魚を釣って食べるときに、「アラ」と呼ばれる頭部・中骨・腹骨や血合い骨をすき落とした部位を調理して食べる人はほんの一握り。
10人いたら8人は捨てる気がします。いや9人かな。
じゃあなんで捨てるかというと、以下のパターンかなと。
- そもそも手間をかけてアラを食べようとは思わない
- ちょっと生臭そうに思える
- 食べたいけども調理の仕方がわからない
今回は、魚のアラを活用した「アラ出汁(白湯・清湯)」の美味しい作り方と活用法を紹介します。
黄金の國ジパングの正体については後半で話すので、そこまでなんとか読んでいくか、一気にスクロールしてチェックしてみてください。
アラ炊き白湯の作り方と活用法「日清・東京中華そばアラ炊きNEXT」
まずはアラ炊き白湯(パイタン)からです。
白湯も清湯も中華料理ワードなわけですが、骨髄や肉や筋由来のエキスによって白濁しているスープが白湯だと思ってください。
それと、市販の素や安飲食店の安白湯スープは、脱脂粉乳などにより白濁している場合があります。クリープみたいなもんですよ。博多ラーメンのチェーンとかそうですよね。あの替え玉無料系のアレ。あれはあれで旨いけど。
今回の白湯アラ出汁の素材は、サバとアジ、それにマゴチ。
産卵前個体(上)と産卵後個体(下)
マサバ。いわゆる「大サバ」クラスです。
上の産卵前の雌で40㎝弱。
釣りあげてすぐにサバ折りによって血抜きをし、血が抜け切ってから潮氷で保冷していました。
こちらは黄アジ。大きいのが35㎝程度。大型はすべて抱卵した雌でした。
アジとサバは根魚系と違ってアラとして使われず廃棄されがちです。
釣ったものは新鮮とはいえ、それなりに血生臭いので、その気持ちもわかります。
このアジ・サバのアラなんですが、実はしっかりした処理をしてダシを取るとよいスープが取れます。特にサバは味が濃い。頭部もアジと比べて大きめで中骨もしっかりしているので、ダシ取り目的としてはうってつけです。
こちらはマゴチのアラ。
実際は、3枚におろした中骨と頭を梨割にしたものを使います。
アラをそのまま生ごみに出してもよいですが、季節によっては水気も出やすくだいぶ臭くなります。
その点、一旦出し殻にしてしまい、エキスを搾り取ってから廃棄すれば、水気も出にくいですし、臭みもやや減ります。
漫画家の佐藤秀峰さんもアラを活用する派で、よくSNSに「アラふりかけ」をUPしています。
アラを絞ったあとの残りをミキサーにかけたり煎ったものを調味していると思うんですが、そこまでやったら本当に満足度が高いと思います。凄いなと。
廃棄するのは内臓の食べられない部位だけで、あとは全部血となり肉となりという。
やや脱線しました。
無限の可能性を秘める「アラ道」を先に進みましょう。
まず鍋に下処理したアラを入れます。
- 目玉を抜く(好みですが臭みは減ります)
- エラを完全にとる
- 血合いを取る
- 頭を梨割にする(アジ・サバ・マゴチであれば調理ばさみでも十分割れます)
そこに容赦なく熱湯を注ぎます。
湯が白濁し、かなり生臭いニオイがぷわーん。
これが湯気にのって鼻にささるはずです。換気扇はしっかりオンにしておきましょう。できれば扉もあけておいたほうがよいです。
その後、菜箸でアラをかき混ぜて血合いやうろこの残骸などを取り、湯を捨てます。手でやってもよいのですが、手が生臭くなりますんでね。
次に、水道水を注いで水が濁らなくなるまで洗いましょう。
この処理を「霜降り処理」とも呼ぶのですが、熱湯処理をする前に塩を振って水を出すという方法もあります。が、あまり大差はないように思えます。
次に、香味野菜と一緒に炊きます。
水に日本酒・みりん・紹興酒を加えて炊いていきます。臭み消しと丸みを出す目的なのですが、日本酒とみりんあたりが無難。
今回は、長ネギの青い部分を数束分とショウガスライスをいれました。
白湯スープの用途にもよるのですが、ほかに入れるとよい野菜は以下の通り。
- 玉ねぎ
- 人参
- にんにく
- ショウガ
あとは、炊くだけです。
強火で20~30分ほど炊くだけでしっかりスープはとれますが、好みでさらに長時間やってもよいでしょう。ただしあまりぐつぐつと長時間炊きすぎると、酸化した干物臭というか、脂臭くなる傾向にあります。まぁ酸化しているのでしょう。
はい、炊きあがりました。
これを濾したものがこちら。しっかり白湯してますね。
つけ麺屋の割スープを頼むと出てくるやつっぽいです。
ちなみに、白湯レベルを上げるためには、濾す際に鍋の中をかき混ぜ、魚肉や骨髄に残ったうまみも絞り出すとよいでしょう。ややクセは出るのですが旨味は濃くなります。
ほかに濃さは、水分量で調整しましょう。あまり濃くなりすぎたら、お湯を差したり。
このアラ炊き白湯スープの活用法なのですが、手っ取り早いのが味噌汁のダシにしたり、ラーメンのスープに使う技です。
日清・行列のできる店のラーメンシリーズ・東京中華そばを買ってきました。
なぜ「東京中華そばか」というと、わたしが好きだからです。それ以上でもそれ以下でもありません。
もともとのスープは鶏ガラ+煮干しダシで、昔ながらのしなそば系の味。
そこに白湯スープを入れるとどうなるのでしょうか。
こういうときに、だいたい味の検討はついているんですが、一応「どうなるのでしょうか」とかいってしまいます。
中身は液体スープと麺
まず、どんぶりと液体スープを熱湯で温めておきましょう。これ重要。
次に、各々得意の白湯スープを小鍋で沸かす。
そして麺をゆでる。
「すみません、麺固って、できます?」とかいう茶番は脳内だけでやってください。
・・・
このラーメン鉢はAFURIの通販で買えるよ
できあがり。
はい、「日清・東京中華そばアラ炊きNEXT」です。
ごゆっくりどうぞー。
なんこれ。
誰がどうみてもラーメン屋クラス、それも食べログ4.3の仕上がりですね。
自家製沖縄豚の皮つきチャーシューに小松菜が実にひかえめ。
でもね、そういうのは枝葉なんですよ。
もっと根幹を見てほしい。
このラーメンの根幹。それはスープです。
照明をうけてスープの表面に浮かびあがる脂とマリンコラーゲン成分。
もう、「一気にすする」しかコマンドがない状態。
どうする?
▶一気にすする
一気にすする
一気にすする
一気にすする
もうね、うますぎて、だいたい1分かからず食べ終わりましたね。
すする度に口にコラーゲン由来のぬらぬら感が残ります。
この商品のもとの味わいは、さっぱりしたよくある中華そばだったんですが、ひと手間かけたアラ炊き白湯によって、「中華そば青葉」チックなコクが出てきます。青葉を食べたことがない人はすまん。
ちなみに、余ったアラ炊き白湯を冷蔵庫にいれてよく朝みたらこうなってました。
マリンコラーゲンによって煮凝り状態。
ほかにも、鍋の出汁につかうのもよいでしょう。冷凍しておくのもありです。
今回は市販のラーメンスープをつかいましたが、単純に昆布だし・かつおだし・創味シャンタンなどとブレンドすることで最高のラーメンスープになります。
今回は、アジ・サバ・マゴチが材料でしたが、以下のような魚もアラ炊き白湯に向いています。
- ヒラメ
- マダイ
- クロダイ
骨が太い魚ほどよいダシが出る傾向にあるなと。
アラ炊き白湯の話はこのへんにしておきます。
アラ炊き清湯の作り方と活用法「黄金の國ジパング・アラ茶漬け」
次に清湯の話です。
清湯は文字通りですが、清いスープを指します。清いってどういうことなのか、っていうと澄んでいるということだと思ってください。
素材の淡い味を生かしつつ、料理の色味を濁さず、美しく仕上げたいときは清湯をつかいます。
ちなみに、下処理まではアラ炊き白湯と一緒です。
今回の素材は、カサゴ・シロギス・アジ、それぞれのアラです。血液由来で濁りにくい白魚が適しています。
香味野菜はショウガだけいれています。
清湯の最大のポイントはぐつぐつ煮立てないというところです。よくいますよね?なんでもかんでも強火で調理してしまう人。あれは清湯の敵です。
とろ火にして、沸騰するかしないかぐらいの温度を保つ。蓋を半分だけするなどして鍋のなかの温度を調整します。
沸騰させてぐつぐつやると、身肉や骨髄由来の白濁が出てしまいます。そうなると白湯になってしまうわけです。
アラ炊き清湯を作る際は、ゆっくりと加熱していきましょう。
アクをとりつつ、1時間、2時間、3時間。
するとこのように透明なスープがとれるわけです。
ほかに中華料理では、卵白や卵の殻、ひき肉をつかってアクや濁りを取る方法がしられています。
出し殻をこしとるとこのとおり。
・・・
誰がどうみても黄金。
おお、黄金のスープとはこのことか。
かつて黄金をもとめて東方へ旅したと言われる、あのマルコポーロが求めていた黄金。
それがこんな小鍋の中に400mlもあったとは・・・。
四方を海に囲まれたニッポンは水産物に恵まれていて、その気になれば黄金スープなんて、だれでもいくらでも作れるわけです。なにも釣り人だからつくれるというわけではないのです。驕るなよ。
それにしても、「黄金の國ジパング」とはそういうことだったのですな。
いやはや、灯台下暗しというかなんというか。
さて、能書きはそのあたりにしておき、出来上がったアラ炊き清湯・黄金仕込みをつかって一品作ってみましょう。
素材は、あまった刺身です。
シロギス、アジ、カサゴ。
要は前の日に余った刺身ですね。
これらを、すりごま・柚子胡椒・しょうゆ・砂糖少々で合える。
次に、どんぶりに水でさらした白飯を盛り、味をつけた刺身を盛る。
そんで、アラ炊き清湯・黄金仕込みを沸かす。
さらに「北海の真昆布」を召喚!
鍋にインして、ダシを発動。
沸騰したら取り出す。
ターンエンド!
だれがどうみても黄金。湯漬けだけど茶漬けってことで、しくよろ。
できあがり。
「黄金の國ジパング・アラ茶漬け」です。
味は?ってか。
見ればわかるというやつですよ。
マルコポーロは自ら日本に渡航しなかったと伝えられているんですが、あいつにも一度食わせてやりたかったなと。
そうしたら彼もわかったはずですよ。
この國の宝は、黄金なんかじゃないと。
その豊かな海産資源だってことをね。
ではでは。
平田 (@tsuyoshi_hirata)
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