どうも平田です。
釣り竿は汎用的につかわれるリールと違って、ジャンルごとに細分化されています。
岸釣りであれば、「メバリングロッド」と「アジングロッド」では似たような竿でも特徴が異なります。
船釣りであれば「ライトゲームロッド」と呼ばれる汎用竿もありますが、「釣り物」によって数々の専用竿が販売されています。
では、高い釣り竿と安い釣り竿には、どんな違いがあるのでしょうか?
「5万も6万もする超高級竿って必要?」
「高い釣竿と安い釣竿はどんだけ差があるの?」
釣りをはじめると一度は気になる疑問ですね。
今回は「高い釣り竿と安い釣り竿の差」について解説します。
一般的に高い釣り竿は「軽量・高感度・高剛性」
一般的に高い竿は軽さと剛性を兼ね備えている
一般的に高スペックな釣り竿は「軽量・高感度・高剛性」という特徴を持っています。
- 軽量なので手持ちの釣りで疲労感を軽減できる
- 魚のアタリをより敏感に感じ取ることができる
- 高剛性で竿をつかって魚に対して主導権を握りやすい。キャストしやすい
おおよそ、上記の利点を目指して開発されます。
釣り人の「釣果を上げたい」「もっと快適に釣りをしたい」というニーズには際限がありません。
そんな欲張りニーズを実現していくだけでなく、提案していく。
そのために、メーカーには高い技術力が求められ、連動して製造コストも高くなっていくわけですね。
ブランク(ス)の素材や仕上げの違い
カーボンテープでブランク外側をまいて剛性を出すのが主流
釣り竿の芯材部分を「ブランク(ス)」と呼びます。
昨今、タックル全般がライト化しています。高価な釣り竿は、より軽量なカーボン繊維主体であることがほとんど。
高価な竿は、カーボン素材の強度をあげる「レジン(樹脂)」を含む率が低く、より軽量で高感度。
また、塗装(コーティング)も薄くすることで軽量化しています。
ハイエンドの釣り竿が「筋肉質」「スパルタン」などと言われるのは、こういった素材特性をわかりやすく表現したものです。
カーボンも弾性によって低弾性・中弾性・高弾性などと分けられますが、一般に軽くシャキッとした竿ほど、混ぜ物が少なく高価です。
一方、軽量化と高感度を求めることで、犠牲になりがちなのが剛性です。
高価な竿は、キャスト・魚の引き・シャクリ・ジャークに対して、竿がねじれにくい工夫もされています。
また強い負荷に対しての破断リスクを軽減する技術が用いられています。
具体的には、ブランクスの構造が汎用品よりも優れています。
たとえばブランクス外側にX状カーボンテープ加工をされている竿も多く、これは竿がねじれず、力が逃げない特徴があります。
ダイワ・ブレーディングX。
- ダイワ:ブレーディングX
- シマノ:ハイパワーX
- アブ ガルシア:Xカーボンテープ
各社呼び名は異なりますが、それぞれほぼ同じ意味合いと考えておきましょう。
このX状のカーボンテープ補強やその他カーボンテープ補強が、バット部分のみなのか、穂先手前までなのかによってもコストが変わってきます。
高価な竿ほど穂先手前までカーボンテープ補強されている
もちろんバット部分のみの補強よりは、穂先手前までの方が、より竿全体の剛性を高めていると言えます。
またロッド最外面の補強だけでなく、ブランクスを構成するコア部分から技術的に強化しているものもあります。
穂先の素材や仕上げの違い
カーボンソリッドテイップ。グラスより折れやすく、強度を出すための技術が必要
釣り物によって竿の穂先は変りますが、船釣りでは強度をあげるためにソリッドティップであることがほとんど。
安価な竿はグラスソリッドが定番です。
一方、高価な竿は、感度を向上するために、カーボンソリッド(シマノ・ダイワ)や、チタン合金(ダイワ・アルファタックル)を採用しています。
高価格帯の竿の穂先について、シマノはカーボンソリッド、ダイワはチタン合金を推奨しています。
感度(振動の増幅・減衰・伝達)という観点で、それぞれが利点を主張しています。
またカーボンソリッドやチタン合金に対しても、外側からネジレ等への補強をしている場合、さらにコストが増します。
ガイド(リング)の違い
高価格帯の竿はSiCリングが主体
ガイドリングは、ハード系リング(オーリング)、アルコナイト、SiC(シリコンカーバイド)の順に高価になっていきます。
さらに高価なリングもありますが、実際には最高級でもSiCが主流です。
- 耐摩耗性
- 軽さ
- 放熱性
以上の点で、SiCリングは、ハード系リングより優れています。
特にPEラインをつかい、激しいアクションをする釣り物では、一般にSiCリングが搭載されているモデルが推奨されています。
ガイド(フレーム)の違い
ガイドの素材や形状によってコストが変わる
ガイドリングを支えるフレームは、ステンレスが基準です。
以下の要素でコストが変わります。
- カーボンフレーム(感度向上。最軽量)
- チタンフレーム(感度向上。ステンレスフレームより軽量)
- 穂先がらみを防止する扁平フレーム等
グリップやリールシートのデザイン・素材の違い
グリップ部分のデザインや素材によってもコストが変動します。
最近の竿のトレンドはEVA素材で、セパレートグリップです。
- カーボンモノコックグリップ(シマノ):軽量・感度向上
- エクストリームガングリップ(シマノ):疲労感軽減
- エアセンサーシート(ダイワ):軽量・感度向上
高い釣り竿は「デザインがよい」
高い竿ほどかっこよくなる=当たり前??
一般に釣り竿は、高級アイテムになるほど「デザイン性」が増します。
これらは、上位機種の見映えをより際立たせるというメーカーの販売手法により生まれています。
- ネーム部分(グリップ上)
- グリップ
- ガイドのフレームを固定するスレッド
- ロッド全体のカラーリング
- ロッド全体の統一感
以上の部分のデザインに高級感を感じるようになります。
機能美を求めるか、装飾美を求めるかは人によって異なるので、好みは人それぞれ。
装飾美の世界。属人的な手間がかかるため高い釣り竿もある
塗装面が属人的で、高価格になっている竿もあります。
たとえば、マグロ・クエ・カンパチ・ヒラマサ・深場釣りなどで使用される、1ピースのソリッドグラス竿が代表的です。
これらは装飾美の世界といっても過言ではありません。
たとえるならば、デコトラのようなもので、塗装やガイドスレッドの飾りは職人の手仕事で作り上げられています。
これらの竿は感度や軽さより、超大物に対しての「頑丈さ」が重視されるため、グラス素材で作成されることがほとんど。
塗装は、多くの工程を経て、幾層にも重ねられます。
そして、質感は深みを増し、竿はさらに重くなっていき、より丈夫になります。
大物狙いの竿においては、基本的に大型の電動リールや手巻きリールを合わせるため、軽さはあまり重要ではありません。
(落とし込みやコマセ釣りでは穂先の繊細さ感度も重要)
また、マーケット的に派手さを好むアングラーが多いため、他ジャンルでは使用されないラメ塗りを前面に打ち出したモデルが主流です。
自分のニーズにあった釣り竿を買えばOK
今回は「高い釣り竿と安い釣り竿の違い」について解説しました。
「高い釣竿と安い釣竿はどんだけ差があるの?」
この点については、いくつかの観点から理解いただけたはずです。
一般に高級竿ほど、高い技術がこめられ、軽量・高感度・高剛性の竿に仕上がっているわけですね。
また、デザイン性も良くなっていきます。
「5万も6万もする超高級竿って必要?」
この点については、補足をしておきます。
超高級竿は、大部分の釣り人にとって不要です。
超高級竿でなくても、十分大物狙いや数釣りは可能です。
一方、「平均釣果」を上げていくためには、テクニックに加えて道具の力もたしかに必要です。
- 感じることができないアタリを感じて掛ける
- キャスト時のコントロール性を高める
- ファイト時の主導権を握る
などなど。
高級竿を使う前は「○○の釣りに○○テイップなんていらないよ」と思うかもしれません。
一方、カーボンソリッドやチタン合金でないと感じ取ることが難しいアタリは、確かに存在します。
各釣り物に対して、釣果の方程式を立てたものの、どうしても平均釣果の向上にむすびつかないときがあります。
数をこなせば、平均点レベルまでは多くの人が到達できます。
一方、その先にある達人や名手の高みというのは確かに存在します。
そんなときは、その方程式における釣り竿の重要性が高いのかもしれません。
どうしても、メーカーは高利益の上位機種をアピールしがちです。
また、各メディアはメーカーの広告費用によって存在しているため、時に誇大と思われる情報発信を行いがちです。
「広告」と明記はしていないが、「限りなく広告」とおもわれる取材にみせかけたコンテンツもいまだに存在している世界。
それが釣りというマーケットなのです。
「メーカーのテスターがよいと言っていたから(悪いとは言えない)」
「左巻きのハイギアリールがいいと釣具店の店員が言っていたから(在庫で残りがちだから)」
など、よく聞く話です。
釣り具を購入するとき、その価値をきちんと理解していますか?
その竿、本当に5万円、6万円の価値があると思いますか?
自分のニーズに一番あった釣り竿は人それぞれ。
5万円、6万円の釣り竿を買うにしろ、自分の頭できちんと考えて買うことを強くおすすめします。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)