6月は巨大テナガエビを獲りにいこう
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ゴブリンの巣を討伐し、村に戻った傭兵ガサガサの一行は村のA長老から新たな相談を受ける。
なんと、梅雨の濁りによって巨大なテナガエビの魔物が襲来して村人を苦しめているとのことなのだ。
上半身はテナガ。下半身は人間という人外の者たち。
ひと雨降るごとに濁流の川から現れるこのテナガ人間の群れ。
この矢鱈に長い両爪によって働き盛りの男はみんなつねられ死んだり、首をはねられたという。若い女は川に連れ去られ、子供は奴隷に、食糧は尽く奪われ、村にはもはや老人しか残っていないという悲惨な状況。
かなしいかな、かなしいかな、倉科カナ。そんな長老Aは口を開く。
「もう、この村も終わりじゃ…ぐすん。もしよかったらテナガらを退治してくれんか?傭兵、いや勇者ガサガサ様」
さて、どうする?
A.いやちょっと仕事いそがしいんで
B.また定期的にご連絡差し上げますね!
→ C.はい、よろこんで
こうして勇者となったガサガサたちは巨大テナガエビが住んでいるという河川にやってきたのだった・・・
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と、
いうようなRPGのミッションってよくありますよね。
おい、テナガを悪者にするなと。テナガエビに罪はないと。むしろ素揚げにすると旨いし。
その気持ち、よくわかります。
むしろわたしはテナガエビが好きです。
淡水でも姿かたちがいいなと。スジエビやヌマエビなども可愛いが、テナガはカッコイイ。ザリガニのように重装備ではなくスマートなんだけども、意外に細長い爪にはさまれると結構痛い。しかも食べると旨いときた。
テナガって種類の差はあれども、ほとんど日本全国に生息していてモクズガニと並んで河川でも最も美味しい生き物の一つだと思います。
毎年梅雨時はテナガエビの産卵シーズンでもあります。
降雨からか、昼間でも水が濁っていることが多いので大型の個体が昼間でも出歩いていることが多いんですよね。
水深がある河川などでも、浅場にわさわさ展開してくるのがこの梅雨シーズンです。テナガエビは5月~8月ぐらいまでよく釣れるんですが、一番釣ったりとりやすいのが6月かなと。
ということで今回は神奈川の某所にテナガエビ獲りにいってきました。釣りはせずにガサガサで。
テナガエビはどこにでもいるけど、汽水から最初の堰までが多い
テナガエビには陸封型と降海型がいます。
陸封型っていうのは海に降らないで完全な止水域で一生を終える個体。
降海型は幼生がうまれて成長するのに海のミネラル分が必要なタイプ。学術的にはもっと細かい定義があるのかもしれませんが、だいたいこのように覚えておけばよいでしょう。
東京でいうと、石神井公園にいるのは陸封型かなと。比較的個体のサイズが小さいようにも思えます。
降海型のテナガエビを捕まえたい場合は、海につながっている河川の汽水域から中・上流まで広く生息しています。が、ウナギもそうですが、個体数は海に近づくほど多くなり、上流にいけばいくほど少なくなります。
なぜか。
これは堰の存在なんでしょうなと思います。海と山を行き来するテナガエビやウナギなどの生き物も、堰があるとちょっときついんでしょうね。あんまり段差が大きかったり、魚道の構成が今一つだと上流にいける個体が少なくなるわけです。
脳に刻まれた本能でがんばって登ろうとしても斜面が急すぎたり、流れが速すぎて、もうダメポってやつですよ。その気持ちもよくわかる。
人間でもそうです。困難に立ち向かって常に上をめざずひとがいれば、真剣に立ち向かうときに常に逃げ、酒に酔って寝て起きたら明日だったというのを繰り返す。人間だもの。
ウナギでいえば、上流にいる個体はサイズが大きいこともしばしば。体力があるから競合がすくない上流にいけるのか、競合が少ない上流にいけたから太く育てるのか。これは不明ですが、まーだいたい上流の個体はぶっとい。
一方下流の汽水域で釣れるウナギと言えば細いサイズが多いのです。秋ぐらいになると産卵のために降りてくる降りウナギが登場するのでそれは太いんですが、基本的に細い。もちろん太目の個体もいるんでしょうが、先に餌の存在に気づいて針がかりするのが小型なんでしょう。小さいものほどやんちゃだし。
これは水温が高くなって小型のシロギスが浅場にも展開すると、大型が針がかりするまえに、小型のピンギスがどんどんかかってしまうという理論と似ています。
さて、
ガサガサはよ。という声が聞こえてきましたので本日もいきましょう。
住宅街の川に巨大なテナガエビがたくさんいる
今回はこのようなロケーション。3面護岸の構成にところどころ捨て石があり堆積した土砂に草が生えその根際に魚やエビが生息しているというポイント。
日本全国どこにってもみられる構成です。
基本的に住宅街を流れる川。
この自治体は下水道普及率が完全ではないため、やや生活排水は流れ込んでいるのですが、人口があまり多くないのでそれほどひどくはない状態。
川も土砂の堆積で自然に流れの変化がつき、生き物もたくさんいます。ぱっとみただけでも以下の生き物がいました。
- オイカワ
- アブラハヤ
- 鯉(野鯉ではなく養殖鯉の放流。錦鯉含む)
- テナガエビ
- ヌマエビ、ヌカエビ類(種類が複雑なので判別できず)
- ヤゴの類
- モクズガニ
その他、種別が不明な小魚が複数種類。この群れて高速で移動する魚はたも網での単独捕獲は難しいのでまた別の機会に調査してみようかなと。
じゃ、ガサガサしていきますかね。
ここから巨大テナガエビのオンパレード
お、こういうトタンなどの下にはいろいろいるんですよね。ウナギやらナマズもいたり。
・・・
ヌマエビ・ヌカエビの仲間ですね。
クレソン。
この植物群の根は細かくて、エビが好んで隠れるポイントです。クレソン自体も食べられるんですが、だいたい肝蛭界隈の呪いがあるんで、加熱してから食べるとよいでしょう。
ここでもヌマエビ・ヌカエビの仲間。1尾だけテナガエビの幼体が混じってます。
ここは護岸の割れ目から生えているモチノキ?の枝にいろいろな堆積物がひっかかっているストラクチャー。
下流側からすくいあげると・・・
お、良型テナガエビ。
左腕だけ短くなっているパターン。テナガエビの爪はそれほど強くはないので、テナガ同士の喧嘩や鳥や鯉との闘い、はたまた台風などでの増水でもげてしまうんでしょう。
この堆積物が怪しいなと、しばらく眺めていたら・・・
む。みえますかね、かなり大型のテナガエビ(オス)が堆積物の下にいるわけです。
獲れた。黒目の個体だなー。
UPでみせたろか。
どん。すんごい手が長い。
これぞまさにテナガエビ。
苔むしてますね。
まさに老兵。三国志でいえば黄忠あたりだろうな。じじいだとおもっていたら武力が高いというあれ。実際挟まれたら痛かったこと。
テナガエビも大きくなるまでに何度も脱皮を繰り返すわけなんですが、脱皮をしてから期間がたっている個体、それと大型になるほど苔や水垢が殻についてるんですよね。
このときにガサ入れで腐食した網の針金が破損。ここからはこの針金部分を手でおさえながらガサガサをするという作戦に切り替えていくことに。
ここから植物際を闇雲にガサガサしていく方法から、見えている大型テナガエビを一体ずつ一騎打ちでつかまえていくことに。
テナガ「我こそは曹仁なり!かかってこい串刺しにしてくれるわ!」
曹仁(テナガエビ)「ぐふ。こやつ、一騎当千…」
夏候淵(テナガエビ)「ぐふ。国士無双…」
こりゃメスだな。
だけども、卵はだいていないようなので勝負!
この通りゲット。
古の人曰く「戦は天地人。天の期を、地の利を、人の和を制せば云々」
比較的水深が浅く隠れ場所がきまってくるので、こうした地形の利を制せば殿の勝利はもはや確実ですぞ。
ぶはははははは。
流れがあたっているものの苔や植物の根による隠れ処がたくさんある場所。こういうところにある穴にはウナギがいるんですよねー。今度穴釣りやってみよう。
小エビ類もたくさんとれる。
たまにテナガエビの抱卵個体もとれるので、逃がしてやると来年もたくさんテナガがとれるはず。
変化のない護岸沿いにこの長石。絶好な地形なわけです。
が、石をどかすと逃げられるんだよなー。これは一回どかして、濁りが消えるまでそっとしておいて周囲に展開するテナガエビを待ち伏せすることにしよう。
どりゃ。
濁。
濁。
濁。
濁。
む!
おお、これもデカテナガ。隻腕の将軍とは貴公のことでしたか。
隻腕将軍(テナガエビです)
こいつもデカイ。左爪の先端がもげて脱皮をする前の個体なんでしょう。
もうこのぐらいのサイズになると、石垣島とか西表島の河川に生息しているテナガぐらいのサイズ感ですね。
これもデカイな。テナガエビがいるのがわかりますかね?
貴公、まさかエドワード黒太子では?
歴戦の甲冑。ブラックテナガ氏
エドワード黒太子(巨大テナガエビ)「うむ、エドワード・ザ・ブラックプリンスとはワタシのことだよ」
そうこうしていたら、今回のガサガサで最大サイズのテナガエビが目のまえをさーっと通り深場にいこうとしている様子!
まさか、呂布???
貴公、臆したか!!
と、石積みに隠れる大型テナガエビ。
これは網ではなく潔く手づかみだな。と、得物をすて両腕をイン。
爪をつかむと自切しやすいので、指を奥までつっこんで胸部と尾部をホールド。
ふ、呂布よ、もらったな。
いかに方天画戟を装備して武力が100を超えている&裏設定で一騎打ち絶対に勝てないといえども、脱皮後完全に殻が硬くなるまでに出会ったのが運のつきだな。
で、でかすぎ!
脱皮してからあまり期間がたってないので、欠けがちな爪の先もきれい。
マニピュレータみたいだなおい
胴体部分もブラックタイガー感がある
どれもこれも大きいので、鬼殻焼きだなー。
やや落差がある場所の下流側には魚もたまる。
写真左側の陸地際を赤褐色ぎみな巨大モクズガニがのっそのっそと歩いていたものの、逃げられたり。彼らは貼りつく力が尋常ではないので、えぐれた部分に隠れられたら終わり。
その後も、ひと網で大型モビルアーマー(テナガエビ)を2尾鹵獲したり。このサイズが一気に2尾獲れるのもなかなかのポイント。
時期的にもよいんでしょうな。
梅雨は雨でうんざりながらも極端に増水していなければこうしてフィールドにでてみるのもおもしろいわけです。
ヌカエビ・ヌマエビ類も十分に確保。これはかき揚げかアヒージョにしようかなとおもったものの、一旦水槽の苔とり要員として配属することに。
この時点で十分なテナガエビを確保できたのでガサガサは終了。
上流に歩いていって稚鮎を観察することに。
上流でウナギとのドラマが・・・ひさしぶりに本気になったな
さらに上流にいくと、このように落差がある段差が。この高さを乗り越えるのは至難の業。魚道がないからキツメだよなー。極端に増水したときに登るしかなそうな。
モクズガニであればこの垂直の護岸でも、サクサク、ボルタリングできるものの、うなぎやテナガ類ではきつそうな。ウナギも垂直護岸を登れるという説もありながらも、難しい挑戦ではあるはず。
この手前に腐食した金属のパイプが。
これはウナギがいるかチェックだよなー。と、壊れた網で受けながら中身を確認するとご不在。
さらに上流までいって稚鮎がのぼっているかとおもったら今年はゼロ。
去年と比べて稚鮎は少ないのかもですね。
一説によると稚鮎と小鯖の量はトレード関係にあるようで、小鯖が増えると稚鮎が食べられて少なくなるとかなんとか。実際の要因はわからないものの、2018年は異常現象なみに相模川や多摩川に稚鮎がのぼっていたんですよね。
同じ河川でもこの中流部は底がコンクリートむき出しで水深が20cmほど。こういった地形だと生き物も生きづらい状態。たまに護岸の割れ目にモクズガニの幼体をみつけたり。
モクズガニ、だと思う
カワニナ。この上流には蛍がいる。
比較的どこにでもいるモノアラガイ。
モノアラガイ氏。都内の公園の池にもいる
世の中流されるものもいれば、流されながらもふみとどまって戦う人もいる
と、また金属パイプが落ちてるなー念の為五郎でウナギチェックをしようとパイプを傾けたら・・・
む、水の出がすくな…
ヌルリ♪
と、ぶっといウナギが登場!
すかさず壊れた手網でうけてホールドしようとするも、いかんせん網の奥行きが浅すぎる!
網から、引田天功なみに華麗に逃げたウナギ氏は護岸にそって下流へ。
それにしても太い。
すぐさま追いかけて護岸の隅に追いこんで再度網でホールド。
無事網におさまった。
が、網でおさえても、ぬるりんぱってな具合で逃げる。
あれどっかに行ってしまった。。。。
うーむ。
と、反対側のパイプ(最初にみてウナギがいなかった)を念の為朝という具合に引き揚げてみたら・・・
ぬお!
ここに隠れていやがったか!!!!
ここであったが100年目。
右岸の仇は左岸で返す!
なんだそれは。
よしホールド!
網だけだと、どうもこころもとないから、Tシャツをつかってひねりあげてやるぜ。
ヒクソン平田とはわたしのことだよ。
ふはははは。
でも、これどうやって持ち帰ろうと、
おもったら、
ぬるりんぱ!
・・・
逃げられたわけですよ。
悔しいです!
ご覧ください。ヒクソン平田氏のものすごく悔しそうな様子。
Tシャツのウナギ粘液が死闘を物語ってますな。
と、目の前をウナギが水面を横切って・・・・
おい、シマヘビか。
網はウナギとの闘いにより完全に死亡。
安いたも網は網の付け根が腐食するんですよね。
帰りにローソンに入ろうとしたら尋常ではないウナギ臭にて自粛。
常識をわきまえたヒクソン平田氏。流石ですね。
帰宅後のテナガエビとヌカエビ・ヌマエビ類たちの配属
帰宅したのちにテナガエビ陣は泥抜き。
こんなデカイテナガエビをとったのは初めて。多摩川の六郷テトラ界隈にもいるけど、出現率が極めて少ないんですよね。
テナガエビは腕側から撮影すると、そのテナガぶりが引き立ちます。
テナガエビは鬼殻が焼きにすることに。これは別記事で。
ヌカエビ・ヌマエビ類は水槽の苔とり担当に。
こんなに繁茂している苔でも、これだけのエビがいるとすぐになくなるので優れもの。
去年の6月に水槽にジョインしたゴクラクハゼ氏もどさくさ紛れに小エビを捕食。お腹がぷっくら。ドジョウはドジョウで白くなったエビを吸い込むという平常運転。
それにしても、あのウナギ、次回はリベンジといきたいところ。
他に、護岸の割れ目や岩の穴などウナギがいそうなところが見つかったので、今度は穴釣りもしてみようかなと。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)