PEラインは4本編と8本編が中心ですが、近年では12本編も登場しています。
一方で、編み数(撚り数)によって変わるメリット・デメリットについては、あまり理解されていなかったりします。
「4本編のPEが安いからとにかくいい」
「信頼する人が8本編のPEをつかっているから」
「編み数が多いPEが高いからいい製品」
このような考えをしていませんでしょうか。
自分の釣りにあったPEラインを選ぶために素材や構成による違いについて基本知識を理解する必要があります。
今回はすっかりあらゆる釣りで定番化しているPEラインの基礎知識と、4本編と8本編の違いについて解説します。
釣りのジャンルやシチュエ―ションごとの編み数やオススメのPEラインも参考してみてください。
PEラインの基礎知識
8本編のPEライン「タナトル8」の断面図。複数本の撚糸が編まれ、外側にコーティング面がある。
出典:シマノ
意外と知られていないのですが、PEラインの「PE」は、ポリエチレンの略称です。
釣り糸の基本であるナイロンラインは、ナイロン素材の1本の糸。
一方、PEラインは複数本の原糸を編み込み(撚る)外側をコーティングすることでつくられるラインです。
原糸の束が4本集まっているものが4本編(撚り)、8本ならば8本編(撚り)です。
PEラインは4本編と8本編が8~9割程度の釣り人に使われていると思われます。釣具店の店頭に並んでいるのは、4本か8本編のPEラインがほとんど。
価格面で4本編が一番安いので、もっとも購入されていいます。
12本編などはやや高価なため、利用する人がまだ少ないのが現状です。
ちなみに、PEラインの原糸(編み込まれているPEの繊維)自体は、釣り具メーカーが化学メーカーから買い入れることで製造されています。
Amazonなどをみていると、かなり安価なPEラインもあります。
これは海外メーカーによる輸入品(海外で企画製造)か、日本の販売者が企画製造せず、海外メーカーが製造しているPEラインのOEM販売のみを行っているものであったりします。
品質と価格はおおむね以下の通りです。
<PEラインの品質と価格>
海外メーカーによる輸入品orOEM販売品 < 国内メーカーによる国内製造(原糸も国内メーカー産)
海外メーカーの製品は総じて安価なのですが、号数が日本国内の規格と異なることがほとんどです。
そのため1号といってもより太く、リールに巻けないなどのトラブルの原因にもなりがちです。
安価で気軽に購入できるのですが、海外メーカーのPEラインを購入する際は、号数と太さを確認してから購入しましょう。
4本編よりさらに少ない本数で編まれたものや、複合素材をコーティングしたものもありますが、基本的には4本か8本編のうちから選ぶのがほとんどです。
次に、PEライン自体のメリットとデメリットをみていきましょう。
<メリット>
PEラインのメリットは大きくわけて6つあります。
①直線強度の高さ
PEラインは、ナイロンやフロロカーボンラインと比べると、同じ太さでもより高い強度があります。
②飛距離がでる
PEラインは直線強度が高いため、より細糸の使用が可能になり、空気抵抗も減り、飛距離が出やすくなります。
飛距離が必要なルアー釣り、投げ釣りなどはPEラインを選ぶのが一般的です。
③潮受けしにくい
PEラインは細糸を選べるため、潮受けもしにくいと言えます。
特に船釣りの場合、太糸では潮受けしやすく、釣り客同士のオマツリの原因にもなってしまいます。
そのため、PEラインをつかって釣りをしている人がほぼ100%です。
④感度が高い
PEラインは伸びにくいという特性があります。そのためナイロンやフロロカーボンラインと比較して感度が高いと言えます。
海底の地形や底質、水中の潮の動きのほか、魚のアタリなどもPEラインであればより敏感に感じ取れます。
⑤紫外線や水分によって劣化しにくい
PEラインはナイロンラインと比較して、劣化しにくいため、比較的大量に長く巻いておくことが多い道糸にも適しています。
⑥染色しやすい色(タナとり)
PEラインにはコーティングとともに、色を付けられるところもメリットです。
タナとりや飛距離をはかるような釣りの場合、1m、5m、10mのようにマーキングがされたPEラインを選びます。
<デメリット>
PEラインのデメリットは大きく分けて3つです。
①結節強度が弱い
PEラインは、直接結ぶときの強度が低いのが特徴です。ラインも滑りやすいため、結び目がすっぽ抜けてしますこともしばしば。
②耐摩耗性が低い
PEラインは、細かいより糸を編んで作っています。そのため、繊維に傷がつくと、一気に強度が落ちてしまいます。
これら2つのデメリットを補うために、PEラインを道糸にする場合は、フロロカーボンやナイロンのリーダーをつけるのが一般的です。
③水中で目立つ
PEラインは色付きで販売されています。そのためルアーや仕掛けに直結して使うと、魚に違和感を持たれやすい傾向にあります。
4本編と8本編のPEラインはどこが違うの?
PEラインにはフロロカーボンやナイロンのリーダーをつけるのが基本
大多数の釣り人が選ぶ4本編と8本編のPEラインですが、いったいどんな点に差があるのでしょうか。
これは大きく分けて「性能」と「価格」の違いがあります。
では、詳しくみていきましょう。
性能の違い
飛距離は8本編が有利
まず、飛距離については8本編が有利です。
撚糸の数が増えることによりラインの断面が真円に近くなり、ガイドとの摩擦が4本編より少なくなります。
また、素材表面も滑らかになり空気抵抗も少なくなるため、飛距離も伸びます。
4本編み
1投目:47.5→2投目:47.0→3投目:53.0→4投目:46.0→5投目:48.5→6投目:49.0
平均:48.5メートル8本編み
1投目:54.5→2投目:49.0→3投目:55.5→4投目:52.0→5投目:55.5→6投目:55.0
平均:53.6メートル12本編み
1投目:57.0→2投目:51.0→3投目:58.0→4投目:56.0→5投目:60.0→6投目:54.5
平均:56.1メートル
出典:シマノ いまさら聞けない!飛距離実験 4・8・12本編みPE シーバスプラグでどれほど違う?
こちらは、特定条件におけるPEラインの編み数による飛距離実験ですが、4本編→8本編→12本編の順に飛距離が伸びていきます。
4本編と12本編では平均で7.6mの飛距離の差が生まれています。
直線強度は8本編が有利
製品にもよりますが、同じ太さでは、基本的に8本編のPEラインのほうが、4本編より強度が高いことがほとんどです。
潮受けのしにくさは8本編が有利
4本編より8本編のほうが表面が滑らかなため、潮受けしにくいと言えます。
また、直背強度部分は8本編が高いことからよりう細糸が使えることからも8本編が有利です。
耐摩耗性(根ズレの強さ)は4本編が有利
耐摩耗性については繊維がより太い4本編が有利です。コーティングの種類によっても異なります。
結束強度は4本編が有利
結びの力は4本編のほうが強度が出やすいと言えます。これは8本編の方がなめらかで表面が滑りやすいからです。
音鳴りは8本編のほうが静か
PEラインの音鳴りが気になる人もいますが、表面が滑らかな8本編の方が静かです。
人によってはPEラインの音鳴りが海中に影響して釣果に関わると考える人もいます。
色落ちのしやすさは編み数に関係ない
色落ちのしやすさは編み数には関係ありません。
それぞれのメーカーによるコーティング技術に依存する内容です。
価格の違い
気になるPEラインの価格ですが、編み数が多い方が高価であることがほとんどです。
編み数が多いほど製法工程が複雑なためです。
製品によっては編み数が多くなることで特別な製法を取り入れて強度を向上させていることもあり、そのあたりも価格面に影響しています。
結局、PEラインは4本編8本編のどちらがいいの?
タナトル8。8本編のPEライン
では、PEラインを道糸にする場合、4本編と8本編のどちらがよいのでしょうか。
釣り物、釣り場のシチュエーション、好みによって変わるものなので一概には言えません。
- コストを最優先で考えるなら4本編
- 結び目の強度を強くしたいなら4本編
- 飛距離をあげたいなら8本編(さらに12本編)
- 潮受けをさらに少なくして細糸を選びたいなら8本編
- 感度をあげたいなら8本編
- 根周りなど近距離で耐摩耗性も意識した釣りをしたいなら4本編
- あえて潮受けさせてドリフトさせたいのなら4本編
という具合に、状況によって変わってきます。
あくまで例ですが、以下の通りに考えておくとよいでしょう。
<サーフからのショアジギング>
→飛距離を出すのが重要になってくるので8本編や12本編
<ストラクチャー回りでのシーバスやエギタコ釣り>
→根ズレを考えて4本編
<コマセ五目のオマツリによるPEラインの高切れ対策>
→ラインズレを考えて4本編
<潮受けをできるかぎりなくしたいタイラバやフグカットウ>
→細糸で強度が高い8本編
<基本性能だけほしいLTアジやLT五目>
→低コストの4本編
PEラインをもっと長持ちさせる方法・メンテナンス
最後に比較的高価なPEラインをもっと長持ちさせるコツを紹介します。
ガイドをきれいしておく
釣りのあとにそのままにしておくとガイドに汚れが固着していく
釣行前後にガイドは常にきれいにしておきましょう。
たまに、ゴミが固着したままのガイドをつかっている人がいますが、ラインを巻きとるだけで傷がつきやすくなります。
海釣りの場合、ゴミに海水や砂利がまじりガイドがやすりのような効果を生んでしまうからです。
塩抜きする
海でPEラインを使うと塩がみします。この塩分の結晶によって摩耗します。
使用したあとに、リールのスプールからPEラインをすべて出し、糸巻きなどに巻いてぬるま湯で塩抜きすると長持ちします。
コーティング剤の使用
PEライン専用のコーティング剤を使うことで使用時の摩耗が少なくなります。
ショアジギング等では、飛距離も出やすくなるので積極的に使うとよいでしょう。
船釣りの場合は、ラインの出がスムーズになりバックラッシュしにくくなります。
コーティングは永続的なものではないので、適宜スプレーして保護する必要があります。
スプールの上下を入れ替える
200m以上など、ある程度沢山巻いている場合、下側の糸は無傷で表側の50mだけ傷んでいるということがあります。
この場合、特に傷んでいる部分をカットした上で、「高速リサイクラー」などを使い、PEラインの上下を逆にすることでPEラインを比較的長くつかうことができます。
▼超人気アイテム第一精工「高速リサイクラー」。経済的にPEラインを使いたい人は必携!
まとめ
PEラインは丈夫だか過信しないようにしたい
今回は、PEラインに関する基本的な知識と4本編と8本編のメリット・デメリットについて解説しました。
筆者の場合、船釣りがメインになってきているのですが、基本的に4本編のシマノ「タナトル4」を使っています。
これは単価と品質面を考えて、現行製品では「もっともコストパフォーマンスがよい」と判断しているからです。
ちなみに、タイラバやフグやカワハギなど、感度や潮受け部分がより重要になってくる釣り物は、8本編の「タナトル8」を選ぶこともあります。
以上、状況にあったPEラインを選び、快適に釣りを楽しみましょう!
オススメのPEライン
船釣り用のオススメPE
タナトル4・8
シマノのタナトルシリーズは現行製品では、品質面と価格面から最もコストパフォーマンスが高い船用PEラインです。個人的に、タナトル4は1.5号か2号を200m巻いてつかうことがほとんど。タナトル8は0.8号か1号を200~300m巻いてタイラバやカワハギ釣りに使っています。
PE X8
クレハのシーガーPE X8はリーズナブルな8本編ラインです。強度が平均と最大強力で表記されているところも信頼がおけます。
岸釣り用のオススメPE
ライトショアジギングでは1号がちょうどよいです。シマノのピットブルシリーズやラパラのラピノヴァXや、メジャークラフトの弾丸ブレイドが人気です。
ピットブル4・8
ラピノヴァX
弾丸ブレイド