないため、ラインを張っているかぎりは高感度です。
一方、水に漂うため、潮の状況によってはラインにたるみができアタリがわかりにくくなってしまいます。
一般に感度が良い素材であるほど、水中の地形や潮の動きや流れを把握しやすくなり、アタリへの反応しやすくなります。
また、ルアーの動きもわかりやすくなります。
ルアーをアクションさせる際もキビキビとした動きをさせることが可能です。
伸びがあるラインの場合、魚が餌やルアーにバイトした際に違和感を持たれにくいというメリットもあります。
<感度>
- PE > フロロカーボン >ナイロン
※ラインを張った状態
比重について(沈降速度・風対策)
シチュエーションによって最適な比重は変ります。ジャンルや釣り方によってつかいわけましょう。
ナイロンは水に近い比重で、フロロカーボンは水に沈み、PEラインは漂います。
PEラインは軽く表面積が大きいため風にあおられやすく、フロロカーボンラインは重いため影響を受けづらい傾向にあります。
※実際は太さの観点も加わるため一概には言えません。
<比重>
- フロロカーボン > ナイロン >PE
直線強力について
メーカー指定の測定器で規定条件下においてラインが切れる強度を指します。
たとえば1号は約1.8kgの負荷をかけたときにラインが切れる値を指します。
<直線強力>
- PE > ナイロン >フロロカーボン
結節強力
ラインを結んだ状態での強度です。
ナイロンとフロロカーボンは安定して強度が出せますが、PEラインは著しく結節強力が低下します。
また結び方によっても変動します。
太いフロロカーボンラインはコシがあるため、サルカン等に結ぶのがむずかしくなります。
一般にきれいに結べていない結びでは、結節強力が低下します。
<結節強力>
- ナイロン >フロロカーボン > PE
吸水性
フロロカーボンとPEラインは吸水しませんが、ナイロンラインは吸水し劣化します。
一度吸水して強度が下がったナイロンラインは元に戻りません。
細糸ほど影響を受けやすいので注意しましょう。
よっぽおの小物釣りでない限り、1号未満のラインは1回の釣行で交換したほうが無難です。
つづいて、ナイロン・フロロカーボン・PEラインの特徴についてそれぞれ解説していきます。
<吸水性>
- ナイロンは劣化しやすい
耐摩耗性
根ずれや歯ずれなどにより、ラインは弱りますが、その耐久力を指します。
一般的にフロロカーボンラインが高く(特に多層式)、ナイロンはフロロカーボンに劣ります。
PEラインは耐摩耗性という観点では弱いラインなのですが、コーティングの種類や編数(繊維の太さ)によっても変わります。
<耐摩耗性>
- フロロカーボン >ナイロン > PE
※実際はコーティングや多層構造などによっても異なる。
ナイロンラインの特徴
ナイロンラインはあらゆる釣りでの標準ラインです。
その昔、日本の釣り師は「テグス」と呼ばれる「蚕」由来の釣り糸をつかっていました。
昭和初期になりナイロンラインが普及し、現代においても安価・柔軟・かつ強度が高いという点で愛されています。
伸びがあるため、感度は良くないと言われています。
メリットもあり、大物狙いではクッションのような役目を果たし、強い引きをいなすという効果もあります。
スプールなじみもよく、トラブルが最も少ないラインです。
直線強力・結節強力ではフロロカーボンよりやや強いと言えます。
デメリットは、熱・紫外線・吸水により劣化しやすく、細糸ほどすぐに強度が落ちてしまう点です。
表面のコーティングによりナイロンのデメリットをおさえているアイテムも多く販売されています。
<適している釣り物・適している人>
- ライントラブルを軽減したい人
- ラインのコストを低減したい人
- 大型底物を狙い
<適していない釣り物>
- 船釣り全般(道糸)
▼おすすめのナイロンライン
ジャストロンDPLSは2号から6号までのラインナップがあります。平行巻でリールに巻き替えたあともトラブルがかなり軽減されます。500m巻きで安価なので頻繁な巻替えでも低コスト。
太糸の場合、サンヨーナイロン ライン エクストラ V-500がおすすめ。太糸になるとどうしてもコストは上がります。
フロロカーボンラインの特徴
ポリフッ化ビニリデン製(フッ素樹脂)素材のラインをフロロカーボンラインと言います。
ナイロンほどではないですが、直線強力・結節強力が高く、張りがあるためショックリーダーや船釣りでの仕掛けによく用いられています。
1層構造のものと多層構造(摩耗性が高い外側とやわらかい内側を組み合わせる等)のものがあります。
多層構造のフロロカーボンラインは耐摩耗性に優れ、歯や根ずれ対策にも最適です。
道糸として使用する場合、スプールなじみがわるく、バックラッシュや結び目ができやすいというデメリットがあります。
太糸をスプールに巻く場合は、大型のスプールにしっかりまかないと釣りになりません。
特に夜釣りでは道糸の状態に配慮が及ばなくなりやすいため、フロロカーボンラインの使用に気をつけましょう。
細糸であればスピニングリールでの道糸としても問題なく使用できます。
<適している釣り物・適している人>
- ラインを沈める釣り物
- リーダー等の耐摩耗性を高めたい場合
- 仕掛けにハリがほしい釣り物全般(船釣りの仕掛け)
<適していない釣り物>
- 船釣り全般(道糸)
▼おすすめのフロロカーボンライン
道糸とリーダーにつかう用途で変わってきますが、リーダーやハリスの場合、おすすめはシーガーグランドマックスFXです。
しなやかで適度なコシがあり、耐摩耗性が抜群。結び目の強度もかなり高いと言えます。
細糸で大物を狙う場合はぜひ使いたいアイテム
道糸に使う場合、低コストなフロロマイスターがおすすめ。耐摩耗性を重視したい場合は他製品のほうがよいです。
PEラインの特徴
PEラインはポリエチレン繊維を撚り合わせた釣り糸です。編数によって4本、8本、12本等が販売されています。
伸びがほとんどないため、感度を高めることができます。
直線強力が極めて高く、ナイロンやフロロカーボンラインと同じ程度の太さでも倍以上の強度があります。
吸水しないため、ある程度の太さであれば強度が長く維持でき(摩耗に耐えやすい)、長期間巻替えなくても釣行できるメリットもあります。
ライトソルト・ショアジギング・エギング等のルアー釣りで飛距離を出したいとき、船釣りで潮受けを避けたいときにしばしば用いられます。
釣り船では、潮受けを軽減するため、ほぼすべての釣り物でPEラインを使用することが決められています。
釣り物ごとに指定のPE号数とオモリ号数が決まっているため必ず守りましょう。
主なデメリットは、「結節強力の低さ」「伸びのなさ」「耐摩耗性の低さ」「色付きである」「浮く(漂う)=メリットになる場合もある」の5点です。
サルカン等に直結すると40%の強度になってしまい、結び目の位置から高切れします。
基本的に結節強力を上げるため、フロロカーボンやナイロンのリーダーをつけて使用します。
コシがないため、水にぬれた状態で竿先に絡むという特徴もあります。
このデメリットはリーダーを結ぶことで避けられます。
▼おすすめのPEライン
岸釣り用のPEラインは、シマノのピットブル、メジャークラフトの弾丸ブレイド、ラパラのラピノヴァXが比較的安価かつ高品質で人気です。
船釣り用はシマノのタナトル、シーガーのPE X8が人気です。
▼PEラインの編数についての記事
まとめ
釣りをはじめると、悩むことになるライン素材。
今回はナイロン、フロロカーボン、PEの3つのラインに絞って解説しました。
メリット・デメリットを知ることで、どのラインが絶対に最強でもないということに気づいたはずです。
素材ごとの特徴を知ってから扱うことで、トラブルも軽減でき、平均釣果も上向くことでしょう。
<※参考サイト>
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▼PEラインは潤滑剤をつかうことでトラブルが軽減し、飛距離も伸び、耐久力も長持ちします。ラインの結節力を高める添加剤もあります。
▼PEラインは、摩耗した上糸と下糸を巻替えることでさらに長く使用できます。比較的高価なPEラインですが、ナイロンに比較して耐用時間を考えると、意外に経済的なことに気づくはずです。