『上州屋渋谷店』閉店から考えるリアル店舗型釣具店のこれから

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20160812上州屋渋谷店
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本記事では上州屋渋谷店が10月31日に閉店するということで、都内釣り人視点での同店への記憶をたどりつつ、リアル店舗型釣具店の将来について考えていきます。後半はマーケティングやビジネスに興味がある人以外は退屈かもしれませんのであらかじめお知らせしておきます。

上州屋渋谷店。

この店舗は東京都内で仕事をしている釣り人や終業後に神奈川方面に帰る釣り人にとって、聖地といっても過言ではないかもしれませんね。

  • 同僚や知人にそそのかされて、はじめて釣具を買った記憶
  • はじめて一人で釣り具を買いにいった記憶
  • 勤務時間中、何度サボって釣具巡り寄ったかわからない記憶
  • 釣行前の金曜夜に胸を高鳴らせ駆け込んだあの記憶
  • 圧倒的な品ぞろえ
  • 2階でルアー・フライエリアを、3階で餌釣りコーナーを、そして4階で淡水の釣りやウェアを通しでチェックした記憶
  • 異様に各釣り物に詳しくマニアックなスタッフの存在に気づく
  • 安定的に長期間勤務しているアルバイト、パートスタッフさんたちの存在
  • タックルベリー渋谷西口店とのはしご
  • 1階エレベータ前で目を光らせるビル守衛さんの存在(通称『上州屋の門番』or『上州屋の裏ボス』)
  • 釣具を買った後に近隣にある居酒屋『天風 やまがた』での釣行前夜祭

もし、あなたが上州屋渋谷店を1度でも利用したことがあるのであれば、どれか一つには当てはまるはずです。

・・・

まるで俺たちおっさんの青春が凝縮されたかのような釣り具屋。

そんな上州屋渋谷店が2018年10月31日で閉店するとのこと。

渋谷 やまがた

ORETSURI関係者行きつけの『天風酒蔵やまがた』も再開発で今はもうない・・・ハムカツがうまかった

わたしは2016年まで9年ちょっと表参道から青山一丁目あたりでサラリーマンをやっていたんですが、もうなんというか営業途中や終業後のオアシスが上州屋渋谷店であったわけです。

なんどサボって立ち寄ったかわからないという。

人生の岐路を決める前にルアーコーナーでロッドをみたり。

・・・

ご存知の方も多いとは思うんですが、上州屋渋谷店がある界隈は再開発をしていて、様々な名店や味のある店がなくなってきているんですね。周辺が取り壊される中で、ある程度長く残ったと思う感もあるのかもしれません。

『上州屋渋谷店 閉店』についてTwitterで検索してみたところ、数多くのツイートがみつかりました。

どのツイートをみても、都内勤務のアングラーにとっては重要な店舗だったんだろうなーということが感じられます。

目次

上州屋渋谷店がなくなったあとの買い物は?

ではサラリーマンをはじめとした都内勤務アングラーのこれからの買い物はどうしたらよいのでしょうか?

上州屋からの案内はだいたい以下の通り。

  • ルアー用品は渋谷東口店(新店舗でキレイ)、新宿店(歌舞伎町の奥にあるのでやや駅から遠いのが…)
  • 磯、フライ用品は新宿店
  • 船、投げ、堤防用品は神田駅前店
  • へら、渓流、鮎、ウェア系は池袋店

渋谷には他にサンスイが5店舗あるのと、タックルベリー(新品釣り具あり)もあるので、引き続き上州屋渋谷東口店と合わせて渋谷で釣り具を購入するのもよいですね。

上州屋新宿店はJRからだと15分ほど歩きますが、ワンフロアで、エサルアーともに充実している印象。

神田にいく機会があれば、上州屋とタックルベリーがはしごできるので、個人的には好きです。

リアル店舗型釣具店の将来は?

今回の上州屋の閉店は再開発に伴うものと思われますが、ネット界隈に関する知識がある方の中にはリアル店舗での販売はもうオワコンなんじゃないかと思う人もいるんじゃないかなと思います。

以前ORETSURIで以下のアンケートをしたことがありました。

「新品の釣り具ってネットで買いますか?リアル店舗で買いますか?」【釣り人向けアンケート14】

リアル店舗でしか買わない=30%
リアル店舗とネットを併用している=64%
ネットでしか買わない=6%

このアンケート(回答数211件)では、ネットでしか釣り具を購入しない人とリアル店舗とネット購入を併用している人の合計が70%という結果がでました。

Amazonが釣り具も最短翌日に届くAmazonプライムという強力なプランを登場させてEC市場を押さえる中で、釣り具チェーン店もAmazonや楽天経由の通販を広げるなかで、上州屋はリアル店舗での対面販売にこだわってきました。

直近では大規模店舗として上州屋東陽町店をオープンしています。

対面販売にはコンサルテ―ションにより自社釣り具のファンを作りやすいというメリットもあります。

ダイワ資本の釣具チェーン『キャスティング』でダイワの釣具セットを購入した人は、その後もダイワのロッド・リールを揃えている傾向が強い印象です。

性能などが特にわかりにくいアイテムの場合、店舗スタッフが熱心に進めてくれるという点がファーストコンバージョンの一歩になるわけです。

釣具を取り扱う国内2大メーカーの1社シマノが国内釣り具販売で本腰を入れはじめるときには、ウェブ(動画を含むメディアやSNS)で力を入れるだけでなく、対面販売が欠かせなくなってくるように思えてなりません。そのあたり、上州屋と組めるところもありそうなのですがどうなのでしょう。

アメリカにはバスプロショップスがあるが・・・

バスプロショップスのサイト。銃などの取り扱いがあるからかスタバからwi2で接続しようとしたら遮断され…

出典:バスプロショップス

ここで話が海外に飛びますが、流通業ではアメリカには圧倒的なファンを持つ『バスプロショップス』があります。

わたしも高校生の頃、アブ・ガルシアのリールなどの釣具を輸入したことがあるのですが、圧倒的な釣り具やアウトドアアイテムのラインナップを誇っています。

同店の場合は、Amazonに対抗できているリアル店舗としても有名ですが、以下の強みがあります。

<バスプロショップスの強み>

  • 狩猟にまつわる火器の販売
  • バスボートなどの大型アウトドアアイテムの販売
  • エンターテインメント性のある店舗設計(店舗がテーマパーク)
  • PBアイテムの販売とファングッズの存在(ワッペン、帽子、ステッカー等)

狩猟にまつわる火器の販売

→ライセンスの問題もありECでは販売できない

バスボートなどの大型アウトドアアイテムの販売

→ボートなどは車同様やはり実店舗で乗り心地や幅などを見て購入したい

エンターテインメント性のある店舗設計(店舗がテーマパーク)

→店舗に巨大バスがいる水槽を設けるなどして店舗が自体がテーマパークのようになっている

PBアイテムの販売とファングッズの存在(ワッペン、帽子、ステッカー等)

→豊富なプライベートブランドアイテムがあるだけでなく、『Bass Pro Shops』のロゴ・マークの入ったアパレルやその他グッズを身に着ける人も多い

なるほど、実に強力ですね。

まとめると、

店舗に行くと子供や大人もめちゃくちゃ楽しめるし、ファンコミュニティが確立されている。

バスプロショップスの勝利要因はここに集約されているのだと思います。

アメリカの場合は国土が広大なため、AmazonやイーベイなどのECが早くにうまれて、発達したと言われますが、そういった地理的要因の中で、強かに戦略を取り決めて店舗の存在を活かして自社EC購入につなげている企業もあるわけです。

日本釣り具販売メーカーが独自販売に苦戦しているなか、バスプロショップスは独自のEC販売にも成功している印象です。

同サイトのアクセス数は・・・

シミラーウェブでの訪問予測数は約620万(8月)1訪問あたりのページ閲覧数は4.84。

ここからどれぐらいコンバージョン(アイテム購入)しているかは不明ですが、独自情報だけがのっているサイトとしてはかなりの規模感ですね。

アウトドア人口の差が日本とは異なりますが、日本の釣具・アウトドア用品の小売企業のサイトと比較しても圧倒的な規模感。

これからの釣り具屋はどうなるのか・・・

ひるがえってこれからの日本の釣り具屋はどうなっていくのでしょう。

  • ローカルな釣り具屋
  • チェーン釣り具屋

大きく釣具店を分けると上記の通りだと思いますが、ローカルな釣り具屋はローカルのポイント(釣り場)が連続して釣り禁止等にならない限りは事業を継続していくはずです。

一方チェーン店はどうなるのでしょうか。

  • バスプロショップスの生存戦略を日本に当てはめて独自資本だけでなく時には資本調達によりAmazonに勝利する
  • 釣具やアウトドアメーカーと資本提携をして事業継続の道を探る

ローカルなエリアを超えて商売していく場合はこの2つであるような気がします。

座して待つとAmazonに包囲されて干殺しにあう。

どの釣り具チェーンでもそんなことを経営企画担当者が考えているはずです。

ウェブ主体の釣りやアウトドア関連メディアやブログでも、みんな、Amazon、楽天、Yahoo!に送客して広告収入により運営基礎をつくり、PVを増やして、記事広告・バナー広告で利益を積み上げていくところがほとんどです。

さきほど、バスプロショップスの強みとして以下の点をあげましたが、国内釣具・アウトドア販売店が独自にチャレンジできそうなのは、

  • エンターテインメント性のある店舗設計(店舗がテーマパーク)
  • PBアイテムの販売とファングッズの存在(ワッペン、帽子、ステッカー等)

この2点かなと考えます。店舗のエンタメ性と、ファンコミュニティの確立。

エンタメ要素の向上という点では、商品をただ並べて陳列するだけでなく(それだけで個人的にはワクワクするんですが)、店舗自体にエンタメ要素をもっと設けるという点がありそうです。

  • 巨大水槽を設ける
  • 釣堀を併設する
  • キャスティングゲームを試せる場所を併設する
  • VRの釣りが店舗で試せる(VRゲームを共同開発する)
  • カフェを併設

このあたりはフィッシングショーと同じになってきますね。フィッシングショー自体も企画者がバスプロショップスの攻め方を参考にしているはずです。

また、ファンコミュニティの醸成では以下のような要素がありそうです。

  • PBアイテムの品質やデザイン性を向上する(ダイワ、シマノと同等だが●割安い。しかもかっこいい)
  • 釣り場や店舗での積極的、継続的なイベント運営
  • 自治体や関連機関と協力しつつ釣り公園を受託運営
  • 各種SNSに本気で取り組む

などなど。

それと忘れてはならないのが、『人』の問題です。

店舗スタッフによる圧倒的なホスピタリティとコンサルテーション。

釣具店にいくと、やはり、「この人がこれだけ説明してくれるんだからここで買おう」という気持ちになることもしばしばです。

陳列価格をみたときに税込+付加ポイントをふまえても、Amazonで買ったほうが1,000円安くて、かつプライムで明日には釣り具がまとめて届くという状態でも、このスタッフがオススメしてくれたセッティングならここで買おう。いろいろ他にも教えてもらいたいと思うことがあります。

人間ですので、どんなに合理に考えても、情で動くところも多いわけです。

中国三国時代に蜀の諸葛亮がその才能を愛した馬謖が南蛮征伐に対して、「城を攻めるは下策、心を攻めるが上策です」と助言した逸話があります。結果、南蛮王孟獲に対しての『七縱七擒策(7度つかまえて7度放す)』につながり、結果的に蜀の背後が安定したわけです。

この話を釣り具販売チェーンに当てはめると、『釣り人の財布を攻めないで、釣り人のワクワクをもっと攻める』ということなのかもしれません。急がばまわれ。とも言いますね。

人にフォーカスするならば、ただの接客ではなく、痒いところに手が届き、また店舗に行きたくなる店舗スタッフを育成する。このあたりは、スターバックスあたりが参考になるのかもしれないですね。

釣り具や釣りに詳しいだけでなく、人が好きなスタッフ。このあたりの獲得は人事部の腕の見せ所なのかもしれません。

釣り具チェーンやメーカーの経営者は、今すぐ企画メンバー中で機動力の最も高いメンバーを選抜して、バスプロショップスとザッポスに視察にいかせるとよいと思います。

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