人類の四大欲求「蟹欲」の存在。活クリガニをみたら買わずにはいられない。

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大型のクリガニ
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蟹が好きである。味も好きだけど、見た目も好きだ。

タラバ、ズワイ、毛ガニ。ガザミ、タイワンガザミ、イシガニ、モクズガニ、ショウジンガニなどなど。

このなかで、食味が一番いいのは毛ガニやワタリガニ類だと思う。甘みの強い身に味噌をあえて軽くレモンをしぼって食べる味は幸福だ。味噌を溶かした汁勝負ならばモクズガニやショウジンガニも武力が高い。

それにしても、サイズのよい毛ガニなんて、年末は信じられない値段になっていたりする。そんなものが買えるかというと、買わない。でも、旨いんだろうなー。

小さい頃の話。平田家の正月では、祖父正臣が最大サイズの毛ガニを築地で仕入れ、それを蒸したもを元旦から宴席にならべていた。で、食べるかというと、食べない。

じゃあどうするかというと、2日、3日、4日とそのまま見せ技にしておいて、あれ一体蟹が登場してから何日たったっけっていう具合に忘れたころにようやくGOサインが出る。

が、そのころには一杯万円程度する毛ガニから明白に厭な匂いがでていて、黒く変色し最早いいかんじに腐っていたのを覚えている。

祖父は「正月の蟹は見せものだから云々」といっていたが、その実、なにがしたかったかはよくわかっていない。そういう血を受け継いではいる。

そんな血を受け継いで、今年も遅滞なく年が明けて。

蟹が食べたくなった。

いわば「蟹欲」。人類の4大欲求、食欲、睡眠欲、性欲、釣欲に追加したい欲求の一つでもある。

この蟹欲を近隣の夜磯のイシガニ採取などで落ち着かせる。

そうこうしていると、魚屋やスーパーに東北由来の「クリガニ」が並びはじめる。

「クリガニ」という名前で販売される種類は2つあって、青森以南で漁獲されて流通するのは「トゲクリガニ」が多く、北海道産は「クリガニ」が多いという。

先日も、駅前の魚屋をのぞいたところ、5、6杯ほどのクリガニが売られていた。わたしはものを衝動買いすることはなく、かなりの時間考慮してから買う買わないを判断している。

このときのクリガニはかなり良型サイズで、手にもつとずっしり。そして、生きている。が、価格が550円。案外クリガニにしてはいい値段じゃないかな。前、川崎で買ったときはこの半分以下のサイズだったけど100円台だったような。

さてどうするか。

ここで、すこし迷ったわたしは、まず食欲を落ち着かせるために、松屋に入店して、創業ビーフ カレギュウを注文。ペイペイで支払ったら、キャッシュバックキャンペーンがあって40%還元があり、ほくほくと完食。

で、余裕な気持ちで、再度魚屋へ。

するとどうだ。

わ。クリガニが3杯に減っているズラ。

事態は、ご覧の通りである。

わたしが冷静な判断をするため、松屋にしけこんでいる間に、誰かが購入していったわけである。ものの20分以内ぐらいに。

これはヤバイ。

「先んずれば人を制す、後るれば則ち人の制する所と為る」と史記にもかかれている次第。三国志の時代でいえば、郭嘉が「兵は神速を貴ぶ」と曹操に進言しているわけで。

こりゃ早く買わないとあかんな。

夕方息子を保育園に迎えにいったあとならばほぼ確実にクリガニはいなかろうて。

「すみません、この蟹ください!」

「はい。何杯ですか?」

「全部お願いします」

「2杯ですか?」

「いや、全部お願いします」

焦った人間は冷静な判断ができなくなる。

このクリガニは550円。ある程度のサイズがあるし、2杯でいいんじゃないか。蒸し蟹でも、妻と食べるんなら2杯が妥当だろう。

が、待てよ、味噌汁及び、トマトクリームパスタなどへの柔軟な展開を考えるとここは3杯買っておいた方が、とかいう思考が脳内で一瞬で行われ、わたしは全部お願いします。と言っていた。

我ながら計算が速すぎるのでびっくりする。

1杯550円の重み。国産ワタリガニ(ガザミ)よりは安いが・・・

お会計1,650円。

クリガニを買うにしてはやや割高だったような気もする。が、通販で活きクリガニを1キロぐらい買ったら4,000円ぐらいはするはずだし、まあいいんじゃないの。どんとこい。

こちらは新聞紙にくるまれるクリガニ。

包まれていると落ち着くのか、動きはない。

が、ガサガサと新聞紙をめくると・・・。

ウイーン。

ワサワサ。ワサワサワサワサ。

みたいにクリガニが起動して、かなり威勢よく動きはじめる。

この日、クリガニを購入したのが、昼前。それから帰宅して、冷蔵庫の野菜室にしまって、料理しはじめたのが23時頃。生命力が強い蟹ですね。

かなり動くので、このような構図に。

▼動きがヤバイ。

タランチュラ感があるよね。

こころなしか、はにかんでいるようにも見える。

背中の色合い、質感がジオンっぽい。

しばらくおいておいたら、落ち着いた。

最大サイズが370g。次に、365g。つづいて、330g程度。

3杯で1キロを超えているし、それぞれ手でつかむとずっしりしていて、身が詰まっている感が強い。

社会には一見仕事ができるようでまったくの給料泥棒とか、頭がいい風にふるまっているものの、その実無能だったり、善人体だけども悪太郎であるようなことも多い。

それと同じで、蟹についても見た目が厳つい重装歩兵感があるとしても、実際手にもって重さを確認してみないことには正しい判断をくだせない。

ここからクリガニを料理していきたい。

今回は蒸し蟹に2杯と味噌汁に1杯という布陣で進めることに。妻と二人で蒸し蟹を一杯ずつ食べ、味噌汁を共にすするという算段だ。

まず、活きているクリガニならば、締める必要がある。蒸すにしろ味噌汁にしろ、活きた蟹を調理すると、脚を自切することにもつながり、見た目が悪くなる。それに、自切箇所からの旨みが流出しやすくなる。

味噌汁の場合は、どんどん汁に旨味がでればいいが、今回は見た目のインパクトも考慮したい。

拙宅には蒸器という文明の利器がないので、鍋とざるを組み合わせて用意することに。どういうことか。

・・・

・・・

・・・

・・・

こういうことである。

さらに、強引なドリブルで、ガラス蓋をして蒸す。

クリガニは簡単に殻を洗い流して尻蓋部分に安塩をすりこんでいるが、まーしなくてもいいと思います。

蒸し時間は20分ほど。

実際は正確にはかってはおらず、色合いや湯気の香りをみて、助さん格さんもういいでしょう。の判断にしています。ちゃんとはかったほうがよいとは思います。

茹でより蒸しのほうが、仕上がりの時間はかかるんですが、蒸し蟹のほうが旨みは逃げにくいと覚えておきましょう。もしくは、あえてゆで蟹にして、茹で汁を味噌汁に展開する手法もあります。アズユーライク。

おし、茹で上がったぞ。

尻蓋を外す。

尻蓋のつけ部分から甲羅をもって外す。

エラ(ガニ)は全部取ってポア。

クリガニは砂に潜らないのか、エラに砂を噛んでいない紳士だと思います。

このようにバラシて食べていく。

この身が甘いんだこれが。毛ガニに勝るとも劣らない。

身肉に味噌をかまして食べるのが乙。

おい、熱燗もってこい。

繊細な作業と中長期的な事業展開が得意なわたしのような人はこのようにほぐし身をつくってから食べるとそれはそれで至福です。

さらにこの身に七味+レモン汁+しょうゆ少々+ごま油+小葱を混ぜる。

そこに炊きたての白飯をブレンド。

あとは、とっておいたクリガニの甲羅に詰め込む。

詰め込む。

かきこむ。

かきこむ。

かきこむ。

旨。

クリガニの身の甘さ、味噌のコク、それをごま油風味の飯がまとめつつという味わい。

身をほぐしてクリガニ飯にするまではかなり時間がかかるものの、中長期的な試みによるリターンの喜びがよくわかる料理です。気の長い人はぜひやってみましょう。

続いてクリガニの味噌汁。

水に昆布+本みりん+安日本酒をいれて、クリガニをどぼん。

味噌汁にみりんをいれると本当にうまいので、やってみましょう。はじめはスプーン一杯程度で。

それと、蟹の出汁をよく出すために、脚と胴に切れ目をいれておくとベターです。

脚が一本自切しているように見えますが、ジオングみたいなもんだとおもってください

この出汁を見よ。

火を止めて、味噌をときいれる。

人に味噌はなにをつかっているのかと聞かれたら、白みそ、赤みそで3種類ブレンドしていると伝えましょう。人は独自ブレンドに弱い動物です。

白みそをいれるとまろやかさが増します。甘いのが嫌いな人はやめたほうがいいかも。それと市販の味噌では「マルコメ プラス糀 無添加みそ 糀美人」が最高です。

旨い+まろやか+安い。四の五の言わず買って味噌汁にして飲むべきです。

この通り、やや白が強い仕上がりになりましたね。

仕上げに葱を散らしておきましょう。風味がよくなります。

盛りつけは、クリガニを半割にしたり、脚と胴を4つ切りにしたりすれば食べやすいと思います。

今回は撮影用というのもあるんですが、この通り丸のままどんぶりに盛り付けました。わざとらしい。一杯1000円ぐらいしそうですね。

味は、まろやか。

蟹の旨みと香りがしっかりあります。最高に美味。

加ト吉の冷凍うどんを投入してもいい戦力になりそう。

ところが、この味噌汁が半分残ったものに、薄めのカツオだしを流し込んで復元したもので再度味噌汁にしたんですが、やはり味噌汁としての総合力はカツオ出汁と複合したほうが上だと思います。

カツオの援軍をどうしても受けたくないというポリシーでないならば、はじめから薄めにカツオ出しもいれたほうが旨みの層が厚くなるわけです。あんまり濃い出汁をいれるとカツオが主力になってしまうのでそこだけは気を付けたいところ。

ということで、今回は見出しもなく、クリガニを蒸したり味噌汁にしてみたりしました。

もしあなたが魚屋やスーパーで活きた「クリガニ」を見つけたならば、当然買ったほうがいいと思います。

毛ガニよりはかなり割安ですし、300g強でシーズンを外していなければ身もぎっちり入っていて食べ応えも意外にあります。

大型を1杯だけ買って、ゆで蟹にして、その茹で汁に、身を取り除いた殻を再度投入して出汁をとりつつ、陸奥に想いをはせるのもまた豊かな人生です。

ではでは。

平田(@tsuyoshi_hirata

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