カワハギが特に旨いのは肝に脂肪が蓄えられ肥大化する秋冬。
これはこの国の国民の多くが知っている明白な事実ではないでしょうか。
丁寧に下処理した肝をつかった肝醤油を刺身につける。かき込まれる白飯。
酒のみでいうと、「おやっさん、お銚子もう一本つけてくれる?いや2本ぐらいもってきちゃってよ」みたいなことになったり。
それはそうと、所謂「肝パンカワハギ」を釣った場合、刺身醤油以外に料理レシピはないのでしょうか。
「肝クリームタルタル」は、自分で考えておいて、最強かなと思っているおつまみだなと。欧米ジャンルで。
焼き物としては、「カワハギの柚子肝味噌焼き」。これなんか熱燗の親友みたいなもんですよ。
あと鍋。
以前、「カワハギの肝土手鍋」を閃いてつくってみたんですが、これは実に美味。味噌味であたたまる。一方、肝量を多くした場合、ちょっと濃厚すぎるよなーという印象もあるんです。
人間って贅沢だよな。
もうちょっとさっぱりした感じで肝料理はないのかね?と。
そこで考えたのが、にわかに人気の「柚子塩鍋」の技法を応用した「柚子塩肝鍋」です。
メモの用意はよろしいか?
カワハギを釣った後の持ち帰り方法と下処理
流通をへたカワハギの肝は、臭みもでていて食用に適さないことがほとんどなんですが、釣った魚は別ですね。
カワハギの肝を使用する場合で一番良いのが、現地で胆嚢と胃腸を崩さないように肝だけをとり、日本酒などをいれたジップロックで持ちかえる方法です。
底物系でいろいろ食べている魚の場合、常に胃腸に内容物があり、これが崩れて肝につくとその時点でゲームーオーバーなわけです。
ニオイをたとえるなら、アンモニア臭というのが一番近いんでしょう。めちゃんこ臭い。ツーンとくる。
とはいえ、カワハギの場合、釣ったそばから処理していると手返しも悪くなるので、実際は血抜き処理でとどめて持ちかえるのが一般的。
この場合は、当日中に肝だけは別にしておきましょう。
冷蔵保管していても一晩立つと、肝臓が胃腸内容物や胆嚢汁に汚染されていることもあります。あとは、腸などがもろくなるので、取り外す際に避けてしまったり。
あと気を付けたいのは、魚が死んだり、弱った状態でバケツにつけ続ける行為です。
秋冬でも水温が高くなってきている昨今、身はともかく内臓はダメージをうけがちです。
それと、岸釣りでも船釣りでも真剣にやっていると、血抜き処理が遅れてしまい、バケツのなかでカワハギが弱り、血抜きしづらくなるんですね。
釣果も重要ですが、理想はつったらすぐ血抜きです。これほんと。
こちら油壺・小網代産のカワハギ。
小さいのもいるようにみえるんですが、大きいのが尺近いので大きく見えるだけですよ。
口部分を切り落とす。
ラインをつくって、べーりべり。
このあたり、調理ばさみだけで十分対応できます。
ヒレもすべて使わないので、ハサミで切り落としておきましょう。
これが一番大きかったカワハギ(オス)の肝。
手のひらに乗っけてみるとわかる巨大さ。
肝パンっていうのはこういうことをいうんでしょうね。
そうこうして、下処理が完了。
カワハギの身も数日寝かせると旨味がでるので、バットで保冷するのもよし。
数日寝かした身を肝醤油で食べる場合、肝に臭みがでてしまうので、泡盛・焼酎・醤油・味噌などにつけこんだり、肝を冷凍してしまったり。くわえて、食べる前に肝をさっと下茹でするのも一つです。
当日や翌日食べるときと比べれば劣るわけですが、それはそれで美味。
刺身にする場合、薄皮をひいてからか、薄皮をさけつつ刺身にする方法があります。
こちらは鍋の出汁につかうカワハギのアラ。
目玉を抜くのと、外皮をきれいにとるのと、エラや血合いは取り除きましょう。調理ばさみで頭を割っておくと、ダシも出やすい。
出汁に使う前に熱湯をかけて、流水でよく洗い流しておきましょう。そう、霜降り処理ですね。
カワハギの肝+卵
こちらは大吟醸の日本酒に漬け込んでおいた肝。
安日本酒でもよいんですが、なぜか我が家には大吟醸が余りまくっていたので。
肝から、さわやかな香りがしますね。
「カワハギの柚子塩肝鍋」をつくろう
鍋に水+日本酒をはり、下処理をしたアラと昆布を投入。
昆布は沸騰したら取り除くのがベター。
北大路魯山人の本には、湯に昆布を泳がせてすぐに出す技法がでてきますね。
あとは具材を詰め気味でいれて炊く。
冷蔵庫にある野菜を入れたんですが、よしなに。ほかに油揚げを思いついたようにいれました。
この製法でつくると、アラの骨が気になってしまうんですが、俺っちは骨いやだなーという人は、別鍋でアラ出汁をつくってからやるとよいです。
はい、ここで「柚子塩だれ」をつくりましょう。
市販品もあるので、それでもよいです。
- 塩(能書きが多いのを入れるとよりおいしいと思います)
- 砂糖
- 柚子皮(果皮の黄色いところだけすりおろしましょう)
- 柚子果汁(生のを絞りましょう。数がすくなければ酸味をレモンなどで補う)
- みりん
- 酒
- 昆布だし
- 魚介だし(カツオが過ぎると海原雄山に「下卑た味」と怒られます)
- 創味シャンタンなどの動物系スープ(ほどほどに。過ぎると海原雄山に「下卑た味」と怒られます)
- 葱油
- 胡麻油
これらをよしなに融合。
難しいことを考えず、「塩辛すっぱいなー」と、なっていればOK。
分量で小さくまとまってはいけない。
俺流でいこう。いけばわかるさ。
そこに肝を投入。血管は事前にとっておいてもよいです。
こうして裏ごしすると、血管もきれいにとれます。
この通り、肝ペーストがしっかりとれましたね。
肝の量はこのときカワハギ中から大サイズ5枚分をつかっていますが、好みで両を変えましょう。生で食べると気持ち悪くなるボリューム感です。はい。
これらを混ぜ合わせる。
あと入れの理由は柚子の香りを残したい&肝を炊きすぎると臭みが出やすくなるため
そして炊きあがった鍋に投入。
よし、俺のターンエンド。
あとは小葱を大量に投下し、追い柚子しましょう。皮とか柚子汁で。
ちょっと汁が多くなりすぎたんで、別椀に避難したんですが、ご覧ください。この色つやを。
肝黄金スープ。
なんと、マルコポーロが探し求めたものが食卓に立ち上る湯気の下にあっただなんて。なんという皮肉。すまんな、マルコ。
そんでもって食べる。
よいとこの柚子胡椒を薬味にしてもよいでしょうね。
味は・・・。
酸。
旨。
香。
世の中では、いつごろからか酸辣湯が流行っていて、我が家でも妻がことあるごとに酸辣湯系のアイテムを収集しているわけですが、これは「酸旨香湯」と呼ぶとそれっぽいな。
読み方わからないけど。
柚子の酸味と香りが、カワハギの肝由来の魚臭、内臓臭を見事に抑えているという。
そう、加熱すると、肝っていうのはどうしても臭みがでるんですよね。
そこで味噌と合わせると、コロイド粒子が結合しながら魚臭を吸着して包み込むわけです。味噌スゲーな。
が、ちょい濃い味すぎるなー。もっとはんなりいきたい。というシーンもしばしばあるわけです。
一方、この柚子塩肝鍋といえば、どうだ。
さっぱりしているんだけど、まろやかに旨いんですよ。
これはいいことを知ったぞ。
カワハギ柚子塩肝鍋からの2段活用
はい、鍋と言ったら締めです。
今回はラーメンに。
具材を取り除き、鍋に移す。
この時点で、ヒマラヤピンクソルトなどで塩分をラーメンスープレベルまで増しておきます。
今回は、俺たちの菊水「小麦香る 極太中華麺 二人前」をつかってみたんですが、生めん系は別鍋でゆでましょう。
この神聖鍋汁王国というか、鍋汁を外圧から守りたい。
ということで、別鍋で硬めに茹でた麺を投入。
トッピングはメンマと小葱。黒コショウ。そしてまた柚子皮。
もはや大勝利の気配がプンプンしていますが、実際はどうなんでしょう。
・・・
はい、ふつーに美味です。
ラーメンAFURIには、柚子塩ラーメンというのがあるわけですが、まーそういうことです。
それに、肝のコクが援軍にきたと思ってください。
原価を考えたらラーメン屋では食べられない代物。
え?
あー、チャーシューとか、あんなの飾りです。
翌朝は別椀にとっておいた残り汁に、ほぐしたカワハギの身を投入し、柚子塩肝雑炊に。
息子も、舌鼓をうっておりました。
子のまあるいほっぺをみているだけで幸せです。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)